メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第399回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2016. 1.29
■報道のあり方 その10 SMAP解散騒動記事の是非について
ある読者の方から、
SMAP解散騒動の記事はスポーツ新聞のみならず、一般紙にも掲載されました。巷では様々な憶測が飛び交っています。
この騒動について、マスコミ・報道業界に籍を置くゲンさんとハカセの見解を述べて下さい。
たかがこれしきの事でとか、たかがアイドルの解散などと見下す事は出来ません。
自殺者が出ても不思議じゃないですから。立派な時事です。
余談ですが、営業トークでゲンさんの様な親爺からSMAP等のアイドルの名前が出てくるのは面白いかもしれません。
というメールが寄せられた。
SMAP解散騒動というのは大きな騒動になったから、たいていの人なら知っておられるとは思うが、一応その発端となった記事を紹介しとく。
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1591422.html より引用
SMAP解散へ!木村拓哉以外ジャニーズから独立
国民的人気グループSMAPの中居正広(43)稲垣吾郎(42)草なぎ剛(41)香取慎吾(38)が、ジャニーズ事務所から独立することが12日、分かった。木村拓哉(43)は事務所に残る方向だが、グループはこれで事実上の解散となる。
SMAPは91年にCDデビュー。バラエティー番組で幅広い人気を得て大ブレークすると、木村が「ロングバケーション」などのドラマ主演で不動の人気を獲得。
中居がバラエティーやスポーツ番組の司会やキャスターとして才能を発揮するなど、メンバー個々の活躍もあって、スーパーグループに成長した。その人気ぶりは、たびたび社会現象としても取り上げられた。
グループとしては売り上げ250万枚の大ヒットを記録したシングル「世界に一つだけの花」をはじめ、「夜空ノムコウ」「らいおんハート」などヒット曲も多数ある。
メンバー5人が勢ぞろいする人気番組「SMAP×SMAP」をはじめ、各メンバーはテレビ各局で多くのレギュラー番組を抱えている。グループとして契約中のCMもあり、解散の時期は未定だが、各方面に激震が走ることは確実だ。
◆SMAP 88年に中居正広、木村拓哉、稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾、森且行の6人で「SMAP(Sports Music Assemble People)」を結成。
91年9月シングル「Can’t Stop!!−LOVING−」でCDデビュー。96年に森がレーサー転身で脱退。98年「夜空ノムコウ」00年「らいおんハート」はミリオンヒット。03年「世界に一つだけの花」は250万枚以上を売り上げた。
というものや。
この報道には、さすがに驚いた。しかし、それ以上に、新聞や週刊誌、テレビ、ネット上などの過熱報道の凄まじさには、もっと驚いた。
その騒ぎは、瞬く間に日本中は疎か世界中を駆け巡ったというさかいな。
過去、芸能人やタレント、アイドルなどの人気グループが独立して解散するというのは数限りなくあったが、これほど騒がれたのは、おそらく今回が初めてやないかと思う。
SMAPが国民的アイドルで大スターなのは間違いない。メンバーそれぞれが一流の歌手であり、俳優であり、名司会者でもある。
およそ芸能エンターテイメントに関するすべての分野でトップクラスであることに異論を挟む余地はない。誰もが認めるところや。
彼らに匹敵するグループは過去にはいないし、これからも出てくる可能性は少ないやろうと思う。
ワシの知る限り、一人一人がビッグネームになったグループはビートルズくらいしか思い浮かばん。
もっとも、世界レベルという点ではビートルズには劣るかも知れんが、事、日本国内においては、それに匹敵、もしくは凌駕しているのやないかと考える。
そのグループの解散、独立問題やから確かに大きなニュースやが、果たしてここまで騒ぎ立てるほどのことかとなると些か疑問に感じる。
あくまでもグループの解散、独立というのは個人の問題で、各自それぞれの意志で決めるものやと思う。
SMAPが解散して残念に思うファンの方々の気持ちは分かるが、人生の岐路に立ち、どの道をどう進むかの選択を迫られる時は誰にでも訪れる。
ファンは、その選択を見守るだけでええのやないかな。いずれの道を選ぼうと尊重するという姿勢で。
SMAPが解散した場合、ファンを止めると言われるのなら、それもええやろうし、メンバーそれぞれを、これからも個別に応援するというのもアリやと思う。
