ゲンさんの勧誘・拡張営業講座

第2章 新聞営業の実践についての考え方

拡張トーク編 

その9 切り返しトークの考え方


頭から拡張員を馬鹿にする客も結構おる。そんな時、頭に来るからと喧嘩してもしゃあない。洒落た切り返しで、こちらに優位な状況を作ることが目的のトークや。

頭から拡張員を馬鹿にする人間は、拡張員を教養もなく頭脳程度の悪い人種と決めつけとる場合が多い。根拠は、たまたま、それまでに出会した拡張員が胡散臭そうやからという理由だけでや。

もっとも、そう思われても仕方のない拡張員も確かにおる。ただ、闇雲に「新聞を取ってくれ」「サービスするで」だけの連中や。

「あんたところの新聞の売りは何?」
たまに、こういうことを言う客に出会すと、そういう拡張員は言葉に詰まる。

「新聞なんか、どこでも、そんなに変わりまへんで」
と、窮した挙げ句にそう言うてしまう。

「それなら、うちで取ってる新聞でもええわけやろ?」
すると、こういう具合に簡単に切り返されてしまう。これでは、この先の突っ込みがしずらくなる。

こういう場合は、やはり最初の「あんたところの新聞の売りは何?」と質問された時点で、嫌みにならない程度の軽いジョークを交えて、なるほどと思わせる切り返しを先にしとくと有利になる。

「私です。私の人間性が売りです……、というのは、冗談ですが、今日の○○新聞には、こんなお得な(面白い)情報があるんですよ……」

これは、事前に勧誘する客層別に調べておく。その地域のチラシでもええ。めぼしいのがなければ、三面記事でもええから、その日の面白そうな記事を探す。

三面記事の内容というのは、各社で違う場合が少なくないから、その紹介次第では効果はある。差別化可能な記事ということでな。

せめて、売り込む新聞くらいは読んどくべきや。売り込む新聞に何が書いてあるか分かんというのも格好悪いやろ。営業のネタ探しやと思えば、暇な時に読むのも苦痛やないと思う。

拡張員を軽く見とる人間に対して、切り返そうにも、何も知らんでは話にならん。また、そういう人間に、やはりなと思われるのもええ気せんやろ。

「うちの○○新聞社説には、○○問題に対して……という見解が書いてあったけど、そちらの○○新聞は?」

こういう聞き方をする客も実際におる。もちろん、まともな返答が返って来るとは思うてない。頭から馬鹿にしとるから、こういう質問が平気で出来る。

どうせ、お前らは、そんなことも知らんやろというのが見え見えな人間も珍しいないからな。

「その問題に関して言えば、こちらの○○新聞では……という説明で、私としてはかなりな説得力を感じるのですが……」

こういう返答が出来れば、相手も意表をつかれる。そして、絶対優位の心理も崩れる。この時の返答は、受け売りでもなんでもええ。いかにも、それらしく聞こえたら成功や。相手に「これは」と思わせるのが目的やからな。

これで、客の中には、こちらを認める人間も現れる。少なくとも、馬鹿にした言動はなくなる。後は、ペースの取り合いで勝敗が決する。上級対応かも知れんがな。

そこまで、行かんでも、相手を気分良く乗せるための切り返しでもええ。

「なるほど、そうなんですか。私も一応、見ることは見るのですが、そういうことは難しすぎて良く分かりません。後学のためにも、教えてくれませんか」

これやと、自然に話をかわせることが出来るし、相手も持ち上げて気分を良くさせることになる。人間、自尊心をくすぐられるというのは悪い気はせんもんや。うまく乗せることが出来れば、それで落とせる。

客が調子に乗って喋り始めたら、チャンスや。ただ、話を気の済むまでさせとけばええ。適当に相づちを打ってな。そして、最後にとどめの一言を言う。

「そうなんですか。いやぁー、勉強になりました。ご主人のような博識の方にこそ、是非ともうちの新聞を読んで頂きたいものです。私も、こんな仕事をしてますから、あちこち行きますが、ご主人ほどやないような人でも、2紙、3紙と新聞を購読されてる方がおられます。ご主人のような方こそ、うちの新聞にふさわしい方ですよ」

「上手いこと言うな」
大抵はこう言う。お世辞とは分かっていても、ここまでくると引っ込みがつきにくくなる。

最初は、こちらを馬鹿にするつもりやったのが、ここで、断れば「値打ちが下がる」と勝手に思い込むようになる。見栄も手伝って、購読すると言う場合がある。

複数の新聞を購読することになるわけや。実際、正しい判断しようと思うたら、複数の媒体から情報を得るという考えは、ベストやとは思う。余裕があればという条件付きでな。

切り返しのトークというのは、相手の断り文句や、皮肉、馬鹿にした言い方などを逆手に取り、こちらに有利なペースを掴むためのものや。

勘違いしたらあかんけど、馬鹿にされたからと言うて、その相手をやり込めても何もならん。怒らせたらカードにはならんで。拡張員の勝ちというのは、あくまでもカードを上げることやからな。言い負かしても一銭にもならん。

ワシも、偉そうにこういうことを言うてるけど、当たり前やが、最初からこんなことが思いつたり考えたりということが出来たわけやない。

今まで、嫌というほど、客の断り文句を聞き、嫌みや皮肉、罵声にさらされた結果に考えついたことや。

前にも言うたが、ワシは例え断られても、どういう状況でどう断られたかも克明にノートに記録するようにしとる。

それを、暇な時に読むだけでも、自然にその対策を考えつくことが出来る。そして、客とのそういうやりとりを繰り返しとるうちに、自分でも驚くくらい滑らかにトークが出るようになる。

せやから、初めは断られても気にすることはない。断られることを気にするよりも、何でこのケースでは断られたのか、ということを分析出来ん自分に気づかなあかん。

つまり、一つ、断られるということは、一つ、必ず教訓を得ているんやという考え方をせな、いつまで経ってもそれ以上にはなれんということや。

どんなことでも、そうやが、考え方一つで変わるということを知ることやな。


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