ゲンさんの勧誘・拡張営業講座
第2章 新聞営業の実践についての考え方
拡張ターゲット編
その3 一戸建て住宅についての考え方
アパート、マンションの次に拡張員の訪問が多いのが、この一戸建て住宅や。単に、一戸建て住宅と言うてもいろいろある。賃貸物件から豪邸と呼ばれる家まで様々や。
一般的に、この一戸建て住宅での契約を販売店は欲しがる。従って、拡材も、集合住宅の賃貸物件に比べたら優遇する所が多い。
それは、契約年数にも現れる。一般的に、集合住宅の賃貸物件は1年契約が主やけど、一戸建てになると、1年以上、2,3年契約というのも珍しいことやない。当然、拡材も良うなる。
ある意味、差別になると思うんやが、これは、大抵の販売所でそうしてる。理由は、一戸建ての住民は永住性が高いということらしい。
それなら、自己所有のマンションでも一緒やないかと思うやろけど、それに関しては、その扱いをしてる所としてない所に別れる。
反対に賃貸でも一戸建てなら、大抵はその差別はない。実際に、その一戸建てが自己所有か賃貸かというのを見極めるのは難しいということもあるけどな。
当たり前やが、家の数だけそこに住む人間がおる。空き家でない限りな。せやから、本来は、その家の住人毎のアプローチが必要になるが、この拡張の仕事を長く続けとると、その地域毎の特徴というのが見えて来る。
こういう住宅街の典型的なのが、○○が丘、○○台などという団地や。拡張員も含めて、訪問販売員の集中する団地とそうでもない団地がある。
普通は、そういうことがあるとだけしか分からん場合が多いが、ワシは元建築屋やったから、その絡繰りがある程度分かる。
地域によれば、訪問販売というか勧誘に比較的弱い人間の住む団地というのがある。例として『新聞勧誘・拡張ショート・ショート・短編集 第7話 ゲンさんの悪徳業者対処法』を見て貰えば、ある程度、分かると思う。
つまり、勧誘に弱い、俗に言う『丸い人間』の住む地域と、元々地元住民が主に建て替えなどで集まって出来た排他的な傾向の団地とがあるということや。
当然やが、訪問販売の多い地域は前者や。こういう所を見極めるのは、ある程度、経験も必要に思えるけど、以外に簡単に分かることもある。
それは、団地内を一周して来たら大体分かる。こういう所は訪問販売の住宅リフォーム業者も多いから、リフォーム工事中とか、工事後という家が多い。
テントで家を囲っとるようなのが多い団地は大抵はそうや。こういう所の住人は勧誘に弱いという面がある。
しかし、これは、集合住宅の所でも触れたが、勧誘が多いということは、クレームが多い地域でもある。
特に、こういう所は、集合住宅よりも他の訪問販売の勧誘員が多いから、勧誘員が頻繁に来る。いくら丸い人間でも勧誘自体を嫌がる者も増える。
やはりと言うか、こういう所でも、客の意識において拡張員は最下位にランクされとるということは覚悟しとかなあかん。当然「新聞」と言うだけでインターフォンキックも多い。
そして、ワシの経験上、拡材だけの提示では、なかなかなびく人間も少ない。せやから、集合住宅の好きな拡張員はあまり寄りつかんということがある。
こういう所は、ビール券だけとか洗剤だけというような、画一的な拡材では弱いことが多い。ある程度、バリエーションというものを考えた方がええ。
こういう一戸建ての住宅は拡張員が少ないと言うたが、団によれば、敢えてそういう地域を重点的に拡張しとる所もある。
それで、成果を上げとる所も少なくない。もっとも、そこのトップがその手法に長けてないと話にならんがな。
競争相手が少ないということは、有利やという反面、契約が上がりにくいから勧誘員が寄りつかん地域やとも言える。仕事にならんと考える。
普通は厳しい地域なんやが、嵌れば、美味しい。こういう所で重点的に勧誘しとる拡張員はそのことを良う知っとる。
一概には言えんが、隣近所の連帯性を利用する手法が効果的やと思う。具体的には「ご近所の○○さんに取ってもらいましたので」というトークやな。
