メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第367回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2015. 6.19


■拡張の群像 その16 セールス(拡張員)登録が抹消されない人たち


以前から、セールス(拡張員)登録が抹消されないため他の新聞拡張団に勤めることができないという相談が、数多く寄せられていた。

『新聞インフォメーションセンター』(注1.巻末参考ページ参照)にセールス(拡張員)登録をすると、拡張員には、『新聞セールス証』、新聞販売店従業員には、『従業 員(新聞スタッフ)証』がそれぞれ発行され、勧誘時には常に携帯することが義務づけられている。

それらの証明証は、それぞれの新聞拡張団(新聞セールス会社)、新聞販売店に雇用されて初めて登録され発行される。

当然のことながら、それぞれの新聞拡張団(新聞セールス会社)や新聞販売店で従事している期間だけ有効ものとされ、その職場を辞めれば登録証を返納して資格を失うはずなのやが、なぜかそうならんケースがあるという。

セールス(拡張員)の二重登録は禁じられている。

そのため、その登録が解除されていないと、他の新聞拡張団(新聞セールス会社)や新聞販売店でセールス(拡張員)として仕事できない、つまり雇って貰えないということが起きてくる。

その解除をいくら頼んでも新聞拡張団(新聞セールス会社)の中には、それに応じてくれず困っていると、ワシらに相談されて来られるわけや。

しかし、その特殊性のため本人が特定されると困るという思いが強いようで、非公開を希望される相談が多い。

実際には、ご本人が思っておられるほど、そういったケースは特別でも何でもなく、ワシらから言わせると「よくある話の一つ」にしか過ぎず、例えその話の内容を公開したところで本人が特定されることなど、まずないと断言してもええのやが、それがなかなか分かって貰えない。

ワシらとしても慎重を期すために投稿者が特定される情報はすべて省いた内容の回答を事前に相談者に送付して確認して貰ってから、メルマガやサイトのQ&Aに掲載するようにしているのやが、それでも安心できない方が結構おられる。

そういった方から非公開を希望されると、ワシらとしては、それに応じるしかない。

そんなワシらの姿勢に対して、たまに読者の方から、「ゲンさんやハカセさんは非公開の相談が多いと嘆かれていますが、そんな相談は断ったら良いのではないでしょうか」とメールされて来られるケースがある。

そういったメールについては、その都度、


ハカセです。

いつも励ましのお言葉とご意見、まことにありがとうございます。

>ゲンさんやハカセさんは非公開の相談が多いと嘆かれていますが、
>そんな相談は断ったら良いのではないでしょうか。

ということですが、基本的に私どもは、たった一人の方だけのためであっても、できる限りその人の役に立ちたいと考えていますので、私たちが答えられないような筋違いの相談でもなければ断るようなことはなるべくしたくありません。

もともと、サイトのQ&Aとは、そうしたもので相談者の方に納得して頂くために回答しているものですし、メルマガにしても一人の読者の希望で話すことも多いので、そのご意見を最大限尊重するようにしています。

その結果が、「非公開を希望する」のであれば致し方ないと考えているということです。

ただ、そういったケースでは、ゲンさんの手を患わせるまでもないと私が判断した場合、個人的な回答、アドバイスをすることはありますが。

私どもへのご心配からのご意見だとは重々承知していますが、そんなわけですのでご理解頂けたらと思います。


と返信しているという。

それなら、「非公開が多いと嘆くな」とのご意見も聞こえてきそうやが、非公開にするのは勿体ないという思いから、ついそう口走ってしまっているようや。

今回の『セールス(拡張員)登録が抹消されないため他の新聞拡張団に勤めることができないという相談』もその一つや。

それもここのところ複数立て続けに同じような相談が寄せられてくるさかい、このまますべてを非公開にするのは、まずいと勝手に判断して、このメルマガ誌上で話すことにしたわけや。

こんな話ができるのは、ここくらいしかないさかい、ここで話していないと、そういった事実すらなかったことになってしまうな。

もちろん、そんな事情やから、最近のそれに関した相談メールの内容は一切公開はできんし、するつもりもないがな。

ここでは、同類の相談で過去に公開しているものを例に挙げて話すことにする。

最初に、この問題について相談があったのは、5年前の2010年3月26日掲載のQ&A『NO.870 この体制についてどう思われますか?』(注2.巻末参考ページ参照)やった。

その相談の中に、


自分は拡張の仕事が好きですし、実績もそれなりにあります。が、北海道では団から団へは移ることは出来ません。

うちの団長がなんとしてもセールス登録を外せないように手を回しているからです。

それって許されることなのですか?


