メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第400回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2016. 2. 5


■報道のあり方 その11 テレビ番組制作サイドの出演者イジメについて


前回の『第399回 ゲンさんの新聞業界裏話  ■報道のあり方 その10 SMAP解散騒動記事の是非について』(注1.巻末参考ページ参照)に引き続いて、今回も芸能関係の報道問題について話す。

また時事ネタかと思われるかも知れんが、このメルマガでは読者からの情報や質問、疑問、相談などについて寄せられたメールを取り上げることが多いさかい、その点は理解して頂きたいと思う。

前回同様、今回も読者から、


お久しぶりです。ゲンさんやハカセさんは、すでにご存知でしょうが、ヤフーのトップニュースに、

▼石坂浩二イジメは氷山の一角?テレ東の悪評…下請け酷使&ギャラ未払い騒動、局員は高給
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160202-00010008-bjournal-ent

という記事がありました。

この内容が本当だとしたら、こんなにひどい話はないと思います。

いつのメルマガだったか忘れましたが、ハカセさんがテレビ局の制作スタッフと出演に関しての打ち合わせ段階で揉めたという話をしておられたと記憶しています。

この問題について、知っておられることや意見などがあればお聞かせください。

それと、この問題はネット上では大騒ぎになっていますが、なぜか新聞やテレビでは殆ど報道されていません。

新聞とテレビは関係が深いというのは、このメルマガで知りましたが、今回問題になっているテレビ東京と関係の深い新聞社というのはあるのでしょうか?

あるとしたら、それはどこの新聞社なのでしょうか?

そして、最後にどうして新聞やテレビは仲間内の不祥事を報道しないのでしょうか?

僕には分からないことばかりなので、よろしくお願いします。


という投稿があった。

まず、この読者の言われる記事から紹介する。


http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160202-00010008-bjournal-ent より引用


石坂浩二イジメは氷山の一角?テレ東の悪評…下請け酷使&ギャラ未払い騒動、局員は高給


 1994年の番組開始以来、『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)の司会を務めていた石坂浩二が今年3月限りで降板することが明らかになった。

 ここ数年、同番組内で石坂が発言する姿が流れるのは冒頭の挨拶シーンのみで、それ以外ではほとんど発言場面がみられなかった。

 制作会社のチーフプロデューサーが、編集で石坂の発言場面をカットするよう指示していたとも報じられている。

 テレビ東京側は、石坂の降板理由を「視聴率不振と20年以上経った番組の刷新が目的」と説明しているが、1月26日の平均視聴率(ビデオリサーチ調べ/関東地区、以下同)は13.7%で堂々の同時間帯1位。

 この日、民放のゴールデン帯で『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)に次ぐ2位だった。テレ東としては異例のことだ。

 騒動発覚前週の19日は11.7%、前々週の12日は9.9%、5日は9.7%だった。昨年12月1日には12.8%を叩き出すなど絶好調で、5回の放送中4回も2ケタに乗せている。

 制作会社関係者が話す。

「視聴率不振どころか、テレ東でこんなに数字を取れる番組はほかにありません。最近、テレ東は“低予算でも尖った企画の番組が多い”などと良いイメージで取り上げられる機会が増えていますが、業界内で積極的に仕事をしたい人はほとんどいません。

 今回の件では制作会社のチーフプロデューサーが問題になりましたが、テレ東局員には下請けへの見下し方が露骨なプロデューサーが多いのは事実です」

 また、別の制作会社関係者が憤る。

「下請けの扱いは他局と比べものにならないくらいヒドいですし、支払われる制作費も安い。『テレ東だから』を理由に、ギャラを渋る。こちらが何も言わなければ、確信犯的に払わない人もいますから。

 過去に著名なライターがツイッターでギャラ未払いを告白したこともありましたね。下請けを散々低賃金で働かせておきながら、手柄はプロデューサーが全部持っていく。

 あたかも、すべて自分ひとりで成し遂げたかのように振る舞う。腸煮えくり返っている下請けは相当数います」

 そうした扱いに対し、制作会社が改善を求めるようなことはできないのだろうか。

「そんなにヒドい扱いを受けるなら訴えればいいとか、仕事を受けなければいいなどと言われますが、制作会社などの下請けは弱い立場で、今や過当競争になっているし、そんな簡単にはいきません。

