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第368回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2015. 6.27
■セールス(拡張員)登録抹消問題の背景について
前回の当メルマガ『第367回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■拡張の群像 その16 セールス(拡張員)登録が抹消されない人たち』(注1.巻末参考ページ参照)を読まれたという、ある新聞拡張団の団長、K氏から貴重な情報が寄せられた。
その抜粋部分を知らせる。
毎週メルマガを拝見させて頂いていますが、今回のセールス登録抹消問題は昔からこの業界にあるブラックな部分です。
ただ、昔と今とでは少し意味合いが違います。
セールス登録をインフォメーションセンターで抹消できないのはなぜかという問題ですが、実は団登録は抹消してある場合が殆どです。
団長が意図的に“退社”にしないで“在籍中”にしておく事はあまりありません。
理由その1 団は在籍社全員を新聞社で強制的に掛ける{団体保険}料を毎月払わなければならないからです。
理由その2 新聞社から出る様々な助成金、補助金は登録者に出るのではなくて、販売店の引継書(稼働日報)の実績をベースに出しているので、単に在籍しているという事だけではもらえません。“月稼働23日以上が対象”などの縛りが有ります。
なぜ登録抹消に成らないのか?
実はその団を辞めた人間はインフォメーションセンターで“退団”に成っています。
団は、退団する時に該当セールスの書類をインフォメーションセンターに出します。
その書類が問題なのです。
書類のフォーマットの中に「通常退社」と「借有り退社」が有って、借金が有っても無くても「借有り退社」(業界では、“借退”と略している)にして書類を送るのです。
個人的な現金での貸借関係(借金)が無くてもそうする理由は、賃貸住宅への家賃の敷金や保証金を団が立て替えて出しているからです。
短期間のうちに夜逃げ同然に黙って辞めていく者は、それを借金とは殆どの者が認識していませんが、入団の際、説明していますので法的にも立派な借金になります。
その拡張員が退団した後で、「不良カード」が団へ戻って来ることも多々あります。それによる”不良カード清算金”の負担分など、いくらでも正当な理由は作れます。
”不良カード清算金”とは、その月の揚がりカード清算金額から不良程度によって差し引くものです。
例えば6ヶ月カードで3ヶ月しか入らなくて途中解約になった場合は支払ったカード料の半分を差し引くようになっています。
当然ですが夜逃げした者については負担のさせようがないので借金として処理するしかありません。
それらが、「借有り退社」の大きな理由です。
「借有り退社」で書類を出しておくと、その人間が他の団や販売店に行ってもすぐに前の在籍団に照会が行きます。この業界にいる以上は逃げられないように成っています。
大体この業界、きちんと綺麗に辞める人間が少ないので、団としては後バクをばらまいてトンづらした人間を捕まえるために網を張っておくのです。
以前は面接して採用が決まってからインフォメーションセンターへ照会を出したのですが、今は面接する前に履歴書を送って貰い、その時点で照会を出します。
数年前から、“出せ”という事になっているから面接すらして貰えないという事も出てきます。
“借退”の人間は、団長どうしが話し合って金のやり取りで折り合いが付けば、使えるように“借退”を取り下げます。
“借退”で書類を出した団から取り下げが無い限り他の誰も使えません。
“借退”を消すのはインフォメーションセンターの権限では無いのです。
インフォメーションセンターは何の権限も無く、ただ単にデータの保管と照会を事務的にやっているだけです。
そのためにセールス登録をしないで“影武者”で使い、他の人間のIDで引継をしているところもあります。
しかし、それがばれると大変な事になります。
“影武者”として使っていた拡張員が所属していた前拡張団の団長からとんでもない額の “違約金”(落とし前と言った方が合うような雰囲気の額です)を取られた挙句、最悪、団登録も抹消されて潰されます。
私はいくつもその事例を知っています。
今では少し違う意味合いが出ていると言うのは、むかしは借金の取り立てと言う意味合いが強かったのですが、今は、他の団に“人を渡したくない”という意味合いが強くなっているという事です。