どんな形になろうと、彼らは今後も活動を続けるやろうからな。
『自殺者が出ても不思議じゃないですから』に関しては、今のところ、そういった極端な人はおられないから一安心やが、そういう可能性があると言われるだけで事の大きさがよく分かる。
ただ結果として、SMAPのメンバーたちは自身の冠番組冒頭で謝罪会見をしたことで解散が回避される流れになったようやから、その心配はせんでも済みそうやがな。
しかし、今回の騒動で一般には知られていない芸能事務所の裏側が明るみに出てしまったことにより、ネット上では多くの人たちが失望したという。
特にメンバーによる謝罪会見は最悪やったと。まるで、とんでもない不始末をしでかした罪人のごとく扱われていたと。とてもメンバーの意志が反映されているとは思えないものやったと。
ワシも正直、そう感じた。無理矢理、あの場に引き出され言わされている感が強いと。
報道だけが先行していて、いろいろな憶測が出ていたことで事務所の評判を悪化させないために、やらせたことやとは思うが、これは完全に裏目に出たと言うしかない。
先にも言うたように、独立するかしないかは、あくまで個人の意志、判断で決めればええことや。その結果がどうなろうと、誰かに謝罪せなあかん事とは違う。
世間を騒がしたという意味での謝罪なら、話の元が事務所の副社長が語ったことやと報道にあるのやから、事務所のトップが出て来て、その説明した上で謝罪せなあかんと考えるがな。
それが抜けて落ちているのは普通の感覚では理解できんことや。
独立することが事務所に対する重大な裏切り行為であるかのごとき扱われ、その仕打ちとして謝罪会見をさせたように見えた。罰として晒し者になって来いと。
ファンからすれば、とうてい受け入れることのできんことやったと思う。それが、ネット上で事務所の副社長らに向けた強烈なバッシング、批判となって表れている。
その批判の中に「SMAPのメンバー4人は奴隷のようだ」というのがあったが、「奴隷」は極端にしても所属しているタレントたちには多かれ少なかれ服従することが当たり前やとの意識が事務所側にあると、透けて見えたのは確かや。
事務所の副社長らには、所属のタレントに対して「雇ってやっている」、「仕事させてやっている」という意識が強いと。
独立でもしようものなら「裏切り者」として、タレント生命を奪おうと画策するのは普通にあることやという。
そんな実例実例を挙げれば、いくらでもある。まあ、ここで一々論(あげつら)うのは止めとくがな。
今までは、そのやり方でも良かったかも知れん。その実態が一般には良う分からんかったさかい、大した問題にならずに済んだ。
しかし、SMAPのメンバー4人に対しても過去のタレントと一緒に扱ったのは失敗やった。
所詮、単なるタレントやと思うとったのやろうが、彼らの存在は、そんな生やさしいレベルのものやないということに気づいてなかったようや。
謝罪会見直後から、ネット上では数万、数十万の人たちが批判コメントをそれぞれ思い思いにSNSで発信している。
その殆どはSMAPのメンバー4人への応援と騒ぎの元凶とされる副社長への批判で占められている。
SMAPのメンバー4人への応援については、具体的に過去に発売されたシングル曲を買うよう、その人たちがSNSで呼びかけた結果、普通では考えられない事態となって表れた。
その報道がある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160125-00000140-spnannex-ent より引用
購買運動花開いた!「世界に一つだけの花」異例12年ぶり3位
分裂の危機を乗り越えたSMAPの代表曲で、ファンが騒動の渦中に購買運動を起こした「世界に一つだけの花」が、オリコンの2月1日付シングルチャートで3位を獲得した。
1週間で4万7000枚を売り上げた。03年3月にリリースされ、同6月まで40回の1位を獲得。同年のNHK紅白歌合戦で歌われ、1位に返り咲いた04年1月19日付以来、12年ぶりのトップ3入りとなる。
歌手の訃報などでベスト盤などアルバムが再ヒットしたことはあるが、シングルが10年以上の年月を越えて上位に返り咲くのは「極めて異例」(オリコン関係者)。
サザンオールスターズが03年にデビュー25周年を記念して「勝手にシンドバッド」を再リリースした際に1位を獲得。その時の25年のブランクが最長記録として残っているぐらいだ。
購買運動が始まったのは、スポニチ本紙が分裂危機を報じて一夜明けた14日。騒動前に約258万枚だった売り上げを300万枚に到達させることで、分裂を阻止する世論を盛り上げようと、ファンがツイッターなどでCD購入を呼び掛けた。
運動の広がりの早さを物語るように、同曲は14日付デイリーチャートで9位を獲得。CD店やオンラインショップは品切れ状態になった。