 仮に訴えたら、たとえ勝訴したところで業界での仕事がなくなるでしょう。そのうち、またテレ東関連でいつ問題が出てもおかしくないですよ。

『金がないのにがんばっている』と評価されることも多いテレ東ですが、その裏で割を食っているのが下請けであり、局員は高給取りであるという事実を忘れないでほしいです」

 テレ東の実態が今後、注目を集めそうだ。


というものや。

この読者の方は『この問題はネット上では大騒ぎになっていますが、なぜか新聞やテレビでは殆ど報道されていません』と言われておられるが、芸能関係に強いスポーツ紙では結構報道されとるがな。

今回、俳優の石坂浩二氏と『開運!なんでも鑑定団』の制作会社のチーフプロデューサーが、こうなった経緯については、


http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/01/28/kiji/K20160128011936290.html より引用


石坂浩二「鑑定団」降板の背景…酒席で口論、プロデューサーと確執


 俳優の石坂浩二(74)が、テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」(火曜後8・54)の司会降板を同局から通告されていたことが27日、分かった。3月いっぱいで交代する方向で調整が進んでいる。

今回の降板劇の背景でささやかれるのが、制作責任者にあたる制作会社所属のチーフプロデューサーとの確執。

 番組関係者は「数年前、酒席でプロデューサーが同席者とトラブルになった際、止めに入った石坂さんと口論になり、そのときから2人の関係性が良くない」と証言する。

 因果関係は不明。またスタッフと円滑な関係が築けなくなったなど、石坂自身に何らかの問題があったのかも分かっていない。

 でも番組関係者は「そもそもほとんど出番がないのに低視聴率の戦犯というのも不可解。番組の功労者に対し2年間にわたり居場所をなくさせお払い箱というふうに映るのは残念」と話す。

 功労者を納得いく説明のないまま切り捨て、評価額ゼロのガラクタ同然に扱ったようにも映る降板劇。古いものの価値を見いだすことを理念にしてきた番組だけに、疑問の声が上がりそうだ。


という報道記事が掲載されている。

これらの記事にもあるように『制作会社のチーフプロデューサーが、編集で石坂の発言場面をカットするよう指示していたとも報じられている』ということが、本当やとしたら大問題やと思う。

もっとも、せやからこそ、ネット上で、これだけの大騒ぎになっとるのやろうがな。

これについては、各方面様々な人たちが異口同音に『公然たるイジメだ』と言うておられるが、ワシも同意見や。

普段の石坂氏は収録の際には結構、長時間に渡り話されておられるとのことや。

そう証言される番組関係者や収録時に参加されている視聴者の方々が多い。

それからすると『本当やとしたら』やなく、限りなく事実に近いことのように思える。

スポーツ紙や週刊誌などでは大きく扱って報道しとるが、残念ながら、一般紙やテレビでは、この方の言われるように殆ど報道されとらん。

この件に関しては、どこからどう見ても石坂氏には何の落ち度もない。しかも、こんなことを2年間もされているというのに、あれほどの大俳優、大スターが愚痴一つこぼすでも苦情を言い立てているわけでもない。

一般視聴者から自然発生的に声が湧き上がり、ここまで広がったわけや。

新聞でも他紙に不祥事があれば結構叩いている。

去年、このメルマガ『第328回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書に見る誤報報道の真実とは』(注2.巻末参考ページ参照)の中でA新聞が、

『新聞他紙、週刊各誌、ネット上のブログやツイッターなどでは過去に類を見ないほどの強烈なバッシングを浴びせられている』と言うたが、この中にテレビ報道も当然のように加わっている。

A新聞の場合は、バッシングを浴びせられても仕方のない理由もあったが、石坂氏に関しては何もない。それどころか石坂氏に同情、擁護する声の方が圧倒的に多い。

普通なら、A新聞のケースと同様にテレビ東京が他局から叩かれてもやむを得なかったと思う。

石坂氏に対して他局は同情的で、少なくともテレビ東京と同じような扱いはしないだろうと考えていたが、実際は違った。

他局のテレビ局の中には、テレビ東京と歩調を合わせるかのような仕打ちに出たところもある。

その報道記事や。


http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0202/asg_160202_6787362871.html より引用


「鑑定団」追放の影響か?ダウンタウンの番組で石坂浩二が突然、消された!


