ゲンさんの勧誘・拡張営業講座

第1章 新聞営業の基本的な考え方

法律・規則編

その5 景品表示法についての考え方


独占禁止法の補完法ということで、この景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)というのがある。この法律を運用する機関が公正取引委員会や。国の行政機関で内閣府の外局という位置づけになる。

新聞勧誘の景品がこの法律の対象になる。新聞勧誘の場合、景品の上限は業界の自主規制によるものとされとる。新聞業界の自主規制が、公正取引委員会の認定を受けることで法律になるということや。

因みに、現在の新聞業界の自主規制は、景品の最高額を取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲ということになっとる。

この法律で言えば、6ヶ月契約以上はすべて同じ金額相当の景品以内ということになる。つまり、6ヶ月契約も1年契約も渡す景品は同じやないとあかんということになる。

しかし、実際はそんなことはないというのは、ほとんどの人間が知っとる。6ヶ月契約よりも1年契約の方が、景品が多いのは当たり前というか常識や。

はっきり言うてこの法律は、ワシら拡張員には何の拘束にもならん。ワシらは、入店した販売所の決まりを守るのが第一やからや。販売所の決めた景品内で拡張するのが、拡張員の基本的な仕事や。

もっとも、その景品表示法の法律違反を犯すことでワシらに、何らかの罰があるというのなら別やけど、それはない。

この景品表示法は独占禁止法に含まれるもので、あくまでも業者を取り締まる法律や。拡張員個人を取り締まるもんやない。適用されるのは、新聞販売所だけやと言うてもええ。

新聞社は景品勧誘に関しては表向き関係ないという姿勢や。むしろ、自主規制を打ち出して公正取引委員会に協力しとるということになっとる。裏では、部数至上主義で煽りながら、表は違う顔をしとるわけや。

公正取引委員会が規制する一般的な景品の上限は、取引価格の10%や。新聞業界の自主規制が8%ということだけを見ても、体裁を良うしようというのが分かる。

理不尽やが、この業界でめしを食う限りは、この理不尽さとも上手く付き合わなしゃあない。これは、何も新聞業界だけやなしに、一般社会でもこれに類似したことは何ぼでもある。

とかく、世の中は理不尽と思えることが多いもんや。そのことを一番良う知っとるのは、ワシら拡張員のように世の中の底辺で喘ぐ人間や。

しかし、この法律に関して言えば、販売所が一番割を食うことになる。この法律で摘発されるのは新聞業界では販売所しかないからな。

せやけど、摘発頻度となるとそんなにはない。その摘発をする公正取引委員会にしても、多寡が知れてる組織やからな。

公正取引委員会の正職員は300名足らずしかおらん。しかも、そのほとんどが、本元の独占禁止法の調査や摘発に忙殺されとる。

景品表示法の調査や摘発にしても、新聞業界だけが相手やない。対象業種、業者も膨大な数や。それらを書き連ねるだけでもこのページだけではしんどいし、書く気もせんほど多い。

しかも、調査対象が、商品の容器や包装、チラシ、パンフレット、ポスター、インターネットなど、ほとんどすべてが網羅されとると言う。

こんな状態で新聞勧誘の景品の多寡を調べ上げられるわけがない。その新聞販売店にしたかて数千店舗もあるんやで。それも日々、増減を繰り返しとるから、その実数すら掴みにくいはずや。

同じ店舗でも経営者が変わることはしょっちゅうある。経営者が変われば、摘発する側はその対象が新たに増えるということや。この新聞業界は2,3年で改廃や経営者交代という事態になることはそれほど珍しいことやないからな。

手が回るわけがない。そうは言うても、何も公正取引委員会が手をこまねいとるというわけやない。消費者モニター制度というのがある。全国で1000名のモニターが新聞業界の不正に目を光らせていると言う。

これは各県の公正取引委員会がそれぞれ決められた人員の募集を個別にしとる。募集時期はそれぞれの公正取引委員会で違う。応募は毎回かなりあるようや。しかし、全国で1000名になるように割り当てられとる。狭き門らしい。

