メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第355回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2015. 3.27


■新聞復活への試み……その2 マラソンドリルは効果がない?


ある常連の読者から、一通のメールが寄せられた。


ご無沙汰しております。

以前家庭教育プロデューサーの酒井氏の件でアドバイスをいただいた者です。

そこでその後の様子などをご報告させていただきます。

ハッキリ言って、新聞販売店が酒井さんと手を組むことで善い事はありませんでした。

講演会を開く事で、保護者の気を引く事には効果があったかもしれません。

また開催場所で未読の方から数件購読申し込みがあったと聞きましたが、その後、酒井さんが考案したマラソンドリルを売りに行った時点で終わってしまいました。

酒井さんと手を組んだ本社販売部担当者は、『新聞を薦めに行くとドアは開けてくれないが「ドリルの説明に来ました」と言えばドアは開けてくれる…』などと詐欺まがいのセールストークをやりなさいといまだに鼻息を荒くしております。

販売店主や、セールスマンが教材を売りに行く…その類のチラシを折り込む…
小中世帯にパンフをポスティングする…しょせん付け焼刃のトークが通用するはずもありません。

この担当者も、言いなりになる若い店主も、子育てをした経験がないですし、教育について何の知識もないのですから…突っ込まれても返す言葉がない…。

この担当者が何故このドリルに固執して、今でもなお売り続けようとしているのか理解に苦しみます。

実際の話各販売店の扱いドリル部数は県内合わせても100部にも達しておりません。強制的に買わされている販売店もあるようです。

またそれまで古紙回収などで学校関係者といい関係を築いてきたものが一気に崩れ去りました。

その担当者は教育委員会の後援・協賛という事で、チラシやパンフを学校に持っていき、生徒に配ってもらうという愚行を販売店にさせ続けてきました。

先生方にとってみれば「確かに新聞は良いとは思うけど、子供を利用してドリルを新聞社が売り出すとは何事だ!けしからん!」というところでしょうか。

またその担当者は「学校だけの勉強では学力が身に付きません」なんて事を「応酬話法でやれ!」って言うのですから、私が先生なら対応するのも嫌になります。

100部に満たないドリルを販売するために、教育現場という聖域を荒し、多くの教師を敵に回してしまった…という事実に良識ある販売店主が早く気が付かないと今後も益々新聞は減り続けると思います。

それから一般読者の腹の中は「新聞屋も教材を売らなアカンぐらい、新聞が減っとるンやなー」です。

取り急ぎ報告させていただきました。


と。

これは、1年前の2014年3月14日のメルマガ『第301回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞復活への試み……その1 マラソンドリルとシニアサポートについて』(注1.巻末参考ページ参照)の中で、同じ読者から寄せられた、


いつもお世話になります。

ゲンさん、ハカセさんは酒井勇介さんをご存知ですよね?

学研の社員だった方で、現在は退職して家庭教育アドバイザーとして新聞業界での講演会などをされているのですが、今期も引き続き講演会を企画しているようです。

昨年は県内で数か所やりました。

初回は無料という事もあって珍しさから会場も埋まったのですが、次第に参加者も減っていきました。

そこで従業員が読者宅を回り参加者を募ることになったのですが、認知度の低さも手伝ってか、結局当日のキャンセルが相次ぎ、結果はサクラというか、関係者が目立つような状態でした。

まあイベントは新聞自体の価値を上げるためには必要な事業かも知れませんが、問題は酒井さんが開発したマラソンドリルというものを販売(980円)することになった事です。

「新聞以外に売れる商品が増えて、戦力がアップする」と言われますが、はたしてこの先、酒井さん&ドリルとコラボしてやっていっていいのか?


という問いかけに、


酒井氏の言われる趣旨は、新聞で子供の学力を上げようということのようや。

子供を持つ親に、その教育の重要性を説くことで、その親はもちろん、子供も将来の新聞読者にしようと。

狙いは悪くないと思う。

中略。

『酒井さんが開発したマラソンドリル』とは、そのコンセプトに沿って作られた小中学生用の問題集のことを言うておられるのやと思う。

内容を確認したが、それだけやと学校や学習塾でありがちな国語や算数、社会、理科の問題ドリルとあまり変わらんようにしか見えんかった。

ただ、新聞を利用する教育法という点で、今の時代では斬新と言えるかも知れん。


と答えたものや。

その方法もアリやと。

ただ、この読者のメールから、問題もそれなりにあるのやなというのがよく伝わってくる。

『ハッキリ言って、新聞販売店が酒井さんと手を組むことで善い事はありませんでした』というのは、実際、それによって新聞購読者が期待していたほど増えていないからやろうと思う。

