メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第360回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2015. 5. 1


■新聞復活への試み……その3 おすすめ記事作戦の効果とは?


現在、新聞業界では下降線の一途を辿りつつある部数減に歯止めをかけようと様々な試みにチャレンジしているという情報がよく届けられる。

その事自体悪くはない。チャレンジ精神がなければ路を切り拓くことや、現状を打開することなんかできんと思うしな。

ただ、そのチャレンジ精神も的を射たものでなければ意味がない。初めから狙っている的が間違っていたのでは、やるだけ無駄、徒労に終わる可能性が高いさかいな。

そう危惧されているという、ある新聞販売店関係者の方から一通のメールが寄せられた。

これはサイトのQ&Aで回答しても良かったのやが、せっかく『新聞復活への試み』シリーズというのを始めたことでもあるので、ここで話した方がええと判断したさかい、そうすることにした。

まずは、その質問とワシの回答を先に知らせる。


いつもメルマガを読ませていただいております。

ところでご存じだと思いますが総務省発表の

▼平成25年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
http://www.soumu.go.jp/iicp/chousakenkyu/data/research/survey/telecom/2014/h25mediariyou_1sokuhou.pdf

で新聞購読時間を見ると10分以下になっています。

これを元に立てられた若い店主さんの新聞販売・増紙計画について、ご意見をお伺いいたします。

一般的に新聞の文字数は新書の一冊分ほどで、すべて読むと2時間以上かかると言われているそうです。

このデータにあるように新聞購読時間が10分以下という事は、興味のある三面記事などしか読んでいないからで、結果、ネットなどの速報性に目が移り活字離れが加速していると。

それを防ぐには、まず他の記事(オピニオン・特集・くらし等)を読ませる工夫をする事と立案者は言います。

その最善の方法が、読み逃しているお薦めの記事を探し、コピーして毎月読者にポスティングする事と力説されます。

また訪問時に購読者を年代や家庭環境を調査し、世帯ごとに興味を持ちそうなおすすめ記事を届ける事によって、購読時間が増え新聞離れは食い止めることが出来る…と考えています。

つまり販売店が購読者に新聞の魅力を教えてさしあげるという事だそうです。

このような調査員のような事してもいいのか?

また新聞を切り抜いてコピーして個人の価値観を相手に押し着せるようなサービスが本当に読者離れを防ぐのか?

経営が悪化している昨今、変な指導者に添って後戻りできなくなると大変です。

また今の時代、ちょっとした不信感からクレームが炎上する事も考えられます。

この「おすすめ記事作戦」どう思われますか?


回答者 ゲン


『一般的に新聞の文字数は新書の一冊分ほどで、すべて読むと2時間以上かかると言われているそうです』ということやが、記事を読むスピードには個人差があると思う。

また同じ人間でもその気のあるなし、興味が惹かれる度合いでも違うてくる。

現在新聞各紙の朝刊1紙の情報量は広告部分を除けると、概ね30万文字前後になる。文庫本にして約500ページ分。B6版の書籍にして300ページ分といったところやな。

ハカセなんかは、そのくらいの文書量の本なら2、3時間程度で読めるとは言うが、普通の人では難しいわな。もちろん、ワシなんかではとても無理や。

それにしても毎朝届けられる朝刊を隅から隅まで欠かさず読むという人が、どれだけおられるのやろうかと思う。

ワシの知る限り、該当しそうな人は、その新聞の熱烈なファンという人を除けば、政治家、文章家、各種評論家、会社の経営者や重役、営業マン、証券マン、銀行マン、教育者などの新聞に書かれている程度の情報は常識として常に入手しとかなあかんと考えている人たちくらいやな。

