新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1348 これは契約期間の改ざん?


投稿者 Hさん  投稿日時 2015. 7.14 PM 4:23


こんにちは。いつも、この業界を危惧する者として由々しき事件、事故について興味深く注視しております。

事は、3年前にさかのぼるのですが、ある交代読者からA新聞がまだ、あと1年契約が残っているので、1年後に契約をずらして欲しいとの連絡があり、その時は、何の疑問もなくいつも交代で取ってくれているお客様からのお願いなので、快くずらしてあげました。

それから数ヶ月後、また同じことが何度か続き、この地域の人は契約観念がないから仕方ないのかと諦めかけていました。

先日、A新聞と併読しているお客様からの相談で、A新聞と1年しか契約した覚えがないのに2年過ぎてもまだ入っているから販売所に連絡したら、まだあと1年契約が残っているのでと言われ、契約書の控えを見せて下さいと言うと個人情報やから見せられないなど戯言を言われたそうです。

確かに、契約書をなくした方も悪いのですが、個人情報が…とは本人を前に呆れた理由です。

以前から気になっていたA新聞のひょっとしたら、契約期間改ざんを疑いはじめました。

突き詰めて調べたら、A新聞が主張していた毎年2ヶ月無料購読期間にするので3年契約していると言ってたそうですが、その期間集金に来ているし、1年契約が終わる頃に2年継続契約してもらっていると言ってるが、来た覚えも記憶もないそうです。

お客様からの一方的な話ですから100%真実かどうかは言い切れないかもしれませんがもし、改ざんが事実とすれば許しがたいことで、全国紙全部がこんな営業をしていると思われたら腹が立ちます。

昨年、従軍慰安婦問題でかなりの購読者を失ったと聞いていますが、こんな事やって余計に信頼を失っていることに早く気付いて欲しいものです。

相談して頂いたお客様は最後までうやむやにせず戦いますとおっしゃっていますが、本当に情け無い話しと思います。

過去にこの様な相談もあったかも知れませんが、ゲンさんのアドバイス頂けたら幸いです。


回答者 ゲン


『契約書の控えを見せて下さいと言うと個人情報やから見せられないなど戯言を言われたそうです』というのは、まさに戯れ言以外の何ものでもないとワシも思う。

あんたの言われるとおり『個人情報が…とは本人を前に呆れた理由』やわな。その当人の個人情報を教えられんという話は聞いたこともないし、あり得んことや。

もっとも、そのA新聞の人間がそう言うたことで、ある確信が持てたがな。

あんたは『契約期間改ざんを疑いはじめました』ということやが、そもそも『まだあと1年契約が残っている』と証明できる契約書そのものがない可能性の方が高いと思う。

せかやらこそ、『個人情報やから見せられない』という苦しい言い訳をして逃げたのやと考えれば、すべての辻褄が合う。

どういうことか説明する。

契約書は、事業者と契約者の双方が同じ物を所有するという大原則があり、事業者にはその契約書の保管義務がある。

契約者には契約書の保管義務はないので、例えなくしても『契約書をなくした方も悪いのですが』と考える必要はない。

契約者が契約書をなくした場合は、法的には契約書の元本の確認を事業者に要求することができる。請求された業者は、速やかに契約書を見せるか、そのコピーを契約者に渡す義務を負うものとされている。

もともと契約書というのは、何かのトラブルがあった時に、双方が確認するために存在するもので、それが見せられないというのは考えられんことや。

契約書の元本の提示に応じない場合は、その契約そのものがなかったとして、その場で自動的に解約できるというのが、法律の一般的な解釈や。

『1年契約が終わる頃に2年継続契約してもらっていると言ってるが、来た覚えも記憶もないそうです』というような場合は、販売店側が勝手に「自動更新契約」にしているケースが多い。