 人気バラエティ番組「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京系)で司会を務めている石坂浩二が、3月で降板することがわかった。同番組は石坂の発言シーンが、不自然にカットされている点が視聴者の間で話題となっていた。

「『なんでも鑑定団』は今年23年目を迎える人気の長寿番組です。しかしこの2年間、司会の石坂が話すシーンがほとんど映らないため、視聴者の間で心配の声が上がっていました。一部報道によると石坂と番組プロデューサーの間に確執があり、番組側で意図的にカットしていたようです」(テレビ誌記者)

 テレビ東京の定例会見にて、社長は確執報道を否定したものの、結果的に石坂は降板が決定。4月からは、同局系列のBSジャパン「開運!なんでも鑑定団 極上!お宝サロン(仮題)」という新番組で司会を務めるという。

 また石坂がナレーションを務めていたフジテレビの番組では、ナレーションが突然変更され、視聴者を困惑させた。

「石坂はバラエティ番組『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)でナレーションを務めていたのですが、1月29日に放送された回で、何の説明もなく、声優の二又一成へ代わっていたのです。

 同番組は毎回、ディープなゲストが多いことで、石坂の温かみのある落ち着いた声のナレーションが視聴者から支持を得ていました。

 そのため今回の突然の変更には『石坂さんの声が好きだったのに!』『テレ東のいざこざが関係してるのか?』と心配する声が飛び交いました」(前出・テレビ誌記者)

 芸能界一の博識と言われ、かつてはウンチクで視聴者を魅了していた石坂。このまま地上派から追放ということにならなければいいのだが。


これでは、フジテレビもテレビ東京と歩調を合わせたのかと言われても仕方ないやろうと思う。

石坂浩二氏は、ワシの好きな俳優の中でもトップクラスの人や。

特に映画「金田一耕助」シリーズ6作はすべて観たが、金田一耕助は、まさに最高の嵌り役で、石坂浩二氏イコール金田一耕助というイメージしかなかったくらいやさかいな。

他には「ビルマの竪琴」や「鹿鳴館」、「竹取物語」、「日本沈没」、「沈まぬ太陽」、「図書館戦争」、「相棒」など多数の名作に出演されている。

もちろん演技力の秀逸さというのもあるが、それ以上に石坂氏が名前を連ねるだけで、その作品の価値が格段に上がることを映画の制作者は、よく知っているのやと思う。

テレビドラマに至っては、NHKの大河ドラマには実に13本もの作品に重要な役所として出演しているし、「天と地」では上杉謙信役で主役もされている。

東芝日曜劇場には9作品に出演し、「水戸黄門」シリーズでは水戸光圀を好演されてもいる。

「平四郎危機一髪」もワシの好きなテレビ番組の一つやった。他にも数え上げたらキリがないほど多くの作品に出演されている。

テレビのバラエティ番組での活躍も多く、「開運!なんでも鑑定団」の司会以外でも「スター千一夜」の司会、「クイズの王様」の司会、「世界まるごとHOWマッチ」の人気回答者、「ギミア・ぶれいく」の人気出演者、「世界ウルルン滞在記」の旅人など、誰もが知っている超一流番組に数多く出演されている。

その他、「ウルトラQ」や「ウルトラマン」シリーズのナレーターでも有名やし、テレビアニメのナレーターとしても人気が高い。

作詞家としても、かまやつひろし氏や沢田研二氏など大物歌手の作品を手がけ、テレビCMでは17本メイン起用されている。作家や画家としても有名で数多くの作品を世に出されている。

「開運!なんでも鑑定団」でも証明されているように骨董に関しても造詣が深いし、視聴者を楽しませる蘊蓄も豊富に持っておられる。

変わったところでは、プラモデルが好きで、それが高じて「日本プラモデル工業協同組合」の特別顧問までされているという。料理に関しても多数の書籍を出されていて好評を博している。

