メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第371回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2015. 7.17


■「安全保障関連法案」を拡張トークで上手く説明するには?


拡張員をされている常連の読者の方から、


いつも参考にさせてもらっています。

今日は、お願いがあってメールしたんですが、僕もゲンさんのまねをして勧誘するときに雑談から入るようにしています。

先日、お年寄りのお客様から「安全保障関連法案」について、どう思うかと聞かれました。

正直いって、僕にはよくわかりませんので適当に話を合わせましたが、何か上手く説明する方法はありませんか?

新聞を読んではいるのですが、なかなか理解できません。特にお客様に説明するとなると、まったくダメです。

時々、ゲンさんのメルマガで政治問題について話されているのを見かけますが、ゲンさんの説明だと、こんな僕でもよくわかります。

そこで、お願いがあるのですが、「安全保障関連法案」をネタにした勧誘トークを教えてもらえないでしょうか?

新聞を勧誘していて、新聞記事について説明できないのは格好が悪いです。

それに、今この問題は旬だと思いますので、覚えれば、少しは成績がよくなるのではないかと思っています。

ゲンさんなりの解説でよろしいので、ぜひ教えてください。


というメールを頂いた。

今、大きな問題になっている「安全保障関連法案」については、いずれ話をせなあかんとは考えていた。

ただ、このメルマガで政治問題に言及した話をすると、評判が悪いということもあり、ここ1年ほどは避けていたようなところがあった。

それには、ある読者の方から「業界や拡張の話が知りたくて、このメルマガを見ているのであって、あんたの政治観など聞きたくない」とお叱りのメールを頂いたことで、少なからずショックを受けていたからや。

確かに、新聞業界とかけ離れた政治問題に言及するのは、このメルマガを楽しみにして頂いている読者からすれば、裏切られたような気持ちになると言われるのは、よく分かる。

ぎりぎり関係があると言えば、それらの政治問題が新聞記事になっているという点くらいものやしな。

それと、ワシは拡張員やが、その前に日本国民やという思いの方が強いさかい、言わな気が済まんというのもある。

ただ、それは、このメルマガを見て頂いている読者の方には関係のない話やわな。

新聞業界、とりわけ拡張の話を中心にして欲しいという気持ちはよく分かる。そのために購読しとるのやと。そう言われれば反論できんさかいな。

そのため、最近で言えば『第357回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんとハカセの時事放談……その3 圧力についての話』(注1、巻末参考ページ参照)のように、読者からの要望があった場合のみ話すという風に方向転換をしていたわけや。

ただ、今回、この読者からのメールの中で、『「安全保障関連法案」をネタにした勧誘トークを教えてもらえないでしょうか?』とあったように、問題そのものに正面から切り込むのやなく、勧誘トークネタとして話すのなら、メルマガ読者の役にも立つし、同時に言いたいことも言えるのやないかと気がついた。

そういう方法もあったのやと。そう考えると、少しは気が楽になる。

それでは、本題に入らせて貰う。

現在、問題になっている「安全保障関連法案」というのは、大きく分けて多国籍軍などへの後方支援を可能にする「国際平和支援法案」と、

「武力攻撃事態法改正案」、「重要影響事態法案」、「PKO協力法改正案」、「自衛隊法改正案」、「船舶検査法改正案」、「米軍等行動円滑化改正案」、

「海上輸送規制法改正案」、「捕虜取り扱い法改正案」、「特定公共施設利用法改正案」、「国家安全保障会議(NSC)設置法改正案」などの現行法10本をまとめて改正する「平和安全法制整備法案」との二つになる。

どの法案一つをとっても国家として非常に重要なものばかりで、一つずつの法案を1年かけて審議しても足らんくらいやのに、それを自民党政府与党は、この夏2ヶ月間余りの短期間のうちに一気に決めてしまおうと急いどるわけや。

そのため、殆どの人が法案の中身について詳しく知らないという事態に陥っている。

詳しく説明すると、もっと反対運動が盛り上がるさかい、それができん、したくないというのが政府与党の本音やという声が聞こえてくる。

故に、今より反対運動が盛り上がって内閣の支持率が急落しないうちに、さっさと法案を通そうと焦っているのやと。

事実、7月15日、


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150715-00050043-yom-pol より引用

