ゲンさんの勧誘・拡張営業講座
第1章 新聞営業の基本的な考え方
人間関係構築編
その6 基本を知り基本から脱せよ
どんな仕事でも基本は知っておかなあかん。新聞の拡張は、断るまでもないが、営業の仕事や。せやから、最低限度の営業の基本はマスターしといた方がええ。
訪問する客の中には、会社で営業の仕事に携わっとるという人もおる。そんな人は、接客態度が悪ければそれだけで相手にしようとせん。間違いなく程度の悪い営業員と見る。
ただでさえ拡張員は悪いイメージで見られとるのに、それを裏打ちするような態度では救いがない。
逆にきちっとしとれば、こういう人間はそれなりの応対をする。習性というか条件反射みたいなものもあるんやが、意外性を感じるんやな。拡張員にもちゃんと接客が出来る者もおるのかと。
せやから、営業マナーを身につける勉強はしといた方がええ。それが基本や。その基本を教えて貰える団におるのやったら問題ないが、ワシの知る限りそういう団は少ない。
せやから、教わることが出来ん場合は、本を読むだけでも違う。そういった類の指南書は本屋で探せばナンボでもある。別に、古本屋で探してもええで。営業マナーに新しいも古いもそれほど関係ないしな。
今更、付け焼き刃はどうも苦手やと思うんやったら、せめて丁寧語か敬語を使うようにして拡張するように心がけるんやな。
最初から、ぞんざいな口調はマイナス面が多過ぎる。程度が悪く胡散臭いと見られがちや。そう思われるのもええ気がせんやろ。
逆の立場で考えたら、すぐ分かることや。拡張員をする前は、普通の会社員やったというケースが多いと思う。そんなとき、いきなり家に現れて「兄ちゃん、新聞取ってくれへんか」と言われてええ気がしたかな。せんかったはずや。
営業の接客は、お願いしますの気持ちと態度は最低限必要なものやと思う。最初から相手の気分を害しとるようやと営業にならんわな。
それなら、その営業の基本さえマスターしたら、契約が上がるのかと言えば、その保証はない。ただ、心証のええ方が有利やと言うだけや。
反対に、客の中にもいろいろおって、如何にも営業員然とした人間を嫌う者もおる。そういう人間は、セールスというだけで嫌悪感を示す場合がある。これは主婦層に多いな。
こういうタイプは営業員によいしょされるより、ざっくばらんな接し方の方が効果的な場合もある。ただ、こんな場合でも呼び方は工夫しといた方がええけどな。
一番無難なのは、相手の名前で○○さんと呼ぶことや。名前で呼ばれると不思議と親近感が湧くもんや。他には主婦なら「奥さん」。若い独身の女性なら「お嬢さん」。その家の旦那なら「ご主人」というところが無難かな。
間違うても、初対面で「おっちゃん」「おばちゃん」「兄ちゃん」「姉ちゃん」は止めといた方がええ。こういうのが、一番評判が悪い。こういう言い方を平気で使う人間は、親しみの意味をはき違えとる。
相手の職業や様子で変えるのも手や。例えば、商店主なら「大将」とか「社長」。職人なら「親方」なんかも人によれば効果がある。
まずは基本の応対から入って、相手を見て、親しみのこもるような言葉使いをするのも、一つの営業テクニックや。
これが、表題の「基本を知って、基本から脱せよ」に繋がる。同じ、ざっくばらんに砕けた言葉使いをしていても、その基本を知ってそうするのと、何も知らずにそう言うてるのとではえらい違いになる。
基本を知っとる者は節度というのをわきまえとるから、相手に嫌悪感を感じさせることは少ないが、何も知らん者は程度の悪い人間としか見られんのや。
この差は大きい。営業は言葉でするものやから、まずその言葉使いで気に入られんと難しい。もちろん、笑顔や接客態度も必要やが、その前に言葉遣いやな。
良うベテランの拡張員の中には、拡張員はこれでええんやみたいなことを言うのもいとるけど、それで通用する客だけをターゲットにしとるから、それでええと言えるだけのことや。
この仕事を長く続けとると、どうしても得手不得手の客というのが、はっきりと色分けされてくる。そのベテランは、そういうことを知り尽くして自分の得意とするタイプをターゲットに出来るようになっとるから、そう言えるだけやと思う。
それは人に教えられることとは違う。その本人だけのことやからな。経験の浅い人間が、その部分だけ真似ても成功する確率は極めて少ない。やはり、最初は基本的なことを知っとくべきや。
その上で、自分にあったスタイルを見つけ、基本から脱することが出来るのが一番ええ。口で言うのは簡単やが、なかなか出来る者はおらん。逆に言えば、それが出来れば人より抜きん出ることが可能になるということや。