これほど、ありとあらゆる分野に才能を発揮されている大物俳優は他にはおられないと断言してもええ。

しかも、その人間性の素晴らしさは万人が認めるところや。石坂氏を見て嫌な思いをされる方は皆無に近いやろうと思う。

それを、タカがテレビ制作会社のプロデューサー如きが、ここまで愚弄し、公開でイジメに近いことをするやなんて言語同断や。一ファンとして許せることやない。

個人的な怒りで言えば、そのプロデューサーの名前をここで晒して糾弾したいところやが、それをしてしもうたら、ワシらが長年守ってきたポリシーに反することになるさかい止めとく。

もっとも、ワシらがそうせずとも多くの人の怒りを買ったことで、すでに数多くのブログ、ツイッター、フェイスブックなどのSNSで正体を暴露され集中攻撃されとるようやさかい、ワシらが今更、そうする必要がないということもあるがな。

ファンはテレビ局だけやなく、スポンサーにまで抗議しとるというさかい、近い将来そのプロデューサーの命運も尽きるのやないかと思う。

自業自得と言うて終えば、それまでかも知れんが、「イジメ」の対象にするには、あまりも相手が悪すぎたと言うしかない。信じられないことに、それに、まったく気づいていなかったわけや。

このプロデューサーに限らず、テレビ業界では驕り高ぶった制作プロデューサーが多いと聞く。自分より偉い者はいないと考えている者も多いと。

新聞社の販売部担当員も新聞販売店や新聞拡張員に対しては不遜な態度を取る者が多く、イジメに近いことをしているともよく言われているが、さすがに業界の功労者に対しては、そんな態度で接することは、まずない。

それではテレビ業界が異常なのかと問われると、ワシらには、それを否定することができん。

今回投稿された読者が『ハカセさんがテレビ局の制作スタッフと出演に関しての打ち合わせ段階で揉めた』と言われていたのは、2013年6月7日のメルマガ『第261回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■晒す値打ちもない出来事……あるテレビ番組制作会社のお粗末な対応について』(注3.巻末参考ページ参照)で言うてるように、

実際にハカセは、Tテレビ局編成制作局制作センター・バラエティ制作一部のHプロデューサーとやらと関わって嫌な思いをしたことがあったさかいな。

詳しいことは、そのメルマガを読んで頂ければ分かって貰えると思うが、ここにその一部を抜粋する。


その打ち合わせの場には、東京在住の業界関係者のK氏という方に同席をお願いした。

某テレビ制作会社は、出演者には現役の拡張員の出演を希望していた。ハカセは拡張員やないので、以前から懇意にさせて頂いていたK氏の方が適任だろうと考えたからやという。

もちろん、K氏の意向次第というのもあったので、勝手に決めるわけにもいかず、その確認の意味もあって打ち合わせの場に同席して貰うたわけや。

K氏は、ハカセの意図を汲み取り快く引き受けてくれた。

その打ち合わせは、当初、その制作会社のビル内で行うとのことやったが、約束の時間に行くと会議室が埋まっているとかで、急遽、近所の喫茶店内ですることになった。

ハカセは、事前に打ち合わせの日時を綿密にすり合わせていながら、場所すら確保していないのかと訝ったが、それがテレビ制作会社のやり方なら仕方ないかと従う外はなかった。

