メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第357回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2015. 4.10


■ゲンさんとハカセの時事放談……その3 圧力についての話


ある読者から、


ゲンさん、ハカセさん、いつもお二人のメルマガを楽しく拝見しています。とてもおもしろく、勉強になります。

ところで、もうすでにご存知のこととは思いますがネットで、

▼<テレ朝>古賀氏降板問題 「圧力」か「暴走」か
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150406-00000005-mai-soci

というのを見つけたのですが、このことについてお二人の見解をお聞かせ願えませんか。

宜しくお願いします。


というメールが寄せられた。

以前から、その時々で世間を賑わせている話題について意見や感想を求められるケースが多かった。

中には新聞業界とはあまり関係のない話題もあるが、読者からの要望であれば断るわけにもいかん。

メルマガやサイトでは読者の要望や質問を重視しとるさかいな。

それに、新聞記事になったものは広義の意味での新聞の業界話になるという考え方も成立するしな。

それもあり、1年前の2014年2月21日、『ゲンさんとハカセの時事放談』
(注1.巻末参考ページ参照)と銘打って話すことにしたわけや。

今回が、その第二弾ということになる。

『<テレ朝>古賀氏降板問題 「圧力」か「暴走」か』というのは、


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150406-00000005-mai-soci より引用


<テレ朝>古賀氏降板問題 「圧力」か「暴走」か 


. 放送現場で報道の自由は守られていたのか。コメンテーターの暴走だったのか−−。テレビ朝日の「報道ステーション」で、元経済産業官僚の古賀茂明氏が生放送中に突然、自身の降板をめぐる政権からの圧力を訴え、物議をかもしている。

 古賀氏、テレビ朝日、首相官邸それぞれの言い分は真っ向から対立している。

 ◇古賀氏「官邸から批判」

 3月27日の番組に出演した古賀氏は、古舘伊知郎キャスターから中東情勢へのコメントを求められた際に、テレビ朝日の早河洋会長らの意向で降板に至ったと発言し、「菅(義偉)官房長官をはじめ官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきた」と語った。

 古賀氏は1月23日の番組では、イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)の日本人人質事件の政権の対応を批判し、「I am not ABE」と述べていた。

 古賀氏は4月1日、毎日新聞の取材に約10分間応じた。「圧力」の内容について、菅官房長官が報道機関の記者らを相手に古賀氏らの番組での言動を批判していた、と主張したうえで「官邸の秘書官からテレビ朝日の幹部にメールが来たことがある」と語った。

 また、昨年末の衆院選前、自民党が在京テレビ局各社に「公平中立」を求めた文書を配布したことについて「(テレビ朝日は)『圧力を受けていない』と言うけれど、局内にメールで回し周知徹底させていた」と批判した。

 古賀氏はテレビ朝日が3月末に番組担当のチーフプロデューサーとコメンテーターの恵村(えむら)順一郎・朝日新聞論説委員を交代させたことにも言及した。

「月に1度の(ペースで出演していた)ぼくの降板はたいしたことがないが、屋台骨を替えた。プロデューサーを狙い撃ちにし、恵村さんを更迭した」と語った。

 一連の人事をめぐる古舘キャスターの対応については「前の回(3月6日)の出演前に、菓子折りを持ってきて平謝りだった」と述べた。

 生放送中に、持論を展開した行動に批判が出ていることについては「ニュース番組でコメンテーターが何を言うかはある意味、自由だ。

 テレビ朝日の立場では『降板』ではないので、あいさつの時間も与えられなかった。だからどこかで言わなければならなかった。

 権力の圧力と懐柔が続き、報道各社のトップが政権にすり寄ると、現場は自粛せざるを得なくなる。それが続くと、重大な問題があるのにそれを認識する能力すら失ってしまう。

『あなたたち変わっちゃったじゃないですか』というのが一番言いたかった」と語った。

 古賀氏は1日、市民団体のインターネット配信番組に出演し、「安倍政権のやり方は上からマスコミを押さえ込むこと。情報公開を徹底的に進め、報道の自由を回復することが必要だ」と述べた。

 報道ステーションでの発言に対する反応についても触れ「多くの方から大丈夫かと聞かれるが、批判は予想より少ない」と語った。

 ◇テレ朝と政権「事実無根」

 テレビ朝日広報部は、古賀氏の言う「圧力」について「ご指摘のような事実はない」と否定した。同社の早河会長も3月31日の記者会見で「圧力めいたものは一切なかった」と話した。