自動更新契約自体は、法的にも認められているが、契約者がそれに異を唱えた場合は、その場で解約できることになっている。

自動更新契約とは、そういうものや。お互いの信頼関係と納得があって初めて成り立っているものやさかいな。信頼関係が壊れれば、その契約が消滅するというのは当然や。

そう言えば、そのA新聞の人間は契約書の元本、もしくはコピーを持ってくるやろうが、そんな販売店の人間の場合、改ざんした契約書を持って来る可能性は十分考えられる。

コピーを持ってくれば、それを精査すればええが、元本だけを見せにやって来た場合は、携帯カメラやデジタルカメラで、その元本の契約書を撮影しとくように、その『お客様』に教えてあげておいた方がええやろうな。

契約書を改ざんしていれば、あんたが見れば分かるとは思うが、自信がなければ、ワシらに相談されてもええ。

現在は巧妙な方法で、契約書の改ざんをすることがあるさかい、普通では簡単に見抜けられん場合もあるしな。

その方法と見破り方については、2年前の2013年5月3日発行の『第256回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■悪質勧誘の新たな手口について その1 偽造契約書の見破り方』 というのがあるので、それを参考にして貰うように、その『お客様』に言えば分かって頂けるものと思う。

ここでは、あんたに、その要点だけを抜粋して話す。


「偽造契約書」というのは「てんぷら(架空契約)」として広く知られているが、従来のやり方とはまるで違う。

「偽造契約書」でありながら、「偽造契約書」とは見抜かれない方法を採っている。

やり方自体は単純やが、それを「偽造契約書」と見抜くには、それなりの知識と経験が必要やから、仕掛けられた一般の購読者にとっては厄介やと思う。

それらの方法による被害者の方々からQ&Aに数件の相談が寄せられているのやが、なぜか非公開を希望されているさかい、今のところ陽の目を見ることがない。

それではあかんと考え「特定されない」ことを条件に、ある相談者に掲載の許可を貰ったので話すことができるわけや。

前置きが長くなったが、それでは始めさせて頂く。

その家の主婦、ヤスコは、3ヶ月ほど前、「留め押し」と呼ばれる継続依頼にやってきたその販売店のアキカワという男に「更新はお断りします。契約期間が終ったら、新聞はもう入れないで」とはっきり言っておいた。

それまでは1年毎に契約を更新していたが、今回は継続する意志がないことを伝えた。

もちろん、継続の契約書にもサインなどはしていない。当然、その控えなども持っていない。1年前までのものは、昔から残してあるので今年の分だけがないというのは不自然やとヤスコは言う。

アキカワは「分かりました」と言っておとなしく引き上げて行った。それで終わったとヤスコは思っていた。

ところが、契約期間が終了しても、一向に新聞の投函が止まる気配がない。

ヤスコは、その販売店に「契約が切れているはずなので、新聞は入れないでください」と抗議の電話を入れた。

すると、その販売店から「いえ、そちらのご契約は更新されていますよ」という信じられない答が返ってきた。

「そんなはずはありません。アキカワさんには、ちゃんと更新はしませんとお伝えしました」

「そうですか。分かりました。その件につきましては担当のアキカワに確認しますので」ということになった。

数時間後、そのアキカワが家までやって来た。

「更新はお断りしたはずですよ」と、ヤスコ。

「いえ、購読の更新契約は頂いています」と言いながら、契約書のコピーをヤスコに手渡した。

その契約書には、ヤスコの筆跡と思われるサインがされていた。今年の○月から1年間の契約になっている。

サインは自分の字のようだが、ヤスコには覚えがない。覚えているのは、ちゃんと断ったということだけや。

「3ヶ月も前のことですし、忘れたんじゃないですか。それに、僕はその時、サービスの洗剤も渡したはずですよ」

確かに、その時、洗剤を貰った。それは覚えている。

「でも、それは今まで長い間、新聞を取っていたので、その感謝の印としてのサービス分だと仰ったではありませんか」

「奥さん、それは何か勘違いされておられませんか。確かにあの時、僕はそう言いましたが、それは今まで長い間、新聞を取って頂いているので、いつもより余分に洗剤のケースをお渡しするから更新をお願いしますという意味で言ったのです。実際にいつもより多めに洗剤を渡したはずですよ。それに納得されて気持ちよくサインされたではありませんか」と、アキカワは譲らない。

