新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1327 Y新聞社の粗品返還請求についての質問です


投稿者 Y.Aさん  投稿日時 2015. 3.15 PM 11:53


はじめまして。突然のメール失礼致します。

職場でのお話なのですが、前任者が昨年の10月にY新聞社との契約更新をしたその日に会社側から契約解除の通達があり、新聞社にお電話をして解約したそうです。

それから、4ヶ月後に粗品を返して欲しい返せないのなら契約をして欲しいとの要求がありました。

その際に粗品がないならいいのですがとも仰っていたのですが、当事者ではないので上司に確認後連絡するという事になりました。

上司に相談した所、粗品を返すように言われました。

職場を探しても粗品らしき物は見当たらず、その後2週間後に別の方がいらして頼まれてその後どうなったか聞きにきたと仰いましたので、契約は出来ない事と粗品を受け取ったのが自分では無く、受け取った者は既に退社している事を伝えると、分かりましたと帰宅されました。

3週間後に最初の方が来て連絡貰ってないんですけど! と強い口調で来店してきましたので、別の方に伝えた事を話しますと知らないと仰いました。

なので、前回来た方にお話した内容と同じ内容をお伝えました。すると、契約できないなら粗品を返せ! と仰いました。

契約書にクーリングオフした時は粗品を返すと記載されている! とも仰っていたので契約書を探しましたが見当たりません。

後でその当時のメール履歴を確認しますと、上司宛のメールで本日電話にて契約解除しましたとありましたので、正式なクーリングオフでは無く電話連絡のみでのやり取りで契約解除を行ったようです。

その当時の契約書をY新聞社に見せて頂く事は可能なのでしょうか?

また、粗品が見当たらないので返すに反せないのですが同じもの、若しくはそれ相応の代金を支払うというのは可能なのでしょうか?

その際に貰った粗品を記載した書類などはあるのでしょうか?

無かった場合、何を証拠に品物若しくは代金を支払えばいいのかわからないのですが、何かアドバイスを頂ければ幸いです。

お忙しい所、読みづらい文章に加え長文で申し訳ないですが返答の程、宜しくお願い致します。


回答者 ゲン


まず、あんたが『新聞社』としきりに言っておられるのは『新聞販売店』のことやと訂正させて頂いとく。

新聞社は宅配の新聞購読契約には一切タッチしない、できないというスタンスがあるため、新聞社から購読契約に関して会社や個人宅に訪れることなど、殆どないさかいな。

例外は、勧誘員や販売店員が不法行為をして謝罪に来る時か、新入社員の研修で勧誘営業をやらせるくらいのものや。それ以外で新聞社の社員が会社や個人宅に訪れることは、まずない。

新聞社と新聞販売店を同一の組織、企業体と思われている人は多いが、実態は違う。新聞販売店は新聞社から新聞の販売と配達を請け負っている委託業者ということになる。

もっとも、新聞社名を名乗っても良いことになっているさかい、一般の人からは同一視されるのも無理はないがな。これは新聞の勧誘専門の営業会社、俗称『新聞拡張団』についても同じようなことが言える。

紛らわしいとは思うが会社法上は別企業、別組織なわけや。一般の人にとっては、どうでもええことかも知れんが、トラブルになった場合、その区別がついていないと説明しても理解して貰えないケースがあるので、念のため言い添えとく。

『上司に相談した所、粗品を返すように言われました』ということなら、返した方がええとは思うが、『職場を探しても粗品らしき物は見当たらず』では、あんたとしてはできることは限られてくるわな。

『粗品を受け取ったのが自分では無く、受け取った者は既に退社している』のであれば、その退社した人に連絡して、『昨年の10月にY新聞社との契約更新をした時に、あなたが受け取られたはずの粗品は、今どこにありますか?』と訊いた上で対処するしかない。

それで粗品の在処が分かれば、それを返せばええし、その退社した人が「景品の在処は知らない」、あるいはその人と連絡が取れないのであれば紛失扱いで話を進めるしかないやろうな。

民法545条に『原状回復義務』というのがある。契約を解除する場合、双方その契約以前の状態に戻しなさいという法律や。それに照らせば、契約時に受け取った粗品は返還する必要があるものと思われる。

その粗品がない場合は、それに相当する対価、たいていは金銭での返還にならざるを得ないから『粗品が見当たらないので返すに反せないのですが同じもの、若しくはそれ相応の代金を支払うというのは可能なのでしょうか?』というのは、当然可能や。

その粗品とやらが何か分からんから確実なことは言えんが、同じ物が市販されているのなら、それを買って返してもええし、「金額にすると、どの程度になるのでしょうか?」とその販売店の人間に訊いて、提示された金額を納得すれば、それを返すのでも構わない。