その消費者モニターを経験したというサイトの訪問者から、

『消費者モニターという仕事は、いくらボランティアとはいえ、依頼先からある種の権力のようなものを与えられたという錯覚に陥りやすいと考えます。それゆえ、「一度やったらやめられない」みたいな人がけっこういる可能性があります』

という投書を貰うた。調べてみると、1000名の内、平成14年度では926名が何らかの報告をしとると言う。この投書は、その消費者モニターの積極性を裏付けとると思う。

その平成14年度でモニターにより公正取引委員会が、制限額を越える疑いのあるとしたものは56件あったと言う。しかし、この中から、公正取引委員会が摘発し、排除命令を出した記録は未だにない。少なくとも、ワシは知らん。

この排除命令というのを説明しとくと、違反者が投獄されたりとか罰金刑があるとかということやない。今までの罪を認めてこれからは違反しない、ということを公示しなさいということや。

そんなものかと思うかも知れんが、当事者は信用もなくすし商売に大きく影響するから甘いもんやない。

実際に販売所が摘発されたというのは、4年ほど前の和歌山県の販売所くらいしか、ワシは知らん。

何やと安心しとっても知らんで。ワシの知る限りほとんどの販売所が、いつ摘発を食ろうても不思議やないからな。

摘発を食らうのは何も行き過ぎた景品拡張がある場合だけとは限らん。この和歌山県の販売所にしたかて、1年契約でビール券10枚の景品で摘発されたんや。拡張員なら、誰でも何でやと思う程度や。

本当は、公正取引委員会も根こそぎ摘発したいんやろうけど、組織的に難しいということや。1件の法律違反を立証するだけでもかなりな期間と調査、人員が必要やからな。それも、摘発調査しとることを気づかれずにや。

せやから、摘発された所は運が悪かったと嘆く。丁度、自動車で高速道路を走行中、皆が20qオーバーで走行しとるからと同じように走ってて、たまたまそのすぐ後ろにおった覆面パトカーに捕まるみたいなもんや。

こんな場合でも、他の車も同じやないか、他のも捕まえんかいと喚く奴もおるが、これは無駄なことやいうのは誰でも分かるわな。そのパトカーは1台しかおらんのや。1台のパトカーで捕まえられるのは1台の違反車だけやからな。

他がやっとるからと言うてその罪が許されることはない。もっとも、この和歌山県の場合はその主張が認められたのか、この地域の全国紙4社の販売所が芋蔓式に摘発されたがな。

拡張員も、捕まることがないから関係ないとも言えん。その拡張員の行き過ぎた景品勧誘で公正取引委員会に目を付けられんとも限らんからな。

そうなれば、その拡張員が法律では裁かれんとしても、何のお咎めもないほど業界は甘うはない。それ相当のペナルティーは覚悟せなあかん。

せやから、拡張員としたら、販売所の指図通りか、それ以下の景品に押さえるようにしとかんとあかんと言うことや。

もしくは、ワシの良う使う手口やが、これはワシ個人のサービスやということを強調しとくことやな。せやけど、その場合でも、なるべく金はかけんようにな。

その辺りの詳しいことは『拡材編 その2 拡材に金をかけるな』を参考にしたらええ。

無代紙というのがある。この法律で使う用語や。ワシらは単にS(エス)と呼んどる。サービスの新聞代のことや。

例えば、1年契約で3ヶ月の新聞代が無料というやつや。これは、何のお咎めもない。景品扱いにはならん。値引きと同じ扱いとなる。値引きはこの法律の規制の対象にならんということや。

但し、ここが法律のややこしい所なんやが、勧誘員がこの無代紙と景品の両方を提示し、客がこの無代紙のサービスの方を選ぶと、景品表示法の規制にかかる。

併用も同じことや。例えば、無代紙のサービスに洗剤を1箱でも付けたら、この法律の規制対象になるということや。何やペテンのような法律やが、決まりならしゃあない。

こういうことがあるから、拡張員もせめて勧誘や拡張に関する法律くらいは知っておかなあかんということや。世の中、悪気はのうても知らんがために犯す法律違反ちゅうのは結構あるからな。


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