「それは嘘です」

「嘘ではありません。事実、奥さんが書かれた契約書がここにあるのですから」と言って、アキカワが契約書のコピーを指さす。

「でも……」

ヤスコには契約などしていないはずだという思いが強いが、こうして証拠の契約書のコピーを持って来られ、自信ありげにそう言われると、その場でそれ以上、言い張ることができなかった。

もしかすると、本当に再契約に応じていて忘れているのかも知れないと考えたからだ。

ヤスコが更新しないと宣言した時、確かにアキカワはしつこいくらいに翻意を促していた。

アキカワの言うように『今まで長い間、新聞を取って頂いているので、いつもより余分に洗剤のケースをお渡しするから更新をお願いします』と言っていたのを、ヤスコが『今まで長い間、新聞を取って頂いているので、その感謝の印としてのサービス分です』と聞き違い、勘違いした可能性もある。

そして、現実に洗剤を受け取っている。

冷静に考えれば分かるが、勧誘に来た者が、『今まで長い間、新聞を取って頂いているので、いつもより余分に洗剤のケースをお渡しする』と言うことなど考えにくい。というか、この業界でそんな事などあり得ない。

それが言える立場の人間は、その販売店のトップか全権を任されている者だけや。そして、その人間でそんなことをする者は殆どいない。少なくともワシは聞いたこともないさかいな。

勧誘員にとって販売店にどれだけ利益があろうと、あまり関係のないことやと考えるのが普通や。

勧誘員は契約を上げることでしか利益を得られない仕組みになっている。拡材と呼ばれるサービスは契約を貰った客にしか与えてはいけない決まりがある。

従って、一勧誘員が契約も得られない客に対して、過去の実績により、そのお礼としてサービス品を渡すことなど、この業界では考えられないことやと言える。

しかし、世の中には、そうする業者も多いということで一般の人は、それに対して疑問を差し挟まないのが普通や。ヤスコもそうやった。

結局、その場はそれで納得した形になってしまった。

しかし、アキカワが帰った後、ヤスコはいくら考えても納得できなかった。

ヤスコは記憶力には自信がある。今まで人と交わした約束を忘れたことなど一度もないと言う。

『更新はお断りします。契約期間が終ったら、新聞はもう入れないで』と間違いなく言ったし、それにアキカワは「仕方ありませんね」と納得していたことをはっきり覚えている。

そして、『今まで長い間、新聞を取って頂いているので、その感謝の印としてのサービス分』と言っていたのも間違いない。

そうでなければ、あの時、洗剤など受け取らない。当然、その流れで契約書にサインすることもあり得ない。

今は、その時の状況を鮮明に思い出している。ヤスコの記憶に間違いはないと確信している。

それなら、なぜここに書いてもいない契約書のコピーがあるのか。それも筆跡を見る限り、自分のものに間違いなさそうな契約書が。

もしかすると、偽造されたのか。ヤスコの筆跡を真似て販売店の誰か、おそらくはアキカワが書いたのだろう。

嵌められたのか?