安保法案、衆院特別委可決…自・公の賛成多数で


 今国会最大の焦点となっている安全保障関連法案は15日、衆院平和安全法制特別委員会(浜田靖一委員長)で採決が行われ、自民、公明両党の賛成多数で可決された。

 民主、維新、共産の野党3党は反発し、採決に加わらなかった。与党は、関連法案を16日の衆院本会議で可決、参院に送付する方針だ。

 特別委では、採決に先立ち、締めくくり質疑が行われた。安倍首相は答弁で、法整備の意義について「安全保障環境の変化に目をこらさないといけない。国民の命を守るために切れ目ない対応を可能とする今回の法制が必要だ」と強調。

「残念ながらまだ国民の理解が進んでいる状況ではない。国民の理解が進むようにしていきたい」とも語った。

 民主党の長妻昭代表代行は「国民に説明を尽くしたのか。強行採決は到底認められない」と述べ、採決の取りやめを首相に求めた。

 維新の党の下地幹郎氏は「世論調査をみると、充実した審議にあたらない」と審議継続を訴えた。


政府与党は数の優位性を盾に強行採決に踏み切ってしまった。

しかも、安倍総理自身が、『残念ながらまだ国民の理解が進んでいる状況ではない』と言うているにも、かかわらずや。

これでは、「それなら、国民の理解が得られたと確信してから法案を通せよ」と、ワシならずとも突っ込みを入れたくなるわな。

こんな無茶で強引な話は過去にも例がないやろうと思う。

さらに、自民党の中心人物の一人でもある石破地方創生担当相も、「あの数字(世論調査)を見て、国民の理解は進んできたということを言い切る自信は、わたしには、あまりございません」と述べている。

これは明らかに政府与党に対する批判である。暗に今、強行採決はするべきやないと言うてるわけやさかいな。

政府与党の横暴さ、ここに極まれりというところやな。

ここからは、現政府与党の横暴さをネタにした勧誘トークを紹介しながら、この問題を説明していきたいと思う。


「安全保障関連法案」をネタにした勧誘トークのいろいろ


1.「安全保障関連法案」が可決されることにより、政府の意向次第で自衛隊が他国の戦争に参加することが可能になる。そして、それは必ず実行される。


2.戦後70年間、自民党を中心とした政府与党は、憲法9条で戦争を禁止されているため、海外で自衛隊が武力(集団的自衛権)を行使することは一環して禁じてきた。それを安倍内閣は無視している。


3.安倍内閣は憲法を自分たちの都合の良いように勝手に解釈を変更している。解釈を変更が可能なら、憲法はあってなきがごときになる。


4.法案に「存立危機事態」というのがあり、「我が国、または他国が武力攻撃を受けたことにより、我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険があること」と記されているが、どんな状況がそれに該当するのか、安倍内閣は明確に答えていない。

おそらくは、アメリカが他国に攻撃された場合が「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」という判断になるのやろうとは思うが、さすがに、そうとは言えないようや。

ただ、この法案が成立した場合、実際にアメリカが他国に攻撃されたら、否応なく日本は戦うしか選択肢はなくなる。現政府与党は、そのつもりやと断定してもええ。


5.世論調査では約8割以上の人たちが、「安全保障関連法案」に対して「十分に説明しているとは思わない」と回答している。安倍総理も、それを認める発言をしている。それでも衆議院で法案を強行可決させた。


6.安倍内閣は、「安全保障関連法案」の意義を「近隣諸国やテロの脅威から日本の平和と安全を守るため」としているが、法案が成立すれば、中国や韓国、ロシアなどの近隣諸国は必ず反発し、緊張が高まるのは必至やし、テロ組織も日本を敵と見なしてテロ攻撃を仕掛けてくる可能性が確実に高まる。

つまり、「安全保障関連法案」の成立で、言っている意義とは真逆の結果を生む可能性が高いわけや。


7.また、「安全保障関連法案」の別の意義として「国際社会に貢献するため」としているが、各国の報道を見る限り、アメリカ以外の他国は、この法案で日本が国際貢献するとは思っていないということが明白になっている。

この法案は、アメリカ1国のためだけに成立させることに意義があるとしか思えない。もっとも政府の言う「国際社会に貢献するため」というのは、アメリカに貢献するためやろうがな。


