新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.1328 いわゆる切り取り行為は違法でしょうか?
投稿者 Tさん 投稿日時 2015. 3.21 PM 9:54
ゲンさん、はかせさん、こんばんは。
ひさしぶりの質問ですが、集金できない客の新聞代を、店側がそこの担当スタッフにかわりに支払わせる、いわゆる切り取り行為は違法でしょうか?
それによって泣き寝入りしたり、失業に追い込まれたりしている専業スタッフが多いと聞きます。
回答者 ゲン
『集金できない客の新聞代を、店側がそこの担当スタッフにかわりに支払わせる、いわゆる切り取り行為は違法でしょうか?』というのは、新聞販売店の正社員である専業員、およびアルバイト従業員に対してする場合は、違法行為になる。
ただ、集金業務だけを請け負っているようなケースは、仕事を発注する側と請け負う側の双方の了解、納得があれば、特に問題はないとされているがな。
切り取り行為とは、殆どの新聞販売店では講読料の集金期日が決まっていて、それまでに回収出来なかった分を専業員である区域担当者が給料の中から強制的に天引きにより、立て替え払いをするシステムのことを指す。
集金に使う証券は2枚綴りになっていて、一枚が店に提出する控え、もう一枚が顧客に渡す領収証になる。
本来、店に提出する控えと顧客に渡す領収証は顧客の目の前で購読料を支払って貰った時に切り離すことになっとるのやが、それをせず、顧客への領収証だけ切り離したものを集金担当者が貰うことを文字どおり「切り離し」と言う。
給料の精算時に、その分の額を予め給料から天引きという形で差し引いている場合が「切り取り行為」ということになる。
これは販売店側が、集金できないのは集金担当者の責任だという勝手な論理のもとに一方的に行われていることや。
また、どう転んでも販売店のマイナスにはしたくないという経営者が、集金担当者に負担を強いるために、そういったシステムを導入しているからでもある。
それに対して、「切り取り行為」が日常化している販売店の従業員たちは、この業界は、こんなものかと思って異を唱えないケースが殆どやという。
ちなみに「切り取り行為」の後で、集金できなかった顧客から集金することができた場合、その集金担当者のものになる。それだから良いだろうというのが、そういった「切り取り行為」をしている販売店経営者の理屈や。
しかし、顧客の急な移転や支払い拒否をされた場合、貰えなければ集金担当者が泣くことになる。集金担当者にとってはリスクだけしかない過酷なシステムなわけや。
昔は、「切り取り行為」をやっている販売店は多かったが、今は少ない。もっとも、あんたの相談にもあるとおり、皆無になったというわけやないがな。
早い話が、「切り取り行為」とは強制的な顧客の新聞代の立て替え払いということになる。
立て替えは、集金人が販売店に対する債権の譲渡代金の支払いを意味する。これは労働の対価として支払う賃金とは無関係なものや。
したがって、賃金とは関係のないものを給料から強制的に差し引くのは、『労働基準法第24条第1項「賃金全額払いの原則」』に抵触し明らかに違法な行為ということになる。
これについては、例え従業員の承諾を得ていたとしても違法行為が成立する。
通常、新聞業界では、集金業務に関しては集金の報酬額が決まっていて、その部分だけ「請負い仕事」として判断されている場合がある。
冒頭近くで『集金業務だけを請け負っているようなケースは、仕事を発注する側と請け負う側の双方の了解、納得があれば、特に問題はないとされているがな』と言うたが、完全な請負業務契約を交わしていれば、仕事の発注者と請負業者という関係になり、労働基準法は関係のないものになるさかい、労働基準法は適用されない。
つまり、請負業務契約を交わして、当事者同士がそれに納得していれば、正当な商行為として認められる可能性が高いということやな。
しかし、専業員という純然たる従業員に対して行う、「切り取り行為」による給料の天引きは労働基準法上は許されない。
これは苦しい詭弁、「へ理屈」の類になるが、販売店側の言い分として、『期日までに集金できなかったので、店側に損害を与えた。従って集金人たる労働者が店に対し損害賠償債務を背負ったので、そのペナルティとして立て替え払いをさせる』という考え方があると聞く。
無理矢理、そういう前提に立って考えたとしても、販売店の決めた集金期日に間に合わずに立て替え払いをさせるのは、いずれ回収できる債権であると新聞販売店が認めているわけやから、その時点で損害賠償債務とすることには無理がある。
そんなあやふやな状態で給料から、立て替え払い分を差っ引くというのはやはり「全額払いの原則」に抵触する。そもそも客が支払わない新聞代を従業員に給料で立て替えて支払わせるという発想自体が異常や。頭がおかしいとしか言いようがない。
『それによって泣き寝入りしたり、失業に追い込まれたりしている専業スタッフが多いと聞きます』というのは、こういうことをやっている販売店では、ありがちな話やが、『泣き寝入り』する必要はないし『失業に追い込まれた』場合、その状況次第ではいくらでも対処法はあるさかい、いつでも相談して来られたらええ。
その状況に合わせたアドバイスをさせて頂く。
相手は、端から違法行為をしとるわけやから、何も心配することはない。単純な勝ち負けで言えば、過去の同種の相談でも、行動を起こした殆どの相談者が勝ちを得ている。
一例として、『NO.1230 警告もなく新聞集金の「切り取り」が始まりました』 というのがあるので、参考にして貰えればと思う。
ただ、そういったことで揉めた場合、その販売店で仕事を続けていくのは難しいと考えるので、そのあたりのところを踏まえた上で、相談して欲しい。
相談者の腹の括り方次第で、ワシらのアドバイスも違ったものになるさかいな。
肝心な事は、相談者が、どうされたいのか、何を望まれているのかということや。そのためには、どこまで覚悟されているのか、すべては、それにかかっていると。
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