ゲンさんの勧誘・拡張営業講座
第2章 新聞営業の実践についての考え方
拡張タイプ編
その9 理論武装タイプ
新聞は、商品説明をそれほど必要とせん、稀な営業やと言うたが、その商品である新聞について熟知しとって損はない。
客の中には、そういうことを突っ込む人間もおるからな。理論武装タイプというのはそういうことの対応の得意な人間が多い。
新聞は、どこでも大差ないとも言えるが、厳密に言えは、それぞれ特色のようなものを持っとるし、記事の扱いも微妙に違う。
このタイプは、新聞を読むのが好きな人間が多い。元銀行員とか証券マンやったというのが、ワシの知っとる限りでは多いな。
理論武装をするのには、新聞は十分、その役に立つ。そのためには、その新聞を読まなあかん。新聞を読まんでも、営業は出来るというものの、やはり、読むに越したことはない。
普通、全国紙の新聞の情報量は、朝刊の場合、単純計算で400字詰め原稿用紙に換算して約500枚程度ある。B6版の書籍にして300ページ分ほどもある。当然やけど、これを全部読み切ろうと思うたらかなり時間がかかる。
しかし、新聞にも読み方というのがある。この新聞の読み方を上達しようと思うたら、その書き方を知れば手っ取り早く分かる。
新聞記事には、すべて見出しがついとる。朝刊で、およそ200前後の見出しがある。一つの見出しは10字以内とされとるから、すべての見出しを読んでも原稿用紙5,6枚分程度やから10分〜15分ほどや。
それで、必要やと思える記事をチェックして、後からそれを念入りに読むようにすると効率的になる。
新聞記事は、重要な内容から先に書く。最初の数行(リード)で事実関係と結論があり、後はそれを補足する内容が続く。こういう書き方を逆ピラミッド型と言う。
つまり、記事のすべてを読まんでも最初の数行を読めば、大抵は内容も把握出来るように書いとる。なぜ、こんなことをするのかというと、限られた紙面の編集をするには、その記事の内容の増減をしやすくしとかなあかんということからや。
他の記事が増えれば、短くする必要があるし、なければ、適当に後で補足出来るようになっとるというわけや。
これが、分かっとれば、当然やけど読むのも早くなる。この理論武装タイプは、こうして少なくとも常に2紙以上の新聞は読んどる。
もう一つ、記事を読む際に気を付けとるのは、その記事に関する数字データを覚えるということや。どんなことでも、相手と議論をする場合はこの数字というのが、結構、有効やからな。
後は、本なんかも良う読んどるな。理論武装をするのには、やはり、それなりの知識は必要や。勉強好き、議論好きというのも、その要件の一つになる。
ただ、これが、一番、難しいのやけど、そこまでしたからというて営業の仕事にそれが直結するのかと言うと疑問符がつく。
もちろん、理論好きと言うても、いろいろな性格の人間がおるから一概には言えんけど、客側がこのタイプを好むというのは限られる。
好感を持つとしたら、やはり、似たような傾向にある人間やな。少なくとも、議論にまで会話が発展せな、こういうタイプは間違いなく最初の段階で終わりや。
それに、このタイプの欠点として、プライドが高いということがある。これは、世間一般でも言えることやけど、理論武装を好むのは、そのプライドが高いからということもある。
特に拡張員でこの理論武装タイプの場合は、自分は他の人間とは違うんやということを示したいという思いが強いように思う。せやから、こういうタイプは仲間うちからも浮くことが多い。
理論武装することは、悪いことやない。勉強するというのも、人間には必要なことや。ただ、それを全面に押し出すのは営業ではマイナスになりやすい。
本当に賢い人間は、なるべくそう見られんようにする。場合によれば、アホを演じることさえある。人から賢いという風に見られるうちは、まだ本当の意味での賢さが身に付いとらんのかも知れん。
営業の仕事は、賢すぎても馬鹿でも出来んし、中途半端はもっとあかん。何でも、そこそこがええのと違うかな。
昔の人はこれを、中庸と言うてる。過ぎたるは、猶(な)お及ばざるがごとし。ということになる。
行き過ぎも不足も同じやうなもんやということや。この意味は、結構、深いと思う。