メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第369回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2015. 7. 3
■報道の危機……その2 「沖縄2紙をつぶせ」発言の波紋
先週の6月25日、自民党の若手議員による憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合なるものが自民党本部で開かれ、その席上、「沖縄2紙をつぶせ」などといった意見が噴出していたことが発覚し、連日、テレビや新聞で報じられ国民の関心度も高まっている。
それは当メルマガでも同じで複数の読者の方々から、この件に関してワシらの意見を聞かせて欲しいという要望が寄せられた。
それには、2ヶ月以上前の当メルマガ『第359回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その1 強まる自民党政府による政治圧力』(注1.巻末参考ページ参照)で、
『自民党政府は報道機関への圧力を強めている。それもあからさまにである』と、その証拠をいくつか列挙して話したことも影響しとるのやろうと思う。
その折り、
国境なき記者団が発表する「世界報道自由度ランキング」(注2.巻末参考ページ参照)というのがある。
何かと批判されてきた民主党政権下ですら、世界報道自由度ランキングでは11位やったのが、現在の自民党政権下では、実に61位まで下落している。
それだけ世界の報道関係者から日本には報道の自由がないと見られているわけや。
まあ、それも今回のような事実が明るみに出ているわけやから、そう思われても無理はないがな。
言いたいことが言えんような社会になったら終いや。それは独裁国家に成り下がったことを意味するさかいな。
確かに、新聞を始めとする報道関係機関にも、いろいろと問題があるのは認めるが、せやからといってそれを排除しようとする政府を容認するわけには絶対にいかん。
自由で正確な報道が新聞やテレビ局の命やさかいな。その火を消そうとする輩には徹底して戦う。
一国民としても、一新聞業界人としてもや。
ワシらのできることは「蟷螂の斧」にすらならんほどの非力なものかも知れんが、それでも『そんなことにならないよう、これからも、こういった話題をメルマガで取り上げてください』と応援して頂ける読者がおられる限り、今後とも精一杯、発信していきたいと考えている。
と宣言したこともあり、ワシらとしてもこの問題を避けて通るわけにはいかんわけや。
まずは、今回問題となった経緯から説明する。
http://mainichi.jp/select/news/20150626k0000m010122000c.html より引用
自民党:安保法案で報道批判続出…改憲派の勉強会
安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。
安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した。講師として招いた作家の百田尚樹氏に助言を求める場面も目立った。
◇議員「マスコミこらしめるには広告料収入なくせばいい」
出席者によると、百田氏は集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明した上で、政府の対応について「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。
出席議員からは、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」との声が上がった。
沖縄県の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、百田氏は「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した。
懇話会は木原稔青年局長が代表で、首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一・党総裁特別補佐も参加した。
出席者の発言について、自民党中堅は「自分たちの言動が国民からどのような目で見られるか理解していない。安保法案の審議にマイナスだ」と指摘。
公明党幹部は「気に入らない報道を圧力でつぶそうとするのは情けない」と苦言を呈した。
◇報道・表現の自由への挑戦