現在の団や販売店従業員数は年を追って少なくなっています。
カードが揚がらず食えない人間が増えているのにもかかわらず、募集に多大な金額を掛けていて人が集まらないのです。
新聞社の方は4〜5年前から一変して、セールス増員の太鼓を鳴らしています。
“紙”が予想以上に速いペースで減っているからです。(社によって違うが減紙率、年3〜4%減を想定している)
その地域で稼働する団では他の団の人が増えれば、こちらは減って他が揚げ枚数が増えますから地域の同じ新聞社(社にもよりますが)所属の団どうしの協定で都道府県単位で人が移動できないような「会則」を作っているところが多いのです。
上記の様な「借有り退社」で書類を出している以上、法的な処置も及びません。
それを解決してからでないと役所だろうが新聞社だろうが、どこも取り合ってくれません。
以上、登録を抹消してくれないのでは無くて、他の団が登録できないように成っているのです。
と。
K氏が『セールス登録をインフォメーションセンターで抹消できないのはなぜかという問題ですが、実は団登録は抹消してある場合が殆どです』ということで、『団長が意図的に“退社”にしないで“在籍中”にしておく事はあまりありません』と言われておられるのは正直、意外やった。
もっとも、その理由として挙げられている『団は在籍社全員を新聞社で強制的に掛ける{団体保険}料を毎月払わなければならないからです』、
『新聞社から出る様々な助成金、補助金は登録者に出るのではなくて、販売店の引継書(稼働日報)の実績をベースに出しているので、単に在籍しているという事だけではもらえません。“月稼働23日以上が対象”などの縛りが有ります』というのを聞けば、なるほどと納得できるがな。
それが正しいとすれば、前回のメルマガでワシが、
拡張団の団長がそうするには、それなりのメリットがあると聞く。
それは、登録しているセールス(拡張員)の数により、新聞本社から拡張奨励金や補助金の類が貰えるからやと。
そのため実際に存在しなくてもセールス(拡張員)を登録しているだけで、新聞本社から拡張奨励金や補助金の類が貰えるわけやから、新聞拡張団としても、その登録を外したくないと考えても不思議やない。
それが辞めた後もセールス(拡張員)の登録が外されない最大の理由やと思う。
本来なら、それは不正行為になる。歴然とした背任行為や。
と言うたのは間違いでしたと撤回せなあかんことになる。
こういった相談というのは、たいていの場合、相談者の方が、自身の行動は正しいと思い込み、あるいは正しいと主張され、拡張団側に問題があると考えておられるケースが多い。
特にQ&Aにおいてそれが顕著やが、その真偽には目を瞑っている。というか、本当のことを言うてるのか嘘を言うてるのかについては詮索せんし、できん。
それなら相談者の言うことをそのまま鵜呑みにするのかと言われると、そうなる。
相談の内容が正しいものとして、その相談に沿ったアドバイスをする。それがQ&Aのあり方でもあるしな。
そうは言うても、相談の内容次第ではワシらも「言うてることが本当に正しいのか」と疑うことがあるのも事実や。
こういったケースではK氏の言われるように借金を踏み倒して「飛んだ(逃げた)者」が多いということも知っているさかい、前回引き合いに出したQ&A『NO.870 この体制についてどう思われますか?』(注2.巻末参考ページ参照)の中で、
ただ、『なんとしてもセールス登録を外せないように手を回している』というのが、具体的にどんな方法かにもよるが、そいうものにはいくらでも対処のしようがあると思う。
例えば、あんたが、その団を辞めたいということで他団に移籍したいと考えたとする。
その場合、あんたところの団長には、それを伝えず、「もうこの仕事は辞めたい」とだけ言うて実際にその団を辞める。
ここでポイントなのは、その団との揉め事などの問題は一切起こさずに円満に退社するということや。
そうしとけば、不法拡張員、要注意人物としての登録はされずに済む可能性が高い。また、業界情報などで、あんたにとっての不利な手配情報が出回ることもないはずや。
と、一応、相談者に非があった場合のことを考えて、そう言い添えている。相談者に非があれば話が違うてくるという意味で。
ただ、その一方で、相談の内容を聞く限り、どう考えても相談者に非がなさそうに思えるものもある。
その典型的な例が、Q&A『NO.1131 セールスの登録解除をしてもらえない時は、どうすればいいんでしょうか?』(注3.巻末参考ページ参照)で、
登録解除をしてもらえない時は、どうすればいいんでしょうか?
