メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第434回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2016. 9.30


■新聞の実情 その13 新聞セールス・インフォメーションセンターの実態


前回のメルマガ『第433回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■所属の拡張団を辞めて他の団に移籍する際に知っておきたい事、あれこれ』(注1.巻末参考ページ参照)を読まれた、ある業界関係者の方から、


ご無沙汰しています。

今回のメルマガで「団の移籍問題」がありました。

「古くて新しい問題」、新聞拡張団について回る宿命ともいえる事柄です。

新聞セールスインフォメーションセンター(SIC)は一見、新聞セールスの頂点にある組織のように見えますが、在京6社(A紙、Y紙、M紙、S紙、N紙、T紙)で出資して作った連絡協議会のようなものです。

あくまでも主体は新聞社で、SICはその下部組織です。SICはそのデータを新聞社とセールスチームのために管理しているところで、何の決裁権もありません。SICの業務は、履歴の保存とセールス証を発行するだけです。

新しくセールスになる者がいるとすると、団は新聞社のこの組織へ書類を送付し、社はSICへ履歴紹介を出します。

他の新聞社での経歴を紹介するために情報を一元化しているだけです。

セールス証は一度発行されると6社内のどこへ移籍してもマイナンバーのように同じ登録番号(6桁のID)で管理されます。

その登録番号(6桁のID)は、何処の新聞社だろうが何処の団だろうが一生ついて廻る同じ番号に成ります。

よって、セールスの二重登録は新聞社でも団でも出来ないのです。

SICの人間は新聞社からの天下りです。それも、所謂「えらいさん」の部類でない人の天下り先です。

登録についての団同士のトラブルには一切首を突っ込みません。もちろんその裁定能力もありません。

団は地区ごとに組織に所属します。例えばY紙の場合ですと、「東京販売連合会」、「神奈川販売連合会」といった形です。

同じ連合会の中には「登録抹消後6か月間は他の団へ登録できない」といった規約を作っているところもあります。

大体その地区の会長になるのは一番大きな力のある団長です。大きな団の団長が「あの人間は使うな」と言えば他の団長も従わざるを得ません。

各地域の連合会には新聞本社単位で組織したものもあります。一例としてY紙では東京本社管轄の団を集めた「Yネット21」という組織を作っています。

同じ新聞社どうしの団の移籍が難しいのは、そういったことからです。

セールスが退団するときに出す書類に「通常退社」、「借(借金)あり退社」のどちらかに○を付けて出します。

いつまでも登録を抹消できないのは「借あり退社」になっているからです。「団同士の話が付かない」ということです。

ほとんどの団が、借金があっても無くてもこれに○をして退会書類を出すのです。

借金がなくても不良カードがいつ戻ってくるか、わかりませんからそうしているのだと言い訳に使います。

そうしておけば「ヒモ付き」になるので、移籍するセールス本人の意思と関係なく団同士の話にできるからです。

新聞社の部署も「団同士でよく話してよ」と言うだけで首を突っ込んで来ません。

移籍前の団が「借あり退社」、所謂『借退』を消さない限り他へは登録できない仕組みになっているというのは、そういうことからです。

借ありの人間は団同士ではほとんど人身売買の世界です。

セールスの能力により金額の大小があり、「この人間だったら50万まで出すよ」、「いや、70万出してもらわないと消せない」という話が普通に飛び交っています。

団の寮に入った瞬間に敷金、家賃等で30〜50万程度の借金になるのが通常です。そのほかにも景品の規定外の使い込みをどんどんさせ、その購入金を貸すなどといった団もたくさんあります。

金を貸してカード料を安くし、借金漬けにしてがんじがらめにしていくのです。

団の移籍となると次に移る団がそれを立て替えなくてはなりませんから難しい問題になるわけです。

つまり、最初にある程度セールスに借金をさせるのは、簡単に他の団へ移れなくするためという意味合いもあるのです。

SICは事務的な事しかしませんので団員の移籍には関係がないという立場です。

A新聞社やY新聞社でも団員の移籍には関与しません。販売局のセールス指導部や地区の担当員がセールスチーム単位で管理していますので、個々のセールスに社が直接関与することはありません。