意外なところでは新聞嫌いで新聞に批判的な意見を持つ人ほど新聞をよく読む傾向にあると言われている。

自身のブログやツイッターなどで新聞に対する批判的なコメントを書くためには必然的に新聞を隅々まで読まざるを得ないわけや。

新聞記事の揚げ足を取る、または欠点を探す目的のために。

いずれにしても、新聞の記事を毎朝すべて読むと言う人たちは新聞購読者の中でもホンの一部しかいないと断言してええやろうと思う。

殆どの人は朝ゆっくり新聞を読むといった時間などないのが普通や。

ただ、新聞には読み方というものがあるから、新聞にどんな記事が書いてあるか、載っているかを知るのは、それほど時間もかからず、比較的、誰にでも簡単にできる。

新聞記事には、すべてに見出しがついとる。朝刊で、およそ200前後の見出しがあると言われている。

一つの見出しは10字程度とされとるから、すべての見出しを集めても原稿用紙5、6枚分ほどにしかならん。

その程度の文書量なら、どんなにゆっくりでも10分〜15分もあれば読めるはずや。早い人なら5分もあれば十分やろう。

あるいは、新聞の1面の右サイドには、その日の重要な記事の案内、紹介があるから、それを見るだけという人も多い。それやと1分もかからん。

それで、必要やと思える記事をチェックして、後から念入りに読むようにすると効率がええ。たいていの人は、そうしている。

新聞記事は、重要な内容から先に書かかれている。最初の数行(リード)で事実関係と結論があり、後はそれを補足する内容が続く。こういう書き方を逆ピラミッド型と言う。

つまり、記事のすべてを読まんでも最初の数行を読むだけで大凡の内容を把握できるようになっているわけや。

なぜ、こんな書き方をしているのか。それは限られた紙面の編集をしやすくするためということがある。

他の事件、出来事の記事が多ければ、一つの記事を短くしてその分のスペースを確保する必要があるし、他に載せるべき記事がなければ、適当に文章を補足して紙面を埋めることができるようになっとるというわけやな。

実は、新聞の編集で一番重要なのが、この限られた紙面のスペースを埋める作業やと言われている。それに合わせて記事の内容や文書量が変化すると。

新聞記事は最初の数行で読者に伝えるための基本的な情報となる5W1H「いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」といった内容が必ず含まれている。

例えば、「○月○日、午前1時頃(When)、大阪市北区の路上で(Where)帰宅途中の女性が(Who)頭を鈍器で殴られた事件(What)で、市内に住む50代の無職の男が強盗致傷の疑い(Why)で大阪府警に逮捕された(How)」といったニュース記事が、それになる。

これを短くまとめればホンの数行になるし、膨らませば長文の記事にもなるという具合や。

新聞を読み慣れている人は、最初の数行を読むだけで必要な情報が得られることを知っている。

それからすると『新聞購読時間を見ると10分以下になっています』というのは、それほど少ない時間とも言えんのやないかと思う。

むしろ、新聞を読み慣れているからこそ、その程度の時間で事足りると言えるのやと。

しかも、それは平均値で、その日突発的な大事件とか、その人にとって重大な出来事といった記事が載っていれば当然やが、集中的に読むことになるさかい時間は延びるし、反対に読むべき記事が見当たらなければ極端に少なくなる。

新聞というのは本来そういうもんやと思うし、それでええと考えるがな。

『このデータにあるように新聞購読時間が10分以下という事は、興味のある三面記事などしか読んでいないから』という側面も否定できんが、それだけが理由やないと思う。

すべての人が三面記事に興味があるとは言えんさかいな。どんな記事に興味を持つかは、その人次第で違うのが普通や。

政治や経済、地域の情報が何より重要だという人もいれば、コラム記事や特集記事、小説や四コマ漫画、ベタ記事が好きやという人も結構おられる。

あるいは「ラ・テ欄(ラジオ、テレビの番組表)」しか見ないという人もいる。

一概に決めつけることはできんということや。

『結果、ネットなどの速報性に目が移り活字離れが加速している』というのも違うと思う。

ネット上にある大手ポータルサイトによる速報記事はワシらもよく見るし、ネタ探しの面でも重宝しとるので便利なものではあるが、それにより活字離れが加速しているという見方には無理がありすぎる。

