メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第389回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2015.11.20
■吹っかけられた借金返済問題の対処法について
最近、めっきりQ&Aへの相談が減っている感があるが、実際はそうでもない。
その分、非公開希望の相談が増えている。非公開については相談者が希望することやさかい問題はない。快く応じている。これからも、そうするつもりや。
ただ、ここのところ同じような質問が続発しているのが少し気にかかってはいるがな。
その多くは、辞めた際、新聞拡張団、または新聞販売店から法外な借金を請求されたというものや。その請求が身内に向かうこともある。
その都度、相談者の方には対処法を知らせてはいるが、それでは当然のことながら、当事者にしか届かない。
そういった相談全般に言えることは、本来払う必要のない金まで支払っている、支払おうとしているケースが多いという点や。
何でそんなことになるのかと言えば、偏(ひとえ)に法律的な知識と交渉方法を知らんためやと思う。
事前に、それらの知識を知っていたら、そこまで追い込まれることもなかったやろうというケースが目立つ。
そこで大まかな事例を紹介して、その対処法を公開しようと考えたわけや。他にも同じような問題で悩んでいる、困っている人の役に立てればとの思いでな。
本来なら事例毎に対処を提示するのやが、今回に限り、事例は事例でまとめ、対処法は一括して知らせる。重複する部分が多いさかいな。
それでは始めさせて頂く。
事例その1
父は、70歳を超す高齢で、最近まで新聞拡張員をしていました。その父がM新聞拡張団を辞める際、借金が残っているので払えと子供である私たち夫婦に取り立てにきて困っています。
父も「てんぷら(架空契約)」による借金分があるのは認めていますが、それにしてもその請求額があまりにも多すぎると言います。
M新聞拡張団の言い分は不良カードによる赤字分が借金扱いになっているというものでした。
こんな場合、どう対処したら良いのでしょうか?
事例その2
専拡(専門拡張員)として10年ほど働いていた新聞販売店が昨年の11月頃に廃業し、新しい店主になってから今年2月にセールス(拡張員)を解雇されました。
辞めて半年ほど経ってから突然、200万円以上の赤字があるので、それを払えとヤクザ並の脅しを受けて困っています。
前店主とは不良カードがある都度、精算は済ましているはずですと言いましたが、その証拠は残っていないし、赤字が借金として計上されているから払えの一点張りです。
前店主とは連絡がつきません。こんな場合、その請求に応じなければいけないのでしょうか?
事例その3
義父が拡張員として働いていた新聞営業会社辞めました。その時、出入りしていた販売店の店主から不良カードの請求がきました。
義父は自分でテンプラして借金になったものもあるが、新店長に枚数が足りないから協力してほしいと架空のカードを書かされることがたびたびあるとのことです。
電話で頼まれて承諾してないのに勝手に架空のカードを義父の名前で作ることもありました。
義父は自分のテンプラはゼロではないと認めていますが請求金額は納得していません。
私からみると人のよい老人が食い物にされ、利用されていたとしか思えません。
義父は人がよすぎる、嫌と断ることができない、ややもすれば雇い主の言いなりになって働いてきた、少々頭の弱い高齢者です。
義父は適切な判断ができず、どうすることもできずただ困っている状態です。
どうか助けてやってください。
事例その4
所属していた新聞拡張団の団長に凄まれ怖かったので、身に覚えのない不良カードの赤字分を支払ってしまいました。
その際、カード料と称したデタラメの収入を全額申告してしまったため、高額所得者になって、高額の税金がかかってしまっています。
現在、少ない年金だけで生活しているため、後期高齢保険料金も滞納しています。
裁判を起こして新聞拡張団の団長に支払った分を取り返し、カード料と称したデタラメの収入を全額申告してしまった分を是正して税金の返還を求めたいと考えています。
どう思われますか?