どこに問題があるのか。

ワシらは酒井氏のことを取り上げる際、いろいろと調べさせて貰った。

以前のメルマガでは紹介せんかったが、『家庭教育プロデューサー・酒井勇介さんがラジオで新聞の魅力を熱弁』(注2.巻末参考ページ参照)というのも参考にさせて貰った。

それを見ると、「なるほど」と思えることも多かった。

幼児教育に新聞を絡ませるという発想自体は悪くない。新聞を読む習慣をつければ子供の学力が向上するのは、PISA(学習到達度調査)でも実証されとるしな。

しかし、この読者が言うておられることでも分かるように現場から、『酒井さんと手を組んだ本社販売部担当者は、『新聞を薦めに行くとドアは開けてくれないが「ドリルの説明に来ました」と言えばドアは開けてくれる…』などと詐欺まがいのセールストークをやりなさいといまだに鼻息を荒くしております』と手厳しい批判が上がっているという。

この読者の方は酒井氏の『マラソンドリル』に問題ありと考えておられるようやが、ワシは少し違うと思う。

問題は、もっと根本的なところにあるという気がする。

ワシは、以前から新聞社には新聞読者を開拓するための営業力はないと言い続けてきた。経験と実績が殆ど何もないと。

まあ、それも無理もない話で、今まで新聞勧誘に関しては新聞拡張団や新聞販売店に丸投げしてきたさかい、それについてのノウハウなど何もなくて当然ではあるがな。

ノウハウらしきものを掲げている新聞社もあるようやが、所詮は営業の素人が頭で考えたものにすぎん。説得力に欠ける。そういうのが多い。

どんなに良い物でも売り方を誤ったら売れん。営業とはそういうもんや。

ワシにも経験があるが、新聞社の言うとおりにして顧客が増えたとか、契約の獲得数が伸びたケースは今まで皆無に近かかった。

顧客は自分自身の営業力で増やすしかない。それが新聞勧誘の鉄則やと思うとる。

本社販売部担当者自身、『新聞を薦めに行くとドアは開けてくれない』と言うとるところを見ると、新聞勧誘が簡単やないことくらいは分かっているようや。

もっとも、新聞社の人間が、そう言うのはどうかとは思うがな。いくら、それが現実やとしてもな。

なぜ新聞勧誘が難しいのか。簡単にドアを開けてくれないのか。

答は至ってシンプル。多くの人に嫌われているからや。

ワシは日頃から、新聞営業の成功率として100軒以上の家を叩いた(訪問)場合、ドアを開けて話を聞いてくれるのが1割ほどで、そのうち成約にまで持って行けるのは、ええとこ1、2軒程度やと言うとる。

実は、その確率は新聞営業に限らず、すべての訪問販売に、ほぼ共通して言えることなんや。

『ドリルの説明に来ました』というのは、教材の訪問販売ということになるが、これがすこぶる評判が悪い。その評判の悪さは新聞以上かも知れん。

時折、サイトに教材の訪問販売をしているという人からメールが寄せられることがあるが、その人の話では、毎日百本以上の電話をかけてアポを取り、土日に現地へ赴き、1日中アポ先に勧誘して1本の契約が取れたら御の字やという。

何せ一般的な教材の売り込み価格は数十万円ということで営業報償金もそれなりに貰えるから、それでも十分稼ぎにはなるとのことやった。

教材の訪問販売の評判が悪いという証拠に、『学習教材の訪問販売事業者に対する業務停止命令』(注3.巻末参考ページ参照)というページがあるさかい、それを見ればよく分かるやろうと思う。

それに騙された経験のある人たち、あるいはその悪評をよく知っている人たちは「教材販売」と聞くだけ、察知するだけで拒否反応を起こすのが普通やという。

売り込む『マラソンドリル』は980円とのことやから、他の教材販売に比べれば安いのやが、それは話を聞いてみないと分からんことや。

その話をする前にシャットアウトされていたんでは、どうしようもないわな。

その本社販売部担当者とやらは、『「ドリルの説明に来ました」と言えばドアは開けてくれる』てなことを言うとるところからすると、そんな評判の悪い教材の訪問販売より、新聞勧誘の方がさらに数段下やと自ら認めていることになる。

