拡張の仕組み

since.2004.7 3 更新2013. 1.19


新聞の読者獲得は、勧誘営業に支えられているという構図は昔と変わりがない。自発的に新聞社や販売店に申し込んで来る客もいないことはないが少ない。

もっとも、最近は新聞社が電子版の新聞を売り出してはいるが、その売れ行きはあまり芳しくないようや。

その証拠に新聞各社とも、電子版の部数の公表は殆どしとらんさかいな。あまりに少ないので恥ずかしくてできんのやろうと思う。

まあ、これもワシがいつも言うてる「新聞は売り込まない限り売れない」というのを裏付けるええ証しになると思う。

営業の勧誘は販売店と拡張団がする。新聞社にも営業部はあるが、新聞社の社員がそれらの新聞勧誘員と同じように個人客を営業で勧誘することはない。公式にもしないと謳っている。

新聞社の営業部の仕事は、スポンサーへのご機嫌伺いが主で、販売部は販売店や拡張団の管理が主な仕事になる。

販売店や拡張団を直接管理する者を担当と呼ぶ。新聞社の中では下っ端でも、販売店や拡張団にとっては絶対的な存在である。少なくとも表向きは敬意を払われている。

担当は本社または支社から指示された新規読者の獲得部数のノルマを新聞拡張団に伝える。それを元に、各拡張団の能力に応じてそのノルマを振り分ける。

このノルマというのは一般が想像するよりも厳しい。成績の悪い拡張団は、業務取引契約の延長を拒否され、廃団に追い込まれることも珍しくはないさかいな。

それ故、拡張団によれば、そのノルマをクリアーするために団で、あるいは拡張員個人で、新聞を買うということもある。

ある拡張団などは数百部もの新聞が団の事務所に毎日配達されて来るということや。拡張員の10部、20部程度の新聞を自腹で買っている者もいとるという。

新聞販売店の場合は、このノルマが「押し紙」という形になる。

「押し紙」とは、新聞社が販売計画にもとづいて決めた部数を専属の新聞販売店に、ほぼ強制的に買い取るよう押しつけるところから、そう呼ばれている。

これは、新聞勧誘の実態と共に長く新聞業界のタブーとされてきたものや。

もっとも、近年では週刊誌などで、その暴露記事が頻繁に出回っているということもあり、広く一般にも知られるようにはなってきたがな。
 
押し紙というのは、その存在のあるなしを含めて新聞各社、各新聞販売店毎でそれぞれ事情がまったく違う。

押し紙がまったくない場合もあれば、かなりの量を抱えとるケースも存在する。

その確かなことは、どんなに優秀な捜査機関をもってしても調べることなど不可能に近いと断言できる。報道されているものは、ほんの氷山の一角にすぎんと。
 
新聞各社には部数至上主義という考えが強い。部数を増やすことのみに邁進してきたと言うてもええ。

それ故に新聞拡張員という特殊な営業員が生まれ、新聞の部数増にも大きく貢献してきたという事実がある。
 
部数至上主義の背景には、新聞社の総収入の実に半分近くを占める新聞紙面の広告収入が、その部数に比例するからやと言われている。
 
その広告収入を多く得るためには、どんなに無理でも困難でも部数を増やす必要があるからやと。せめて増えたという既成事実だけでも作っておきたいと。

それで、考えついたのが押し紙という手法やったわけや。
 
新聞社は部数を伸ばすために販売計画を立てる。新聞社の販売計画というのは増紙を意味する。減紙とか現状維持でええという考えは新聞社にはない。
 
新聞社にとって、その増紙先は販売店しかない。

ある新聞販売店に100部の増紙を依頼したとする。これは形の上では依頼であっても実質的には、その計画を立てた時点で100部の新聞を余分に買い取るよう、その販売店に強制していることを意味する。
 
その1ヶ月間で100部の増紙、つまり営業により、その分の顧客が獲得できれば何の問題もないが、それが達成できんかった場合は、その不足分を買い取らなあかんということになる。