8.さらに、「近隣諸国やテロの脅威」が政府の言うほど悪化しているのかと言うと、最近はむしろ改善されつつある方向に向いていると言える。

しかし、この法案が成立することで、それらの事態が確実に悪化するのは火を見るより明らかやと断言できる。


9.この法案の成立により、自衛隊が国外の戦争に参加してしまったら、日本の防衛は、その分手薄になるが、それをどうするかという説明がなされていない。


10.「自衛隊員を増やせば良いではないか」という意見もあるようだが、そもそもこの法案が成立して自衛隊に応募しようという若者がどれだけいとるやろうかという疑問が生じる。

普通に考えて戦争経験のない日本人が命を賭けなあかん戦争に自らの意志で参加しようとは思わんわな。

現自衛隊員の中には、今の段階で「辞めたい」と考えている人たちが相当数いとるという。実際、多くの除隊者が出ているという話が漏れ聞こえているが、現時点で、その情報は公開されていない。


11.自衛隊員が減って維持できなくなったら、必ず「徴兵」という問題が起こる。現時点では政府は「徴兵制はあり得ない」としているが、現実問題として、そうでもせん限り、自衛隊の組織そのものが維持できんようになるのは確実や。

故に、この法案が成立すれば、その先には必ず「徴兵制」の問題が持ち上がり、それもこのままやと数の論理で、多くの国民がどんなに反対しようと強行採決で決められる可能性が高い。


12.海外派兵には莫大な費用が必要になる。戦争に金がかかるのは世界の常識やさかいな。しかし、安倍内閣は、そのための財源をどうするか、まったく考えていないようで、その類の質問には一切答えていない。

まあ、新国立競技場の建設計画と同じで、莫大な費用がかかると知りつつ、その財源を示せないまま決めてしまえさえすれば何とかなると考えとるのかも知れんがな。

そうなると、その負担は国民すべてに及び経済は今より確実に悪化することが予想される。

金がなければ税金を上げるか、国が借金するしかないさかいな。国の借金は、そのまま国民の借金になる。

この法律の成立により、今より厳しい状況が訪れることを日本国民のすべてが覚悟せなあかんわけや。


13.この法律によりテロの脅威が確実に増すことになるのは間違いないが、日本ほどテロの備えに対して脆弱な国はないと言われている。

まあ、今まで大規模な外国からのテロの脅威に晒された経験がないさかい無理もないがな。

例えば、日本にある原子力発電所において外部からの攻撃、進入に対して殆ど無防備と言うてもええくらい対策が練られていないというさかい、狙われたらそれまでや。

防ぎようがないと専門家の多くが口をそろえて言っている。これ以上、日本で原子力発電所が崩壊すると大変なことになる。


14.この法律が成立すれば自衛隊員の戦死者が出るおそれが確実に高まる。というか、海外に派兵している国の多くの兵士が戦死しているのが実状やさかい、戦死者は必ず出る。それも大量に。

今までは自衛隊の派遣は「非戦闘地域」、「救援物資の輸送のみ」と限定的やったのが、この法律が成立すれば「世界中どこでも地域に関係なく派兵でき」、「軍事物資の郵送も可能になる」わけや。

これでは敵対国、敵対テロ組織から命を狙われん方が不思議なくらいやわな。


15.安倍内閣は、これはあくまでも「後方支援」で戦場の最前線で活動するわけやないから危険は限定的やと言うとるが、戦場において、最前線も後方支援もない。

すべての兵士が戦争の当事者なわけで、敵対国、敵対テロ組織からすれば、そのすべてが攻撃対象になる。日本は「後方支援」しとるだけやから「攻撃せんとこう」とは絶対にならんわな。

むしろ狙いやすく弱い部分として標的にされる可能性が高くなる。


16.そもそもこの「安全保障関連法案」は、戦争行為を禁じた憲法第9条に照らせば明らかな憲法違反で、自民党が国会に招いた憲法学者3人全員が、その場で「安全保障関連法案」は「憲法違反」だと明確に指摘している。