新聞を作っている側の人間がそれでは救いがない。プライドの欠片もないのかと思う。

新聞勧誘を生涯の仕事、生業と考え長年続けてきたワシにとって、これほど残念で情けない話はない。

そもそも、プロの教材販売員ですら売るのに困難な代物を畑違いの『販売店主や、セールス(拡張員)』が売り込もうとしても売れるわけがないわな。

「そのくらいのことは分からんかい」と言いたい。

どんな世界の営業も、それほど簡単なものやない。その道には、その道なりのやり方、ノウハウというものがあるさかいな。

この読者が『しょせん付け焼刃のトークが通用するはずもありません』と言われるとおりや。

それに、『「ドリルの説明に来ました」と言えばドアは開けてくれる』というのが、新聞の購読契約をするためということであれば、2009年12月1日に施行された『特定商取引に関する法律』改正法に抵触する可能性が高い違法行為になる。

『特定商取引に関する法律』の改正法の第3条ノ2第1項「勧誘の意志の確認」で、


販売事業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手側に対し、勧誘を受ける意志があることを確認するよう努めなければならない。


と規定された。

これにより、これからは、「新聞の勧誘をさせて頂きますけど、よろしいでしょうか」と確認してからでないと勧誘したらあかんということになったわけや。

この「勧誘の意志の確認」の中には身元を明らかにするということも含まれる。

『ドリルの説明に来ました』というのは、新聞勧誘とは明らかに違う。

関係のない偽りの言葉で客を呼び出し、最終的に新聞の勧誘をすれば、この法律に触れる。

また、『マラソンドリル』を売り込むのが目的で新聞勧誘はしないということであっても、『販売店主や、セールス(拡張員)』は新聞社と『新聞本紙』を売ることを条件に業務委託契約を交わしているわけやから、新聞関連以外の商品を売るのは問題が大きいと思う。

当たり前やが、新聞販売店は教材販売業者とは違うさかいな。

そのことが何らかの法律に触れるかどうかは、その詳しい状況次第で違うてくるので何とも言えん部分もあるが、顧客から不信感を持たれるケースならありそうや。

『それまで古紙回収などで学校関係者といい関係を築いてきたものが一気に崩れ去りました』というのは、その典型的なことやと思う。

また『その担当者は教育委員会の後援・協賛という事で、チラシやパンフを学校に持っていき、生徒に配ってもらうという愚行を販売店にさせ続けてきました』についても信用を失墜させる大きな要因になるとワシも考える。

この読者の方が『先生方にとってみれば「確かに新聞は良いとは思うけど、子供を利用してドリルを新聞社が売り出すとは何事だ!けしからん!」というところでしょうか』と危惧するのも的を射ていると思う。

実際、そう考えている学校関係者、教師は多いはずや。

もっとも、『教育委員会の後援・協賛』というのが本当なら、新聞社に取り込まれているものと考えなあかんさかい、学校関係者や教師たちも表立って反旗を翻すことはできんやろうがな。

ただ、それでありながら『実際の話各販売店の扱いドリル部数は県内合わせても100部にも達しておりません』というのでは、この話を聞いてから1年が経過していることを思えば、殆ど成果が上がっていないものと考えられる。

そんなものを売れと言われて、その気になどなれるわけがないわな。

さらに、『強制的に買わされている販売店もあるようです』というのが本当やとしたら、「押し紙」ならぬ「押し教材」ということになるが、とんでもない話や。

こんなことをいつまでも続けとると、いくらその地域で最大のシェアを誇っている新聞とはいえ、このままでは信用をなくして、そのうち大勢の読者からも、そっぽを向かれる日が来るのやないかと思う。

『100部に満たないドリルを販売するために、教育現場という聖域を荒し、多くの教師を敵に回してしまった…という事実に良識ある販売店主が早く気が付かないと今後も益々新聞は減り続けると思います』と言われているとおりになるのは、ほぼ間違いないという気がする。

