拡張の手口

手口その6 外道技 @喝勧


喝勧というのは、人を脅かして契約させる手口のことや。これが、拡張員の常套手段やと思うてる者が多い。拡張員が嫌われたり、被害に遭ったというのはほとんどがこれや。

確かに、拡張員の中にはこの手口専門というような奴もおる。はったりが得意な奴や。こういう連中は脅せそうな気の弱い人間を常に捜しとる。これはいけると思う相手には猛然と襲いかかる。

この喝勧が後を絶たんわけは、これで仕事になることがあるからや。しかし、こんな連中でも相手次第で変わる。誰にでもこんなことをやっとったら、終いにえらいめに遭う。

素人相手には、ヤクザっぽいところを見せれば効果もあるやろうけど、本物には拙い。本物のやクザは拡張員を下の下やと思うとるから、間違うてそんなところへ行ったら大変や。

何も知らん拡張員が、ある組の幹部の家に行って、そこの奥さんを脅したということがあった。その奥さんは旦那の素性を明かさんと契約した。

次の日、その幹部は団の事務所にやって来た。事務所にベンツが5,6台も横付けされたら誰でもびびるで。その拡張員が吊し上げられたのは言うまでもない。

この例でも分かるように、この喝勧はリスクが常に伴う。相手がヤクザだけとは限らん。警察もおれば弁護士かておるやろう。世の中には、どこにどんな人間が潜んどるか分からんもんなんや。

せやから、喝勧専門にやっとる連中は主に気の弱そうな学生を狙う。学生なら脅かせると踏んどるんや。バックの心配も少ないと思うとる。

ワシは喝勧のようなやり方は嫌いやから、連中の撃退法を幾つか教えよう。

1.相手にせん。これが一番や。しかし、これが出来る人間なら苦労はないわな。拡張員は学生を狙う時、インターフォンのない部屋を探すんや。拡張員はインターフォンが嫌いやからな。まず、部屋にインターフォンがなかったら取り付けることや。ホームセンターに行けば安いのがある。インターフォン越に「いらない」とはっきり言う。

2.顔は絶対に見せたらあかん。ドアチェーンがついとるからと安心して、玄関を少し開けちらりとでも拡張員があんたの顔を確認したら終いや。連中は顔を見たら勝ちやと思うとる。喝勧専門は相手の顔で判断するんや。

いけると踏んだらおどしにかかる。連中の常套文句は「お前の名前も住所も顔も分かってんのや。新聞取るまであきらめへんで」という調子や。相手がちょっとでも怖がったら、さらに追い打ちをかける。玄関を開けるのは厳禁や。

3.本当にいらんもんなら、根負けしたらあかん。一度でも、契約するとその後、何ぼでもいろんな拡張員が来る。3ヶ月だけの契約だからいいか、と安易に考えとったらえらいめに遭うで。あんたが新聞を購読したという事実だけが情報として、その地域のすべての拡張員に流れるんや。そこを転居するまでその情報は消えん。

4.居留守が使えなければ、あんたがあんた自身の友人に成り済ます。あんたはなるべく遠くから遊びに来たと言おう。間違うても、一人暮らしやと言うたらあかん。この時、出かけられる状態なら、待ちくたびれたから帰ると言って外に出た方がええ。長く話すとボロが出る虞がある。中には、住人が帰るまで待つという拡張員もおるからな。

5.身内か知り合いに頼りになる人間がおれば、いつでも携帯電話等で連絡出来るようにしといたらええ。警察関係者やったら最高や。

連中は、あんたやから強気で喋っとるんで、相手が強いか、やっかいな人間と分かると、あんたには捨て台詞を吐くかも知れんが、簡単に引き下がるはずや。中にはどうしょうもない馬鹿がおるから絶対とは言えんがな。

6.この時、注意せんとあかんのは、ちょっと脅かされたからと言うてむやみに警察に通報せんことや。殴られて怪我でもしたんなら別やけど、それ以外やったら、警察なんかあてにならへんで。拡張員も一応、正当な職業ということになっとるんで、それ自体は違法やないからな。

脅しの文句は第三者でもおらんことには証明のしようがないし、その程度やったら、警察も取り合わん。恐喝は相手を脅かして金品を巻き上げることやが、この場合はそれも当て嵌まらん。逆に拡張員は金品を渡す。

新聞代を払わされるから同じことやと思いがちやが、拡張員がその新聞代を受け取るわけやない。契約を交わせば、あんたと販売所との契約が成立するだけのことや。あんたが、その契約を解除しようと思うたら、販売所に掛け合わんとあかん仕組みになっとる。

老練な拡張員やと契約のこじれやと言うて民事問題にすり替えよる。こうなると、警察は民事不介入という原則があるから、さっさと手を引く。揉めた後の収束は、あんたが新聞を取るしかないという風に持って行って終わりや。

この喝勧は、誰の目から見てもえげつない行為やけど、実際、法律で取り締まるというのは難しいということや。いつまでたっても、なくならんわけがここにある。

喝勧はそれ自体がすでにトラブルになることを前提にしとる行為やから、揉めることは計算のうちや。挑発には乗ったらあかん。

7.あんたの性格次第やけど、思い切って乞食読者になったらええ。一部の金回りのええ拡張員以外は、この乞食読者を嫌うとるから、ほとんどの拡張員は相手にせん場合が多い。

乞食読者というのは、通常の拡材を遙かに越えた物を要求する読者や。せやけど、これはやり方が拙いとトラブルの元になる。成功すれば、結構儲かるし、ええめ出来るけどな。

8.不良読者になるという手もある。一番簡単な方法は、新聞代を払わんことや。払わん言うたらあかんで。金がないから今は払えんと言うんや。実際、学生はこういうのが多いから気にせんでええ。

それが長引くと、新聞は自動的に止められ、あんたの所は拡張禁止ということになって拡張員は誰も来んことになる。せやけど、あんたは拡張員対策ですることやから、販売所には引っ越す前に滞納した新聞代は全部払うてやりや。

9.これだけやって、トラブルで困るんやったら、ハカセにメールで相談したらええ。ワシがプロの立場からええ方法を教える。但し、相手の拡張員にワシに教えられたから、そうしたんやとアホなこと言う人間は遠慮してや。


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