その時には「景品を返せ」と言った上司に報告して指示を仰いでからにした方がええ。

ただ、2013年11月21日に発表された『新聞購読契約ガイドライン』 によると、

『長期や数か月先の契約を抑制するため、公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならない』と業界の指針で決められたさかい、過剰な額の粗品であれば返還しなくても良い場合もある。

この場合の『公正競争規約の上限』とは景品表示法で決められている景品付与の上限のことを指す。

業界では俗に『6・8ルール』と呼ばれていて、景品付与の上限を『取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲』と決められているというものや。

6ヶ月以上の長期契約に適用されるのは『6ヶ月分の購読料金の8%』で、一般的な朝夕セット版の新聞購読料金を例にすると、6ヶ月以上の契約の場合に渡せる景品額の上限は、4,037円×6ヶ月×8%=約1,938円になる。

それ以上の額を返還しろと言われた場合は『新聞購読契約ガイドライン』に照らせば返還しなくても良いということになっている。

ただ、『新聞購読契約ガイドライン』が発表されて、まだ1年数ヶ月ほどやから、中にはそのことを知らん業界関係者もおると聞く。

『契約できないなら粗品を返せ!』と言うたのは、それまではそれで通用していたからやとは思うが、それにしてもこの言葉は吐くべきやなかった。

当たり前やが、これから『契約』する事と以前の契約事の『粗品の返還』は別の問題やさかいな。それぞれ別に処理せなあかんことや。

まあ、そう言えば契約して貰えると思うたのかも知れんがな。しかし、こんなことを言えば逆効果になることの方が多い。客にとって、これほど気分を害する言われ方はないさかいな。

特に、あんたは『粗品を受け取ったのが自分では無く、受け取った者は既に退社している』と伝えているわけやから、よけいやわな。自分の預かり知らんことで文句を言われれば、誰でも気分を害する。

それに、『4ヶ月後に粗品を返して欲しい』と言うてきたのは業界の常識としても遅すぎる。まあ、これは『返せないのなら契約をして欲しい』というのが主たる目的やからやろうがな。

どこか良い契約先がないかと探していた、その販売店の勧誘員が「ああ、そう言えば、あの会社、契約を解除した時、粗品を返して貰ってなかったな」ということを思い出した、あるいは店のパソコンのデータでも見て「まだ粗品を返して貰ってないようだから、それを口実に契約させよう」てなことを考えたのやないかと思う。

その販売店、もしくはその販売店の勧誘員としては、その粗品の返還なんか、どうでもええというのが本音のはずや。本当にその粗品が必要やったのなら、契約を解除した時、すぐに引き取りに来とるわな。普通は、そうする。

結論として、民法545条の『原状回復義務』により、その粗品返還、および、その対価としての金銭の返還に応じるのも良し、景品表示法に違反した粗品分の請求であれば『新聞購読契約ガイドライン』を盾に、その支払いを拒否するのでも構わないと思う。

ただし、その判断は、あんたの上司にして貰うことや。返還する粗品があれば、問題はそうないやろうが、金銭での支払いとなれば会社の経理を経由せなあかんと考えるさかい、独断でするのはリスクを伴うしな。分かっておられるとは思うが。

『その当時の契約書をY新聞社に見せて頂く事は可能なのでしょうか?』というのは、その契約書を見せて欲しいと言えば持ってくるやろうが、契約書に『契約書にクーリングオフした時は粗品を返すと記載』されていようが、いまいが、それに関してはあまり意味がないと思う。

まあ、一般的な新聞購読契約書には『クーリングオフした時は粗品を返すこと』てなことを書いているケースは殆どないとは思うがな。少なくともワシは、そういう契約書を見たことがない。

民法545条の『原状回復義務』については法律やから、特に契約書に書かなくても粗品の返還義務に対する効力は発揮するし、『新聞購読契約ガイドライン』は、業界の指針やから、業界関係者は、それを守る必要があるとされとる。

法律と業界の指針とを比べた場合、一般的には法律が重視されるが、事、新聞業界に関しては業界での決め事の方が優先される。

そう言えば、『契約できないなら粗品を返せ!』という言葉を吐いた販売店の勧誘員も引き下がるはずや。

引き下がらないようやと、この事を新聞社の苦情係あたりに「新聞購読契約ガイドラインで公正競争規約の上限を超える景品は返還しなくても良いのですよね。それを返せと迫られて困っているのですが」とでも通告すれば、新聞社から、その販売店に指導という形で話が行くはずやから、それで終わるものと思う。

『その際に貰った粗品を記載した書類などはあるのでしょうか?』ということで、粗品について正確に知りたいのなら、普通は、その契約書に記載しているはず、というか書いてなあかんさかい、その意味で契約書を見たいと言われるのなら、見せて貰うたらええ。

その契約書に何も書いてなければ、その販売店の言うとおりの金銭を支払う必要はないが、それについても上司の判断に委ねられることや。どうしますかと。

あんたに関わり合いがないことなら、極力責任のある人に振っておいた方がええと思うよ。


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