多くの番組を抱えていて忙しいのだろうと、そのときは、ただ漠然とそう捉えたという。

後に、ハカセたちをそれほど重要な存在とは考えていなかったための扱いやったと知ることになるわけやが。

先方は、窓口のAD(アシスタント・ディレクター)と、制作責任者だという某テレビ編成制作局のディレクターの二人やった。

その喫茶店で3時間近く、打ち合わせをした。その内容についての詳細は控えるが、一言で言えば何も知らない素人さんに一から説明するといったものやったという。

ワシらのサイトを見た上での出演依頼にしては、あまりにも知らなさすぎたと。

収録日は5月28日で、後日詳細を知らせるとのことやったので、ハカセはそのまま新幹線で帰宅した。

その後、帰宅したハカセにADが電話で補足の説明と情報を求めてきたので、それにも快く応じたという。

そこまでは問題なかった。

その後、ハカセに対するADからの連絡が、ピタリと途絶えた。

ハカセは収録日が延期にでもなったのかと思っていたが、K氏からの連絡で、予定どおり5月28日に収録することが決まっていると知った。

どうもハカセは除外され、制作会社はK氏に直接、出演依頼をしたようや。

それはええ。ハカセも当初、出演についてはK氏さえ良ければ任せるつもりやったさかいな。

K氏もハカセが制作会社にそう進言したものと考えていたので、制作会社からその依頼があった際、快く引き受けたという。ハカセの顔を立てて。

情報提供者であり窓口でもあるハカセを飛ばして勝手にK氏に出演交渉をした非常識なやり方に対して、少なからず気分を害したというが、K氏には何の責任もなく嫌な思いをして欲しくないと考えたということもあり、その気持ちをハカセは抑えた。

取り敢えず、ハカセはそのままK氏に出演するよう勧めた。ハカセのことは気にする必要はないからと言って。

それが一番丸く収まる方法やとそのときはそう信じたという。

それだけなら、そのまま済ますつもりやったから良かったのやが、その後、K氏から聞き捨てならん話を聞かされたことで、ついにハカセはキレた。

制作会社の人間が新聞販売店内の撮影をしたいというので、K氏は日頃から懇意にしている都内のある新聞販売店にその協力を要請したということやが、制作会社の人間は、その約束の時間になっても現れなかったという。

それも二日続けて、約束をすっぽかしたと。結局、撮影などは行われなかった。

そんな非常識なことは如何なる理由があろうと許されることやない。

K氏の面目は丸つぶれである。K氏は、それでも恨み言は一切言われなかったが。

さらにK氏は、制作会社のADにハカセへ一連の説明をしておいて欲しいと伝え、ADも「分かりました」と言っていたとのことやが、結局何もないままに日だけが過ぎた。

ハカセは、制作会社からの依頼で時間を割いて東京まで打ち合わせに行き、情報を提供し、できうる限りの協力をしたつもりやった。

しかし、5月17日、制作会社から「ありがとうございました。番組の構成が出来上がり次第一度送らせて頂きます。ご確認よろしくお願いします」というメールが届いて以降、一切の連絡を寄越さなくなった。