しかし、M新聞社やS新聞社は少し違います。結構、社とセールス員の関係には近いものがあり、移籍となると販売の部長などが出てきて話をすることがあります。

セールスの数が圧倒的に違うからです。つまり社が直接管理できるくらいの人数しかセールス員がいないからです。

移籍に関してのトラブルなどの問題は、あくまで団とセールス員、団と団の二つの問題だけです。

例えばY紙系の団で登録抹消になった人間でもA紙系の団では登録出来たりします。それを登録したからと言って、Y新聞社とA新聞社のトラブルには全くなりません。

団にとっての理想のセールス像は「多い枚数を揚げて、しかも不良カードが無く、借金をしない人間」です。従って、団が手放したく無い人間像も、そうなります。

逆を言えば、こういったセールス員が他の団から引き抜きたい人間になるのです。

団員の移籍に関しての問題はすべて「金」が絡んでいるのです。団長どうし、お互い「金」で納得できればスムーズな移籍になりますが、納得できなければトラブルになります。

つまり、団員の移籍に関して団の本音は金の問題が解決して納得できるかどうかだけなのです。

以上、雑駁ですが、団員の移籍に関しての私の思うところです。


という情報が寄せられた。

『新聞セールスインフォメーションセンター(SIC)は一見、新聞セールスの頂点にある組織のように見えますが、在京6社(A紙、Y紙、M紙、S紙、N紙、T紙)で出資して作った連絡協議会のようなものです』というのは、薄々そんなところやないかとは思うていたけど、ここまで具体的に詳しく説明されると「やっぱり、そういうことやったのか」と納得するしかないわな。

それであれば、サイトのQ&A『NO.870 この体制についてどう思われますか?』(注2.巻末参考ページ参照)の中で、


拡張員の登録先である「新聞インフォメーション・センター」に連絡して「私は○○団を辞めてますので、その登録がされたままなら外してほしい」と、その辞めたという証拠と一緒にそう申し出る。

その登録元である「新聞インフォメーション・センター」では、その在籍確認ができない人間の登録は外さなあかん決まりになっとるから、団を介さずそう申し出れば即座に登録を抹消するか、その団にそうするように連絡を入れるはずや。

いずれにしても、そうしておけばその登録が外されるのは、ほぼ間違いない。

当たり前やけど、そこで仕事してないわけやから、仕事をしてない者をそのまま登録するというのは登録違反ということになるさかいな。

それを確認した後で、希望の団に就職すればええ。


とアドバイスしたことは撤回せなあかんやろうな。

この方が言われるとおり『連絡協議会のようなもの』やとしたら、SICは団のための組織で、そこで働く拡張員を守るようには作られていないということやさかいな。

また、同じくサイトの『NO.1131 セールスの登録解除をしてもらえない時は、どうすればいいんでしょうか?』(注2.巻末参考ページ参照)で、


さすがに、労働基準局から連絡が入れば、新聞インフォメーション・センターの担当者も『それ以上は強く言えない』などというアホな対応はできんはずや。


と言うたことも訂正せなあかんやろうと思う。

もっとも、『NO.870 この体制についてどう思われますか?』は6年前で、『NO.1131 セールスの登録解除をしてもらえない時は、どうすればいいんでしょうか?』は4年前の回答やから、今更ではあるがな。

遅きに逸した感が強すぎる。

言い訳するわけやないが、ワシらに限らず、新聞セールスインフォメーションセンター(SIC)の方が、少なくとも団より立場が上の管理組織やと思うてた人が多いはずや。

そのため、前回のメルマガで、


最近の相談でも新聞インフォメーションセンターの担当者とやらが、「こちらからは何とも言えないので、そちらから所属していたセールス会社に登録を外して貰うよう交渉して欲しい」といったバカげた対応に終始して困っているというのが多い。

それでは何のために新聞インフォメーションセンターの名前で『新聞セールス証』を発行しとるのか分からんわな。

本来なら、僅かな疑いが生じた場合でも、その新聞インフォメーションセンターの担当者は率先して、その真偽を糺すよう対処せなあかんはずや。

せめて、登録員本人からのそういった真偽に関わる通報に対しては、「おたくの所属セールスの○○さんが退社されて、セールス(拡張員)登録解除を希望されていいますが、事実ですか」というくらいの確認は、その新聞拡張団に入れてしかるべきや。

それでないとセールス(拡張員)を登録制にしてまで『新聞セールス証』を発行して管理している意味がなくなるさかいな。

実際、嫌がらせのようにセールス(拡張員)登録を解除しない団長がいて困るという話が数多く寄せられているが、そういうことになる原因の大半は新聞インフォメーションセンターの担当者の対応に問題があるからやということが分
かってきた。