そう考えるとヤスコは段々、腹が立ってきた。

今回のことを認めてしまったら、これからもこういうことが続き、永遠に新聞を止めることができなくなる。

その危惧が強い。

ここは何としても認めるわけにはいかないとヤスコは考えた。

ただ、どうすればいいのか分からない。販売店に言っても無駄に思える。

ヤスコは、まず新聞社の苦情係に電話した。

しかし、新聞社の苦情係の担当者は「契約の事でしたら新聞販売店にお話ししてください」と言って話を聞こうともしない。

次に消費者センターに電話した。事情を話すと担当者と名乗る女性が丁寧に対応してくれて話を聞いて貰えることができた。

その後、「お話はよく分かりました。相手方の新聞販売店にも確認しますので」と言って一旦、その電話を切った。

しばらくして、消費者センターの担当者から「相手方の新聞販売店では、確かにあなたから契約を頂いていて、そのためのサービス品も渡しているので契約は成立していると言われています。そのあたりのところはどうなのですか」という返事が返ってきた。

「サービス品は、過去の契約分のお礼ということで貰った物です」

「契約書は?」

「コピーを持って来ました。私の筆跡に似ていますが、サインした覚えはありません。偽造されたのだと思います」

「偽造されたという証拠か根拠が何かありますか」

「それは、ありません。でも私はサインしていないのですから、それ以外には考えられません」

「お気持ちは分かりますが、それではこちらとしては相手方に強くは言えないのです」

消費者センターの担当者は押し問答になるだけでラチがあかんからやと言う。

消費者センターは行政機関やさかい、明らかな違法行為でもなければ行政指導などの対応はできない。

ヤスコの場合やと、契約書が偽造されたという証拠が必要になる。

それがなければ、契約書が存在し、その付加としてサービス品を貰っているという事実から見て「契約が成立している」と判断するしかないということや。

八方塞がりやった。ヤスコはそれでも何か方法はないかと根気よくネットを検索した。

そして、ワシらのサイトのQ&Aを見つけ、藁をも縋る思いで相談してきた。

ただ、その頃にはヤスコは、過去の契約書の控えと販売店が持ってきたコピーの筆跡が酷似しているという事実に気がつき、相談文に、そのことが触れられていた。

その時のワシの回答や。


回答者 ゲン


『過去の契約書の控えと販売店が持ってきたコピーの筆跡が酷似している』ということやが、それがどの程度なのかが分からんさかい何とも言えんな。

ただ、現時点では、その消費者センターの担当者の言うとおり証拠がなければ、その契約を拒否するのは難しいという外はない。

裏を返せば証拠があれば、あんたの正当性が証明されることにもなるということや。

あんたのケースに当て嵌まるか、どうかは分からんが、過去に似たような事案があった。

もっとも、あんたと同じく「非公開」を希望されているので詳しいことは言えんがな。

せやから、あくまでも仮定の話として聞いて欲しい。

『過去の契約書の控えと販売店が持ってきたコピーの筆跡』というのが、まったく同一の場合は、過去の契約書を偽造した可能性が高い。

それを見破る方法として、過去の契約書と今回届けられたという契約書のコピーを重ね合わせて見られたらええ。

一字一句どんぴしゃ重なるという場合は、偽造契約書と判断して、まず間違いないものと思う。

筆跡というのは個人を特定する上で重要な要素になるが、同じ人物が書いた同じ文面であっても、まったく同じ文字が書けることなどあり得ないとされている。

同じ人物の書いた同じ文字であっても「個人内変動」というのがあるのが普通やからや。

重ね合わせて透かして見ると、同じ文言を書いた文章でも、たいていの場合、違っている。

個人が字を書く場合、同一人が過去に執筆した一文字の場合であれば寸分違わぬ文字を書く可能性は僅かながらあるというが、氏名や住所など「文字列」として完成された文節の筆跡が、まったく同じ状態で執筆される可能性は極めて低いというのが、筆跡鑑定家の共通した認識になっとる。

この場合は「個人内変動」ではなく、透かし書きなどの偽造の可能性が高いと考えられるとして、実際の警察の捜査でも疑われることやという。

つまり、あんたのケースで、筆跡が似ているだけではなく、まったく同じ文字列になっいるというのであれば、その文字列が長くなれば長くなるほど、同一のものになるのは天文学的な確率が必要になるということや。