琉球新報社の潮平芳和編集局長の話
百田氏が何を論拠にしたのか明確ではないが、「つぶさないといけない」という発言は沖縄2紙のみならず、国内のマスメディア全体の報道・表現の自由に対する重大な挑戦、挑発である。
沖縄の現状を全く理解しておらず、残念である。琉球新報は今後とも不偏不党、言論の自由を重んじ、公正な取材活動と報道に努める。
◇断じて許すことできない
沖縄タイムスの崎浜秀光編集局次長の話
安全保障関連法案は「憲法違反」との指摘が相次ぎ、反対する世論の広がりに対するいら立ちが(百田氏の発言に)出たと言わざるを得ない。
70年前の沖縄戦で、沖縄は本土の「捨て石」にされた。「中国に取られれば目を覚ますはずだ」との発言は、再び沖縄を捨て石にしようとする発想で、断じて許すことができない。
というものやが、ここでの発言の数々は今の自民党主流派と言われる連中の本音やと思う。
人は同じような意見の者ばかりが周りにいると、つい調子に乗って本音を漏らしてしまいやすくなるもんやが、これは、その典型的な出来事やと言える。
しかし、言うてる事は、あきれるほど的外れや。お粗末と言うにも度が過ぎとる。
権力で言論を封じ込めようという時代錯誤もあるが、それ以上にこの会合に集まった自民党の若手議員たちは自分たちの無知さかげん、無能さかげんを見事に露呈しとると言うしかない。
その本音の発言には、何の裏付けも信憑性もないのやさかいな。むろん説得力も皆無や。
『マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい』といったようなことを本気で信じているとしたら、これほど無知で馬鹿げた話はない。
企業がマスコミに対して広告料を払うのは、それによる費用対効果で利益が得られると計算するからや。商品の認知度とイメージを高めるためというのもある。
それからすれば企業がマスコミに対して広告を出さないことによるデメリットは、むしろ企業側の方が大きいと言えるくらいや。
企業はマスコミのために広告を出しているのやなく、自分たちの利益につながると判断して、そうしているわけや。
そんな初歩的なことも分からず、いくら文化人や有名人といった連中が経団連に働きかけようと、そのとおりにする企業がおるとは思えんがな。
そんなことをすれば、企業自身が自分で自分の首を絞めることになりかねんさかいな。
また、そんな馬鹿な話を真に受ける文化人や有名人がいるのならお目にかかりたいもんや。
そんな人間など誰もおらんやろうと思うていたが、一人いた。この場に出席している百田氏や。
百田氏が、どうするかは分からんが、少なくともこの場に出席している自民党の若手議員たちから、そう思われているのは間違いない。
今回の狙いであるはずの沖縄2紙の場合、大半が地元の有力企業からの広告依頼で占められていて、長年に渡り強固な信頼関係が出来上がっているさかい、中央の経団連がどんな圧力をかけたとしても揺らぐことはないはずや。
また、沖縄2紙による沖縄県の購読者シェアが90パーセントを超えとるというのも大きいと思う。
当たり前やが、多くの企業は購読者シェアの高い新聞に広告を出そうとするもんや。
その新聞に広告が載っていること自体が、一つのステータスになると考えるのが普通やから、広告を載せないという選択肢はあり得ない。
その沖縄2紙は、現在「普天間基地移設問題」で自民党政府との対決姿勢を鮮明にしている翁長知事を支持しているということもあり、以前にも増して県民から絶大な人気を博しているという。
新聞社の基盤としては、これ以上望めんほど盤石や。どう転んでも外圧で、つぶせるような新聞社やないと思う。
それを外圧をかければ、つぶせると考える神経を疑う。
万が一、新聞社がつぶれるようなことがあるとすれば、自民党の御用新聞と目されているY新聞、S新聞の方が先やろうという気がする。
もっとも、そのY新聞、S新聞でも、その自民党の若手議員たちの発言に対しては他の新聞社や一般読者の手前があるためか、ここにきて批判を強めた論調に終始しとるがな。
事は、言論の弾圧に関わることやさかい、自民党の若手議員たちに与するわけにはいかんわな。
ワシが『会合に集まった自民党の若手議員たちは自分たちの無知さかげん、無能さかげんを見事に露呈しとる』と言う所以や。
なぜ、そんな具にもつかんことを本音として言うのか。
それは、ニコニコ動画やYahoo掲示板などのネット上で右翼寄り書き込みをしている通称、『ネットウヨ』と呼ばれている連中に毒されているからやないかと思う。