すべてを承知で「見て見ぬ振りをしている」のやろうと。結局は何もできない組織なのやと。

そう思われても仕方がないのと違うやろうか。

拡張団の団長がそうするには、それなりのメリットがあると聞く。

それは、登録しているセールス(拡張員)の数により、新聞本社から拡張奨励金や補助金の類が貰えるからやと。

そのため実際に存在しなくてもセールス(拡張員)を登録しているだけで、新聞本社から拡張奨励金や補助金の類が貰えるわけやから、新聞拡張団としても、その登録を外したくないと考えても不思議やないわな。

それが辞めた後もセールス(拡張員)の登録が外されない最大の理由やと思う。

本来なら、それは不正行為になる。歴然とした背任行為や。

新聞社は当然として、管理する立場の新聞インフォメーションセンターも、そんな不正を見逃すことなどないはずや。また、そんなことをしたらあかん。

少なくとも、その実態を知るまでは、そう思うていた。新聞インフォメーションセンターはセールス(拡張員)をしっかり管理している組織やと。

しかし、実際は責任逃れの物言いに終始して、分かり切った不正を見逃しているのが実情やというのが良う分かった。

はっきり言うが、こんな最低な組織は滅多にないで。お飾りの組織にしてもお粗末すぎる。

「新聞社に言うてくれ」、あるいは「当該の新聞拡張団と交渉してくれ」と言うてるようでは、「私ら(新聞インフォメーションセンター)には何の力もない」、「組織として何のプライドもない」と言うてるに等しいことやさかいな。

在籍していないと本人が言うているにもかかわらず、発行元が、その登録を抹消するには当該の新聞拡張団と交渉してくれと言える神経を疑う。

あきれて物も言えん。世の中広しといえども、そんな管理組織はどこにも存在せんやろうと思う。

しかし、そのあり得ん対応があまりにも多いさかい、ワシらとしても看過できんと考え、こうしてここで話しとるわけやけどな。

いずれにしても、「当方では、そういう手続きをしません。できません」と言うに等しい対応に終始する新聞インフォメーションセンターの担当者がいる限り、いつまで経っても登録抹消にはならんわな。

当たり前のことを当たり前にできん組織を相手にしても無駄や。

退社によるセールス(拡張員)登録を解除しない拡張団が存在すること自体、新聞インフォメーションセンターや新聞社の管理不足、ひいては新聞業界全体の信用問題にも関わってくることやと思うのやが、そういう認識は彼らにはな
いのやろうな。


と、きつめに糾弾したんやが、それが、まったく意味のないことやったと知らされた。

しかも、それだけではなく『セールス証は一度発行されると6社内のどこへ移籍してもマイナンバーのように同じ登録番号(6桁のID)で管理されます』ということで、新聞社や団が都合よく拡張員を管理、監視するための組織だったとなれば、当然やが、拡張員側の立場に立った応対、動きなどするわけがないわな。

相談者の方が、『セールス・インフォメーションセンターにまず連絡したら、本社にしてくれと言われ、本社に電話すれば団長と直接話してくれと言われました』と報告して来られたことが、今になれば、通常の業務対応やったのやなというのが、よく分かる。

つまり、新聞セールスインフォメーションセンター(SIC)に何を報告しても、どんな不正を摘発しても、どうにもならんということが。

そうであれば、前回のメルマガで、


当然のことながら、それぞれの新聞拡張団(新聞セールス会社)や新聞販売店で従事している期間だけ有効ものとされ、その職場を辞めれば登録証を返納して資格を失い、登録が抹消されることになっているはずなのやが、なぜかそう
なっていないケースがあるという。


と疑問を呈した事に対する答えが見つかったことになる。

団の都合や意向が優先されるわけやさかい、団が登録を抹消しないと判断すれば、それまでということにしかならんわな。

しかし、唯一の手段として双方の回答で、意図して団員の登録を抹消しない場合は、


労働基準法第22条3項の(就業妨害通信等の禁止)に抵触する立派な違法行為やから、そう言うて労働基準局に訴えればええ。

拡張団も労働基準局から退職手続きを速やかにするようにと言われれば逆らうことはできんやろうと思う。

その拡張団の団長がどんな人間かは分からんが、それを無視して問題を拗(こじ)らせるほどバカやないやろうしな。

それでもラチがあかんかったら、今度は、その拡張団の所属する新聞社の販売部に、労働基準局へそう通告したにも関わらず「拡張員登録を外して貰えなくて困っています」と言うても効果があるのやないかと思う。