という部分があった。

それに対して、


『うちの団長がなんとしてもセールス登録を外せないように手を回しているからです』というのは、どういうことなんやろうか。

他では働かせんという意味でそうしとるというのは、『それって許されることなのですか?』と確認するまでもなく許されることやないわな。

まあ、あんたの団は業界でも有名な会社で力も相当あるようやから、それができるのかも知れんがな。

また、そうできると自惚れて言うとるとも考えられる。実際にそうしとるかどうかは別にして。

『許されない』というのは、確かにそのとおりやが、残念ながらこの業界は力関係が大きくものを言うから、そういうケースもあるかも知れんというのは分かる。

もっとも、ワシ自身、そういう話は初めて聞くがな。

同一系列の新聞拡張団に手を回すというのはあり得るが、その団がいくら大きくても他紙の拡張団までには、その力はおよばんと思うのやけどな。

ただ、『なんとしてもセールス登録を外せないように手を回している』というのが、具体的にどんな方法かにもよるが、そいうものにはいくらでも対処のしようがあると思う。

例えば、あんたが、その団を辞めたいということで他団に移籍したいと考えたとする。

その場合、あんたところの団長には、それを伝えず、「もうこの仕事は辞めたい」とだけ言うて実際にその団を辞める。

ここでポイントなのは、その団との揉め事などの問題は一切起こさずに円満に退社するということや。

そうしとけば、不法拡張員、要注意人物としての登録はされずに済む可能性が高い。

また、業界情報誌などで、あんたにとっての不利な手配情報が掲載されることもないはずや。

そして、例え短期間にせよ、次の拡張団に移るまでの空白期間を作る。その間に、拡張員の登録先である「新聞インフォメーション・センター」に連絡して「私は○○団を辞めてますので、その登録がされたままなら外してほしい」と、その辞めたという証拠と一緒にそう申し出る。

その登録元である「新聞インフォメーション・センター」では、その在籍確認ができない人間の登録は外さなあかん決まりになっとるから、団を介さずそう申し出れば即座に登録を抹消するはずや。あるいは、その団にそうするように連絡を入れる。

いずれにしても、そうしておけばその登録が外されるのは、ほぼ間違いない。当たり前やけど、そこで仕事してないわけやから、仕事をしてない者をそのまま登録するというのは登録違反ということになるさかいな。

それを確認した後で、希望の団に就職すればええ。


と回答した。

『他では働かせんという意味でそうしとるというのは……確認するまでもなく許されることやないわな』と言うたのは、労働基準法第22条3項の(就業妨害通信等の禁止)に抵触する立派な違法行為に該当するからや。

それについては、3年前の2012年5月26日の『NO.1131 セールスの登録解除をしてもらえない時は、どうすればいいんでしょうか?』(注3.巻末参考ページ参照)の中で指摘した。

その際、


そのことは労働基準法第22条3項の(就業妨害通信等の禁止)に抵触する立派な違法行為やから、そう言うて労働基準局に訴えればええ。

そうすれば、ほぼ間違いなく、労働基準局は「新聞インフォメーション・センター(旧、新聞近代化センター)」やその拡張団に連絡して改善するよう指導するはずやと思う。

さすがに、労働基準局から連絡が入れば、新聞インフォメーション・センターの担当者も『それ以上は強く言えない』などというアホな対応はできんはずや。

拡張団も労働基準局から退職手続きを速やかにするようにと言われれば逆らうことはできんやろうと思う。

その拡張団の団長がどんな人間かは分からんが、それを無視して問題を拗(こじ)らせるほどバカやないやろうしな。

それでもラチがあかんかったら、今度は、その拡張団の所属する新聞社の販売部に、労働基準局へそう通告したにも関わらず「拡張員登録を外して貰えなくて困っています」と言うても効果があるのやないかと思う。

