メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第385回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2015.10.23
■報道のあり方 その9 政府批判を取り締まることの是非について
ある一般読者の女性から、
ゲンさん、ハカセさん、お久しぶりです。
いつもメルマガを楽しく拝見しています。
早速ですが、
▼安倍政権批判の文言入り文具、有無を調査 北海道の学校
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151017-00000007-asahi-soci
という記事について、どう思われているのか知りたいので、ぜひご意見を聞かせてください。
私は今まで選挙では自民党に投票してきましたが、最近の自民党のやり方にはついていけません。
特に戦争を増長するような安保法案の強硬採決をした安倍内閣のやり方は間違っていると思います。
でも選挙で自民党に入れた私もそれに手を貸した同じ穴のムジナだと思うと自分自身が嫌になります。
この記事の中に「アベ政治を許さない」と書かれたクリアファイルがあり、それを問題にしている自民党の議員がいて教育の現場に圧力をかけているようですが、安保法案の強硬採決をした「アベ政治を許さない」というのは私も思っていることです。
それでは特に急ぎませんので、よろしくお願いします。
というメールを貰った。
その質問に答える前に、この読者が示された記事の内容を紹介する。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151017-00000007-asahi-soci より引用
安倍政権批判の文言入り文具、有無を調査 北海道の学校
北海道教育委員会が、安倍政権を批判する文言を記した文房具が学校内にあるかどうかについて、道内の公立学校を対象に調査を始めたことが分かった。
一部の高校にあったことから、「教育の政治的中立性」を保つためとしている。文房具を配った教職員組合側は「学校現場を萎縮させる」などとして反発している。
自民党道議が9月、一部の学校で「アベ政治を許さない」との文言が印刷されたクリアファイルが教師の机の上に置かれていると指摘し、調査を要求。
道教委は今月14日付で、政令指定市の札幌市立以外の小中高校など1681校に調査票を配った。
質問内容は、いつ誰が使ったり配布したりしたか、校内のどこで見たかなど。回答は任意だが、関わった人の名前を記すよう求めている。管理職には、関わった教職員が特定できれば指導するよう求めた。
というものや。
ワシは、この記事を見てすぐに戦前の「思想狩り」、「言葉狩り」というのを思い浮かべた。
あるいは、現在でも独裁国家にありがちな政府への批判に対する「言論弾圧」、「言論封じ」を。
今の自民党の議員たちは、圧倒的な議席数を背景に日本を牛耳っていると勘違いしていて、その頃の為政者たちの考え方と何ら変らん状態になっているのやないかと思う。
政府を批判する者は許さないという姿勢があからさまやさかいな。
この記事には、『「アベ政治を許さない」との文言が印刷されたクリアファイルが教師の机の上に置かれていると指摘』とあるが、それのどこが調査されなあかんことなのかと思う。
また、その調査の結果、『管理職には、関わった教職員が特定できれば指導するよう求めた』ということやが、何を指導しろと言うのか。
まあ、そんなことは止めろと言いたいのやろうと思うが、自民党道議とやらに言われる筋合いのことやないと思うがな。
はっきり言うが日本は民主主義国家で独裁国家やない。
日本は言論と表現の自由が憲法で保障されていて、誰がどんな主義主張を持とうと不当に責められるいわれはない。
政府を批判する者を取り締まって注意、指導しろというのは時代錯誤の愚挙に等しい行為と言うしかない。
この件は、むしろ堂々と政府を批判できること自体、日本が民主主義国家として健全だと世界に向けて誇りに思うべき出来事やないかと考えるがな。
誇るほどのことやないとしても、問題にするべきことやなかったのは確かやと思う。
政府側の人間にとっては面白くないことなのかも知れんが、例えそうであっても自由を権力で封じ込めようとする行為は頂けん。
どう見ても醜悪な行為にしか映らんさかいな。結果、人心も離れる。
「アベ政治を許さない」というのは、確か安保法案に反対していた多くの国民が国会前のデモで掲げていたプラカードの文言やったと思う。
テレビで報道される度に映っていたから誰でも目にしている有名な文言でもある。
それがコンビニあたりで簡単にコピーできるとあって一般にも広く使われているようや。それを持っていることがブームになっているとも聞く。
教師が、その文言に賛同してかブームに乗っているかは別として、その文言が印刷されたクリアファイルを個人的に持っていることが、なんで責められなあかんのかと思う。
これと似たようなことが他でもあった。
http://www.asahi.com/articles/ASH7W5F37H7WPIHB01L.html?iref=reca より引用
駅前広場で政権批判、行事中止に 姫路市と主催側対立
兵庫県姫路市の「姫路駅北にぎわい交流広場」で労働組合が24日に開いた「駅前文化祭」で、安倍政権を批判するビラ掲示や寸劇があり、広場を管理する市が「にぎわいを創出する広場の趣旨にそぐわない」として途中で催しを中止させたことがわかった。
組合は「市の判断は納得できない」と反発している。
駅前文化祭は、姫路市や周辺の計16の労働組合でつくる西播地域労働組合総連合(西播労連、1324人)が主催。西播労連は24日午後5〜8時に「西播地域の文化団体の活動発表」を行うとして、今月8日に広場の利用を求めて許可された。
当日は護憲や平和活動などに取り組むバンドや合唱団など11団体が参加。市によると、催しの中で「アベ政治を許さない」と記されたビラが広場に掲示されたり、寸劇の中で「安倍政権はノーだ」といった発言が確認されたりしたため、午後7時ごろに中止を求めたという。