彼らの書き込みには昔から「新聞社をつぶせ」とか「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい」といった類のものが多いさかいな。
自民党の若手議員たちは、単に、それらの書き込みを見て何の裏付けや確証もないままに、そう思い込んでいるだけやないのかと思う。
安倍総理が、そういった『ネットウヨ』連中からの人気が高いというだけで、その書き込みを盲信しとるのやろうな。
そう言えば安倍総理の援護射撃になると信じて。ホンマ、アホとしか言いようがないわな。
百田氏の『あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ』というのも似たような発想から来ているものと考える。
何も本質が分かっていない愚論としか言いようがない。解説するのも面倒臭いが、一応しとく。
『どこかの島』とは『尖閣諸島』のことを指しているのやとは思うが、もし百田氏の言うとおりになれば、そんな場所に誰も住んでいない沖縄の人たちより、安倍総理やこの会合に出席している政府与党の自民党議員たちの方が数段困ることになるはずや。
沖縄を含めた国民が、その事で責めるとしたら沖縄の2紙などではなく、中国を除けば政府与党の不手際さやからな。
間違いなく政府与党の面目が丸つぶれになる。引いては自分たちの立場が危うくなるということや。
その程度のことは考えに入れてから発言した方がええと思うのやが、調子に乗っていると、そんな簡単なロジック(論理)すら気がつかんようになるんやろうな。
他にも、この会合で吐いたとされる暴言がいくつかあるが、皆似たようなものやさかい、以下省略とさせて貰う。
その手の発言についてはテレビ報道で、
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20150626-00000054-jnn-pol より引用
「マスコミ懲らしめる」自民勉強会の発言が波紋
自民党の勉強会で「マスコミを懲らしめる」と報道規制を求める意見が相次いだことが波紋を広げています。
安全保障関連法案について国民の理解が広がらないことへの不満の矛先をマスコミに向けた格好で、安倍総理が国会で釈明に追われました。
25日に自民党本部で開かれた会合。安倍総理と親しい作家の百田尚樹氏を講師に萩生田・党総裁特別補佐など総理に近い中堅・若手議員37人が出席しました。
出席者によりますと、安保法案に対する国民の理解が進んでいない現状を受けて、議員からは広告主やスポンサーを通じて報道規制をすべきという意見が出ました。
「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」(自民党議員)
「不買運動を経団連などに働きかけてもらいたい」(自民党議員)
「テレビの提供スポンサーにならないということが一番こたえる」(自民党議員)
報道の自由を軽視した自民党若手議員の発言に、与党幹部はそろって苦言を呈しました。
「クールマインドでやっていただきたいとは思っています。何で今そういうことを言うの、というようなことは、ないようにしてほしいと心から思う」(自民党 谷垣禎一 幹事長)
「スポンサーをどう選ぶかは企業の選択であって、政治が直接働きかけるようなことは断じてあってはならないと思う。言論の自由、報道の自由は、しっかり尊重すべきだと思う」(公明党 井上義久 幹事長)
一方、野党幹部は・・・
「おごりでしょうね、自分たちに権力があると。メディアを自由に左右できるという、おごりの結果の発言だと思います」(民主党 岡田克也 代表)
「これが事実だとすれば大変ゆゆしき問題で、言論統制をする独裁政党といわざるを得ない」(維新の党 今井雅人 政調会長)
自民党は、安保法制を審議する委員会の理事会で、陳謝に追い込まれ、安倍総理も野党側の追及を受けました。
「報道に対する圧力ととられるような発言をされたのは御党の議員です。私は責任者であれば、おわびしたいと思いますけれども、何かしら、それに対する責任を感じたことはないんでしょうか」(民主党 寺田 学 衆院議員)
「自由民主党がいわば、企業に圧力をかけ、スポンサー降りろとか、そんなこと考えられない。それは当然それぞれの企業が判断されるわけであります」(安倍首相)
「普通はですね、社長だったら自分とこの社員に責任持つんですよ。こんな会議をして本当に自民党として、恥ずかしいとか申し訳ないと思うとか、なんかそういうね、総理自身の言葉ないんですか」(民主党 辻元清美 衆院議員)