新聞販売店には書店のような返品制度といったものは一切ないさかいな。
 
新聞社は、販売店に新聞を卸した段階で、部数増が約束されたことになる。

しかし、新聞販売店はそうはいかん。新聞販売店はその新聞の売り先を求めて、他紙販売店との間で熾烈な販売競争を余儀なくされる。
 
それが上手くいく販売店はそれでもええが、限られた読者の取り合いに終始するしかないわけやから、必ず敗者が出る。敗者はその押し紙による新聞を抱え込むしかない。
 
しかも、それは一度だけではなく、その販売計画の度毎に際限なく続いていくのが普通や。

結果、取り扱い部数の半分近くを占めるといった、とんでもない量の押し紙を抱えてしまったと嘆く経営者もいる。
 
ただし、表向きは、その押し紙の事実はないことになっとる。新聞社は当然としても、多くの販売店も公には予備紙の存在は認めても押し紙を認めることはない。
 
公にその押し紙の存在を認める販売店は、それに耐え切れず廃業を余儀なくされて裁判を起こした、あるいはこれから起こそうと考えとる人たちくらいなものやろうと思う。

俗に「押し紙裁判」と呼ばれとるものがそうや。ちなみに押し紙裁判では、一部の例外を除いて販売店側の敗訴に終わるケースが多い。
 
新聞社は、あくまでも新聞の発注は、販売店がするもので、その要望に合わせて新聞を卸しとるだけやというのが、その言い分や。
 
その際、新聞社は過剰な注文はしないようにとの通達を出すという。毎月の請求書にその文言を印刷したものを確認させたり、その誓約書まで提出させたりする新聞社もあると。
 
裁判所の判断は、それがあるからやと考えられる。

日本の民事裁判では、ほとんどが書類審査みたいなものに終始するさかい、書類に不備がなく法的に整合性ありと認められた方が、たいていは勝つ仕組みになっとる。
 
裁判所の裁判官が、実際にその舞台となった現場の新聞販売店に出向いて良く調べれば、また違った結果になるかも知れんがな。
 
ワシら業界人にとって押し紙は常識として存在するものでも、裁判所の判断では存在せんということになるわけや。

それには、どこまでが押し紙になるのか、ならんのかが分かりにくいということもあるからやないかと思う。
 
どんな新聞販売店にも配達されない「余剰紙」というのが必ずある。

押し紙を指摘して非難する者は、その余剰紙のすべてが押し紙やと主張するが、それは間違っている。
 
まず、予備紙というのがある。新聞販売店に限らず、予備の商品を備えておくというのは、どんな業界にも普通にあることや。また、それがないと困ることも多い。
 
新聞配達時の雨風の強い日には、突風やスリップなどによりバイクが転倒して事故を起こすことがある。そうなると、風のため飛散したり、転倒した場所が水浸しになっていて濡れたりすると、多くの新聞がダメになるという事態になる。

また、配達人の不注意による不配や誤配などの未配達新聞をカバーするためにも予備紙はなくてはならんものになる。
 
いかなる事情があれ「品切れ」を理由に新聞の配達をせんわけにはいかない。そう考える販売店が圧倒的に多い。

常に万が一を考慮する販売店では、必然的に予備紙も多くなるという理屈や。
 
さらに新聞の購読契約時、「無代紙」と言うて無料サービスを中心に勧誘している販売店では、その予備紙が多くなる傾向にある。

勧誘で部数が伸びる毎に、実際に売り上げにならずとも、その新聞が必要になるからな。

景品のみの場合にしても、契約当月分の新聞無料サービスというのをしているケースも多いから、予備的な新聞はそれだけ必要になる。
 
押し紙とは別に、販売店の余剰紙が多くなる原因に「積み紙」と呼ばれるものもある。

これは、新聞社から部数を押しつけられる押し紙とは逆で、販売店自らの意志で余分な新聞を買う行為のことを言う。
 
新聞販売店は、その取り扱う部数によりランク付けされている。新聞社や地域にもよるが、一般的に一万部の公売部数があれば、大規模販売店と認められることが多い。
 
この一万部の新聞を業界では「万紙」と呼ぶ。万紙以上を扱う大型店となれば、新聞社からの扱い、態度も違うし、意見も通りやすくなる。
 
一般的に、新聞社と販売店の関係では、圧倒的に新聞社の方が強い。両者の間に交わされている業務取引委託契約書の内容は、ほぼ一方的に新聞社側にとって有利なものになっとる。
 