その後、あまりに何の連絡もないので1週間後の5月24日、どういう状況になっているのかとメールで尋ねた。

そのメールは無視された。何の返答も返って来なかった。

ハカセには意味が分からなかった。なぜ、こういう仕打ちを受けなあかんのか。一体、何をしたというのか。心当たりなど何もない。いくら考えても答は出て来なかった。

ハカセは、K氏の立場を考え、収録が終了する5月28日までは黙っていることにした。その間に、遅れながらでも説明があれば、それで良いと考えたというのもある。

しかし、その収録日の2日後になっても何の連絡もなかったため業を煮やし、メールで再度、説明を求めた。

今度はかなり強い調子で。もっとも、文面の言葉使いはやさしいがな。


先日、私がそちらに紹介したK氏より、無事放送の収録が終わったと聞き及びましたが、なぜ、それに至るまでの連絡が私にはなかったのでしょうか。

そちらは私に今回の出演依頼をされたのではないのですか。K氏へ出演依頼をされるのであれば、まず窓口である私に一言あってしかるべきではありませんか。

誤解しないで頂きたいのですが、私はそちらの番組に出演したくて、こんなことを言っているわけではないのです。

私は芸人でも何でもありませんから、テレビ出演などに興味はありません。

私は、そちらのたっての要望ということで応じたにすぎないのですから。

私は性質的に困っている、助けて欲しいという方に対しては何とか力になりたいと考える人間ですので。

その意味もあり、関東在住の業界関係者の方々の中から、K氏が最も適任だと思い紹介することにしたわけです。

そのK氏とはこちらで日程と時間の調整をした上で、そちらに赴いたのです。それなりに下準備もしていたわけです。

私は打ち合わせの段階でも申し上げましたように、そちらの番組が放映される日時と打ち合わせの様子などを当サイト、およびメルマガ誌上で話し、告知するつもりでした。

このままですと、そちらに対してあまり良い印象を持てなくなっているため、良い事が書けそうもありませんので、どうするか思案しているところです。

取り敢えず、本日中に文書で、今回、こういった判断をそちらがされたことに対する説明をお願いします。

また、このメールも無視されるようでしたら、残念ですが、次の段階に進みます。

K氏も私には気を遣ってくださり、収録時に「ハカセの方に何の連絡もして無いようなので一言でも経緯の説明を伝えておいて下さいと言ってあります」と連絡がありましたが、その必要などないと考えられたのでしょうか。

人をバカにするにもほどがありますよ。

一言言っておきますが、このメールを見られて慌てて電話で済まそうとは考えないでください。

私は関西人で気の短い男ですので、怒ったときの言葉使いは非常に悪いと自分でも自覚しています。

理不尽なことに対しては例え相手がヤクザであっても罵倒する男ですので、よほどの人でないと耐えられないと思いますよ。

何度も言いますが、文書にて説明してください。本日中に返答がない場合は、あなたにかけあっても無駄と判断して御社の上層部の方とお話ししますので。

私もできれば、そんな子供じみた真似はしたくはありませんが、今回の件に関しては、そちらに良かれと思って私なりに精一杯協力をしたという自負がありますので、納得のいく説明を受けなければ引き下がれないのです。

これ以上、くどくどと言うのは止めておきますが、くれぐれも本日中に事情を説明してください。よろしくお願いします。


さすがに、このメールには堪えたのか、ものの1時間もしないうちに制作会社のADから返信があった。


大変申し訳有りませんでした。

白塚さんには大変お世話になったのに本当に申し訳ないと思っております。

今回白塚さんにご連絡出来ていないのは、完全に自分がいっぱいいっぱいになってしまっていて、ご連絡出来なかったというのが理由です。

白塚さんに対してのお礼はもちろんさせて頂きたく思っております。

今回は、自分の不注意でしかございません。大変申し訳有りませんでした。


と。

正直、ハカセは言い訳しか返って来ないと思っていたので、僅かながらそのADを見直したという。責任を一身に被ろうとしていると。

このADが自分のうっかりミスで連絡をして来なかったのではないというくらいのことはハカセも承知していた。

おそらく、打ち合わせのときに責任者面して現れた某テレビ編成制作局の番組ディレクターとやらの指示やったはずや。ハカセを切れと。連絡など必要ないから無視しろと。

番組ディレクターは打ち合わせの場でもADに対して、かなり横柄に指示を出していたさかいな。

ADもその番組ディレクターの鼻息を窺いながらという感じやった。

その姿はまるで新聞販売店や新聞拡張団が、新聞社の販売担当員に接するのと似ていたと。そのADにとっては絶対的な暴君のようやったとハカセは言う。

それがあったから、そのADが忘れて連絡して来なかったとは、とても思えないと。もし、それが番組ディレクターの意思に反することやったら大変やさかいな。

逆に、番組ディレクターの意思が反映されていたと考えれば、ハカセに対して何も連絡がなかったというのも頷ける。

『完全に自分がいっぱいいっぱいになってしまっていて、ご連絡出来なかったというのが理由です』というのは、要するに連絡するのを忘れたと言うてるわけやが、それはどう考えてもあり得ない。

