ゲンさんの勧誘・拡張営業講座
第2章 新聞営業の実践についての考え方
拡張パターン編
その3 案内拡張についての考え方
案内拡張というのは、販売所の専業と呼ばれる従業員が、拡張に来た拡張員を任意の地域に連れて行って勧誘させるやり方のことや。
別名、ひも付き拡張と言うとる。普通は、一人の専業で、2〜3人くらいの案内をする。それ以上は物理的に難しい。
この、案内拡張をさせるには、いろいろ理由がある。最大の理由は、現読もしくは約入り(先付けで購読契約済み)の読者の訪問を避けるためや。特に、約入りへの訪問が多いと怒ってその予約をキャンセルされかねんからな。
案内人は詳細な住宅地図を持って、現読、約入りの家を避け、新規客、もしくは過去読の家を拡張するように指示する。この案内人はその店のベテランか信用おける者にしかやらさん所が多い。
へたな奴にやらしたら、拡張員に取り込まれて悪さの片棒を担ぐ者がおるからな。この場合、原則的に監査はない。
店の者がついとるからその必要はないということや。ということは、拡張員の側からすると案内人を取り込めばやりたい放題なわけや。
どんな悪さかというと、てんぷらなんかの架空契約が一番多い。こういうケースでは、一年後、二年後の約入り契約のてんぷらが大半やな。
すぐ近くの契約やったら、バレ易いから従業員の立場も拙い。せやから、なるべく先の方が、ごまかしが利くということでな。
他には、契約を売るということがある。専業の取った契約を店には報告せず、結託した拡張員が来た時にそれを売るんや。
何でこんな事をするのかというと、従業員が契約を取っても、店から貰えるカード料が極端に安いということがある。
例えば、1年契約で拡張員は8千円のカード料が貰えるが、従業員は良うて2千円程度や。そやから、拡張員と折半でも4千円になるということや。てんぷらの場合はさらに丸儲けになる。
当然、こんなことが店に分かれば大変や。事実、拡張員に買収され悪さが発覚して馘首になった専業は多い。
この悪さを持ち掛けるのは、やはりというか拡張員側からの方が多い。単純に金で釣るのと、カードで釣るのがある。
専業も拡張のノルマが課せられとるのが普通や。しかし、成績が思うように上げられる者は少ない。そこで、狡猾な拡張員は、そんな専業に自分の上げたカードを渡して成績にしろと言う。
今日はこれだけ上がっとるから十分やし、案内のおかげやからとでも言うてそのカードを渡すんや。アホな専業はそれを受け取ってしまう。
その拡張員は、次回、その本性を現し、その専業を取り込む。カードを受け取っとるから断りにくいし、金の魅力にも負けてそうなる。
販売所もそういうことは良う知っとるから、ベテランか信用おける者を案内として付けるというわけや。
二つめの理由は、拡張員の仕事を見せることで、その専業に拡張を覚えさせようという狙いがある。
案内付きの拡張の場合、ほとんどの拡張員がまじめに仕事するからええ参考になるというわけや。
まさか、専業の監視する前で、喝勧やドアを蹴飛ばしたり、悪態はつけへんからな。そんなことをしたら一発で出入り禁止や。
そんなひも付きの拡張は拡張員も嫌がると思うやろけどそうでもない。ワシは嫌やなかった。結果的にはカードは良う上がることの方が多い。
まず、案内の付く地域は、拡張員への苦情が少ないから、話自体は良う聞く客が多い。もちろん、ドアホンキックはあるが、けんもほろろというのは少ない。ワシなんか特に販売所の従業員という感じで行くから客の受けは良かった。
客の方で、販売所のトップの人間やと間違えることが多かったな。せやから、一度断られても顔見知りになると、しゃあないなという雰囲気でカードになることがある。仕事自体はし易い。
さぼれんのは辛いが、それもカードがそこそこ上がっとれば、そこは魚心有れば水心と言う奴で案内人もよう分かっとる。
この案内人の付く販売所はやる気のある所が多い。新規開拓に力を入れとることの現れや。一般的に拡張競争の盛んな所でこういう案内付きが多い。
こういう所は拡材の融通も利き易い。一々、店までお伺いを立てんでも、案内人にその場で交渉すればええから、話が早い。
こういう所での拡張の心得としては、販売所も客の評判を気にする所が多いから、その販売所の評判を高めるようなトークをするように心がけることや。
それが結果的にカードを上げることに繋がる。案内人も拡張員は良う観察しとるから、店への評判にも影響する。拡張員は、客の対応も重要やけど、この販売所との対応の善し悪しでその成績も違う。
受けのええ拡張員には販売所も案内人も優遇したくなるというのが人情や。必然的にカードの上がり易い地域の案内が増えたり、顧客情報や拡材などの条件が有利になる。
これは何も拡張員に限ったことやない。人間は誰からも気に入られんと損やということや。