 広報部は毎日新聞の取材に対し、恵村氏の交代については「春の編成期に伴う定期的なものだ」と説明した。さらに、プロデューサーを「狙い撃ち」にしたとの主張についても「ご指摘は当たらないと考える」とした。

 その一方で、衆院選前の自民党の文書については「報道局の関係者に周知した」と認め、「日ごろから公平・公正な報道に努めており、特定の個人や団体からのご意見に番組内容が左右されることはない」と回答した。

 菅官房長官は3月30日の記者会見で古賀氏の発言について「事実無根。事実にまったく反するコメントを公共の電波を使った報道をして、極めて不適切だ。放送法という法律があるので、テレビ局がどのような対応をされるか、しばらく見守っていきたい」と全面的に否定した。

放送法4条は「報道は事実をまげないですること」と規定している。


のことで、古賀氏と古舘キャスターとの詳細なやり取りもネット上にあったので、それも一緒に知らせておく。


http://mainichi.jp/select/news/20150328k0000e040223000c.html より引用

報道ステーション:古舘キャスターと古賀氏のやりとりは…


 テレビ朝日の27日夜のニュース番組「報道ステーション」で、古舘伊知郎キャスターと、コメンテーターを務めた元経済産業省官僚の古賀茂明氏とが激しく応酬するハプニングがあった。古舘キャスターとコメンテーターの古賀氏とのやりとりは次の通り。

(22時16分ごろ)

古賀氏 ……今日が最後ということで、テレビ朝日の早河会長とか古舘プロダクションの佐藤会長のご意向ということで私は今日が最後なんですけど、これまで非常に多くの方から激励を受けまして、

一方で菅官房長官はじめ官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきましたけれども、それを上回るみなさんの応援のおかげで非常に楽しくやらせていただいたということで、お礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

古舘氏 古賀さんちょっと待ってください。今のお話は私としては承服できません。古賀さんが金曜日に時折出てくださって、大変私も勉強させていただいている流れの中で、番組が4月から様相が変わっていく中でも、古賀さんに機会があれば、企画が合うなら出ていただきたいと、相変わらず思っていますし。

古賀氏 それは本当にありがたいことです。もし本当であれば、本当にありがたいこと。

古舘氏 古賀さんがこれで、すべて、なにかテレビ側から降ろされるということは、ちょっと古賀さん、それは違うと思うんですよ。

古賀氏 いや、でも古舘さん言われましたよね。私がこういうふうになることについて「自分はなにもできなかった、本当に申し訳ない」と。

古舘氏 はい、もちろん、それは。この前お話ししたのは、楽屋で。古賀さんにいろいろ教えていただいている中で、古賀さんの思うような意向に沿って流れができてないのであるとしたら大変申し訳ないと、思ってる今でも。それは極端過ぎる。

古賀氏 (さえぎって)いや私全部録音させていただきましたので、もしそういうふうにいわれるんだったら全部出させていただきますけれども。

古舘氏 いやこちらもそりゃ出させていただくことになっちゃいます古賀さん。

古賀氏 いやいいですよ。

古舘氏 だから、それはおいて、私は違うと思ってますが、ではイエメンのお話に戻っていただけますか。

(22時32分ごろ)

.古賀氏 ……今日もですね、さっきああいうやりとりがありましたけれども、やっぱり、我々は批判されたから言っちゃいけないというふうになっちゃいけないので、そういう意味ではですね、テレビ朝日では作っていただくのは非常に申し訳ないと思ったから自分で作ってきました。

(フリップを示す)「アイ アム ノット アベ(I am not ABE)」というのをですね。でこれは、単なる安倍批判じゃないです。日本人がどういう生き方をしようかということを、考えるうえでの一つの材料にしていただきたい、一つの考え方を申し上げたと。

それはもちろん批判していただいてもいいですし、そういうことをみんなで議論していただきたいなと思ってましたんで、まあこれはもちろん、官邸の方からまたいろんな批判が来るかもしれませんけれども、

あんまり陰で言わないでほしいなと思っているので、ぜひ直接ですね、菅官房長官でも、ごらんになっていると思いますから、私のところにどんどん文句言ってきていただきたいと思います。

古舘氏 あの、古賀さんのいろんなお考えは共鳴する部分も多々あるんですが、一方で、はっきり申し上げておきたいなという一点はですね、マスコミの至らなさ、ふがいなさももちろん認めるところはありますが、