ハカセはメールで何度か事情を説明して欲しいと催促しとるのやから、忘れたというのは言い訳にすらならん。

連絡くらいはいつでもできたはずや。電話でなら1分もかからんさかいな。その連絡さえあればハカセも物分かりの悪い男やないから、それで終わっていた。

その連絡ができんかったのは、ここにきて「白塚さんへのご出演はご遠慮願って、K氏にお頼みしたいのですが」とは言い辛らかったからやろうと思う。

普通に考えれば、それがどれだけ失礼なことかくらいは誰にでも分かるさかいな。ハカセに限らず出演依頼した人間にそんなことは言えんわな。

そのADは、相当悩んだものと考えられる。

ワシらは数多くの相談を受けているから分かるのやが、気の弱い人は相手に対して申し訳ないと思えば思うほど、何も言えなくなってしまう状態に陥ることが、ままある。

その事から逃げる、関わり合いを避けることで自身の精神的なバランスを保とうとするわけや。

今回、ハカセへの連絡を怠ったのも意識的か無意識かまでは分からんが、そんな心理状態やなかったのかと分析する。

しかし、ハカセからのきついメールで逃げられんと判断して、先の謝罪文を送ってきた。

普通は、あれこれと言い訳をするものやが、このADはすべてを自身の責任として背負い込むことで事を収めようとした。

哀しい性と言うてしまえば、それまでやが、日頃から「悪いのはすべて私です」という風に振る舞うことが、そのADの処世術になっとるのやろうと思う。

それ故、ハカセは、これ以上は何も言わないでおこうと決めた。言えば、そのADを追い込むだけにしかならんからと。

本当は責任者面していた番組ディレクターに文句の一つも言ってやりたいのやが、そうするとそのADの立場がよけい悪くなると考えた。

そう言えば番組ディレクターは謝るしかないやろうが、その鬱憤がADに向けられるのは火を見るよりも明らかやさかいな。

テレビ制作会社の裏側を見た思いがしたとハカセは言う。

窓口にそういった何の力もないADを配置することで、不都合なことがあれば、すべて責任を被せて一切、知らん顔を決め込む腹やと。

弱い者が泣くシステムが自然に構築されていると。もっとも、このテレビ制作会社が特別で、その番組ディレクターの姿勢が特に悪いだけなのかも知れんがな。

これが一般の正常な企業なら、責任者が率先して事に当たるもんや。こんな非常識で非礼な態度を依頼人にとることなどはあり得ないし、考えられない。

ハカセは長い間、そういった約束事を重んじる企業や社会で生きてきたさかい、約束や筋道を通すことが常識やと思っていた。

しかし、そうではない世界もあるのやと今回、改めて思い知らされたという。世の中にはいろいろあるもんやと。

ハカセは、今回、なぜその制作会社がそういうことをしたのかを推察してみた。

どんなことにも、そうするからには、そうするだけの理由があるはずやさかいな。

打ち合わせの場では、しきりに、制作会社の人間は新幹線代などの交通費の負担をするとか、出演料を支払うとかの話をしていたが、具体的な提示は何もなかった。

後日、制作会社の経理から連絡があるはずやとは言っていたが。

ハカセを出演させると、その交通費などの経費が余分にかかると懸念してK氏に依頼することにしたのやないかと思う。K氏なら都内に在住されているから、少なくとも交通費の心配をする必要がなくなるさかいな。

もし、そうやとしたら如何にもケチ臭い話やが、あながち的外れな指摘でもないという。

特に昨今のテレビ業界は、新聞と同じく経営的にも厳しい状況にあるから、よけいやと。それもネット放送になると視聴者の確保もままならんさかい、尚更制作経費が抑えられるのやと。

また、担当責任者自身にも不必要な経費を計上していると上の者に思われたくないという意識が働いても不思議やないと考えられる。

ADの謝罪メールに『白塚さんに対してのお礼はもちろんさせて頂きたく思っております』とあるのも、暗に交通費や取材に対しての礼金を支払うという意味やろうが、そんなことをわざわざ書くこと自体が経費を気にしていた何よりの証拠やないかと思う。

あるいはハカセが苦情のメールを送ったのは、その金の請求のためやと考えていたとすれば、これほど人をバカにした話もない。

ハカセは、打ち合わせの場でも、抗議のメールでも、そんなことには一切触れていない。何度も言うが、制作会社の都合で好きにしたらええというのがハカセのスタンスやさかいな。