「報道の自由というのは民主主義の根幹である。当然尊重されなくてはならないというのが安倍政権の立場であり、そして自民党の立場でもあるわけです。自民党は誤解されることがないように、しっかりと襟を正しながら、報道の自由は守りながら、しかし主張すべきことはしっかり主張していく」(安倍首相)
安全保障関連法案の成立に向けて国会の会期を延ばした直後に再び起きた「オウンゴール」。
菅官房長官は「どう考えても非常識で、自らの発言には責任を持つべきだ」と若手議員を批判しました。
また、25日の会合では講師役として出席した百田氏の発言も波紋を広げています。きっかけは、出席した議員の質問でした。
「沖縄のメディアは左翼勢力に乗っ取られている。なんとか知恵をいただきたい」(自民党出席議員)
沖縄の地元新聞社が政府に批判的だという意見に対し、百田氏は・・・
「沖縄の2つの新聞社は、つぶさないといけない」(百田尚樹氏)
その上で、「あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と述べました。
これに対し、地元紙は強く反発しています。
「百田氏の発言は、政権の意に沿わない報道は許されないという言論弾圧の発想そのもの。言論の自由、報道の自由を否定する暴論ではないか」(沖縄タイムス編集局 石川達也 次長)
百田氏は26日、一連の発言について、自身のツイッターで「質疑応答の雑談の中で冗談で言ったものだ」とコメントしていますが、地元・沖縄での受け止めは・・・
「いい気はしないですね」(宜野湾市民)
「とんでもない見当違いだね。沖縄の新聞はよくやっていると思いますよ」(宜野湾市民)
と報じている。
これに対する作家の百田尚樹氏の言い分として、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150628-00000052-san-pol より引用
百田氏「一言だけ取り出すのは卑劣」 報道機関批判問題で反論
作家の百田尚樹氏は27日、講師を務めた自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」での発言が安全保障関連法案の審議に影響するとの見方について「野党は僕の発言をうまく利用している。
一民間人の軽口の一言だけ取り出して大騒ぎするのは、非常に卑劣で、きたないやり方だ」と語った。福岡市内で記者団の質問に答えた。
百田氏は、自民党本部で25日に開かれた勉強会で「沖縄の2つの新聞は潰さないといけない」などと発言した。出席した議員からも安保法案に批判的な報道機関に圧力をかけるような意見が相次いだ。
これに民主党など野党が一斉に反発し、安保法案を審議している衆院平和安全法制特別委員会などで安倍晋三首相(自民党総裁)らを厳しく追及。
また、沖縄の有力紙「沖縄タイムス」「琉球新報」が共同で「政権の意に沿わない報道は許さないという“言論弾圧”の発想そのもの」とする抗議声明を発表するなど、波紋が広がっている。
百田氏は「あきれている。僕は国家権力を使った言論弾圧はだめだと言っている」と強調した。
これに先立ち百田氏は福岡市内で講演し、自身の発言について「テレビなどで不特定多数の人に向けて言ったら軽口や冗談でも通用しないが、内輪の私的な会合での発言だった」と説明した。
といった新聞の記事もあるが、それは通らない。的外れな言い分や。
自民党の党本部で行われた会議、会合であれば『内輪の私的な会合』とは言えないし、誰もそうとは思わない。
しかも会の冒頭部分をテレビ局のカメラで撮影させていることを考えれば、自民党として公式な懇談会、勉強会と考えるしかない。
公開、非公開は問題にはならない。公式な会合であっても、そういうケースはいくらでもあるし、せやからと言うて、そこで何を言うても問題にならんということはないさかいな。暴論を吐けば必ず問題になる。
この会合には党費、つまり税金が使われているわけやから、当然やが、そこでの発言には責任が伴うと承知してなあかん。
講師として呼ばれた百田氏も、そんな場で例え冗談にしろ「沖縄2紙をつぶせ」と言えば、どんな結果になるかくらいのことは考えなあかんわな。
その程度のことも分かんようでは、ご本人の人間的な資質が問われても仕方ないのやないかな。
どんな場であれ、大勢の前で発言すること自体、それだけで大きな責任が伴うという自覚が必要やと思う。
本当に非公式にしたかったら自腹で誰にも分からない場所を確保して、ひっそりと内輪だけで、こそこそと話し合ったらええだけのことや。
