ゲンさんの勧誘・拡張営業講座
第1章 新聞営業の基本的な考え方
法律・規則編
その1 法律・規則についての考え方
当たり前のことやが、人間として決められた社会のルールは守らなあかん。それが、法律であり規則や。
拡張員も、団の規則や販売所の決め事は守らなあかん。当然、法律もそうや。知らなんだでは済まんから、一応は心得ておく必要がある。と言うても、何も難しく書かれた規則や法律の条文を覚えろというのやない。
その意味が分かればええ。法律や規則と聞くと、何や難しそうやな、うっとうしいなと思うやろから、ワシ流に分かり易く話す。
法律や規則を守れと言うても何も難しく考える必要はない。人間として、したらあかんことを、せえへんかったらええだけのことや。
喝勧や詐欺まがいの勧誘は、法律違反やてわざわざ言わんでも、拡張員は皆知っとることや。それをしとる連中も、ほとんど承知でやっとる。確信犯や。せやけど、こんな奴らは法律以外ででも終いにえらい目に遭うはずや。
それに、はっきり言うとくけど、こういう真似をしとる奴はここを読んでも何の役にも立たんで。確かに、ここは、拡張員のための講座やが、法律違反を逃れる方法を教えるようなことはせんからな。
まず、その法律やが、拡張のような訪問販売の営業員が守らなあかんのは、刑法、民法、消費者契約法、特定商取引に関する法律、景品表示法、クーリングオフ制度、勧誘地域での迷惑防止条例などがある。せやから、それくらいは最低でも知っておく必要がある。
初めに断っとくけど、ワシは正規の条文なんかは持ち出さん。あんなもの書き立てても誰も見んやろしな。
ワシは、法律の条文は「若しくは条文」と呼ぶことにしとる。とにかく法律を作っとる連中は、簡単なことでも、この「若しくは」という言葉を繋ぎまくって難しいにせんとあかんと思うとる。
難しいに書いて権威付けをしたいんか、わざと分かりにくくすることで、どうとでもとれるようにと必死で考えたんかは知らんがな。
それも、漢字とカタカナでや。何で誰でも分かる言葉で書けんのやろと思う。分かり易く書いてジョークの一つも交えとれば、もっと法律に親しみを持てるようになるから、犯罪も減ると思うんやがな。
法律には文理解釈と倫理解釈がある。分かり易く言えば、受取り易いように解釈出来るということや。判例にない判決を下す場合、裁判官の解釈によって決めることが出来るということになる。裁判官次第ということやな。
刑法の場合、量刑の定めはあるが、これも、そのケース毎に、同じような罪であっても刑罰の結果は全く違うことも珍しいことやない。
罪への捉え方は人によって千差万別やと言うてもええ。頼りとする弁護士でも、一つの事件に対する考え方はいろいろや。
下手したら、ある弁護士は有罪やと言い、他の弁護士は無罪やと主張することも珍しいない。そういうのは、テレビの法律番組を見てたら良う分かるやろ。
何が言いたいのかと言うと、このケースはこういう罪でこういう量刑の罪になると断言することは出来んということや。最終的には、どんな罪も裁判せな分からん。そのために裁判制度があるんやからな。
ワシらの仲間は、実際になんらかの裁判を経験しとる者が多い。そんな連中の話も良う聞いたし、ワシ自身も裁判に関わったことが何度もあるから、そこそこ分かるつもりや。
誤解せんといて欲しいが、ワシは前科なんか一度もないからな。法律違反と言えば交通違反くらいなもんや。まあ、喧嘩沙汰は何度かあるが、それも始末書程度で済んどるしな。
それなら、何でそう言えるほど詳しいのかという訳は長くなるから今は説明出来んが、いずれ話すこともあると思う。せやから、ここでは裁判に関する知識と経験は全くの素人やないとだけ分かってくれたらええ。
そういうことやから、ここでは、法律の内容と実際に事件となった場合の対処や考え方を、ワシなりに説明したいと思う。もちろん、法律違反とならん未然の方法もな。
人と争うことほど、無駄なことはない。例え、裁判で勝ったとしても、気分の良うなるもんでもない。そこから生まれるものは、わだかまりや怨嗟でしかないとワシは思う。
法律や規則は破らん方がええ。それが、仕事の上でとなると尚更や。特に、ワシら拡張員は、その存在だけで目の仇にされる場合があるから、心せなあかん。普通の人間になら、問題にせんようなことも、ワシらがすると過剰に反応することも多いしな。
それを、理不尽と思うたらあかん。この仕事はそういう側面のある仕事なんやからな。実際にえぐいことをする拡張員が未だにいてることも事実や。ワシだけは違うでと言うてみても始まらんわな。
せやけど、そんなに悲観することもない。それら、すべてを心得とったら、自然と対応も上手くなるし、結果的に営業成績も上がるはずや。
客への対応は、散々言うたから、ここでわざわざ言う必要もないと思うが、客に嫌な思いをさせたら仕事にならんということを心がけとったら間違いないと思う。
つまり、この講座での人間関係構築編を理解、実践出来れば、少なくとも客とは法律的な問題を起こさんで済むはずや。
まあ、それでも、知識や心得、考え方として知っておくのは悪いことやない。それに、ワシら拡張員にえぐいのがいてるのと同じように、客の中にもそれ以上の人間は何ぼでもいてるからな。用心の意味でも覚えておいた方がええ。
以上のようなことを踏まえた上で、次からは、具体的な法律や知識について解説したいと思う。