25日付週間ランキングでは75位と06年1月30日付以来、10年ぶりのトップ100入り。15〜18日付のデイリーチャートは30位以下に下降したが、19日付で19位に入った後、3位→2位→1位と推移した。
オリコン編集主幹の垂石克哉氏は「品切れで一度順位が落ち、その時に入った注文分にメーカー側が対応。在庫が入ったことで売れ行きが伸びたのだろう」と推測。
「メーカー側の戦略もなく、シングルがトップ3に返り咲くのは記憶にない。ファンのSMAP存続への思いと団結力がうかがえる結果」と話している。
この事でも分かるようにファンの力を甘く見たらあかん。
購買運動が成功したということは、逆に不買運動をすれば同じような結果を招く可能性もあるわけやさかいな。
しかも、これは表に表れた人たちだけの行動で、サイレントマジョリティ(物言わぬ多数派)と呼ばれる人たちは、その数百倍、数千倍以上いると言われとるから、その力は推して知るべしやと思う。
冗談抜きに彼らSMAPのメンバー4人への扱いを誤れば、事務所は大きな代償を支払わされることにもなりかねん。その事を、どれだけ分かっているのやろうか。
理解していれば、あんな晒し者のような謝罪会見を、それも事務所側が作った作文を読ませるなどという分かりやすい愚を冒すはずがないと考えるのやがな。
あまりにも思慮が足らなさすぎる。
どの世界のどの組織のトップにも言えることやが、愚かな指導者は自身が絶対的な存在やと勘違いして何でも思いどおりになると考える傾向にあるようや。
その一人がジャニーズ事務所の実権を握っている副社長やと多くの人に知られしまった。
今までは社長のジャニー喜多川氏については所属タレントの口から「気の良い気さくな人」というイメージで知られていたが、副社長の存在など、それこそ芸能関係者以外は殆ど知られていなかったと思う。
ワシも今回の件で初めて、そんな人間がいとるのやと知ったくらいやさかいな。
加えて、そのジャニーズ事務所の副社長に追随するテレビ局や新聞報道の姿勢が透けて見えたというのも大きい。
言うとくが、世の中は、そういう連中で回っているのやないで。芸能事務所やテレビ局、新聞社は、それを利用するファンがあって初めて成り立っているもんや。
それを忘れたら明日はない。ファンの声は真摯に訊くもんや。そして、それを反映せなあかん。ワシは、そう思うがな。
ただ、そのファンにしても、すべてが的を射た批判をしているわけやない。愚にもつかん批判や噂をバラ撒く輩も多い。
「SMAP解散騒動は安倍総理の陰謀」というのがある。国民の目を国会から遠ざけるために仕組まれたことやと。
荒唐無稽な噂やと個人的には思うが、それがまことしやかにネット上で囁かれ大きくなっている。
甘利明経済再生担当大臣の「政治とカネの問題」での追求を掻き消すためとか、安倍総理の国会答弁の内容を国民に知らせないためとか、いろいろある。
甘利明経済再生担当大臣の問題については、過去、同じような事例が数多くあるから法律に触れていれば、それで処罰されるやろうし、それはそれでSMAP解散騒動とは関係なく連日報道されとる。
多少、その報道の枠が削られ、人々の関心も削がれているかも知れんがな。
それでも、結果的には昨の1月28日、甘利明経済再生担当大臣は疑惑の追及に耐えきれず辞任表明したわけやから、SMAP解散騒動とは関係のないところで事は進んだと見るべきや。
確かに、SMAP解散騒動時に行っていた安倍総理の国会答弁の内容は、とかんでもないことを言っている割には、あまり報道されていないというのはある。
現在国会で、自民党改憲草案の緊急事態条項について議論されているが、それについての報道が殆どなされていない。
これなんかは去年、強行可決されて大騒ぎになった『安全保障関連法案』以上の大問題やないかと思う。
平たく言えば、国(総理)が緊急事態と認めさえすれば個人の資産や権利を剥奪しても構わないという法律を公然と作ろうとしているわけやさかいな。
そのため議論が、まるで議論の体をなしていない。特に安倍総理の答弁が酷い。
例えば、福島瑞穂議員(社民党)が自民党改憲草案の緊急事態条項についての質問で、「ナチスの授権法『全権委任法』とまったく一緒ではないか?」と追及したことに対して、「緊急事態条項は諸外国に多くの例があり、そうした批判は慎んでもらいたい」という発言があったが、
野党の議員は政府与党、総理の姿勢、および政府から提出された法案の是非を質すために質問しているわけで、『批判は慎め』、『そんな質問はするな』といった返答は戴けない。
何があっても言うべき言葉やなかったと思う。過去に遡っても、こんな暴言を吐いた総理はいない。
通常、こういった返答をする人間は、それだけ追いつめられている、言葉に窮しているからで、それだけこの問題の難しさ、大きさを物語っているのやないかと思う。