こういう所では、近所の連帯意識が高いのが普通やから「ご近所」「お隣さん」「皆さん」という言葉が生きる。
もっとも、その言葉を使うためには、実際にその地域で一軒、どうしても契約を取る必要があるがな。あの人がそうならということは結構あるからな。
しかし、それをするのは、ある程度、経験を積んだ者の方がええと思う。初心者では厳しい。初心者が挫折するのは、大抵、何も知らずこういう地域に迷い込んで叩く場合にそうなることが多い。
もちろん、営業、取り分け拡張に楽な場所というのは少ないが、それでも、素質に乏しい初心者がこういう地域に迷い込めば潰れる確率が高い。
多くの拡張員が、こういう一戸建ての家に寄りつかんというのも、その新人時代、あかんかったというイメージが強過ぎたからやと思う。
拡張員の多くが、得手不得手を言うのは、最初に契約が上がった場所で決まることが多い。上がった所が得意な地域と思い込む。思い込むとそういう所ばかり行くから更に上がるということになる。
せやから、その地域が本当にその拡張員に向いているのかとなると、定かではない。自分の可能性を狭めて営業していると思われる人間は、ワシの目からも結構多い。
自分の得意を作るということは悪いことやない。しかし、それだけでは、それ以上にはなれん。常に、少しずつでもチャレンジする方がええ。そうすることで、自分の意外な可能性が見えてくることもある。
ここから先は、もう一歩、上を目指す人間にだけ話す。誰もが難しいと思う地域は、誰も行きたがらん。ということは、何も即決を目指す必要がない。
拡張員が最初に教えられることに、この即決というのがある。その日、勧誘した客は、その日に上げろということや。
それも、あながち間違った教えやない。一般的な拡張員は、多くの販売所で拡張する。その日やなかったら、次はいつ来るか分からんということがある。
せやから、いけそうやと思うたら、契約しとかんと、次の保証がない。次に来た時は、他の拡張員と契約してたということは、日常茶飯事でざらにある。
中途半端に客をその気にさせて「次、来た時に契約するから」と言うのを真に受けていたら、えらい目に遭う。そういう客は、他の拡張員とでも簡単に契約する。同じ、勧誘する新聞なら尚更や。
客の意識には、特定の拡張員とだけ契約しようというのは少ない。新聞を取ろうとか、取ってもええなと決めたら、誰でもええ。
例えば、あるA紙の拡張員の説得で、取ってもええなと思うても、その場は一端、断る客も多い。次にしてくれと言う。その言葉を信じて、次に行くと同じA紙の他の拡張員と契約したということがままある。
この拡張員は何でやと思うが、客にしたら、同じA紙を購読するんやからその拡張員もええやろという理屈や。それでええのは、新聞社や販売店だけや。
拡張員はそれでは具合悪い。金にも成績にもならんからな。正直言うて、新聞社が部数を伸ばそうが、販売所がいくら売り上げようが、団が何ぼ儲けようが、そんなことは拡張員にとって大した関心事にならん。
拡張員にアシストは評価されん。評価されるのは、あくまで契約カードを上げた者だけや。まず、個人が優先となる。自分がカードを上げな話にならんと思う。
せやから、明日がある、次がある式の営業は出来んとなるわけや。その日その場の即決が総てを左右する。当然やけど、そういう営業は無理が起きる。
拡張員の中には何が何でもと考える者もおるから、どうしても、客との間でトラブルになり易い。
その点、そういう拡張員の集中せん地域やったら、その即決に拘ることもないというのがある。その地域が排他的な地域なら尚更や。
顔馴染みになり、人間関係が出来上がれば、逆にそこはその拡張員にとっては、美味しい地域となる。他の人間では、いきなりの営業はまず無理やからな。
ワシは新歓を叩くのは、主にこういう地域や。後の項目でも触れることがあるけど、リピート客を作るにはええ所や。
但し、これは、最初にも断ったけど、誰でもすぐ出来ることやない。ワシのこれまでの考え方に同調出来る人間はその意味が分かるやろと思うけどな。