新聞社の意に沿わなければ、いつでも契約解除することができるとその業務取引契約書に明記されとることからも分かると思う。

契約解除というのは、業界では「改廃」と言うて、事実上の廃業を意味する。
 
多くの新聞社では常に、代わりの経営者を養成、または用意しとるのが普通や。新聞社のWEBサイト上には、たいていその募集広告が掲載されている。

そこでは、その候補者がひっきりなしに集まってくるから、よけい新聞社は強気になり、現役の新聞販売店経営者は不安のあまり言うことを聞くしかないとなる。
 
つまり、新聞社は販売店経営者に対して生殺与奪の権利を握っとることになるわけや。

ところが、大型店ともなるとその事情が違うてくる。新聞社は部数至上主義のもと、部数を多く獲得しとる販売店ほど大事にする傾向にある。

あと僅かで、それに手の届きそうな販売店の場合、多少の無理を承知で積み紙をしてでも大型店の仲間入りを果たそうと考えることも多いという。

そうすれば、新聞の卸値を含めてあらゆる条件が有利になるさかいな。

押し紙には負担ばかりがあるわけやない。それを受け入れた販売店には、それなりの補助金が出る仕組みになっとる。

それについても新聞各社、各新聞販売店毎でそれぞれ内容も事情も違うが、大規模販売店になるほど有利になるのは間違いない。
 
また、改廃逃れのために顧客を獲得したと嘘の報告をして積み紙をするケースもある。これを新聞社は販売店の「虚偽報告」として裁判の場でも、そう主張している。

つまり、押し紙と言われているものの実態は、その虚偽報告があるからやと言うわけや。

まあ、その言い分は、事情を良く知るワシらからすれば無理がありすぎると思うがな。言うのは自由やが。
 
さらに、積み紙による公売部数の水増しは各販売店にとっても、その分、折り込みチラシ依頼業者からの持ち込み部数が多く見込め、その収入が増えることにもつながるさかい、一概にマイナスばかりとも言えない。
 
それら、諸々の事情から押し紙、積み紙などの余剰紙については販売店により負担に思うケースもあれば、そうでもない場合もあるということになる。
 
この押し紙を正面切って問題視する新聞販売店は少ない。内面的なことは伺い知れんが、少なくとも表向きはそうや。

それは、日本全国の新聞販売店が約2万店舗もありながら、実際に、その押し紙が原因で訴訟にまで至ったケースは、ほんの十数件程度しかないという事実からも推し量ることができると思う。
 
裁判で訴えた側が不利なのは、それも影響しとるからやないかと考える。訴えた側が、他の販売店を証人として使い辛いし、新聞社も他の店舗から苦情が上がってないということも、その理由にしやすいさかいな。
 
この押し紙、積み紙問題には、他にも数多くの事情、問題が内包しとる。それらについてもサイト内のあちこちで語っているので、見て頂ければ分かると思う。


更新2005.5. 3

新聞社の読者獲得は、自発的に新聞社や販売所に申し込んで来る客と、営業による勧誘とに支えられている。

自発的な申し込み客も、昔の電話主体から最近のインターネットの普及でネット上で申し込み可能となり、以前より増えているとの話やが、まだまだ営業による勧誘がなかったら維持出来へんのが実情や。

営業の勧誘は、販売所と新聞社から委託された拡張団がする。新聞社にも営業部というのがあるが、社員が拡張員と同じように個人客を営業で勧誘するちゅう話は聞かん。

大学出のエリート意識の高い連中にそんなことをやらしてたら、新聞社の社員はおらんようになるやろな。

骨のある奴に限るやろうが、新入社員に拡張をやらせてみるのもええかも知れんと思う。身分を隠してやで。もっとも、新聞の勧誘に来たというだけで他の拡張員と同列に見られるやろうけどな。

何の仕事もそうやけど、裏方の仕事を知るということは重要や。ついでに見んでもええ裏側も見えてしまうかも知れんがな。世の中、どんなことでも綺麗事だけでは成り立ってへん。