活字離れではなく新聞離れになっているというのなら何となく分かるような気もするが、それも少し違うように思う。

普段新聞を読まない人でも大手ポータルサイトに掲載された新聞記事を読むケースが増えているということやさかい、むしろ活字に親しむ傾向にあると言えるのやないかな。

ただ、それらは新聞を買わなくても読めるさかい、それがあるために「新聞など必要ない」という口実にはなっているがな。

単に無駄な金を払う必要がないというだけのことで。

ワシは、新聞の部数減、衰退の第一の要因は長引く不況にあると、事ある毎に言い続けているが、新聞を読まない「無読」という人たちの多くは新聞代を支払う余裕がないからやと思っている。

それを「新聞など購読するのは無駄」といった合理主義で覆い隠しているだけやと。新聞社や新聞記事への批判の裏には実は、それがあるものと考えている。

その証拠に、比較的富裕層と言われている人たちで新聞を購読していないというケースは極端化に少ないさかいな。

経済的な理由がなければ多くの人は新聞の購読を止めることはないやろうと思う。新聞には、いろいろと利用価値も高いしな。

ここで新聞の利点について話し出すと長くなるから、『第66回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞の利点』、『第74回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞を読むことの意義と素晴らしさについて』、

『第110回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その1 新聞を読むことで向上する学力について』、『第179回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その2 新聞を読むことで向上する文章力』(注1.巻末参考ページ参照)などを見て貰うたら、よく分かるものと思うので、ここでは割愛させて頂く。

簡単に言えば、新聞を読むことで得られるメリットは一般の人が考えておられるより大きいということや。

あらゆる意味で多くの人にとって新聞は間違いなく役に立つし、有意義なものやと胸を張って言える。

その機会を阻害してきた最大の要因が長引く不景気やったとワシらは見ている。

それは家計を切り詰めるための第一候補に挙げられるのが、新聞代やからや。

経済的に余裕のない人、気持ちに余裕のない人から順番に購読を止めているだけで、本当の意味で新聞が必要なくなったわけではないと。

そういう人たちは生活に余裕ができてくるようになると、また購読を開始している。それには、新聞の購読を止めて改めて、その必要性に気がついたという人もおられるからや。

それは、ネット環境などまだなかったバブル崩壊直後から今に至る20数年間、繰り返し続いている現実でもある。

ただ、その新聞を止めた時期の家庭で育った子供たちは、新聞に慣れ親しむことがないから、特に新聞を必要とはしていないため、若い人を中心に新聞離れが加速しているのやとワシは見ている。

それに加えて、ネットや携帯電話など新たなツールが発生し、それに対して金をかけるようになったことも影響しているものと考えられる。

その頃から新聞を購読し続けている家庭で育った子供たちは新聞の必要性を認識、あるいは新聞のある生活が当たり前になっているため、高齢者に比べればその比率は少ないものの大人になっても新聞の購読を続けているのやと分析できる。

その意味では『それを防ぐには、まず他の記事(オピニオン・特集・くらし等)を読ませる工夫をする事と立案者は言います』という発想自体悪くはないと思う。

そういった記事を読みたくなると思わせる工夫をすることは大切や。

ただ、『その最善の方法が、読み逃しているお薦めの記事を探し、コピーして毎月読者にポスティングする事と力説されます』というのには疑問を感じるがな。

そうすることで何らかの効果があったと言えるデータでもあるのやろうか。

目に見える効果があるのならともかく、単に思いつきで、こうやったらええでというレベルの話をお仕着せ、または命令のような形でやらせようとするのは違うと思う。

『若い店主さんの新聞販売・増紙計画』ということからすると、強制的にでもそのように指導すれば何とかなると考えているのかも知れんが、それを真に受けて上手くいかんかった時の販売店のリスクを考えているのやろうか。

言い出した人間が、その責任を負うとは、とても思えんさかい、その結果は実行した販売店が被ることになるなるのは間違いないものと考えられる。

ワシには実験的に取り敢えずやらせてみて、その効果のほどを知りたいというのが本音のように感じる。

『訪問時に購読者を年代や家庭環境を調査し、世帯ごとに興味を持ちそうなおすすめ記事を届ける事』と簡単に言うが、それがどんなに大変なことか分かって言っているのやろうかと思う。

