ゲンさんの勧誘・拡張営業講座

第2章 新聞営業の実践についての考え方

拡張パターン編

その2 自由拡張についての考え方


これが、一番多い一般的な拡張や。それには、拡張団や販売所が拡張員を個別に監督管理する必要が少ないからという理由でそうしとるというのが実状や。

自由に拡張すればええということやから簡単なように思えるが、これが、意外に難しい。どんな仕事でもそうやけど、さあ、自由にしなさいと言うて、そのように出来る者は少ない。

もっとも、自由と言うても、最低限の拘束はある。その日に指定された販売所のルールで拡張せんとあかんがな。

営業時間は入店時間から終了予定時間までや。一般的に昼の12時から午後8時くらいまでが普通や。その間は、販売所のルールさえ守っとったら、どういう拡張をしようと構わん。

ただ、拡張団の多くは、複数の販売所に出向く日程を組むため、その行き先次第でルールも違う。せやから、それぞれ個別に覚えなあかんがな。

この営業は基本的に一人で廻って叩く。この一人でするというのが難しい。仕事をするかせんかはその拡張員の意志次第やからな。

一人で仕事をするということは、誰の目もないから、自分を律することが出来んとあかん。人間は弱いもので人の目がないとついサボりたくなるもんや。

金に余裕のない者や、成績が悪うて尻を叩かれとる奴は、仕方ないから、それなりにはやるやろうけど、余裕が出来ればサボる者が出る。

それも、そこそこ仕事が出来てカードが上がるようになってから、そうするというのなら別に構わんが、最初からそういうことをしてたら確実に潰れる。

それが、この営業法のデメリットや。

本当を言えば、最初は管理指導して貰い仕事を完全に覚えてから、この自由に拡張するというのが理想やと思うんやが、残念ながら、そうしとる拡張団は少ない。

仕事の出来るプロはどこの拡張団にもおるが、人を管理指導出来る者はほとんどおらん。逆に言えば、人に教えることが出来んから自由にやれということになるんや。

何でもそうやが、最初が肝心や。どんな理由からであれ、この仕事を選んだのであれば、そんな潰れるようなことにはなりたないと思うやろ。

せやから、ここからは、そうなりたないという人間だけに、この自由拡張でやって行く秘訣を教える。

まず、自分で自分に縛りをかけてサボれんようにする。その日の目標を決めて拡張するんや。

具体的に言うと、その日に叩く拡張区域の範囲を決め、それを一軒づつ徹底的に叩くことや。これは、「鉄砲を打つ」とか「白叩き」と呼ばれとるやり方や。

それを、具体的な件数を決めて叩く。100件とか200件とかいう具合にな。

この「鉄砲を打つ」と「白叩き」について簡単に説明しとく。これは、販売所から何の情報も知らされず、片っ端から手当たり次第、軒並み叩く(訪問)ことや。

因みに「鉄砲を打つ」とは、それでタマに当たることがあるという洒落からきとる隠語や。「白叩き」というのは、文字通り、白紙の状態での叩きという意味や。

せやから、中には、勧誘する新聞を購読しとる客を叩く場合がある。現読やな。拡張はこの現読勧誘を禁止しとるから、こういう客に当たったら素早く切り返さなあかん。

「お宅の新聞取ってますよ」と客。

「いつも、ありがとうございます。当店のサービスにご不満とかはございませんでしょうか」

という具合に、時折、サービスの確認に回っているとでも伝えて、客に悪い印象を持たせないようにせなあかん。これが、長い目で見ると役に立つ。

新聞の購読契約は長くて1年ほどが一般的やから、次にこの客を叩いた時には、他の新聞に切り替えてるケースも考えられる。

せやから、この時、客に悪い印象を与えてなかったら「以前、お世話になった者です」と言って、勧誘出来る可能性がある。

一度目の折りに、雑談でも交わしていれば、客の購読情報を聞き出すことも出来る。また、他社の情報を聞くこともええやろ。他社の拡張員の来る頻度とかな。

客は、購読新聞の関係者やと思うたら比較的そういう雑談には乗ることが多い。勧誘されることはないという気安さからな。

せやから、ただ叩くだけやあかん。うまく行っても断られても、また、相手が現読のように客にならんとしても、なるべく多くの情報を聞き出すようにする。

そして、その記録を出来るだけ手帳なんかにつけるようにすることや。その時は何の参考にもならんとしても、後でそれを見てると意外なことが分かるもんや。

初めのうちは、まずそれほど契約は上がることは少ないと思う。もっとも、そう思い込むとカードは上がらんけどな。ワシの言いたいのは、最初のうちは例えカードが上がらんでも気にせんでええということや。

どんな拡張員も、最初からカードなんか簡単には上がるもんやないからな。しかし、同じあかんにしても、ただ断られましたでは詰まらんやろ。その理由を掘り下げて考えて見ることが必要や。

そのためには、記録をつけるようにして多くの情報を入手するように常に心がけることが肝心や。極端に言うたら、記録やデータを取るために仕事をするという考え方をするんや。

そうすると、今まで見えんかったことが見える。自分にとって、カードの上がり易い、話易い人間はどんなタイプなのか、何度アタックしても駄目なタイプはどうなのかということが見えて来る。

そのためには、より多くの記録やデータが必要になる。今だけやなしに、明日のためにもその記録やテータを集めるようにする。

すると、必然的にサボるということが出来んようになる。それに、例えデータを集めるためとは言え、真面目に勧誘しとるわけやから、全く坊主ということもないやろと思うしな。

言うとくけど、サボってばかりでは絶対にカードは上がらん。良うベテランは夕方の5時から8時までの3時間が在宅率が高いから勝負の時間やみたいな言い方をして、それまではサボってる場合がある。

せやからと言うて、経験のない人間がそれを真似て同じようなことをしてもあかん。

ベテランは自分の過去の経験から、その時間帯は、この地域なら、どこのどの客を攻めたらええのか知っとるのや。目星を付けとるわけや。それも、経験というデータがあるから出来ることや。

どんな世界のどんな仕事にも共通して言えることやけど、表面的なことだけしか見んかったら、何も見てないことと一緒なんやで。

ベテランや先輩の経験談を聞くのはええ。しかし、鵜呑みにしたらあかん。その経験談は、あくまで他人のそれであって、自分の物ではないからや。

営業の仕事は必ずこうやということはない。他人の営業法が自分に当て嵌まるということはまずないと考えてた方がええ。

他人の営業法はその本人にしか有効でない場合が多い。せやから、他人の経験談はあくまでも参考程度にしとくことや。

自分の営業法を確率するためには、少しでも多くの経験やデータを増やすことや。それが、一番遠そうやけど、確実に身に付く方法やと思う。


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