新聞も同じで崇高なジャーナリズムの精神も存在するが、それを支えている裏方に世間から蛇蝎の如く忌み嫌われとる拡張員がおるんやということも事実なんや。

新聞社の営業の仕事は、スポンサーのご機嫌伺いと、販売所や傘下の拡張団の管理や。部数確保のために尻を叩く。販売所や拡張団を直接管理する下っ端を担当と呼ぶ。

新聞社の中では下っ端でも、販売所や拡張団にとっては神様や。少なくても表向きは敬意を払われる存在になる。

販売所の従業員が配達や集金の業務の合間に勧誘することがあるが、そんな連中では大したことは出来ん。時間がないからだけやなしに、素人や団で使い物にならんかった者では勧誘の仕事は難しい。

連中がかろうじて出来るのは、止め押しちゅうて、現読の客に引き続き頼んで延長してもらうことくらいやが、そんな簡単なことも出来ん者が多いのが現実なんや。勧誘は、どうしてもワシらプロでないと務まらん。

身元の怪しい拡張員の中とは言え、団長と呼ばれる人間は身元が確かや。少なくとも、新聞社の信用はある。

断るまでもないやろうが、身元が確かやからというて、ええ人間ばかりやというわけやない。ごんたくれ揃いの拡張員を束ねるのに、どんな人間が必要かは考えるまでもないやろ。

拡張団そのものもそうやが、それを率いる団長にも、ええのもおれば、あくどいのもおるということや。しかし、そういうことは外からだけでは良う分からん。

実際にその中に入って見んことにはな。中に入って、しもうたと後悔したことのある拡張員はワシだけやないと思う。

担当は新規読者の獲得部数のノルマを本社または支社から指示される。それを元に、各拡張団、各販売所の能力に応じてそのノルマを振り分ける。ノルマの部数はその月によって変わる。

担当も毎月ノルマが達成されていれば、比較的余裕で、拡張団や販売所に対して締め付けることもあらへんやろけど、そうでなかったら大変や。

担当も成績が悪ければ叱責されるだけや済まん。出世はおろか降格や左遷もあり得るし、ボーナスにも大きく影響するから必死や。

当然、担当の支配下にある販売所や拡張団にもそれ相当のノルマが課せられる。ノルマが達成されればプレミヤという報奨金がつくが、そうでなければペナルティーとなる。

このペナルティーは場合によったら、改廃(販売所の廃止、主に店主交代)や団の再編まであるから、甘いもんやない。

新聞社が何でこれだけの力を行使出来るのかと言えば、援助金を出しとるからや。新聞社からの援助金なしでは販売所も拡張団もそのほとんどが成り立たん。団に至っては、100%子会社というのも珍しいことやない。

援助金というても、開業資金、部数援助金、拡材援助金などの他にもまだある。それは必要な時、また別の機会に言うことにする。

この中で、ワシらにも関係のある拡材援助金について話す。拡材は基本的に新聞社と販売所が折半で負担する。

例えば、一般的な拡材として知られているビール券やが、販売所は流通価格の半額で新聞社から入る。

他にも洗剤、台所用品などがあるし、新聞社によれば、プロ野球の観戦チケット、映画や演劇の無料券、遊園地などの無料券などを配給する。

それもすべての販売所で一律というわけやない。成績のええとこ、担当の受けのええとこが優遇される。言うこと聞かなしゃあないちゅうことや。

ノルマは当たり前やが、ワシらにも及ぶ。せやけど、このノルマいうのが曲者や。上からのノルマの指示は単に本数や。

どこで拡張しても同じやと思うとる。冗談やない。地域や販売所で全く違う。カードの上がりやすい販売所とそうやない販売所があるんや。

カードの上がりにくいのは地域で評判の悪い販売所や。まず、遅配、誤配、不配が多い。集金がルーズ。顧客とのトラブルが絶えんなどというのは最悪や。改廃寸前の販売所にこういうのが多い。当然、拡張員は行きたがらん。

担当は個人的な事情(例えば賄賂を貰っているなど)がなければ、常に成績のええ団、力のある団の意向を重視するから、そういう団はそんな販売所に行くことは少ない。反対に成績が悪く、力の弱い団はそういう販売所に廻される。

つまり、評判の悪い販売所には、ろくでもない拡張員しか行かんちゅうことや。顧客とのトラブルが絶えんところに、そんな拡張員が行けば当然の結果として、トラブルが増幅する。悪循環や。まあ、どっちも自業自得やけどな。