組合は混乱を避けるため中止を受け入れた。
西播労連の出田馨事務局長は「参加団体には表現の自由や思想・信条の自由がある。政治的な批判が含まれるから中止という判断は憲法違反。法的措置を含め対応を検討している」と話している。
市姫路駅周辺整備室の中坪義明参事は「主催者側に注意したがやめなかったので利用を制限した。他者を批判することは広場利用の趣旨にそぐわない。政治的な内容だからということではない」と話している。
というのが、それや。
『他者を批判することは広場利用の趣旨にそぐわない。政治的な内容だからということではない』という苦しい言い訳をしとるが、政府批判をしていることが最大の理由なのは明白や。
これも自民党もしくは政府関係者あたりからクレームがあったから、市側がそうしたと考える方が自然やろうと思う。
あるいは、市側の関係者自身が自民党に与していて政府批判が許せなかったのかも知れんがな。
いずれにしても、ここでも愚行が平気で行われていたわけや。
もっとも、これについては、さすがにまずいと思ったようで後日、市側は謝罪しとるがな。
http://www.asahi.com/articles/ASH9Y4VCLH9YPIHB01M.html?ref=yahoo より引用
政権批判の催し中止は「憲法違反」 姫路市、認める
兵庫県姫路市が7月、安倍政権を批判するポスター掲示や発言があったことを理由に催しを中止させた問題で、市は「中止は集会、表現の自由を保障した憲法に違反していた」とし、主催した西播地域労働組合総連合(西播労連)に対し、正式に謝罪することを決めた。
西播労連はこれを受け、市を相手取り約220万円の損害賠償を求めて神戸地裁姫路支部に起こした訴訟を取り下げる。
催しは西播労連が7月24日に開いた「駅前文化祭」。
市などによると、市が管理する「姫路駅北にぎわい交流広場」で、「アベ政治を許さない」と記したビラが掲示されたり、「安倍政治にノーと訴えましょう」との発言が続いたりしたため、広場の運営を市から委託されている業者のスタッフが、市の指示を受けて催しの中止を求めたという。
市は8月に謝罪する意向を示していたが、西播労連側は「形だけの謝罪では終わりにできない」として提訴。
「中止は違憲」と認めることなどを市に申し入れていた。西播労連側によると今回、市が違憲と認め、催しのやり直しに応じるなど申し入れの内容を大筋で受け入れたという。30日に市役所で正式に謝罪する。
と。
自民党の議員たちによる言論封じについては当メルマガ『第369回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その2 「沖縄2紙をつぶせ」発言の波紋』(注1.巻末参考ページ参照)でも話したことがある。
今年の6月25日、自民党の若手議員による憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合なるものが自民党本部で開かれ、その席上、「沖縄2紙をつぶせ」などといった意見が噴出していたことが発覚し、連日、テレビや新聞で報じられ国民の関心度が高まったというものや。
その時にも、ワシは『権力で言論を封じ込めようという時代錯誤もあるが、それ以上にこの会合に集まった自民党の若手議員たちは自分たちの無知さかげん、無能さかげんを見事に露呈しとると言うしかない』と断じたが、相変わらずやなと言うしかない。
そんな考え、やり方がいつまでも通用するわけがない。いずれ痛い目、大きなしっぺ返しを受ける時が必ずくる。
安保法案の強行採決以降、この一般女性読者のように『私は今まで選挙では自民党に投票してきましたが、最近の自民党のやり方にはついていけません』と言われる方がかなり増えている。
ただ、ネットの掲示板サイトでは、未だに安倍首相、安倍内閣支持の論調が根強いのも事実や。
また『第381回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その8 安保法案強行可決に見る新聞各紙の二極化について』(注2.巻末参考ページ参照)でも話したように、自民党政府寄りの論調に終始する新聞もある。
ちなみに、上記の報道は自民党政府寄りの新聞には一切掲載されていない。
まあ、新聞にどんな記事を載せようが新聞社の自由やから別に構わんがな。
それについて、どう思うか考えるかは、それぞれの判断に委ねたいと思う。
ワシからは、それについてどうこう言うつもりはない。どんな意見であっても尊重するという姿勢に変わりはないさかいな。
最後に、今回の件を勧誘時の雑談で使う場合は、いつも言うてることやけど、まず客の意見を訊くことや。
そして、勧誘している新聞が政府寄りか批判的かによって対応を考えたらええ。
勧誘している新聞が政府寄りであれば、その意見に近い客に勧め、違うようであれば、あきらめるか、話題を変えて再アタックするかやな。
政府に対して批判的な新聞の場合は、その逆といった感じや。
あるいは、説得力に自信があるのなら、その反対の意見の人に「自分と違う意見、論調を勉強されるのも良いですよ」と言って、敢えて自身が勧誘する新聞を勧めるというのも方法やと思う。
参考ページ
注1.第369回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その2 「沖縄2紙をつぶせ」発言の波紋
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-369.html
注2.第381回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その8 安保法案強行可決に見る新聞各紙の二極化について
http://melma.com/backnumber_174785_6263698/
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