悪質な新聞拡張団、および新聞販売店から請求された借金と称する不良カード返済の対処法について
1.納得のできない請求に応じてはいけない。
「事例その2」と「事例その3」のように、身に覚えのない、納得できない分の支払いには応じてはいけない。
その支払いに応じなければ、相手は「損害賠償訴訟」を起こすしかない。裁判になれば、正当な請求分しか認められないから、結果的には相談者のためになるケースが多い。
2.身内への請求は拒否できる。
「事例その1」のケースでの請求は断固拒否することや。
親、兄弟などの親族の借金は連帯保証人にでもなっていない限り法律的には支払う必要はない。そう言うて請求を退けることや。
ただ、それでは親族を見捨てることになるのではないかと考える人も中にはおられるかも知れんが、ここはあくまでも、そんな請求をしてくる新聞拡張団に対してであって、本当に親族を見捨てろと言うのとは違う。
むしろ、そうすることで結果的に親族を助けることにつながると考えて欲しい。
親族に請求するというのは、その本人から取れないと考えているからで、身内がそれに応じないとなれば大半はあきらめるはずや。無い袖は振れんさかいな。
3.秘密録音や動画などで会話の記録を録っておく。
支払いを拒否した場合、裁判を起こす新聞拡張団や販売店の経営者は、まだマシやが、タチの悪い連中になると恐喝や脅しをしてくるケースがある。
「事例その4」などは、その典型で一端支払ったものを取り返すのは裁判を起こしても、かなり難しい。
ただ、そういったケースも含めて、恐喝や脅し、あるいは直接的な暴力に出たような場合は、秘密録音や動画などで会話の記録を録っておくことを勧める。
そうすれば事が有利に運ぶはずや。
4.誰か信頼できる人に相談する。
こういった問題は、なるべく自分たちだけで抱え込まんことや。誰か信頼できる人に相談すれば事態が好転する場合が多い。
そういう人が見当たらないのなら、ワシらへの相談でも構わない。
相談の内容次第ということもあるが、「事例その1」から「事例その4」までの問題やったらアドバイスしているので、自分たちだけで考え込むよりかはマシなはずや。
5.弁護士などの法律家に相談する。
後々、裁判になった時のことを考えるのなら、弁護士などの法律家に相談するという手もある。
費用は、それなりにかかるが、法外な請求の場合、十分ペイする場合もあるさかいな。
実際に裁判まで至った事例については『第78回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞トラブルあれこれ その3 裁判、その長い闘いの果てに』(注1.巻末参考ページ参照)というのがあるので、参考になるのやないかと思う。
このケースでは、請求金額の減額と支払ってしまった分の返還金を相談者の方が受け取ることができている。
弁護士が入ったことで拡張団からの催促の電話がピタッと止まった。もちろん、直接訪れることもなくなった。
その後、その弁護士と相手方との間で交渉が続けられたが、その相手の拡張団側が納得せず、民事で争われることになった。結局、裁判は2年以上続くことになる。
ちなみに、この相談者の方からの最初のQ&Aでの回答『NO.449 裁判にすべきでしょうか?』(注2.巻末参考ページ参照)の文章をそのまま、その弁護士の方が証拠書類として裁判所に提出したいので許可して欲しいと頼まれた。
もちろん、ワシらには何の依存もないと返答した。
6.請求資料はすべて提出して貰う。
当人が身に覚えのないようなケースでは大半が、相当吹っかけた内容の請求になっているのが普通や。
実際の損害額が10万円程度やったら5、60万円の請求になるといったところかな。たいていの場合、その請求額にさしたる根拠も正当性もない場合が多い。
あるのは、業界の論理だけが優先する逃げた者、辞めた者への見せしめ的なペナルティと考えといた方がええ。
そして、殆どの場合、そんな請求をそのまま応じる者はいないということも、その連中はよく知っている。
しかし、中には「揉めるくらいなら」と考え請求どおりの金額を支払ってしまう身内の人もおられる。
その確率がどの程度なのかは定かやないが、聞くところでは5件中1件の回収ができたら御の字とのことや。
そのため、法外な値段を設定しておかなければ採算が取れない、間尺に合わないと考える。言えば、5人中1人の回収でペイしようという魂胆なわけや。
つまり、そもそもがそんなええ加減な考えで請求しているわけやさかい、まともな請求は少ない。
まあ中には、その請求によほど自信があるのか裁判にまで持ち込む新聞拡張団や新聞販売店があるがな。
ただ、それにしても裁判所で認められるのは、ええとこ半分程度のもんやけどな。
不良カード分の請求というのは、この業界としては自然なものやが、一般社会通念上、あるいは法律に照らしてとなると、かなりの疑問符がつく。
『不良カード』というのは、結果的に客が購読せんかったという理由で無効になった契約のことや。
販売店から買い取ることはできんと突き返されたものを通常そう呼ぶ。
その責任が、あると実証され、それに対して団がすでに当該の拡張員に支払い済みの拡張料の返還だけを請求しとるというのなら、それなりに筋は通る。
しかし、たいていはそれに対してペナルティが上乗せされとる場合が多い。そのペナルティが正当なものかどうかという判断が必要になる。
このペナルティというのは、見せしめ的要素の強いものやから、拡張団の中には、かなり高額に設定されとる場合がある。
普通、それらは一括請求という形になっていて、その不良カード一枚一枚の請求理由というのは添付されとらんはずや。
弁護士さんなら、それの添付を要請できる。当たり前やが、それがなかったら、その請求が正しいかどうかの判断すらできんさかいな。
以上や。
後は個々の事案毎でアドバイスが違うてくるさかい、ここで話せるのは、この程度や。
特に「事例その4」については、なかなか難しい問題が内包していて結果が出るのは、もっと先やと思うので、結果が出て、相談者の許可があれば特殊なケースとして、このメルマガ誌上で話したいと思う。
参考ページ
注1.第78回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞トラブルあれこれ その3 裁判、その長い闘いの果てに
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-78.html
注2.NO.449 裁判にすべきでしょうか?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-449.html
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