もっとも、それでは出席した若手議員たちには何のメリットもないとのことやがな。
こういった会合、勉強会というのは若手議員たちにとっては格好のアピールの場になる。むしろ、そこでの発言を報道関係者に聞いて欲しいというのが本音やという。
そのため、報道関係者の多くは退出しても隣室に用意された控え室にいて、それこそ壁に耳を当て、鍵穴から覗き込みながら、中の様子を詳しく取材しているのが実態やと言われている。
そのことは室内の出席者たちもよく心得ている。というか、それを前提とした会合なわけや。
そのため彼らは声のトーンを落とすどころか、声を張り上げて隣室の報道関係者に聞かせる、つまりアピールするために発言している者が大半を占めるという。
会議の内容の事細かな部分まで報じられているのには、そうした理由があるわけや。要するに、出席者自身が、その内容を筒抜けにしとるということや。
そこで都合の悪い発言を取り上げられると、途端に『内輪の私的な会合での発言だった』と逃げを打とうとする。
これは百田氏に限らず、過去失言を繰り返してきた幾多の議員たちに共通した言い逃れでもある。
そして、その言い逃れは過去、どんな発言についても通用することはなかった。皆それなりの責任を負わされている。
そのこと自体は自民党執行部の方でも熟知していて、その発言に関わった議員数名を割と短期間のうちに処分している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150627-00000044-asahi-pol&pos=2 より引用
自民、木原氏を更迭 「懲らしめる」発言の議員らも注意
自民党は27日、安倍晋三首相に近い議員でつくる勉強会「文化芸術懇話会」で沖縄の地元紙を含む報道機関を威圧する発言などが出た問題に関連し、懇話会代表の木原稔・党青年局長(熊本1区)を更迭し、1年の役職停止処分とすることを決めた。
安全保障関連法案の審議への影響を最小限にとどめて幕引きを図る狙いだが、野党は反発を強めている。
谷垣禎一幹事長は27日夕、党本部で記者会見し、「(懇話会で)報道および言論の自由を軽視するかのような発言がなされた。また、沖縄県民の思いを受け止めるべく努力してきた自民党の努力を無にするかのごとき発言がなされた。国民の信頼を大きく損なうもので看過できないと判断した」と更迭の理由を説明した。
また、懇話会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」と発言した大西英男氏(東京16区)、
「スポンサーにならないことが一番(マスコミに)こたえる」と発言した井上貴博氏(福岡1区)、
「沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくために、どのようなアクションを起こすか。左翼勢力に完全に乗っ取られている」と発言した長尾敬氏(比例近畿ブロック)の3人を厳重注意にした。
谷垣氏は、党総裁の安倍晋三首相と協議したうえで4人の処分を決めたことも明らかにした。
自民党は、これで何とか、この件を幕引きにしたいと考えていたようやが、その処分を受けた議員の一人、大西英男氏(東京16区)が、6月30日にまたもや暴言を吐いた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150630-00000103-jij-pol より引用
「報道機関懲らしめる」=自民・大西氏が再び問題発言
自民党の大西英男衆院議員は30日午後、安全保障関連法案に批判的な報道機関について「懲らしめなければいけないんじゃないか」と述べた。
また、「誤った報道をするようなマスコミに対して広告は自粛すべきじゃないか」とも語った。国会内で記者団の質問に答えた。
党の勉強会で報道機関への圧力を求める発言が相次いだ問題で、党執行部は火消しを図っているさなかだけに、大西氏の発言がさらに波紋を広げるのは確実だ。
大西氏は25日、保守系の党所属議員有志が開いた文化芸術懇話会で、「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなることが一番。経団連に働き掛けてほしい」などと発言し、党執行部から厳重注意を受けた。
大西氏は衆院東京16区選出で、当選2回。
大西氏にとっては自民党本部からの厳重注意など何とも考えていないというのが、これでよく分かる。よけいに開き直っているようなところが見受けられる。
おそらく自分には安倍総理の後ろ盾があるから大丈夫とでも考えているのかも知れんがな。
