ゲンさんの勧誘・拡張営業講座

第1章 新聞営業の基本的な考え方 
     
      人間関係構築編


      その4 相手を知れ


自分を売り込むことだけに神経が行っとてもあかん。客のことも良う考える必要がある。

当たり前のことやけど、営業に熱が入れば入るほど、つい、自分本位になりやすいもんや。それで、手痛い思いをしたことのある営業マンは多いのと違うかな。

ここでは、相手を知れというテーマで話をする。自分が分かれば、後は相手(客)を知るだけや。

彼を知り己を知れば、百戦して殆からず。

有名な孫子の言葉でもある。意味はそのままや。相手を知って自分を知れば戦って敗れることはないという教えやな。この意味が分かっていても、実践となると難しい。

特に相手を知る、相手の立場で考えるというのは、言うほど簡単なことやない。どうしても、人間は自分のこれまでの経験や環境で物事を考えてしまう。相手の人間は、自分とは違う生き方をして来たということを理解するのは難しい。

人は自分が正しいと思うことは、相手も正しいと思うと考えがちや。相手と意見が違えば、つい、こちらの考えの方がいいですよ、と相手を誘導したくなるが、それでは営業はあかん。

逆に考えれば良う分かる。あんたは、自分の意見を否定されて、答えを誘導しようとしている営業マンから何かを買う気になれるやろか。答えはノーやろ。

折角、とっかかりは、これまでのやり方で笑いを誘い和ませたのに、何もならんことになる。

この相手の立場や相手のことを考えるということが出来れば、何も営業だけのことやなしに、人間、生きて行く上でいろいろと都合がええと思う。

これは、ある程度の訓練で、誰でもその考えに近づけると思う。ワシの自己流の考え方やから、ええなと思う者だけ取り入れてくれたらええ。

一つの物事には、常に二面性、多面性が存在しとる。

何でもええんやが……、ワシは今、この話を喫茶店で考えとる。目の前にコーヒーカップがあるから、これを例にする。

ワシの目の前にあるコーヒーカップは、ワシにとっては、コーヒーを飲むための器にすぎん。ワシはコーヒーが美味く飲めるコーヒーカップなら別に文句はない。

しかし、中には、そのコーヒーカップの好き嫌いで店を決めるという者もおる。カップにより美味い不味いがあると言う者もいとるくらいや。

店主にしたら、どうやろ。コーヒーカップは大事な商売道具や。その選択に金をかけて誇りを持つ店主もおれば、経費主体で見栄えが良ければ、別に安物でもええという店主もおる。

コーヒーカップを製造している業者はどうやろ。これが、売れなどうもならん。売るため、売れるためにはどうしたらええか、常に必死で考えとる。

ここで、すでにコーヒーを飲む者、利用する者や作る者とで大きく違いが現れとるということを考えてほしい。

コーヒーを飲むワシには、ただの器やけど、利用している者や作っている者にしたら、メシの種や。

せやけど、目の前にあるコーヒーカップはコーヒーカップにすぎん。それを見る者によって、その必要性や重要度が違うだけのことや。同じコーヒーカップなんやが、全く違う物に見えてしまうわけや。

そして、それはどちらが正しいかということとは違う。どちらも、間違った考え方やないし、どちらも正しい。

これが、二面性であり、多面性やと思う。相手を知るということは、この考え方を知るということやないかと、ワシは思う。

その物、あるいはその考え方が、人によって違うのは当然やと認めることが、相手を理解する第一歩やないやろか。

この考え方の訓練は、もう分かったと思うが、何でもええから、常にこれは使う者、作る者、売る者という具合に立場によってどういう値打ちがあるのかということを、日頃から考える癖をつけることや。

身の回りのものすべてが、その訓練の道具になるはずや。それを続けとれば自然と相手の立場が分かり、相手のことも見えてくる。

ホントの意味で相手の立場に立った見方になるということや。


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