ゲンさんの勧誘・拡張営業講座
第2章 新聞営業の実践についての考え方
拡張トーク編
その1 拡張トークの考え方
営業は、当然のことやが喋らな仕事にならん。せやから、どうしても、そのための営業トークが重要になる。
しかし、営業の難しさは、その営業トークを上手く無難にこなしたからと言うて、必ず成約になるとは限らんということがある。
ただ、何も知らんと営業するより知ってた方が有利には違いないがな。そして、この営業トークというものは、それこそ、営業員の数だけあると言うてもええくらい、無数に存在する。
その営業員にしても、幾通りもの営業トークのパターンを持ってて普通や。当然、拡張員も同じや。
実は、このテーマでのリクエストが、このコーナーのファンからは一番多いのやが、あまりにも、そのパターンが多過ぎて上手く説明できるかどうかとなると甚だ心許ないし、自信もない。
せやから、一応ということで便宜的にワシ独自のパターンに分けて解説することにする。
断っとくけど、ワシの言うとおりにしたからと言うて、必ず成約出来るとは限らん。ワシがそうしてきただけのことやからな。
若干、無責任かも知れんが、人の言うことだけを真に受けたらあかんということは、分かっておいてほしい。自分の判断で、取捨選択する必要があるということを知らなあかんと思う。
つまり、自分ができると思うか、取り入れられると判断した手法だけを参考にして、自分なりの営業トークを作ることや。オリジナルやな。ただの受け売りやと大した効果はないとだけ言うとく。
せやから、ここでのことはあくまで参考として、実践の場では、各自それぞれが創意工夫するしかないということも肝に銘じてほしい。そのベースとして活用するつもりなら、それなりに役立つとは思うがな。
それともう一つ断っておかなあかんことがある。良う営業トークの前にまず客に会えなどうしようもないという人間が多い。
留守は仕方ないにしても、インターフォンで出て来ん客をどうにかできんかと言う。そういう者にはここで敢えて言いたい。そんな客は放っておけと。
聞く耳を持たん客への営業トークは考えんでもええ。難しいことにチャレンジすることが営業とは違うからな。特に拡張でそれにこだわったらトラブルを起こすのが関の山や。
心配せんでも、一日廻ってて客と全く会うことも出来んことの方が少ないやろ。話くらい聞く客は必ず何人かはいとるはずや。
ワシがこれから説明するのは、その話くらい聞く客に対しての営業トークや。
お世辞トーク。おだてたり、誉めることや。人間は、例え、見え透いたお世辞やと思うても、持ち上げられたり誉められたりしたら悪い気はせんもんや。
その誉められ方次第でええ気分になることも多い。ええ気分にさせれば、それだけ契約も取りやすくなる。
ユーモアトーク。客を楽しい気分にさせ、笑いを誘うためのもんや。客をそういう雰囲気に持って行けば有利やということは誰でも分かると思う。結構、重要な要素や。
雑談トーク。ワシはこれが得意や。何気ない話から、タイミングを見計らって営業するやり方や。
理詰めトーク。これは、それなりの理論武装が必要になる。客も限定される。しかし、嵌れば効果的な場合が多い。
損得勘定トーク。早い話が、拡材なんかの得する話で釣ることや。これは、拡張員なら誰でもしていることやが、その要点を押さえとる者は以外に少ない。その解説をする。
脅しトーク。断っとくけど、喝勧のそれやないで。ワシにはそれは出来んからな。これは、客に危機感を持たせるようなトークで誘導するやり方や。
泣き落としトーク。世の中、人情もろい人間はまだまだ存在する。しかし、これは、人を選ばんと空振りするがな。それと、一つ間違うと詐欺になる。詐欺トークというのもあるけど、ここでは教えん。
経験トーク。何のことやと思うかも知れんけど、ワシはこれで結構、客に気に入られることが多い。人の経験は聞く人間にとっては面白い場合がある。話に花が咲けば、営業は九分九厘成功や。
趣味トーク。深く説明せんでも分かるやろ。相手の趣味と自分の考えが合えば、その話で盛り上がることが出来る。相手次第という面はあるがな。
切り返しトーク。頭から拡張員を馬鹿にする客も結構おる。そんな時、頭に来るからと喧嘩してもしゃあない。洒落た切り返しで、こちらに優位な状況を作ることが目的のトークや。
断りトーク。営業で断ったら仕事にならんやろと思うかも知れんが、そうでもない。できんことはできんと言うた方がええ場合がある。安請け合いは命取りになることがあるからな。
標的トーク。これは、狙いをつけた客を落とす時のトークや。その狙いの客も人それぞれで違うが、その考え方は結構、類似点がある。すべて、同じというわけやないがな。
キャンペーントーク。特別なイベント時のトーク。もしくは、そういう設定が予想される時のトークや。限定されるトークのように思うかも知れんが、結構、応用範囲は広い。
呼び出しトーク。これを一番、知りたがっとる人間が多いが、玄関口に呼び出すことばかり考えてもあかん。下手な呼び出しは、相手によればトラブルになる。これには、結構、細心の注意が必要や。考え過ぎてもあかんけどな。
大体の色分けはこの程度でええやろと思う。今更、言うまでもないが、営業はトークだけで決まるもんやない。そのことばかりに集中して他のことを忘れたらあかん。
最低限度、笑顔は必要や。客に嫌悪感を持たせん接客もな。客の嫌がることはしたらあかんという基本はどんな場合でも必要や。
その心得を知る教えがある。
己に欲せざる処、人に施すことなかれ。
直訳すると「自分がして欲しくないことは、人も嫌がることやからしたらあかん」ということや。孔子さんの有名な教えや。常に相手の立場に自分を置き換えて考えたら良う分かると思う。
拡張員の悪癖の一つに「こっちの話くらい聞けよ」ということがある。これは、自分の立場でしか物事を考えんからそういう気持ちになる。
それでは、営業は難しい。拡張という難しい営業を自分でさらに難しいもんにしとるということや。営業は相手がおって始めて成立するもんや。その相手を無視したらそれは営業やない。
そのことがちゃんと自覚出来んと何ぼ、テクニックだけを覚えても役には立たん。逆に、何のテクニックがなくとも、その気持ちがあれば、どうにかなる。
営業とはそんなもんやとワシは思う。せやから、そういうことを頭に入れながら、この拡張トーク編を参考にして欲しい。