『訪問時に購読者を年代や家庭環境を調査』するにしても、今は個人情報保護法というのもあり一般の人も個人の情報について敏感になっていて、それについて話すことを嫌う傾向が強い。

それを根掘り葉掘り問い質すようなやり方は却って顧客の気分を害することになるのやないかと考えるがな。不信感を与える可能性が高いと。

それを避けるには、さりげなく聞き出すしかないが、そのためには「雑談」を交えて、その客と打ち解ける必要がある。

友人、知人の域にならな相手からの不信感を払拭して、そういった情報を聞き出すのは難しいと思う。

しかし、それやと1軒あたりの客に相当な時間をかけなあかんことになる。

しかも『世帯ごとに興味を持ちそうなおすすめ記事』を探すとなると、それを聞き出すだけで途方もない時間がかかるものと予想される。

一般的に新聞販売店従業員の『訪問時』とは、『集金』か『止め押し(継続契約依頼)』の時やろうから、尚の事、1軒にかける時間には限りがあるわな。

集金時に『止め押し(継続契約依頼)』を同時にする場合が多いが、それやと1軒にかけられる時間はせいぜい5分程度や。

そんな短時間にそれをこなすとなると、よほどの営業センスを持った者でもないと難しいやろうと思う。

少なくともワシにはそんな芸当は無理や。自信がない。

第一、そんな差し迫った状況で「雑談」を交わしながら『世帯ごとに興味を持ちそうなおすすめ記事』を絞り込むことなどできんわな。失敗するのは目に見えている。

当然やが、「雑談」は余裕を持ってせなあかん。そもそも余裕のない「雑談」は、「雑談」にはならんさかいな。

さらに言えば、例え、それが上手くいって『購読者の年代や家庭環境が調査』でき、『世帯ごとに興味を持ちそうなおすすめ記事』が分かったとして、その後、どうするつもりなのやろうか。

『世帯ごとに興味を持ちそうなおすすめ記事』を勧めるということは、配達する家毎に分類せなあかんわけや。

『世帯ごとに興味を持ちそうなおすすめ記事』を探す手間、コピーする手間、ポスティングする時間など、どれ一つを取っても簡単にできることやない。

しかもそれをしたとして、その新聞販売店、および従業員に何の利点、メリットがあるのかという問題も生じる。

どんな仕事でもそうやが、人はそれなりのメリットがないと、今までしたこともない仕事をしようとは思わんものや。

今までの話から、それは現読客相手にするものやと思う。

そうすることで得られる効果が考えられるとしたら『止め押し(継続契約依頼)』客をつなぎ止めるくらいのことやが、それが効果として実際に実感できるかとなると、はなはだ疑問やわな。