ただ、この現状をどうにかしたくても、その本社販売部担当者とやらが、前のめりになっている状態ではヘタなアクションは起こさん方がええやろうな。

一般的に実績の上がっていない方法に固執する場合、そこには何らかの裏事情というのがあるのが普通や。

単に本社販売部担当者とやらの面子とか立場だけやなく、そうせなあかんわけがあるのやとしたら、「ヤブをつついて蛇を出す」ということにもなりかねんさかいな。

そこに公にできんような裏取引でも絡んでいた場合、新聞にとってさらに信用をなくす大事件に発展する可能性も考えられるしな。考えすぎかも知れんが。

いずれにしても、そんな人間に意見するとロクなことがない。

第一、聞く耳など持ってないやろうからな。こういう輩は、黙って無視することが最良の方法やと思う。ワシなら、そうする。

昔から効果のないやり方をいくら新聞社の上層部の人間が指示していも現場の人間は、そんなものは無視していたもんや。

もっとも、あからさまに「そんなことができるか」とは言わんがな。適当に「分かりました。頑張ります」てなことを言うといて実際には何もせんことの方が多かった。

俗に言う「面従腹背」というやつや。上辺だけ従う振りをして、実際には従わんようにすることや。

それが結果として、勧誘員自身を守ることにつながる。嫌なこと、明らかにマイナスになると思えることはバカ正直に従う必要はない。

実際、そう考えとる人はワシらの他にも多いやろうと思う。

その意味で「笛吹けど踊らず」ということになっとるのやないかな。

今回、そのやり方が上手く行かんかったのは、まさにそこのところに問題があったと考えるしかない。

勧誘は、やる者が効果の上がる方法やと信じてやらな成功はおぼつかんもんや。そうでない限り失敗する確率が高い。

いくら上の者が「このやり方は最高や」と考えていても、現場の人間が、そう思えんようなものでは糞の役にも立たん。意味がない。

一般的に新しい勧誘方法をやらせようとする場合、勧誘員に成功体験を味わって貰えるように教え、指導するところから始めなあかん。

それでないと勧誘員自身のやる気が湧かんさかいな。

やる気のない勧誘方法を、ただ命令されたからというだけでやっていて成功なんかするわけがないわな。

はっきり言うて、本社販売部担当者がええという勧誘方法なんか、大半の勧誘員は信用してへんと思う。

なぜなら、事、勧誘に関しては素人やからや。

本社販売部担当者とやらが、実際にその方法で月に100本の契約でもあげたというのなら、「そら凄い方法やな」ということになって素直に従えるかも知れんが、そんなことはまずあり得んわな。

できもせんことをできると言うのは「机上の空論」にすぎんことや。

特にワシらのようにプロを自認する人間の場合、そんなアホな素人の指示どおりには動くことなど100%ないと断言する。

もっとも、表向きの処世術として、例えそうであっても「面従腹背」に徹しとくがな。

結論として、今回の件に関して言えば、酒井氏の推奨する『マラソンドリル』に問題があるというより、それを盲信した新聞社、および本社販売部担当者の責任の方が大やと考える。

事、ここに至っては遅きに逸した感は否めんが、もっとやり方を考えるべきやったと思う。

例えば『講演会を開く事で、保護者の気を引く事には効果があったかもしれません』ということがあるのなら、まずは当面の間、講演会を開くことだけに徹するのも一つの方法やった。

『開催場所で未読の方から数件購読申し込みがあったと聞きました』ということなら、その場では食いつく人もいたわけや。

それなら、そういったことに興味のある人だけを少しずつでもええから増やす努力から始めるべきやった。

それに興味があるのかないのか分からない他の多くの人たちに『マラソンドリル』を売り込んだり、それを無理やり新聞勧誘につなげたりするから、結果として、こういうことになったのやと思う。

まずは、ええと思えるものは根付くまで地道に育てることや。本当にええもんなら根付いて育てば勝手に実になるもんやが、そこまで待つ余裕がなかったんやろうな。

いずれにしても「急いては事をし損じる」という見本のような話やったと思う。



参考ページ

注1.第301回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞復活への試み……その1 マラソンドリルとシニアサポートについて
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-301.html

注2.家庭教育プロデューサー・酒井勇介さんがラジオで新聞の魅力を熱弁
https://www.youtube.com/watch?v=Sb7arpvqKk4

注3.特定商取引法に違反した学習用教材の訪問販売業者に業務停止命令(2か月)
http://www.pref.kagawa.lg.jp/kurashi/kurashi/syobun/20090326.htm

学習教材の訪問販売事業者に対する業務停止命令(3ヶ月間)について
https://www.pref.chiba.lg.jp/kenmin/press/2010/h23-g-kyouzai-teishi.html


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