「三か月は、登録したままにしとくから」と団長は、いいますが、意味がわからない。
という相談があったのが、それや。
この人の場合は、円満退社を申し出て団長もそれを了承した上でのことやと言われている。
そのため、その回答では、
『意味がわからない』ということについてやが、ええように考えれば、実力のあるあんたに辞められたら困るということで「いつでも帰って来られるように待っている」という意味にも受け取れる。
悪い意味で言えば、団のノウハウや事情を他で喋られたら困るということで、あんたが業界内で再就職できんように就業妨害しようという腹やということになる。
と言うた。
これについては、K氏が、
今では少し違う意味合いが出ていると言うのは、むかしは借金の取り立てと言う意味合いが強かったのですが、今は、他の団に“人を渡したくない”という意味合いが強くなっているという事です。
現在の団や販売店従業員数は年を追って少なくなっています。
カードが揚がらず食えない人間が増えているのにもかかわらず、募集に多大な金額を掛けていて人が集まらないのです。
新聞社の方は4〜5年前から一変して、セールス増員の太鼓を鳴らしています。
“紙”が予想以上に速いペースで減っているからです。(社によって違うが減紙率、年3〜4%減を想定している)
その地域で稼働する団では他の団の人が増えれば、こちらは減って他が揚げ枚数が増えますから地域の同じ新聞社(社にもよりますが)所属の団どうしの協定で都道府県単位で人が移動できないような「会則」を作っているところが多いのです。
と言うておられる事と符号する。
K氏の話から、おそらく『三か月は、登録したままにしとくから』というのは、同一地域で他団への就職を防ぎたいという思いがあってのことやと考えられる。
これに関しては団長の立場として分からんでもないが、相談者からすれば、とんでもないことやと言うしかないわな。
きちんとした円満退職を申し出て了承され、何の非もないのに何で、そんな仕打ちを受けなあかんねんと。
それについては、『あからさまな就業妨害に当たる』と回答するしかなかった。
労働基準法第22条3項の(就業妨害通信等の禁止)に抵触する違法行為やと。
非公開を希望されているさかい、その内容を公開できんのは辛いが、相談者に非のなさそうな相談が、ここのところ立て続けに3件ほど寄せられているため、一体この業界は、どないなっとんねんという思いで、ハカセと相談の上、前回のメルマガでセールス(拡張員)登録抹消問題について話すことにしたわけや。
そういった就業妨害のような行為はするべきやないと考えて。やっている業界の人間には自重して貰いたいという思いで。
それもあり、K氏からのメールに対してハカセは、
白塚です。いつもお世話になっています。
>毎週のメルマガを拝見させて頂いています
とのこと、まことにありがとうございます。
またこの度は、セールス登録抹消問題についての貴重な情報を教えてくださり、まことに有り難うございました。
>団長が意図的に“退社”にしないで“在籍中”にしておく事はあまりありません。
とのこと、よく分かりました。
ただ、非公開希望ながら、ここのところ、所属していたセールス会社からセールス登録を抹消してくれないために他で働けず困っているという相談が3件ほど立て続けに寄せられているのも事実です。
1件だけでしたら、Kさんの説明で納得もできるのですが、サイトに公開しているだけで4件、非公開分を合わせると10件以上も同様の相談を受けています。
穿った見方なのかも知れませんが、私には、ごく一部でしょうが、意図的に悪意をもって、そうしている人間がいるとしか思えません。
>実はその団から止めた人間はインフォメーションセンターで“退団”に成っています。
とのことですが、相談者の方が、ご自身の登録状況を実際に確かめたところ、その肝心のインフォメーションセンターの人間が、退団になっているかどうかは知らないと言っています。
Kさんのお話どおりだとすると、そのインフォメーションセンターの人間が、いい加減なことを言っているということになるのでしょうか?