ワシには、それで効果が期待できるとは思えん。

ワシは、昔、住宅リフォームの仕事をしていた時に、『特別割引サービス工事』と称してチラシを作って地域の家にポスティングしたことがある。

その時、約2000枚のチラシを各家庭のポストに撒いて問い合わせがあったのが3軒程度やった。

そのうちの1軒、何とか営業した甲斐があって仕事を貰うことができたが、費用対効果を考えた場合、満足のいく結果が得られたとはとても言えなんだ。

チラシの文面とレイアウトを考えるのに1週間、それを業者に印刷して貰うのに3日、ポスティングに2日の計15日ほどかかった。

業者に印刷して貰う以外は、すべて自分でやったさかい費用はそこそこ抑えられたが、それでも1軒の仕事だけでは利益が出るところまでには至らなかった。

一般的に、ポスティング業界では反響率を0.1%〜0.2%と試算していると訊く。つまり1000軒配って1、2軒反応してくれたらええということやな。

実際にそのチラシを見ている、あるいは手にした者は、もっといるかも知れんが、その10倍あったとしても、それでも1、2%程度のものや。

残りの98%以上のチラシは、誰にも見られることもなくそのままゴミ箱行きになっていると考えて、ほぼ間違いない。ポスティングされたチラシの大半が、そうや。

そして、そのチラシを見た僅かな人たちも「しょうもないことを考えてする販売店やな」で終わるものと考える。

こういったことを考える人間の多くは、作ったチラシは必ず見て貰えるはずやという前提に立っているが、その確率がどの程度あるのかまでは知らない。

考慮に入れていないといった方がええのかも知れんな。

僅かでも調べていれば98%以上の人たちは、そんなチラシなど手にすることすらないということは、すぐに分かるはずや。

ポスティングをするのなら、せめてその程度のことは知っていて当然やさかいな。

もっとも、それを考慮に入れていたら、無謀な試みやと立案者自身が事前に気がつくやろうがな。

ポスティングの目的は少数の反応があれば良しとする点にあり、それがポスティング業界の常識ということになっている。

それからすれば、『購読者に新聞の魅力を教えてさしあげる』といった多くの人に知らしめるという目的にはポスティングのようなやり方は、明らかに向いていないと言える。

より多くの人に知って貰わなあかんのに、殆どの人に見て貰えんようなものを手間暇かけて作って配ろうとしているわけやさかいな。

それらのことから考えれば、『購読時間が増え新聞離れは食い止めることが出来る…と考えています』というのは、ワシには限りなく不可能に近いとしか言いようがない。

もっと他の方法を考えた方がええやろうと思う。

『このような調査員のような事してもいいのか?』というのは、するのは別に構わんが、今まで説明したことで分かるように期待するほどの効果は得られんと承知しておいた方がええやろうな。

『また新聞を切り抜いてコピーして個人の価値観を相手に押し着せるようなサービスが本当に読者離れを防ぐのか?』と、あんたが懐疑的になられているように、ワシも疑問に感じる。

それより前提の話として、そもそもそんなものを見る人が少ないわけやから、『個人の価値観を相手に押し着せる』と考える人も殆どおらんのやないかな。

あんたが、『経営が悪化している昨今、変な指導者に添って後戻りできなくなると大変です』と考えておられるのなら、そうならんようにするしかない。

『また今の時代、ちょっとした不信感からクレームが炎上する事も考えられます』については、そのチラシ自体を見る者が少なければ、そんな心配をするまでもないのと違うかな。

また、そのチラシを見る人は現読の新聞読者やから、「いらん親切」「よけいなお世話」と考える人がいるかも知れんが、それでもクレームを言うてくる人は少ないやろうと思う。

『この「おすすめ記事作戦」どう思われますか?』というのは、ここまで批判めいた事を言うてきた以上、賛成することはできんわな。

ワシ個人としては、そんなやり方は止めといた方がええとしか言えん。上手くいく可能性は限りなく低いやろうと。

ただ、有名なアメリカの作家、デール・ブレッケンリッジ・カーネギーの言葉に『どんな愚者でも批判し、非難し、文句を言うことはできる。そして、多くの愚者がそうする』というのがあるが、否定や批判だけに終始するつもりはない。

ワシらは、何かを批判する時は必ず提案も合わせてする主義やしな。そして、その提案もお仕着せや強制はせん。

そのやり方を取り入れるか、どうかは常にその当事者次第ということで任せている。

先に『発想自体悪くはない』、『もっと他の方法を考えた方がええやろう』と言うたように、こんなリスクの大きいやり方を選択せんでも多くの人に『新聞の魅力』を知らせて新聞を購読して貰うためにするべき事、できる事は他にいくらでもあるはずや。

今回も、そのための提案をいくつかする。

1.イメージ戦略を考える。

これの最も効果的なのが、テレビCMやと思う。それに力を入れる。というても、これは販売店レベルでできるものやないさかい、新聞社が中心になってせなあかんことやがな。

もともと、『新聞の良さ』をアピールするのは新聞社の仕事、責務やと考える。

それを販売店の仕事として押しつけることからして間違うとるとしか言えん。

人は良くも悪くもイメージで左右されるようなところがあるさかい、『新聞を読むことは素晴らしい』というインパクトを与えられるようなテレビCMを考えて放映すれば、かなり違うてくるはずや。