この大西氏というのは、去年の2014年4月に開かれた衆議院総務委員会において、上西小百合の質問中に「まず自分が子どもを産まないとダメだぞ」というヤジを飛ばしたことで有名になった人物や。
ついでに言えば大西氏は、都議会議員の頃から人間性を疑われるような汚いヤジを飛ばす「ヤジ将軍」として有名やったというから、氏にとっては、今回程度の発言は、それこそ「軽口」のつもりやったのやろうがな。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150630-00000062-asahi-pol より引用
自民、早期幕引きに苦慮 大西氏発言で再び厳重注意へ
自らの発言で自民党から厳重注意処分を受けたばかりの大西英男衆院議員が30日、改めて「マスコミを懲らしめなければならない」などと持論を展開した。
処分で問題を幕引きしようとした自民党執行部は対応に苦慮。1日にも、異例の2度目となる厳重注意を大西氏に出す方針だ。
「どれだけ党に迷惑をかけたと思ってるんだ!」。30日午後、大西氏の発言内容を聞いた自民党の谷垣禎一幹事長の怒鳴り声が、国会内に響いた。
谷垣氏ら執行部は、一連の発言が安全保障関連法案の審議に影響することを懸念。
「処分は厳しすぎる」「これでは若手が萎縮する」との反発を押し切る形で27日、一連の問題発言が出た勉強会「文化芸術懇話会」代表の木原稔・党青年局長を更迭。
大西氏ら3人を厳重注意したばかりだった。二階俊博総務会長も30日昼の記者会見で、大西氏らの発言について「時代錯誤で厳に慎むべきだ。党の看板を背負ってやっている以上は、個人の立会演説ではない」と厳しく批判したが、大西氏の発言はその後に飛び出した。
自民党執行部の一人は2度目の大西氏の発言を聞き、「もう、笑うしかない」と肩を落としたが、党執行部が一議員を指導できない現状に、連立を組む公明党は危機感を強める。
同党の大口善徳・国会対策委員長は30日、自民党の佐藤勉国会対策委員長に対し、「党のガバナンス(統治)にも関わることで、看過できない」と批判。
谷垣氏に伝えるよう求めた。大口氏は記者団に「民主主義の根幹である報道の自由や表現の自由を否定するような発言は言語道断だ」と強調した。
野党は追及をさらに強める構えだ。民主党の枝野幸男幹事長は30日、「なぜ、一連の話が批判され、不信をもたれたのか。その本質をまったく理解していない」と批判。
維新の党の柿沢未途幹事長も「本当に感覚を疑わざるを得ない。自民党は『マスコミがうるさいから圧力をかけて黙らせよう』と思っていると見なさざるを得ない」と強調した。
この問題を、自民党政府としてどう収束させようとしているのかは、この後の展開を見守るしかないが、それにしてもお粗末すぎるわな。
ただ、このことがきっかけで新聞各社に危機感が生じたさかい、その意味で言えば、この愚行がもたらした影響は計り知れんほど大きかったことになる。
http://www.asahi.com/articles/ASH6Y4G0PH6YUTIL00X.html?ref=yahoo より引用
各紙社説「言論統制」「自民の驕り」…報道威圧に危機感
自民党議員による勉強会で報道機関を威圧する発言が出たことに対し、多くの新聞社が批判の声を上げている。
在京5紙が社説で批判的に報じ、ネットで社説を速報した地方紙も。報道の自由が脅かされる事態に対し、各社の危機感がにじむ。
特集:自民勉強会で報道威圧
神奈川新聞は26日午後5時47分、自社のウェブサイトで「速報社説」をアップした。
社説は通常翌日の朝刊で掲載され、ネットでは有料会員しか読めない。だが「早く、多くの人に読んでほしい」と、異例の対応に踏み切った。
社説は「一報道機関として、という以前に民主主義社会の一構成員として看過できない」との書き出しで、異なる意見に耳を貸さない安倍政権の姿勢を批判する。
執筆した報道部次長兼論説委員の石橋学さんは、「報道を含めて民主主義のあり方がなめられている。自民党の議員は発言をおかしいとも思っていない。普通でないことが起きていると伝えるために、普通ではない対応をした」と話す。速報社説はSNSで急速に広がった。
今回やり玉に挙げられたのは、ともに米軍基地を抱える沖縄の地方紙だった。
自民党は昨年の衆院選前にはテレビ局に文書で「公正中立な報道」を求め、勉強会では「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」など報道機関を威圧する発言が相次いだ。