過去の相談でも、そこまですればたいていは拡張団の方で面倒になってセールス(拡張員) 登録の解除に応じとる。


とアドバイスした。

ワシの言うとおりにしたという相談者の方が、そのすぐ後『NO.1133 セールス(拡張員)登録が末梢されるまで動かない方がいいもんですか?』(注4.巻末参考ページ参照)での質問では、


ゲンさんの言われたようにセールス・インフォメーションセンターにまず連絡したら、本社にしてくれと言われ、本社に電話すれば団長と直接話してくれと言われました。


ということで、たらい回しにされ、結局ラチがあかんかったと嘆いておられた。

最近の相談でも新聞インフォメーションセンターの担当者とやらが、「こちらからは何とも言えないので、そちらから所属していたセールス会社に登録を外して貰うよう交渉して欲しい」といったバカげた対応に終始して困っているというのが多い。

それでは何のために新聞インフォメーションセンターの名前で『新聞セールス証』を発行しとるのか分からんわな。

本来なら、僅かな疑いが生じた場合でも、その新聞インフォメーションセンターの担当者は率先して、その真偽を糺すよう対処せなあかんはずや。

せめて、登録員本人からのそういった真偽に関わる通報に対しては、「おたくの所属セールスの○○さんが退社されて、セールス(拡張員)登録解除を希望されていいますが、事実ですか」というくらいの確認は、その新聞拡張団に入れてしかるべきや。

それでないとセールス(拡張員)を登録制にしてまで『新聞セールス証』を発行して管理している意味がなくなるさかいな。

実際、嫌がらせのようにセールス(拡張員)登録を解除しない団長がいて困るという話が数多く寄せられているが、そういうことになる原因の大半は新聞インフォメーションセンターの担当者の対応に問題があるからやということが分かってきた。

すべてを承知で「見て見ぬ振りをしている」のやろうと。結局は何もできない組織やと。

そう思われても仕方ないのと違うやろうか。

拡張団の団長がそうするには、それなりのメリットがあると聞く。

それは、登録しているセールス(拡張員)の数により、新聞本社から拡張奨励金や補助金の類が貰えるからやと。

そのため実際に存在しなくてもセールス(拡張員)を登録しているだけで、新聞本社から拡張奨励金や補助金の類が貰えるわけやから、新聞拡張団としても、その登録を外したくないと考えても不思議やない。

それが辞めた後もセールス(拡張員)の登録が外されない最大の理由やと思う。

本来なら、それは不正行為になる。歴然とした背任行為や。

新聞社は当然として、管理する立場の新聞インフォメーションセンターも、そんな不正を見逃すことなどないはずや。

少なくとも、ワシはその実態を知るまでは、そう思うていた。新聞インフォメーションセンターはセールス(拡張員)をしっかり管理している組織やと。

しかし、実際は責任逃れの物言いに終始して、分かり切った不正を見逃しているのが実情やというのが良う分かった。

はっきり言うが、こんな最低な組織は滅多にないで。飾りの組織にしてもお粗末すぎる。

「新聞社に言うてくれ」、あるいは「当該の新聞拡張団と交渉してくれ」と言うてるようでは、「私ら(新聞インフォメーションセンター)には何の力もない」、「組織として何のプライドもない」と言うてるに等しいことやさかいな。

在籍していないと本人が言うているにもかかわらず、その登録を抹消するには当該の新聞拡張団と交渉してくれと言える神経を疑う。

あきれて物も言えん。世の中広しといえども、そんな組織はどこにも存在せんやろうと思う。

しかし、そのあり得ん対応があまりにも多いさかい、ワシらとしても看過できんと考え、こうして話しとるわけやけどな。

いずれにしても、「当方では、そういう手続きをしません。できません」と言うに等しい対応に終始する新聞インフォメーションセンターの担当者がいる限り、いつまで経っても登録抹消にはならんわな。