今までにも新聞社によるテレビCMは、いろいろとあったが、残念ながら、これといって視聴者の心に響くようなインパクトの強いものはなかったように思う。

新聞社自身の自己満足に浸れるものは多かったかも知れんがな。

まあ、これについては、それを担当する人たちのセンスの問題ということもあるから、簡単なことやないというのは分かるが、チャレンジする価値はある。

2.新聞を購読することで得られるメリットを考える。

「ネットで新聞記事を読めばタダやが、新聞を購読すると金がかかるから損や」という人には、いくら新聞の良さをアピールしても、あまり効果がないやろうと考える。

それよりも、もっと直接的に新聞を購読することで得られるメリットをアピールする方がええと思う。

例えば、新聞紙面に新聞社それぞれの「宝くじ番号」なるものを印刷して、それに当選すれば法律の許す限りの賞金か、遊園地やコンサート、映画の無料チケットなどを渡すといった類のものやな。

新聞販売店が独自でするのなら、販売店がよく入れている求人募集の折り込みチラシの片隅に、それ用の「宝くじ番号」を入れるというのも手や。

ちなみに、その「宝くじ番号」の入ったチラシなら、購読者の人たちの間で広まっていれば、今回の『おすすめ記事作戦』にも使える可能性がある。

人は得をするかも知れんと考えるだけで、無下にチラシを捨てたりはせんやろうしな。

ただし、購読者別に調査したり、記事を選別したりするのは手間がかかるから、目を惹きそうないくつかの記事をダイジェスト版としてコピーし、「○月○日の記事には、こんな記事が載っていますよ」と載せておくくらいしかできんやろうが、それだけでもいくらかはマシやと思う。

3.地域の販売店の良い部分をアピールする。

新聞販売店にできることは新聞のアピールよりも、販売店自身のアピールやろうと思う。

具体的には、このメルマガでも再三取り上げている『高齢者見守りサービス』(注2.巻末参考ページ参照)のようなことやな。

そうした取り組みをすることで、多くの購読者に分かって貰え、部数を確保できている新聞販売店も実際にかなりあるさかいな。

他にも町内会などの催しに積極的に参加することで、その地域に根差した活動をして喜ばれている販売店もある。

今のところ、こんなもんやが、これ以外にもじっくり考えれば、まだまだあるはずや。

ただ、最後に何度も言うが、『おすすめ記事作戦』を実行するのも否定して拒否するのも、あるいはワシの提案を取り入れるか否かの選択も、すべてあんたの判断、責任においてして欲しいと思う。

それ以外の方法を立案して実行することを含めてな。

何でもそうやが、実行者が納得できんものは、やっても意味がないし、それにより実を結ぶこともないと考えるしな。

ワシらの意見としたら、そうや。


と。

全体として『おすすめ記事作戦』についてはケチをつけた格好になったが、一般に新聞の魅力を広く一般読者に伝えるという趣旨自体は悪くない。

ただ、そのやり方が間違っている、欠点があると感じたから、今回はそう指摘させて頂いたわけや。

もっとも、それは今回のように読者から質問されたので答えただけのことやけどな。

ワシらは、訊かれもせんのに他人のやることに対して批判するのは好きやない。

今回の『おすすめ記事作戦』にしても、読者からの情報だけで、そう返答したが、発案者とやらから直接、その真意を訊けば、また違った意見になるかも知れんということもあるしな。

いずれにしても『新聞復活への試み』には、いろいろな方法、手段があると考えるさかい、これからもそれについて、できるだけ答えていきたいと思う。



参考ページ

注1.第66回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞の利点
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage13-66.html

第74回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞を読むことの意義と素晴らしさについて
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-74.html

第110回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その1 新聞を読むことで向上する学力について
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-74.html

第179回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その2 新聞を読むことで向上する文章力
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-179.html

注2.第65回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ある新聞販売店の取り組み その1 哀しき孤独死をなくせ
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-65.html

第117回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店による高齢者見守りサービスへの取り組みと、その問題点
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-117.html


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