拡張の手口

手口その3 狙いを絞れ


拡張では狙いは小さい方が確率は高い。ターゲットを定めたら、そのターゲットの情報を出来る限り入手する。そして、そのターゲットを攻める季節、曜日、時間、天候などの条件を考慮する。

例えば学生をターゲットにした場合で考えてみる。拡張員の言う学生とはアパート、マンションでの一人暮らしの大学生のことや。

大学生の中には、将来を見据えて真面目に勉強しとる者もいてるとは思うが、ワシらにはそれは見えん。大学生イコール遊び人というのがワシらの見方や。

それは丁度、世間が、ワシら拡張員はならず者の集団と思うてるのと同じや。人はその人間の本質を見る前に、そのレッテルで判断する。そんなレッテルの見せかけなんかどうにでもなるちゅうことを知らんとな。

学生の情報は、直接その大学へ行けば得られ易い。ワシは大学で情報を仕入れる時「Y新聞の者ですが」と言う。これは嘘やないからな。すると、相手が勝手に誤解して面白いほど情報が集まるんや。

同じ言葉を吐いても、一般家庭の玄関口やと、間違いなく拡張員やと思われて追い返されるのにな。人の思い込みほど、ええ加減で危険なものはないと思うで。

ワシは大学生に遊び人が多いということを非難や批判しとるわけやない。遊ぶことで学ぶことも世の中には多いさかいな。それに、ワシらの客になるのは、ほとんど遊んでる大学生や。

当然、狙いもその連中ということになる。遊びの目的は十中八九異性狙いや。男なら女が欲しいし、女もええ男を探しとる。

拡張員は拡材という餌で客を釣る。そんな大学生の喜ぶ餌を用意したらええちゅうこっちゃ。その餌として一番ポピュラーなのはコンサートや映画のチケットやな。

コンサートや映画も何でもええちゅうわけやない。ある程度絞らんとあかん。拡材は、欲しい時、欲しい物を用意し、欲しがる者に渡さんと効果ない。拡張の心得の一つや。

餌も旨くないと食いつかん。餌は手に入りにくいものほど効果がある。コンサートなら有名アーティスト、映画なら話題の人気のあるもので特別試写会の優待券なんかがええやろ。

ワシらはその気になれば、こんなものすぐに手に入る。拡張員と言えども新聞関係者や。それも、裏道専門のな。まともな方法で手に入らん物でも手に入れる。拡張員も馬鹿にしたもんやないで。

情報を元に拡材を準備出来たとしても、時期と使い所を間違えたら空振りになる。大学生にターゲットを絞ったら他はすべて外す。ワシらはどの地域でも学生の住処は把握しとるから一から探すことはない。これが分からん拡張員は駆け出しや。

男と女では用意する拡材は全く違う。せやから、その日は男子学生を攻めると決めたらそれに徹することや。それも、学年を決めてやれば尚ええ。

そんなことが出来るのかと思うかも知れんが、簡単に出来る。これを見とる学生諸君、君らの個人情報なんかどこにでも転がっとるんやで。大学内にある名簿は表向き管理されとるというが、そんなものほとんど筒抜けや。

一度でも新聞を購読したことのある者も個人情報は公開されとると思うて間違いない。少なくとも、拡張員のワシらにはな。新聞社、販売所、拡張団の事務所にはそんな情報は腐るほどある。

学生に関して最後に一つ、ワシらは年に一度、学生専門の拡張を1ヶ月ほどぶっ続けですることがある。入学時期や。これは引っ越しとも関連あるが、この時期を楽しみにしとる拡張員も多い。この時期は、学生だけやなく親も同伴しとることが多いから、その親が子供のためにと新聞を取るんや。

大学生に限らず狙いは絞れば絞るほど効果が上がる。そして、その絞り方は無数に存在する。


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