ゲンさんの勧誘・拡張営業講座

第1章 新聞営業の基本的な考え方 
     人間関係構築編

その3 第一印象が勝負 


当たり前と言えば、当たり前すぎるが、人は相手を第一印象でほぼ決めてしまう。この人間はこうやと。そして、その第一印象が悪いと営業ではまず売れん。

ということは、第一印象を良うすればええという発想が成り立つ。ところが、このサイトで散々言うてるように、新聞拡張員ほど第一印象の悪い人種はおらん。

どんなに風体、体裁を整えていようが、正直であろうが、新聞の勧誘に来たと知られると、それだけで胡散臭いと見られてしまう。

例え、それがキムタクのような容姿をしていてもや。……。キムタクならちょっと別かな……。

つまり、それくらい、新聞の拡張員というのは印象という面では不利やということや。それやったら、この表題の「第一印象が勝負」やなんて、最初から成り立たんやないかと突っ込む人間がおるかも知れんけど、それが、営業の面白いところや。

マイナスが必ずしもマイナスとはならん。悪い要素の集合はプラスになるんや。小学校の算数でも習うたやろ。マイナスのマイナスはプラスやと。

何をわけの分からんことを言うてんねんと叱られんうちに説明する。

マイナスや欠点を逆手に取ることを考えるんや。

どういうことか、ちょっと、実践してみよう。

「ピンポーン」

「どちら?」

「皆さんにいつも嫌われてる新聞勧誘員でーす」

スコープを覗くと、そこには満面の笑顔の男が立っている。

客として考えてみよう。まず、変な奴が来た、と誰でも思う。次に面白いことを言う奴やなと考える。

ここで、忙しいか、新聞の勧誘の嫌いな者は追い返す。しかし、そんな人間でも「実は昨日、変な勧誘員が来てな……」と話のネタくらいにはする。

その時、相手に「それで」と突っ込まれたら「しもうた、もうちょっと相手して話くらい聞いとけばよかった」と後悔せんやろか。ワシならする。

そう思わせることが出来れば、その時は例え断られたとしても、第一印象の点で言えば点数が高いということになる。二度目は話を聞く気になっている確率が高いからな。

拡張員がそれほど嫌いやないという人間なら、変な奴やなと思いながらもドアを開ける。

「いつも、ご迷惑をおかけしているお詫びに、今日はY新聞をお勧めに来ました」と、何の臆面もなく、笑顔でいけしゃあしゃあと言う。

「あんた、ちょっと、おかしいのと違うか?」

たいていの客はこう言う。

「はい、皆さんにそう言われます。どうせ、新聞なんか売れませんから、やけくそでーす」

またも、笑顔でそう言う。

「何やそれ」

客は、変な奴やけど、面白いなと思う。この後、間髪を入れずユーモアを交えた勧誘のトークに持って行く。拡材を出して「持ってけ、泥棒」的な発言をしても、客は怒らん。

客の頭の中には、第一印象で「こいつはおかしな奴」「面白い奴」というイメージが刷り込まれとるから、何を言うても、それが面白く聞こえる。

もう、これで分かったと思うが、この客にとって、迷惑な勧誘員というマイナスのイメージがすでに、面白い勧誘員というプラスのイメージに変わっとるわけや。

それまで、その客が抱いていたイメージが悪ければ悪いほど「こんな奴もおるのか」と、思うて貰える。「それに、正直そうやしな」とまで、考えてくれたら、ほぼ成約や。

そんなに上手くは、いかんやろうと思うかも知れんが、これを実際に実践しとる男をワシは知っとる。成績は常にトップクラスの男や。

自慢話に聞こえるかも知れんが、この男に拡張の考え方を教えたのは、このワシや。ワシは滅多に人を教えるようなことはせん。

この男に見所を感じたからや。この男はまず性格が明るく、面白い。いつも、笑うてるか、そう見える風貌をしとる。物事にあまりこだわりがない。

営業にはこれは重要な要素や。常に笑顔でないとあかん。くよくよする人間は営業には向かん。

ワシが、この男に教える気になったのは、この男がもう一歩で殻を破れるのになと思うてた時に、助言を求めて来たからや。

憤せずんば啓せず。排せずんば発せず。

というところかな。本人がそうしたいと願っていてもその方法が良う分からんという人間に一言助言をする。それで、殻を破れる者は破れるという教えや。啓発の語源やな。

その時に、教えたことが、冒頭の「第一印象が勝負」であり「悪い要素の集合はプラスになる」という考え方や。

この男は、その考え方から、自分なりの営業トークを編み出した。しかし、何度も言うが、この男が成功した営業法が誰でも通用するとは限らん。この男は、この男なりに、ここまで来るには、相当の葛藤があったはずや。

天性のアホやない限り、誰でも羞恥心はある。しかし、それを気にしとったら、営業なんか出来ん。「身を捨てる覚悟」大袈裟に言えば、そんな心構えが必要や。

ワシは、助言の締めくくりとして、営業中は最後まで笑顔を絶やすなと教えた。笑顔が消えそうになったら、常に手鏡を持って笑顔を作る訓練をすることやと。

そして、公園かどこかで、声を出して笑い続ける練習をしろとも言うた。そんなアホなことをと思うかも知れんが、これが、羞恥心やてらいを吹き飛ばす一番ええ方法なんや。

この男は、それを忠実に実行した。言うのは簡単やが、誰にでも出来ることやない。それに、これは、もともと、この男がそれだけの下地を最初から持っていたから出来たことや。

実は、この笑顔を絶やすなということは、ある男からの受け売りなんや。ワシが自分で考えたことやない。ワシ自身これで救われたから、この男にも教えたわけや。

その話は『ショート・ショート 第3話 命の笑い』で詳しく話しているから、参考にしてくれたらええ。

ここでのまとめを言うと、第一印象を良うするためには、例えマイナス材料があっても、それをプラス思考に考え方を持って行けばええということや。

第一印象に全力投球。当たり前過ぎる考え方やけど、実践は難しい。創意工夫、それしかないやろ。 


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