過去の相談でも、そこまですればたいていは拡張団の方で面倒になってセールス(拡張員) 登録の解除に応じとる。


と言うたのは間違いやなかったと確信しとる。

もっとも、労働基準局に異議申し立てができるのは社員契約している拡張員だけで、請負業務、委託業務形態での就業は管轄外を理由に取り合って貰えないやろうがな。

請負業務や委託業務契約の場合、外形上は個人事業者ということになり、拡張団と拡張員との間では事業者同士の取引になるから、労働基準法の適用外やさかいな。

その比率が、どの程度になるのかは分からんが、問題を起こしている団ほど請負業務や委託業務契約にしているケースが多いということのようやからタチが悪い。

しかし、それにしても、この方が言われている、


セールスが退団するときに出す書類に「通常退社」、「借(借金)あり退社」のどちらかに○を付けて出します。

いつまでも登録を抹消できないのは「借あり退社」になっているからです。「団同士の話が付かない」ということです。

ほとんどの団が、借金があっても無くてもこれに○をして退会書類を出すのです。

借金がなくても不良カードがいつ戻ってくるか、わかりませんからそうしているのだと言い訳に使います。

そうしておけば「ヒモ付き」になるので、移籍するセールス本人の意思と関係なく団同士の話にできるからです。

新聞社の部署も「団同士でよく話してよ」と言うだけで首を突っ込んで来ません。

移籍前の団が「借あり退社」、所謂『借退』を消さない限り他へは登録できない仕組みになっているというのは、そういうことからです。


というのは、タチが悪いというレベルを遙かに超えとるわな。実にえぐい。

もっとも、団にとって、これが最も都合の良いやり方なのかも知れんがな。

しかし、それでは拡張員になる者は、アリ地獄の巣に嵌ったアリと同じで、一度入ってしまえば助かる術がないということになる。

こんなことが公になったら、ただでさえ減少傾向に歯止めがかからん状態に加えて、よけい拡張員のなり手がおらんようになるのと違うやろうか。

前々から何度も言うてるが、「新聞は売り込まな絶対に売れん」商品や。

その売り手である勧誘員がおらんようになったら新聞業界は確実に滅ぶ。それだけは間違いない。

そうならんためには、勧誘員を増やすしかないのやが、残念ながら、そのための対策やシステムは殆ど出来上がっていない。

勧誘員を泣かす仕組みは山ほどあるがな。結果、組織ぐるみで拡張員の自由を奪い、食い物にしているというのが透けて見えている。救いがない。

一部の団では、それが分かっていて、所属の拡張員に対して手厚く遇しているのは知っているが、その数は、やはり少ないし、あまり知られていない。

ワシらが、どれだけ、そのことを訴えてみても業界が動かん限り、どうにもならんわけや。

もっとも、団側の人間に言わせれば、団を食い物にする悪質な拡張員がいるからやという声も聞こえてくるがな。

「喝勧」や「後爆」、「てんぷらカード」などを連発して、それが発覚するまでに他の団へ移籍し渡り歩く「プロ拡張員」と業界で呼んでいる流しの悪質な拡張員たちに手痛い目にあっている団長もかなりいるとのことや。

実際、一人の「プロ拡張員」のために倒産し、廃団に追い込まれたケースもあるというさかいな。

そんな連中を閉め出すためには、ある程度のことは仕方ないという理屈なのやろうが、そのために真面目な拡張員が泣くようでは働き辛くなるだけで、結局は人が寄りつかんようになる。

ここで、心ある業界関係者にお願いしたいのやが、一体どうすれば勧誘員が増え、これ以上の新聞の凋落を食い止めることができるのかといった点について、ぜひ知恵を貸して欲しいと思う。

新聞社が悪い、拡張団が悪い、SICが悪い、プロ拡張員が悪いと、いくらその実態を言及、指弾してみたところで何も変わらんさかいな。

落ち目の業界に必要なのは、前向きで建設的な意見、発想や。それしかない。



参考ページ

注1.第433回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■所属の拡張団を辞めて他の団に移籍する際に知っておきたい事、あれこれ』
http://melma.com/backnumber_174785_6423954/

注2.NO.870 この体制についてどう思われますか?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-870.html

注3.NO.1133 セールス(拡張員)登録が末梢されるまで動かない方がいい
もんですか?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-1133.html


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