字には筆跡だけやなく、筆者のその時々の精神状態、置かれた状況により筆勢、筆圧の違いがその都度表れ、字の大きさも一定しないのが普通や。

さらに筆記用具による字の違いというのもある。

それらすべての状態が一致して同じ文面で同じ大きさの文字列が書けることなど、まずないと断じることができる。

つまり、名前の文字が、すべてまったく同じということはあり得んということや。

ワシが、『どんぴしゃ重なるという場合は、偽造契約書と判断して、まず間違いないものと思う』と言うのは、そのためや。

そのことを指摘して、その販売店に『頂いたコピーをこちらで調べたところ、過去の契約書を日付の部分だけを変えた偽造契約書と判明しました。そんなものは認められませんので、新聞の投函は速やかに止めてください』と言えばええ。

その販売店が、それで引き下がれば良し、そうではなく「偽造などしていない」と、あくまで言い張るのなら、「それでは、このことは警察に相談しますので」と言うて、本当に最寄りの警察署に相談に行かれたらええ。

そこまで言えば、「まずい」と考える販売店なら、「分かりました。もう契約は結構です」と言って、あっさりあきらめる場合も考えられる。

もちろん、あくまでも「偽造ではないので、どうぞ」と言うケースもあるが。

ちなみに、その時の会話は録音しておかれることを勧める。

警察署に相談に行かれる場合は、直接、刑事課に行くのやなく、まず「市民安全課」、「市民相談課」といった所に相談されることを勧める。

すべての警察署がそうやと言うわけやないが、一般的に刑事課という所は、なるべく事件を少なくしようとする傾向にあるため、取り立てて被害らしきものがない現状での相談事は、例えそれが刑法第159条の「文書偽造の罪」に該当するものであっても動かん場合が考えられる。

その点、「市民安全課」、「市民相談課」といった部署は市民へのサービスを目的として設置されているから、親身に話を聞いて貰える可能性が高い。

「市民安全課」、「市民相談課」の係官は、その警察署でも地位の高い警察官やベテランが配置されているケースが多いから、ワシが説明したようなことを言えば、すぐにそれと察知して、相手の販売店にそれとなく注意するはずや。

そこまで行けば、よほどの販売店でもない限り折れるものと思う。とはいえ、偽造契約書を平気で持って来るくらいやから、相当にタチが悪いということも考えられるがな。

それでも、引き下がらないようであれば、新聞社に警察へ相談したという事実を伝えることや。

警察も偽造の疑いがあると認めましたと。

それでもラチかあかんようなら、内容証明郵便で、「私はそちらと契約した覚えはなく、そちらから届けられた契約書のコピーは明らかに偽造されたものですから、新聞を投函されても支払いには一切応じられません」と書いた文書を送付するという手もある。

現時点では、あんたの方には具体的な被害が出ていないので裁判に持ち込むことはできんが、新聞代金を支払わないと通告することで、その販売店が新聞代金の請求するために裁判所に訴えるというケースが考えられる。

そうなれば、文書偽造を理由に戦える。

そして、『過去の契約書と今回届けられたという契約書のコピーを重ね合わせて、どんぴしゃ重なる』という場合は、偽造契約書として法廷の場で主張すれば、かなりの高確率で勝てるものと思う。

もっとも、今のところ、そこまでする販売店はないがな。そうかと言うて絶対ないとも保証はできんが。

参考までに、裁判で訴えられると何か大変なことのように一般の人は考えがちやが、このケースは民事裁判やから大したことはない。

それが心配なら、当サイトに『第113回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■民事裁判への考え方』というのがあるので、見ておかれたらええ。