その事実がメディアで取り上げられ、この問題が大きくクローズアップされたことで反対運動が盛り上がってきたわけやがな。

その後、実に9千人以上の憲法学者が「安全保障関連法案は違憲だ」と正式に表明している。これは異常な事態やと言える。


17.それに対して政府与党は「憲法学者が違憲の判断をするべきではない」と宣(のたま)い、「違憲判断は最高裁がする」と言って開き直っている。

確かに本来は、三権分立である以上、そうあるべきなのやが、残念ながら日本の司法は、そうはなっていない。

憲法判断を迫られると、最高裁は決まって「高度な外交問題は政治の判断に委ねる」と言って逃げている。

それを見越しての政府与党の発言なわけや。日本の場合、司法といっても裁判官も官僚組織の一部やから、そうなる。

ごく希に国の姿勢に対して「違憲判決」を出す地方裁判所の裁判官もいとるが、その多くが、その後に左遷や辞職に追い込まれているのが実状で、日本で裁判官としての正義を貫くのは限りなく難しいと言わざるを得ない状況にある。


18.強行採決を防げず、違憲として訴えても最高裁が判断せんのでは、どうしようもないやないかという声が聞こえてきそうやが、そうとばかりは、まだ言えん。

今からでも、まだ手は残されている。

自民党の実力者、石破地方創生担当相だけやなく、自民党で最も人気が高いと目されている小泉進次郎衆院議員も、今回の強行採決に対しては「自民党の悪い部分が顔を覗かせている」とテレビカメラの前で批判的なコメントを出している。

他にも、その人たちの意見に賛同する自民党の議員も多いはずや。その人たちに、国民が直接訴えかけるというのが、それや。


19.国会議員は皆、自分がかわいい。次の選挙に通るか、どうかを常に気にする。自民党の支持者の方でも、さすがに今回のような「安全保障関連法案」に対しては反対する意見が約5割を占めるまでになっているという。

このままやと、その割合がさらに高まる可能性が高い。その支持者が反対すれば、いくら今回の採決で賛成したとしても次も同じように賛成に回れるかどうかは難しくなるやろうと思う。


20.今回の件で安倍内閣の支持率は確実に大きく下がることが予想される。政府与党では10パーセント程度の支持率の低下は織り込み済みやと言うが、それ以上の下落になると、どうなるか。

政権の維持に必要な支持率のデッドラインは最低でも30パーセント以上だと言われている。それ以下になると、内部崩壊が始まり、造反者が増えてくる。

現在、安倍内閣がこれだけ強気で「安全保障関連法案」を強行採決できるのも、高支持率が背景にあるからや。

その支持率がなくなれば、必ず、それにとって代わろうとする勢力が台頭してくる。「安全保障関連法案」を潰すのが目的なら、その勢力に力を貸すという手が残されている。


21.つまり、自民党の議員、野党議員を問わず「安全保障関連法案」に対して明確に反対を表明した議員を応援することや。それが、必ず大きな力になる。


22.もちろん、「安全保障関連法案」に反対するデモに参加するのでもええし、ネットで個人的に訴えかけるのでもええ。


以上や。

上記の記述は、あくまでも情報としてのネタであって、それをどのように使いトークとしてアレンジするかは、その時々のお客を見て判断して頂きたいと思う。

基本的に勧誘トークは、なるべく客の意向に沿うようにすることで、敵対することやない。

上記のネタを使うと「安全保障関連法案」の賛成派に敵対しているような印象を持たれる方がおられるかも知れんが、これは約8割の人が反対している「安全保障関連法案」だからこそであって、その人たちに向けたもので、すべての人に当て嵌るものやない。

ただ、お客から『「安全保障関連法案」について、どう思うか』と尋ねられた場合、上記のようなことを言えれば、多くの人に「へえー、そうなんや」と言うて貰える可能性が高い。

普段、あまり賢いとは見られていない勧誘員が、「なかなか勉強しているな」と見直されることにもなる。

それが大きい。勧誘で、相手にそう思うて貰えるだけで一歩前進やさかいな。

少なくとも、そうした客は聞く耳を持つやろうから、後は持って行き方次第で何とかなるはずや。

今回は勧誘トークのネタの提供と併せて、「安全保障関連法案」について言いたいことを言えたが、こういった試みも悪くはないと知った。

これなら、政治話だけに終始するわけやないしな。今後も反響次第ということもあるが、なるべくこうした方法を取り入れていきたいと思う。



参考ページ

注1.第357回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんとハカセの時事放談……その3 圧力についての話 
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-357.html


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