インフォメーションセンターで“退団”に成っているのなら、その担当者が知らないはずがありませんからね。
いずれにせよ、拡張団サイドの事情が分かったという点では、とても有り難く思います。
今後は、頂いた情報を加味した上で、相談者へのアドバイス、およびメルマガ誌上での話の中に取り入れたいと思います。
お忙しい中、情報を寄せて頂き、まことにありがとうございました。
と返信した。
するとすぐに、K氏から、
『ただ、非公開希望ながら、ここのところ、所属していたセールス会社からセールス登録を抹消してくれないために他で働けず困っているという相談が3件ほど立て続けに寄せられているのも事実です』
というのは、セールス本人が他の団へ面接に行った時に「前の団から抹消されてない」と言われて“セールス登録が抹消されていない”と思ったのだと思います。
面接に行った団がインフォメーションセンターへ照会して「前の団から抹消されてない」と言ったと推測します。
これは前回も言ったように「借有り退社」に丸を付けているので、「抹消されていない」と言っているのです。
新聞社の地区の担当は、セールス個人個人の稼働日報を必ずチェックしています。
ですから、長期間稼働ゼロの人間がいた場合に団へ在籍しているかどうかの確認をします。
たとえ団が抹消しなくても新聞社の担当者が強制的に抹消させます。
インフォメーションセンターが持っている情報を話すのは、新聞社と団だけです。
セールス本人からの情報照会には回答しません。
知らないとか嘘を言っているとかでは無くて、情報をセールスには教えないのです。
面接に行った団もそこのセールスが辞めた時に同じように「借有り退社」にしますから、「あなたは前のセールス会社から登録抹消されていない」と言うのです。
正直に「借有り退社」に成っているという団長は何処にもいません。
借金も無いセールスにそれを知られるのがまずいですから、インフォメーションセンターへその様に登録したとは言えないからです。
セールス経験者が他の団へ面接に行った場合は必ず前の団長と話しをします。
そこで「借有り」の人間はいくらで買うか団長どうしで話し合って、金が折り合えば「借有り」を抹消して団の移籍が成立します。
ほとんど人身売買の世界です。
「借有り退社」にする目的は働けなくするいやがらせでは無くて、他の団や店から金をとるためです。
ですから“他の団で働けない”というのは金の話が付かなかったという事です。
何度も言いますが退社に成っていないのでは無くて「借有り退社」が抹消されていないという事です。
団どうしや新聞社にはセールス本人には知らせずに動かしているものが沢山あります。
という内容のメールが返ってきた。
それで、ワシらとしては、すべて納得できた。そういう絡繰りになっていたのかと。
ただ、こういった内幕は普通では分からない。それが分からなければ、今後も『所属していたセールス会社からセールス登録を抹消してくれないために他で働けず困っているという相談』が続くものと思う。
それもあり、次回、つまり今回のメルマガで、寄せて頂いた内容を公開したいとK氏に打診したところ、
この事を一般のセールスや店員に周知していいものかどうか分からず悩みましたが、人身売買まがいの行為が行われている現状を考えると、やはり業界の実情を知ってもらう事が良くなる第一歩だと考えますので、公開して頂いても結構だと思います。
と快く応じて頂いたので、今回話すことにしたわけや。
次回から、この手の相談があった場合は、この回のメルマガを見て貰ったら分かると言えるしな。
この『セールス(拡張員)登録抹消問題』に対しては賛否両論あると思う。
どちらかと言えば否についての意見の方が勝るやろうが、新聞拡張団の団長としては、そこまでせなやっていけんと考える心情は分かる。
現在、新聞拡張団に勤めたいという人より辞めたいという人からの相談の方が圧倒的に多い。それは新聞販売店にも似たようなことが言える。
ワシは昔から言うとるが、この業界に人が寄りつかんようになった時が最大のピンチやと思うとる。
特に勧誘員がおらんようになったら致命的やと。
新聞は、どこまでいっても売り込まない限り絶対に売れんものやさかいな。
売り込む人間が少なくなるようでは、どうしようもないわな。
長引く不景気感、少子高齢化による人口の減少、新聞の勧誘問題、インターネットの普及による新聞離れ、新聞社の不祥事問題等々、新聞の部数が減少する理由は数多くあるが、その中でも勧誘員の減少が、新聞としては最大の危機やと思う。
新聞社もそれが分かっているからこそ、『新聞社の方は4〜5年前から一変して、セールス増員の太鼓を鳴らしています』という姿勢に転じているのやろうしな。
この業界に人が近寄らないのは単に稼げないだけが理由やないと思う。現実に、今のような状況下であっても稼いでいる人は稼いでおられるしな。
稼げないと嘆いておられる人は、様々な厳しい状況や運不運も確かにあるやろうが、それ以上に、ご自身の心構え、姿勢に問題があるケースが多い。
ただ、業界内部には今回の事でも分かるように知られざる暗黙の決まり事のようなものが多く、またタブーも多い。
結果的に、それがこの業界から人を遠ざけているという面も否定はできん。業界のそうした暗部、タブーに嫌気が差し辞めていく者も多いさかいな。
その意味で言えば、今回のK氏の英断には感謝したいと思う。ご自身に不利になると知っていながら、敢えて、この情報の公開に同意して頂いた事を。
ワシらは単なる曝露話なんかはしたくない。その根底には、この業界のためになればという思いがあるからこそ、今まで他の人が話して来なかったようなテーマを扱っているわけや。
隠し事からは何も生まれない、進歩はないと知っているさかいな。
参考ページ
注1.第367回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■拡張の群像 その16 セールス(拡張員)登録が抹消されない人たち
http://archive.mag2.com/0000265583/index.html
注2.NO.870 この体制についてどう思われますか?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-870.html
注3.NO.1131 セールスの登録解除をしてもらえない時は、どうすればいい
んでしょうか?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-1131.html
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