当たり前のことを当たり前にできん組織を相手にしても無駄や。

退社によるセールス(拡張員)登録を解除しない拡張団が存在すること自体、新聞インフォメーションセンターや新聞社の管理不足、ひいては新聞業界全体の信用問題にも関わってくることやと思うのやが、そういう認識は彼らにはないのやろうな。

まあ、今ここでその新聞インフォメーションセンターや新聞社の担当者を責めても仕方ないから、次の段階に進むしかない。

この件は、先にも言うたように労働基準法第22条3項の(就業妨害通信等の禁止)に抵触する就業妨害行為に該当する立派な犯罪やさかい労働基準局に訴えることができる。

そうすれば、労働基準局はその訴えの真偽を確かめるためにも、新聞インフォメーションセンターや新聞社、及びその新聞拡張団に問い合わせる可能性が高い。

そうなれば、いくら何でも、ええ加減な対応はできんやろうと思う。

事は就業妨害で犯罪行為に当たることやさかいな。労働基準局は、当たり前やが労働法違反にはうるさいから、その事実さえ突きつければ、かなり効果があるはずや。

当然やが、労働基準局相手に「それは、そのセールス(拡張員)が所属していたセールス会社に言ってください」てなアホなことはさすがに言えんさかいな。

それで、「セールス(拡張員)登録が解除されていないから雇えない」という事実が本当だと実証されれば、立派に就業妨害が成立する。

その実証といってもそれほど難しいことやない。離職している証拠を示し、実際に経験した事実を伝えるだけでええ。その折り、それらの会話を録音しているデータがあれば尚ええ。

その後、どうなるかは、その労働基準局次第という側面はあるが、違法行為と知って放置することはできんはずやから、その新聞拡張団には何らかの注意、もしくはお咎めを受けることになるやろうと思う。

そうなれば、その新聞拡張団でも事が大きくなっては困るやろうから、申告者のセールス(拡張員)登録の解除に応じる可能性が高い。

そこまで徹底する意思があれば、かなりの確率で希望が叶うとは思うが、残念ながら実際にそうしたという方は、あまりおられない。

仕方ないとあきらめておられるケースが大半を占める。

ただ、あきらめた方たちでも他に手はある。

新聞インフォメーションセンターには、すべての新聞社が参加しとるわけやない。加盟しているのは全国紙5社と地方紙4社の計9社のみや。

それについては新聞セールス インフォメーションセンター(注1.巻末参考ページ参照)のページで確認して貰えれば分かる。

その他のブロック紙や地方紙には、そもそも新聞インフォメーションセンターもなければ、『新聞セールス証』や『従業 員(新聞スタッフ)証』といったものもない。

たいていの場合、その両者に協力関係などないのが普通やから、新聞インフォメーションセンターへの加盟新聞社と関係のない新聞拡張団であれば、そんな登録など調べられることもないさかい自由に勤めることができる。

数は少ないが、実際そうしておられる人もいると聞く。

また、地域や新聞社を変え、また住所を変更し、名前の読み方を一部変えるだけで別人として登録できたというケースもあるという。

登録に関しては基本的に新聞拡張団からの申告によるもので、本人確認というても、せいぜい住民票と見比べる程度までのようや。

消費者金融で金を借りるとか、クレジット会社に加入するとなると、そんな姑息なテクニックなんかは使えんやろうが、ええ加減な組織は、それだけ甘いということなんやろうと思う。

まあ、そういうことをしろと勧めるつもりはないが、さりとて止めろと言うつもりもない。

何をするにしても最終的には、その人自身の責任で決めたらええというのがワシらの考えやさかいな。



参考ページ

注1.新聞セールス インフォメーションセンター
http://w1.alpha-web.ne.jp/~kin-kyo/

注2.NO.870 この体制についてどう思われますか?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-870.html

注3.NO.1131 セールスの登録解除をしてもらえない時は、どうすればいいんでしょうか?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-1131.html

注4.NO.1133 セールス(拡張員)登録が末梢されるまで動かない方がいいもんですか?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-1133.html


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