世間の拡張員に対する悪評は間違いなく、こういう状況に陥ったところから出とる。ワシが拡張員やから言うんやないけど、こんな最悪なところでもカードを上げんとめしが食えんから、少々強引になって脅迫まがいの勧誘になるんやろと思う。

それに、てんぷら(架空契約)も威勢よう揚がる。中にはエビフライやカツフライがある。こんなん、一々説明もしたない、どんなもんか想像出来るやろ。腹こわすで、ほんま。

反対に評判の良過ぎる販売店もカードが上がらん。評判のええ所は、すでに限界近くまで購読者を増やしとるからや。新規読者獲得には辛いもんがある。

せやけど、評判の悪い販売所よりかええ。評判のええ販売所の所長というのは気の利く人間が多い。ワシらのことも良う考えてくれるんや。

ワシらにとって、ええ販売所というのは、都市部にあり、評判は悪くないが部数が他に比べて少なく、所長が意欲を見せとる所や。その上、拡禁(拡張禁止の略)が少なければ尚ええ。

都市部にはいろんな客がおる。拡張も営業やから、人によって得手不得手というのが必ずある。客をアタックするのも自分の得意な客の方がやりやすい。

商店や会社の訪問の得意な奴、一戸建ての住宅専門の人間、アパート、マンションしか廻らん者などいろいろおるから、すべてが揃う都市部は都合ええわけや。

評判は悪くないが部数が少ない販売所がええいうのは、あんまり説明もいらんやろうけど、こういう販売所は他と比べて比較的新しい販売所が多い。

部数が少ないというのは、客になる人間が多いということや。もちろん、ただそれだけでカードが上がるほど甘うはないが、見込みは大きい。

販売所の所長が拡張に意欲があれば、拡材も奮発する。拡張は何というても拡材の善し悪しでかなり違う。他と比べて拡材が良ければ有利になり、こういう所では実際にカードも上がり易い。

さらに、拡禁が少なければ申し分ない。この拡禁について少し説明する。拡禁とはその販売所が、拡張員に拡張禁止を伝えて、そこでの契約は販売所では買い取らないと宣言している、個人や団体、地域のことや。

拡禁になるにはわけがあるが、大抵は過去に金のトラブルがあったところや。販売所にとって銭にならんと判断した所が拡禁になると思えばええ。

販売所にとっては単に銭にならんと判断しただけのことやろうが、その実態を知れば差別問題にもなりかねない大きな問題をはらんどる。

金払いの悪い客やがこれは本人が悪いから問題にならん。問題なのは、外国人というだけで拡禁という販売所が多いということや。

本人が希望しないというのであれば仕方ないが、中には日本語の勉強や情報が欲しいために新聞を読みたいという勤勉な外国人もおる。

しかし、そんな個別の事情を考慮することは販売所はせん。あるいはその外国人が直接、販売所に申し込めば購読可能かも知れんが、拡張員の持ち帰ったカードやったらまずアウトや。

もっとも、悪い拡張員もおるから仕方ない面もあるがな。言葉も満足に話せん外国人を騙すような形で契約を取る奴がおるからな。販売所にしたら、外国人とのトラブルはやっかいやし、避けたいと思うのも当然や。

同○地区というのも拡禁に入っとる場合がある。こんなこと知れたら大変やと思うんやが、ワシらが拡禁場所としてプリントを渡された中に堂々とその地域が全域拡禁と書いてある。さすがに、同○地区とは書いとらんが、住所ですぐ分かる。

差別は他にもある。持ち家と賃貸では条件も拡材も違う。例えば、持ち家の場合は1年以上の契約でもOKやが賃貸になると1年が限度、安アパートは6ヶ月、学生に至っては3ヶ月しか認めん販売店もある。

拡材も持ち家の方が圧倒的にええ。販売店にしたら、持ち家の住人は永続性があり、賃貸はいつ引っ越すか分からんからというのが理由のようやが、これは考えようによったら失礼な話や。貧乏人は新聞読まんとけと言うてるようなもんやさかいな。

