ゲンさんの勧誘・拡張営業講座
第1章 新聞営業の基本的な考え方
人間関係構築編
その8 挨拶の大切さを知れ
今更、こんなことを言うまでもないと思うてたのやが、営業の仕事に対して挨拶がどう影響してくるのか知らんという人間が多いことに驚いたので、敢えてこのことを取り上げた。
実際に営業の現場で、その挨拶を実践しとる者も少ないと聞く。その必要性も感じとらんようや。はっきり言うが、人間関係の基本はこの挨拶から始まると言うてもええくらいや。
「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」「はじめまして」「ごぶさたしてます」などは、大抵の人間が日常、常識的に使っている挨拶の言葉や。
さすがにこれを知らんという人間はおらんが、それを仕事中、心がけて使うという営業マンが少ない。どういう場面でそれを使うたらええのか分からんと言う。
ワシは、拡張員として10年余り、その前に建築屋の営業マンとして20年、計30年ほどの営業経験がある。この間、休みの日以外、ただの1日も、営業の現場で客に対して挨拶をせえへんかった日はない。
拡張団に限らず営業会社は、大抵どこでも、この挨拶にはうるさいはずや。朝、出勤したら必ず、挨拶を交わすことが当たり前とされとる。
「おはようございます」の声も大きく言うように強要しとる所も多い。特に、上司や先輩に挨拶せえへんかったら大変や。厳しい所やったらそれだけで厳しく注意され叱られることもある。
営業会社がなぜそれだけ挨拶にうるさいのかとういうことは、当然のことながら理由がある。一つは、社内の空気を引き締めるためやが、他にも、営業員に挨拶の重要性を認識させる狙いもある。
せやから、昔の営業員は社外でも客にはきちんと挨拶していた。むろん、現在もそうしている人間もおる。
ワシが実際にやっていることを言う。ワシはバンクに着いて解散したら、当然のように営業モードに入る。
訪問する客は当たり前として、道ですれ違う人間でも「こんにちは……ですね」と必ず声をかけられる状態ならかけるようにしてる。「……」の部分は、大抵は気候のことを言う。
「こんにちは、寒いですね」「こんにちは、暑いですね」といった具合や。道でこんな風に声をかけられたら「ほんとですね」とほとんどの人間が挨拶を返してくれる。
見知らん人間でも、近所の知り合いと勘違いするんやな。これを長く続けとるとプラスになることはあっても、マイナスになることはない。
何度か同じ人間とそういう挨拶を交わしていると本当に知り合いになることも出来る。この何度も会うということやが、それほど広いバンクやなかったら、限られた範囲を拡張するわけやから、どうしても同じ人間に出会すこともある。
そうすると、訪問した家からその人間が出ることがある。新聞を断ろうと思うてた人間でも、普段、そういう関係があったら大抵は話くらい聞くし、悪い印象もないから勧誘はしやすくなる。
つまり、こういうことを習慣付けておくだけで、自然に人間関係が出来上がってる場合があるということや。
ワシはこれは当然のことと思うてわざわざ、このコーナーに載せるほどのことやないと考えてたのやが、ハカセの指摘で普通やないと知らされた。
ハカセに言わせれば、そんなことをしてる営業員は誰もおらんらしい。ハカセは普段、自宅で仕事しとるから、訪問販売の営業員が良く来ると言う。その応対に出ることも多い。
その連中で、ちゃんとした挨拶をして勧誘する人間は皆無やと言う。特に拡張員は最悪やと話す。客の立場で見たらとてもやないが、話を聞く気にもならんということや。
良く話も聞いてくれんと嘆く拡張員が多いが、どう言うて声をかけとるのやろと思う。まさか、何の前置きもなしに、いきなり「○○新聞ですけど」と言うてるのやないやろな。
第一声は必ず、挨拶言葉やないとあかん。これは、どんな営業にも共通して言えることや。そんな難しいことやない。
「こんにちは、ごめんください……」と続けば、客の方もちゃんとした人間やなと思う。話くらいやったら聞いてもええかなと考えるかも知れん。100%やないにしても、確率は上がるはずや。
それに、常にそういう挨拶をする癖をつけるとると、営業トークも自然に相手に受け入れられやすい語り口になるものなんや。
話を聞いて貰えんから仕事にならんと嘆く前に、聞いて貰える下地を作らなあかん。そのためには、どこでも誰にでも挨拶することを心がけることやとワシは思う。