拡張の手口
手口その6 外道技 B置き勧
これは景品やビール券なりを、客宅に置いて来るやり方や。その拡張員にとって、断られたけど脈ありと思う客やもう一押しで落ちるという客に景品を置いて来るんや。中には、これだけ専門のような奴もおる。
これも欲に敏感な客に狙いをつける。普通、新聞の勧誘に限らず、訪問販売でその商品を簡単に購入するという客は希や。ほとんどはまず断る。営業とはそういうもんやと思うとかんとあかん。
断りが入ってからが営業の腕の見せどころとなる。説得や拡材攻撃で落ちればそれにこしたことはないが、一筋縄でいかん客も多い。
景品が欲しそうな客でも対面を気にする者がおる。そんな物で釣られるほど甘い人間やないというわけや。
置き勧をやるほとんどの拡張員は苦肉の策としてこの方法を用いる。後で来るからそれまで考えといて欲しいと頼む。景品を目の前にすると気が変わる客もおるからな。
ここまでなら、ワシもこのやり方に異論はない。拡張員の方にもリスクがあるからや。客の中には、置き勧で置いた景品なんか知らんという奴がごく希におる。
新聞を取るとも言わんのに勝手にサービスやと言うて置いて行ったから貰うたまでやとごねる。こういうのは、例え相手がヤクザであろうと屁とも思わん。
ワシも実際にこういう人間を見たことはある。まあ、この場合どっちが悪いとも言えん。相手を見んと置いて来る拡張員がアホやとしか思えんわな。
それに、置き勧する奴は総体的に気の弱い人間が多い。その場で押し切ってよう契約に持ち込めんのや。強引なことが出来ん。そこをつけこまれることがあるんやな。
まあ、そんなことはあくまで例外で、狙いは客の欲をかき立てることや。後で、その家に行ってカードに出来るということも実際にある。
ワシがこの置き勧を外道技の部類に入れたのは、これを悪用する拡張員が多いからや。これからその手口を一部公開しよう。
@ てんぷらカードに利用する。景品を置いて来たという事実で、その客のてんぷらカードを上げる。監査の電話で、てんぷらと発覚することが多いが、中にはそのまま、契約成立ということもある。景品の誘惑に勝てんかったんやな。こういうことが、確率は少ないにしても現実としてあるから、この手口もなかなかなくならん。
例え、てんぷらカードと発覚しても、その拡張員は、そんなはずはないと言い張る。結果的にカードにはならんかったとしても、少なくともその拡張員は遊んでいたんやないということを証明出来ると思うてるんや。団や販売所向けのポーズなわけや。
A 必要以上の景品を置くことで客を錯覚させる。これは半分詐欺みたいなもんやな。例えば、ビール券や商品券を20枚とか30枚といった異常に多くの物を置いてくるんや。契約すればこれを上げますよと錯覚させるような言い方でな。
二度目に行った時は、すぐ契約の話を持ち出し、誘惑に勝てんかった客は契約書にサイン捺印する。カードが出来上がった段階で、本来渡す分の景品だけ出す。この時、話が違うと客が言っても、置いてきた景品をすべて渡すとは言ってないとうそぶく。
それに、法律で客に渡す景品は決まっとるから、それ以上は渡すことは出来ないと言い、景品を強要すればあんたも罪なると、ええ加減なことを言う。
確かに、景品表示法に基づく法律というのはあるが、現実的には機能しとらん。新聞業界の自主規制に至っては、そんなものただのポーズにしかすぎん。
過去に販売所を摘発して公正取引委員会が排除命令を出したことは何度かあるが、それにしたかて、内容はそんなことはだめですよ、これからはしないでよ、とお説教したにすぎんのや。
ましてや、実際に現場で景品をやり過ぎた拡張員や貰い過ぎた客が摘発などされたことは一度もない。もっとも、摘発を受けた販売所がその拡張員に何らかのペナルティーを科したというのは考えられるけどな。
しかし、一般の者にとっては、そんな法律は知らんから、例え、ええ加減な話でもそうかと思う。それで、泣き寝入り状態になることが多い。中には、どうしても納得出来んと揉める客もいてるが割合は少ないんや。
泣き寝入り状態の客の中には、景品を多くよこせと言うたことが世間に知られるのは拙いと思うのやろな。どっちにしても、客は騙されたと思うわな。