物語風に分かりやすく説明しとるさかい参考になるものと思う。

まあ、そこまで考えなあかんケースは、あまりないとは思うが、例えそうなっても心配されることはないと言うとく。

この先、さらに問題が拗れるようなら、いつでも相談されたらええ。

ただ、どうされるかは、あくまでもあんた自身の判断で決めて欲しい。いくらでもアドバイスはするさかい。


その回答後、ヤスコはメールに『過去の契約書と今回届けられたという契約書のコピー』をそれぞれスキャンして映像化したものを添付資料として送ってきた。

ハカセがそれを調べたところ、まったく同一のものやと分かった。

何のことはない、その販売店が持ってきた『契約書のコピー』が動かぬ証拠になったわけや。

ワシの予測したとおり、『過去の契約書を日付の部分だけを変えた』ことが明らかやった。

そのことをヤスコに教えると、ワシが回答で説明したままのことを、その販売店に伝えたという。

すると、翌日から嘘のように新聞の投函が止まったとメールで知らせてきた。

ワシも確信があったわけやないが、そういう方法もあるのやないかと、薄々感じてはいた。

それにしても誰が考えて、どの程度まで広まっている手口なのかは定やかやないが、こういったやり方が深く潜行しとるのだけは確かなようや。

他にも非公開ながら同じような相談があるさかいな。

この方法やと、ワシらのように現物を対比して調べん限り、それが偽造契約書かどうかを見抜くのは難しいと言うしかない。

過去において、一般的な偽造契約書は、勧誘員が契約者になり代わって書いたというケースが大半を占めていた。

筆跡が違うという段階で、偽造契約書と断定できた。

それが今回は、本人の筆跡で表面的には違法性がないかのように装っていたわけや。

これやと新聞社の苦情係の対応や消費者センターの対応に限界が生じるのは無理もないと思う。

契約者も「勘違いでは」と言われれば、「そうかな」と引き下がる人もおられるやろう。それも狙いの一つやとは思う。

ワシが、『やり方自体は単純やが、それを「偽造契約書」と見抜くには、それなりの知識と経験が必要やから、仕掛けられた一般の購読者にとっては厄介やと思う』と言うた意味が、それや。

しかし、中にはヤスコのように納得のできない人がいる。そういう人たちが最後にワシらに頼って来られるわけや。

結果として、今回は上手くいった。

もっとも、その販売店でも発覚するリスクは最初から、ある程度知っていたはずで、バレたらさっさと手を引くというのも織り込み済みやったのかも知れんがな。

あるいは、徹底して拒否された場合にも比較的簡単に撤退するつもりやったのかも知れん。

そうすることで、この手の手口が発覚されにくくなるさかいな。

徹底して揉めれば、そのコピー元の提示を求められる。今回のケースは、そのコピー元の契約書に手を加えたのは間違いないはずやから、それを見せるわけにはいかないと考えたというのもあるやろうと思う。

契約者が要望していないのにコピーを持参してきたというのは、用意周到にその準備をしていたとも考えられるさかいな。

いずれにしても、その販売店が、あっさり折れたことで、その先の追及ができんようになったのは確かや。


と、こんなところや。

『相談して頂いたお客様は最後までうやむやにせず戦いますとおっしゃっています』ということなら、とことん力になってあげたらええ。

及ばずながら、ワシらも手を貸すさかい。

『昨年、従軍慰安婦問題でかなりの購読者を失ったと聞いていますが、こんな事やって余計に信頼を失っていることに早く気付いて欲しいものです』と言われる気持ちは、よく分かるが、こんなことを平気でするような人間に、そこまでの考えはない。

あるのは、自分の契約をいかにして増やすか、得になる方法を考えるか、それだけや。そんな連中は、A新聞の信用が落ちようが、どうしようが関係ないわけや。自分の損得、目先のことしか考えん。

ちょっと話が長くなりすぎたが、結論として、まずは契約書の元本を見せて貰うか、コピーを貰うことや。それで、たいていは判断できると思うしな。


白塚博士の有料メルマガ長編小説選集
月額 216円 登録当月無料 毎週土曜日発行 初回発行日 2012.12. 1

ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート 
2011.4.28 販売開始 販売価格350円
 

書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売中


ご感想・ご意見・質問・相談・知りたい事等はこちら から


Q&A 目次へ                                 ホーム