当然のように、このやり取りで国会は紛糾したが、なぜかあまり大きく報道されてはいない。
そういった理由から安倍総理陰謀説が出ているのやろうが、これは陰謀でも何でもなく、たまたま同じ時期にSMAPの解散騒動が起きただけのことで、メディアは、こぞって、その報道に走ったのやと考える。
実際問題として、こんな事を陰謀として仕込むにはSMAPのメンバーや事務所の関係者、新聞社、テレビ各局すべてに手を回さなあかんが、安倍総理の国会での発言に会わせて、そこまでするのは物理的に難しいし、考えにくい。
そんなことまでせなあかんと考えるくらいなら、最初から、その発言を慎めばええだけの話やさかいな。
ワシの見るところ安倍総理は、それほど先のことや置かれた状況を考えて慎重に発言する人物やないように思う。
その場凌ぎの言い逃れが結構目立つ。そのため失言も多く慌てて訂正している場面をよく見かける。
そんな人物の発言を掻き消す目的で陰謀を仕込むというのは、あまりにも無理がありすぎる。
それに協力したところで、SMAPのメンバーや事務所の関係者たちに得る物は何もない。
それどころか、評判という芸能関係者にとっては、かけがえのないものを失うことになる。事実、そうなった。
そんな陰謀に与しても誰も得をしないという程度のことは事務所関係者やなくても誰にでも分かりそうなもんや。
それを分かっていて、そんな愚を例え政権側の頼みであっても従うわけがない。
ワシが『SMAP解散騒動は安倍総理の陰謀』説を『荒唐無稽な噂』と考えとる所以や。もっとも、ワシに限らず多くの人も、そうやと思うがな。
メディアが事件の大きさを測るのは、それがどれだけ視聴者の注目を浴びるかという一点に絞られる。
国のこれからの先行きより、SMAPの解散騒動の方が、はるかに大きな報道ネタやと判断し、また実際にも多くの人たちが飛びついたからこそ、争って報道したわけや。
哀しいことやが、それが新聞を含む多くのメディアの偽らざる姿や。事の大小、重軽の判断は、それでしかしない。
それはネット上で批判を展開している人たちにも同じようなことが言える。注目度が高いからこそ、こぞって批判や中傷を繰り返しているだけやと。
他にも謝罪会見でのメンバーの一人、草g剛氏が偽者の可能性があり、専門家の間では、偽者またはアンドロイドの可能性があるといったとんでもないバカげた噂がネット上を飛び交っているが、こうなると単に面白がっているとしか思えん。
SMAPの解散騒動にかこつけて楽しんでいるだけやと。昔から他人の不幸と揉め事は大きい方が面白いと言われているが、そういうことなんやろうと思う。
最後に『営業トークでゲンさんの様な親爺からSMAP等のアイドルの名前が出てくるのは面白いかもしれません』ということなら、
今から10年以上前に『ゲンさんの勧誘・拡張営業講座 第1章 新聞営業の基本的な考え方 人間関係構築編 その3 第一印象が勝負』(注1.巻末参考ページ参照)の中で少しだけ使っている。
その部分や。
当たり前と言えば、当たり前すぎるが、人は相手を第一印象でほぼ決めてしまう。この人間はこうやと。そして、その第一印象が悪いと営業ではまず売れん。
ということは、第一印象を良うすればええという発想が成り立つ。ところが、このサイトで散々言うてるように、新聞拡張員ほど第一印象の悪い人種はおらん。
どんなに風体、体裁を整えていようが、正直であろうが、新聞の勧誘に来たと知られると、それだけで胡散臭いと見られてしまう。
例え、それがキムタクのような容姿をしていてもや。……。キムタクならちょっと別かな……。
という風に。
確かに、今回のような大きな事案は格好の営業ネタになり、トークとしても十分使えるやろうとは思う。
世の中の大勢はSMAPのメンバー4人に好意的で、事務所側が悪という構図になっているから、それに添った勧誘トークを展開すれば効果があるかも知れん。
もっとも、その勧誘トークが使えるのは、ごく短い期間やろうがな。
結果として、現在は何事もなかったかのように彼らはテレビ画面に復帰して、茶の間を楽しませているが、ワシには、これで終わったとは思えん。
また、いつか再び起きる問題やろうという気がする。
ただ、その時は、新聞を含めたメディア全般、およびファンの人たちも冷静に見守って貰いたいと思う。まあ、無理かも知れんがな。
ワシが、この問題について言えることは以上や。
参考ページ
注1.ゲンさんの勧誘・拡張営業講座 第1章 新聞営業の基本的な考え方 人間関係構築編 その3 第一印象が勝負
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage9-4.html
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