例えば私が担当させていただいているこの番組でいえば、数日前に川内原発に関する地震動に対する不安の指摘、あるいは、3.11には核のゴミがまったく行き場がない問題、

あと沖縄の辺野古の問題ですね、こういうところも、北部でのアメリカの海兵隊の思惑があると、批判すべきところはやらせていただいているんです。

古賀氏 すばらしいですね。それ私も昨日ツイートしたんですよ。こんな立派なビデオを作ってますよと。(テレビ朝日の)サイトに行って特集のところをクリックしてくださいと。

並んでますよ、ぜひ見てくださいとツイートしたんです。すごく反響もありました。で、あれを作っていたプロデューサーが今度更迭されるというのも事実です。

古舘氏 更迭ではないと思いますよ。私は人事のことは分かりませんが。

古賀氏 (さえぎる)いや人事のことを……

古舘氏 (さえぎる)人事異動、更迭、やめましょう古賀さん。これ、見てる方よく分からなくなってくるんで。

古賀氏 やめましょう。僕はそんなこと言いたくないので。(用意されたフリップを示して)いま安倍政権の中でどんな動きが進んでいるのかなと……。

古舘氏 ちょっと、ごめんなさい、時間が……

古賀氏 だからそういうこと言わないでほしかったんですよ。では最後にぜひこれを古舘さんにお贈りしたいんですけど(ガンジーの言葉を引用したフリップを示して読み上げ)

つまり、圧力とか自粛に慣れていって、何もしない、独りでやったってしょうがない、たたかれるだけだ、ということでやっていないと、知らないうちに自分が変わってしまって、本当に大きな問題が起きているのに気がつかないってことがあるんですよと。

私も今すごく自分に言い聞かせて生きているんですけど、ぜひこれはみんなが考えていただきたいと思っています。

いろいろね、申し訳ない、口論みたいになっちゃって申し訳ないけれども、私が言いたかったのは、言いたいことはそのまま言おうと。

自然に言って、もちろん違う意見の方は違う意見を言っていただいていいし、古舘さんだって私の考えがおかしいと思えばどんどんおかしいと言っていただいて、まったく何の問題もないんですけれども、

なにか言ったことについて裏でいろいろ圧力をかけたり、官邸から電話をかけてなんだかんだと言ったりとか、そういうことはやめていただきたいと、そういうふうに思っただけです。

古舘氏 ……はい。それではいったんコマーシャルを挟みます。


これが、そのやり取りのすべてや。

これについてのワシらの印象は、古賀氏が捨て身でテレビ局内の内輪話を視聴者に曝露したんやなということや。

その事の是非について言及する前に、このやり取りから見えてくる事実関係に迫ってみようと思う。

まず、『自身の降板をめぐり政権からの圧力』があったとする古賀氏の主張と『そんなことはない。事実無根』とするテレビ局、および政府の言い分についてからや。

古賀氏が、『菅官房長官が報道機関の記者らを相手に古賀氏らの番組での言動を批判していた』と言っているのは、間違いなさそうや。

この記事を書いたのは新聞記者やさかい、その古賀氏の主張が間違っていれば、そもそもこの記事自体が存在しない。事実かどうかは仲間の記者に聞けばすぐ分かることやさかいな。

事実だからこそ記事にしたと考えた方が自然やろうと思う。

古賀氏は政府からの圧力の証拠として『官邸の秘書官からテレビ朝日の幹部にメールが来たことがある』と語っている。

それについては『昨年末の衆院選前、自民党が在京テレビ局各社に「公平中立」を求めた文書を配布した』というのは公言しとるさかい、これも事実や。

それらの事実から導き出される答は、その事自体が政府から『圧力があった』何よりの証拠と言えるということや。

これは、当時、原発の再稼働問題や沖縄基地移設問題など政府に対して批判的な論調の放送が多かったため、それを選挙の争点にされては困る政府が、そう求めたもので圧力以外の何ものでもないと考える。

暗に、「そんな論調は控えろ」と言うてるに等しいさかいな。

ただ、それを圧力と感じるか、どうかは受け手の問題ということもあり、テレビ局が、『圧力とは思っていなかった』と言えば、圧力ではなかったということになるのかも知れん。

しかし、そうコメントしながら、『衆院選前の自民党の文書については「報道局の関係者に周知した」と認め、「日ごろから公平・公正な報道に努めており、特定の個人や団体からのご意見に番組内容が左右されることはない」と回答した』にもかかわらず、