社説の速報が地方紙としての政権与党への「対抗策」の一つと考える。
「一地方紙だけでどこまで押し戻せるかわからないが、誰かが口火を切れば注目を浴び、全国の地方紙も後に続く。こんな論の広がりもあるのでは」
ほとんどの在京各紙(東京本社発行の最終版)は勉強会を強く批判した。
朝日新聞は27日の朝刊で、25日に開かれた勉強会の出席議員らによる発言内容を詳しく伝えた。
社説では、安保関連法案をめぐる議論とあわせて「異常な『異論封じ』」とし、「無恥に驚き、発想の貧しさにあきれ、思い上がりに怒りを覚える」と批判した。
毎日新聞は、「安倍政権になってからメディア規制が強まっていると思うか」という質問に対し、「強まっていると思う」と回答。
27日の社説で「言論統制の危険な風潮」との見出しで、「このような風潮を放置すれば、民主主義の基盤がむしばまれてしまう」と警鐘を鳴らした。
東京・中日新聞も同日の社説で「報道の自由に対する挑発、挑戦である」と指摘した。東京は29日にも沖縄の地元2紙の両編集局次長の寄稿文を掲載。
配信した共同通信の総務局は取材に対し、今回の問題について「異論を許さないという姿勢は、民主主義の根幹にも反することで、重大な問題と受け止めている」とし、「加盟社の関心は高いと思われる」と回答した。
読売新聞、日本経済新聞は、「『1強』の勢力を持つ自民党の驕(おご)りの表れであり、国会議員としての見識も疑われる」(読売、27日)、
「言論には言論で対抗していくのが民主主義」(日経、28日)と指摘する社説を掲載した。
産経新聞は29日までに今回の問題を扱った社説を掲載していない。26日朝刊で百田尚樹氏の沖縄2紙への言及のほか、沖縄の米軍基地問題について「根が深い。苦労も苦しみも理解できる」との発言も伝えた。
多くの地方紙も勉強会に異を唱えた。沖縄タイムスは26日朝刊で「普天間居住 商売目当て」という百田尚樹氏の勉強会での発言を1面の横見出しで掲載。
普天間飛行場周辺の土地が強制的に接収された経緯を紹介し、発言を否定した。
琉球新報は27日の朝刊1面で「自民 県内2紙に圧力」として、自民党議員の発言を取り上げた。
そのほか、「マスコミ批判は筋違い」(北海道新聞)▽「『1強』の堕落 容認できず」(東奥日報)▽「言論を統制するつもりか」(神戸新聞)▽「これが自民党の『本音』か」(西日本新聞)など、報道機関に圧力をかける政権与党の姿勢を社説で批判した。
■健全な批判こそ民主主義
〈水島宏明・法政大教授(ジャーナリズム論)の話〉
今回の自民議員らの発言を民放各局も詳しく扱っている。特定秘密法や集団的自衛権の行使容認などの扱い方に濃淡が見られたのとは対照的だ。
新聞を含め「ジャーナリズム全体の危機」との共有意識があるのだろう。
政権与党は、「マスコミを懲らしめる」などの発言が党の会合で出たことを深刻に受け止めるべきだ。
一方で、「偏向報道」といったメディア批判を素直に受け止める読者・視聴者もいる。
健全な批判が民主主義の基盤となることをメディアは粘り強く伝える必要がある。
今回の暴言の背景にあるのは、安保関連法案に対するマスコミの論調が、安倍総理に近い件(くだん)の若手議員たちにとって気に入らないというところから端を発しているのは間違いない。
多くの憲法学者が「憲法違反」と断じている法案を、数を頼りにごり押して成立させようとするから、そんなことになるのやということが分からずにな。
ホンマに救い難い連中や。
取りあえず、自民党与党がこの問題をどう収束させるのか、野党、およびマスコミが、どこまで突っ込んだ追求ができるのか、今はそれを静かに見守りたいと思う。
参考ページ
注1.第359回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その1 強まる自民党政府による政治圧力
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-359.html
注2.世界報道自由度ランキング
http://ecodb.net/ranking/pfi.html
白塚博士の有料メルマガ長編小説選集
月額 216円 登録当月無料 毎週土曜日発行 初回発行日 2012.12. 1
ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート1
2011.4.28 販売開始 販売価格350円
書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』好評販売中