もっとも、最初に交通費や出演料、および取材に対しての礼金を支払うという話を聞いてから今日で、ほぼ1ヶ月になる。

謝罪メールがあってからでも1週間になるが、未だに、その件について経理とやらからは何も言うて来んがな。

どうでもええことやが、今後もそんな連絡が本当にあるのかは疑わしい限りや。

テレビ業界では名の通った制作会社で、誰もが知っている超人気バラエティー番組を制作しとるとのことやが、これではええ加減な会社やと思われても仕方がない。

少なくともワシらは、そう見る。

まあ、ワシらはテレビ業界のことなど何も知らんさかい、その世界ではそれが普通のことなのかも知れんがな。

いずれにしても、もう相手にするつもりはないとハカセは言う。

その制作会社をここで晒せば大きな問題になるかも知れんが、そんなことをしても何も得るものがない。不毛な争いに発展するだけ損や。

ただの鬱憤晴らしになるくらいが関の山や。そんな無駄なことに時間を費やすつもりは毛頭ない。ワシらは、それほど暇やないさかいな。

ただ、こんなことがあったという記憶だけは残るやろうがな。


結局、3年近く経った今に至っても何の音沙汰もない。

ワシらは、この件があって、今回の石坂氏の騒動から、いろいろなことが漏れ聞こえてきた事で、テレビ業界というのは、そんなところなのかと改めて思うた。

ハカセが接した番組制作ディレクターのHや「開運!なんでも鑑定団」のプロデューサーたちが特別質が悪いだけで例外的な存在なのかも知れんが、それしか知らんワシらには、どうしてもテレビ業界全体に対して悪い印象しかない。

ちょうど、それは悪質な新聞勧誘員しか知らん一般の人と同じようにな。

現在、民法テレビも新聞と一緒で視聴者離れが深刻な状況になっとるというが、こんなことを繰り返しとったら、それも無理はないと思える。

本来、面白い番組ですら見る気が失せるような番組にしようとしとるのやさかいな。

読者からの『今回問題になっているテレビ東京と関係の深い新聞社というのはあるのでしょうか?』という質問やが、答えは日本経済新聞社や。

テレビ東京系の地方放送局のビル名の多くが「日経○○電波会館」になっていることでも分かると思う。○○の部分は各地方放送局名が入る。

ちなみに、それらのテレビ局の役員も日本経済新聞社から出向しているというさかいな。

『最後にどうして新聞やテレビは仲間内の不祥事を報道しないのでしょうか?
』というのは、不祥事の捉え方に問題があると思う。

テレビ局にも新聞紙面と同じように編集を自由にできるという権限がある。

例え石坂氏の出番や発言が意図的にカットされていたとしても法律上は問題にされることはない。編集の裁量の範囲内ということで済まされる。

つまり、今回の件は、テレビ業界としては不祥事とは認定されんということやな。そのため他局で叩くことも新聞で叩くこともないというわけや。

芸能ネタを面白おかしく報道することで売り上げを伸ばそうとしているスポーツ紙や週刊誌以外は、ことさら報道する必要はないと考えとるのやろうと思う。

もちろんそれには、新聞とテレビ局が密接に絡み合っているということもあるがな。

しかし、今回の問題にジャッジを下すのは、あくまでも一般視聴者やと思う。

テレビ局が、このまま、この問題に蓋をする、あるいは良しとする姿勢を見せれば見せるほど視聴者の怒りが止まることはないやろうという気がする。

いずれにしても、この問題の収束はテレビ局が動かん限り終わらんやろうな。

最後に、ハカセの件でのテレビ局側の制作サイドの対応は完全にアウトやと言うとく。

番組ディレクター自身の口から『交通費や出演料、および取材に対しての礼金を支払う』と言っておきながら、今日に至るまでナシのつぶて、つまり嘘をついた、騙したわけやさかいな。

まあ、ハカセは、そんな金を請求するつもりはさらさらないとのことやが、そういうロクでもないテレビ番組制作会社のディレクターもいるということだけは言うとく。

考えようによれば、ええ勉強になったということなのかも知れん。また、ネタとして今回で二度、使わせて貰うたから、まったくの損ということでもないしな。



参考ページ

注1.第399回 ゲンさんの新聞業界裏話  ■報道のあり方 その10 SMAP解散騒動記事の是非について
http://melma.com/backnumber_174785_6321079/

注2.第328回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書に見る誤報報道の真実とは
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-328.html

注3.第261回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■晒す値打ちもない出来事……あるテレビ番組制作会社のお粗末な対応について
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-261.html


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