『局内にメールで回し周知徹底させていた』というのは、報道機関としては大いに問題があると言わざるを得ない。

そもそも報道機関というのは時の政府の監視役を自負していたはずや。本来なら、政府のそうした申し入れに対しては反発せなあかん立場やないかと考える。

少なくとも報道を自重しろと言うに等しい申し入れを、そのまま受け容れるべきやなかった。

それからすれば、『局内にメールで回し周知徹底させていた』というのは報道機関として政府からの圧力に屈した何よりの証拠になるのやないかと考える。

圧力と感じていなければ、そこまでするはずがないさかいな。

また、政府から、その申し入れがあった後に、『3月末に番組担当のチーフプロデューサーとコメンテーターの恵村(えむら)順一郎・朝日新聞論説委員を交代させた』というのも、その圧力があった故と考えれば納得がいく。

その部分のやりとりについては、古館氏が政府からの圧力がなかった証拠として、

『例えば私が担当させていただいているこの番組でいえば、数日前に川内原発に関する地震動に対する不安の指摘、あるいは、3.11には核のゴミがまったく行き場がない問題、

あと沖縄の辺野古の問題ですね、こういうところも、北部でのアメリカの海兵隊の思惑があると、批判すべきところはやらせていただいているんです』と言うている。

しかし、古賀氏は、『すばらしいですね。それ私も昨日ツイートしたんですよ。こんな立派なビデオを作ってますよと。(テレビ朝日の)サイトに行って特集のところをクリックしてくださいと。

並んでますよ、ぜひ見てくださいとツイートしたんです。すごく反響もありました。で、あれを作っていたプロデューサーが今度更迭されるというのも事実です』と曝露している。

つまり、古館氏が自慢げに言った報道の制作者が降板させられた事実があると言うてるわけや。

それを古館氏やテレビ局は圧力ではないと言う。単なる春の番組編成の一環による交代にすぎないと。

ワシらは、それらの報道の功績が評価されて、そのプロデューサーが昇格でもしているのなら、なるほどと思わんでもないが、実体は昇格どころか更迭に近いものやったということが分かっている。

そして、『菅官房長官は3月30日の記者会見で古賀氏の発言について「事実無根。事実にまったく反するコメントを公共の電波を使った報道をして、極めて不適切だ。放送法という法律があるので、テレビ局がどのような対応をされるか、しばらく見守っていきたい」と全面的に否定した』と発言したこと自体も、圧力を行ったと自ら認めとるのに等しいことやないかと思う。

特に最後の方に『テレビ局がどのような対応をされるか、しばらく見守っていきたい』と発言した意味は誰にでも分かる。歴然としすぎているさかいな。

『テレビ局の対応次第でどういうことになるか、覚悟しておけよ』というのが、あからさまや。これほど分かりやすい脅しもない。

『放送法という法律がある』と言っている菅官房長官自身、その放送法第3条に、

『放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない』

とあるのを知っているのやろうかと思う。

知らないで言うてるのやとしたら、やったらあかんことをした単なる無知な人間ということになるが、知って言うてるのやとしたら、圧力をかけていることが明白になる。

放送法は総務省の管轄ということになっている。

つまり、その法律の管轄者の上位者である菅官房長官が『テレビ局がどのような対応をされるか、しばらく見守っていきたい』と言うてるわけや。

ワシが『これほど分かりやすい脅しもない』と言う所以や。これが圧力でなければ何やと言うのか。議論の余地すらないくらい明白なことやと思う。

そして、政府の圧力に屈し、または政府に協力して古賀氏の排除を決めたというのはテレビ局としては、あってはならん大問題や。

古賀氏が『権力の圧力と懐柔が続き、報道各社のトップが政権にすり寄ると、現場は自粛せざるを得なくなる。それが続くと、重大な問題があるのにそれを認識する能力すら失ってしまう』と言われておられるとおりになりかねんと、ワシも思う。

日本は、かなり危険な方向に進もうとしていると。

今から80年前、太平洋戦争に突き進んだ頃の日本の状況と、現在が非常に酷似している。

ハカセは現在、ある小説を執筆中で、その資料として昭和初期の文献を調べ、その当時をよく知る方からの聞き取り調査などをしている最中とのことやが、その過程で分かったことがあったという。

戦時中、『大本営発表』と題した嘘で固められた大誤報新聞記事が大量に出回っていた事はつとに有名やが、実はそれは戦時中だけの事やなく、それ以前からあった。

その中の一つに、


大阪朝日新聞 昭和12年12月11日発行夕刊 より引用

上海特電10日発 南京遂に陥落す


 南京城の敵は投降勧告に応ずる色なく十日朝来猛烈な抵抗を続け、午後には遂に巨砲を打ち出して来たので、我が方遂に武力を行使するに決し、午後一時一斉に総攻撃の火蓋を切った。