これらの拡禁も、意欲のある所長やとかなり緩和されとる場合があるから、ワシらとしては有り難い。

こんな具合やからカードの上がりやすい販売所と、そうやない所の違いは歴然としたものになるんや。

せやから、単に契約本数でワシらの能力を云々するのはどうかと思う。しかし、新聞社に限らず、日本の社会、特に企業は数字が好きや。

能力や実力を計る手段として必ず数字を使う。学業や試験制度は言うに及ばず、企業の業績や信用度も必ず数字で判断する。

誰が何を言おうと日本ではそれが正しいとされるから、ワシは何も言わん。まあ、ハカセだけはワシの愚痴を喜んで聞いてくれるから話してるだけや。

新聞社が販売所や拡張団の能力、実力を計る方法として採用しているのが、拡張コンテストという競技会や。頻度は新聞社や地域によっても違うが年2回くらいはやっとる。

上位にランクされれば、プレミヤも多く、後々の新聞社からの受けも良うなる。また、販売所や拡張団にとっては金だけやなくプライドもかかるから、それなりに力も入れる。

これには、団体戦の他に個人戦もある。表向き登録出来るのは販売所の人間ということになっとるが、エントリーしとるのは大半が拡張員や。

上位者は、支社の慰労会で表彰される。わしも、そこで表彰されて行ったことがある。それまで、滅多に着たことなんかあらへん背広を着て首締めて出んとあかんのやで。たまらんで、ほんま。

まあ、表彰されると実入りもええし、団や販売所からも一目置かれるから悪い気分はせんかった。

せやけど、この部数競争というのは考えもんやと思うで。何でも有りの営業になってしまいがちやからな。

正攻法?を売りにしとるワシまでその場の雰囲気でタブーを冒してしまう。この時期に、クレームやトラブルは多い。

ある新聞社のトップの言葉やないが「部数を絶対死守しろ」というのが、この業界の掟や。そのために、ワシら拡張員の存在がある。この業界のしくみが間違いなくワシら拡張員を生んだんや。

現在、この業界を取り巻く環境は厳しい。インターネットの急速な普及もあり、いつまで新聞という媒体が存続するのかは甚だ疑問や。

一般読者が新聞を購読する意味が、新聞社には分かってないと思う。毎日、実際に町中を拡張で廻るワシらには良う分かる。

このサイトを心ある新聞社の関係者に読んで貰っていることを期待して、少し話すから考えて欲しい。

一番多いのが、惰性というやつや。長いこと○○新聞を読んどるから、いまさら変えられんという読者や。年輩に多い。

この層はインターネットとは関わり合いが少ないから、滅び去るまではその新聞を読むやろ。何しろ、字が読めんほど目が悪うなっても新聞を購読しとる老人もおるくらいやからな。

主婦層もあまり新聞本紙は読まん。目当てはスーパーなんかの折り込みチラシや。当然のように折り込みチラシの多い新聞を選ぶ傾向にある。

次が意外に思うかも知れんが、拡材目当ての読者や。これも結構おる。まあ、こういう人間がいてくれるからワシらも何とか食い繋ぐことが出来るんや。もっとも、この人種は拡張員が育てたというても間違いないけどな。

これだけのことで大体、分かったと思うが、ほとんどの人間にとって、新聞の内容なんかどうでもええのんや。ニュースが知りたかったら、テレビでも見とったら済むさかいな。

本当に、新聞を情報として役立てとる人間は、そうやな1,2割いたらええ方と違うか。しかし、そんな情報を欲しとる人間は、今やほとんどがインターネットに移行し始めとる。インターネットで新聞を読んでいるからと、ワシらの勧誘を断る者が急増しとることで分かる。

哀しいけど、これが新聞の実態なんや。ワシかて、日本には立派な新聞記者が多いということは知っとる。せやけど、何ぼ心血を注いで新聞記事を書いても読んでくれんかったら悲しいわな。

ここまで、黙ってワシの話を聞いていたハカセが小さく頷いて言うた。「良く分かる。しかし、新聞は実際に売れているから読者に読んで貰ってると信じることが出来る。私のように、本当に売れない物を書くのは辛いよ」

ワシにはコメントのしようがあらへんが、これだけは言いたい。このままではいつの日か必ず新聞という媒体は消滅するやろ。世の中、必要とされんものは滅びるしかないんや。

そうならんように、心ある新聞関係者の奮起を期待したいと思う。ワシら拡張員が何ぼ奮起しても深みに嵌るだけやからな。


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