ゲンさんの勧誘・拡張営業講座

第2章 新聞営業の実践についての考え方 


拡張タイプ編 

その2積極果敢タイプ


これは、それほど説明せんでも分かるとは思うが、拡張に限らず、営業においてこの積極性は重要な要素や。まず、積極性がないと叩くことすら出来ん。

拡張員はよくサボると言われとるが、その要因の多くがこの積極性のなさに起因しとるということがある。

拡張は、まず訪問せんと始まらん。叩くことで客と会い、そこで初めて営業が出来る。しかし、積極性のない人間は、数件程度、断られたという現実に負けてそれが続かんようになる。

これは、その人間の性質もあるのかも知れんが、自分の性質のせいにする者は、この仕事には不向きや。辞めた方がええ。叩けんことの理由にもならん。

正直言うて、ワシはそういう人間を相手にはしたない。良く積極性を出すための方法と称した本が出廻っとるが、そういうものを手にして、どれだけの人間がその通りに出来るのやろと思う。

ワシが思うに、この積極性というのは考えて身につくもんでも、教えられて分かるもんでもないと思う。その人間が、どれだけやる気になっとるかがすべてになる。

やってやるという思いが強い者でないと、積極性を出すのは難しい。特にこの拡張は、断られても断られてもそれをなくさん気持ちがないと成功はせん仕事や。

ただ、ここで難しい問題があるんやが、積極果敢ということと強引なということは、似とるようで違うということを知って欲しいと思う。それを混同する人間がおる。

喝勧に代表される強引さは、それをやっとる本人にとっては押しの強さやと考えとるのかも知れんが、ワシに言わせれば、安易な方法を模索しとるだけのことやと思う。

分かりやすく言えば、路上でカツアゲする人間が、気の弱そうな者を見つけて「金を出せ」と言うてるのと同じようなもんやさかいな。

そういうのは、単に腹を減らした野獣が獲物を探しとるにすぎんから、積極性があるとは言わん。

営業においての積極性というのは、あくまでも対等の条件で、客を説得し納得させるために、あきらめず情熱を注ぐことやと思う。

山村(仮名)という男がおる。スッポンというあだ名がついとった。この男から、あきらめたという言葉は一度も聞いたことがない。

この男は、これやと狙った客は必ず落とすと豪語しとったし、またその通りやったとも思う。もちろん、強引にとか無理矢理にという類やない。

最終的に客にはいつも「あんたには負けた。しゃあないな」と言わせとった。

山村なりに、これはと思うた客には、徹底したアプローチをかける。一般的に言うて拡張員はあまり見込み客を抱えたがらんもんやが、この男はその見込み客を絶対にあきらめん。

その見込み客をあきらめるのは、よほどのことやと言う。せやから、常にどこのバンクでも多くの見込み客を抱えとった。

つまり、根気よくそのバンクに入る毎に見込み客を日参しとると言う。そういう所は、最初は断る。普通の拡張員は、それでその家はあきらめる。

しかし、山村はあきらめずに、また行く。普通は、こういう何度も来る拡張員に対してええ印象を客が持つことは少ない。大抵は、しつこい奴やなと思われるのが関の山や。

山村は、ただ日参するだけやなしに、行く度毎に、何らかの進展を掴む。まずは些細なことから始める。

例えば、その家が犬好きやとすると、次回に行くときは山村も犬好きの男になり、その知識も披露する。その家の犬も手なづけるようにする。

それが、続くと犬も山村の姿を見ると尾を振り出す。手みやげも犬の好きなものにするという徹底ぶりや。

客にしても、単に「新聞とってくれまへんか」やとしつこい奴やなと思うが、この犬好きの人間は、自分を褒められたり何かを貰うよりも、可愛がっとる犬のためにと言われることに弱い。

「将を射ずんば馬を射よ」を実践しとるということや。

馬に乗った敵の将軍は倒しにくいが、その乗ってる馬を倒せば簡単にやっつけられるということになる。本体を狙うには、その搦め手から狙えという教訓やな。

結果「あんたには負けた。しゃあないな」と言うことになる。

ここまで言うたらもう分かると思うが、この山村を支えとるのがその積極性や。積極性というのは、ただ突き進むこととは違う。目的のためにあらゆる方策を駆使するということを続けることやと思う。

ただ、山村曰く「これはという人間を見分ける方法は教えられん」と言うことや。勘違いせんといて欲しいが、これは勿体ぶって言うてることやない。

山村個人が、そう思う相手を他の誰もが、そうと感じるとは限らんから言うてるだけの話や。つまり、相性のようなことを考慮しとかなあかんということやな。


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