 わが軍の二回に渡る猛爆撃と相呼応し、砲兵隊は全力をあげて城内向けて砲撃を浴びせ全線一斉に進撃を開始、同夕刻早くも各城内を占領し目下城内を掃討中である。


という新聞の報道記事があるのが、それや。

この時点での報道は政府が意図して流した誤報やった。この時には、まだ首都南京は陥落してなかったのである。

軍部には、遠からず首都南京を陥落させられるという目算があったのやろうが、まだ不透明な段階で、この記事を流すよう新聞社に指示したという。

その年の7月7日『支那事変(日中戦争)』が勃発した後、日本軍は上海や河北の戦闘で苦戦を強いられ続けてきた。

それもあり、この『快報』により国内は一気に戦勝気分に包まれたのである。

日本全国各地で提灯行列が起き、「勝った、勝った、万歳、万歳」の叫びと軍歌がそこら中に響き渡った。

何しろ、日本が単独で敵国の首都を占領したことなど今までなかったからや。

明治の頃、日清戦争と日露戦争に勝ったという名目上の出来事はあるが、それは部分的な戦闘に勝利した後、それぞれの相手国の国内事情もあり講和交渉が有利に運んだ結果にすぎんかった。

そこへ行くと、敵国の首都が陥落させたというニュースは完全勝利を意味する画期的な出来事やったと言える。

しかし、実際には、この報道が日本で為されていた時、日本軍は依然として激しい抵抗を続ける中国軍に苦戦していたのである。

結果として、その3日後の昭和12年12月13日に首都南京をほぼ制圧したため、この時の報道は、後年になっても、それほど問題視されることはなかった。

ただ、この時、日本政府、および軍部は、この新聞報道で国内の世論を簡単に操作することができるという確信を持ったのは間違いないものと思われる。

それも予想以上の効果があったと。それが、その後の『大本営発表』の新聞記事に繋がっていったのは容易に想像できる。

多かれ少なかれ、報道機関を牛耳りたいという思いは日本に限らずどの国の政府も持っている。それによって国民世論を操作できるさかいな。

せやから、古賀氏の言われるように『安倍政権のやり方は上からマスコミを押さえ込むこと』というのは、ある意味、為政者としては当然の考えだとも言える。

しかし、今の時代にその考えは頂けない。一国民として絶対させてはいかんことやとワシは思う。

太平洋戦争に突入するまでの当時の危険な日本政府の考えそのものやさかいな。

日本は、太平洋戦争の敗戦で戦争の愚かさを学んだ。

現在の平和憲法のもと、二度と戦争の起きない国に生まれ変わるという世界でも類を見ない平和国家になった。

今までの自民党政府は、その平和憲法の象徴でもある憲法9条を変えるようなことに誰も着手しようとすらしなかったが、現安倍政権は、それを執拗にしようとしている。

歴史は繰り返されると言うが、それはいつの時代も過去の歴史を知らない者が増えた時に、そうなっているという事実がある。

太平洋戦争を経験したことのある自民党政府の歴代の総理大臣すべてが戦争を絶対に引き起こしてはいけないということを念頭においていたため現日本国憲法を変えるような愚は考えつきもしなかった。

当然のことながら、自衛隊を「わが軍」と国会答弁で堂々と言い放つ総理大臣も存在しなかった。

それは戦争を直接体験したことのない安倍総理やからなのかも知れん。

もっとも、ワシらも安倍総理とは、ほぼ同年代やが、その事を憂いている者もいるさかい、単に戦争経験がないというだけで同列に見られるのも心外ではあるがな。

このままの状態が続けば、いずれ国家が、報道機関を掌握するようになる日がくることも十分考えられる。

この一件を見る限り、すでにそうなりつつあるのやないかという気にさせられる。

すべての報道機関が政府の意向に沿うようになったら、日本は戦前の危険な状況に逆戻りする懸念が大きいとワシらは見ている。

ただ、まだこういった報道をする新聞社が存在しているところに救いはあるがな。

政府の野望をくい止める希望が残されていると。

今後、この問題がどう動くのかは、ワシらにも分からんさかい、これからも注目していきたいと思う。



参考ページ

注1.第298回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんとハカセの時事放談……その1 ゴーストライター問題について
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-298.html


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