メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第382回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2015.10. 2
■続ゲンさんの新聞勧誘営業講座 その5 拡材の活用について
新聞勧誘に拡材(景品)サービスが付き物やというのは誰でも知っていることや。
新聞勧誘において拡材は大きなウェートを占め、拡材のサービス如何で契約の正否が決まる。少なくとも、そう考えている勧誘員は多い。
拡材のルーツは古い。新聞の普及率がまだそれほどでもなかった戦後間もない昭和20年頃から、本格的に新聞の勧誘が始まった。
今から70年ほど前のことや。
一般の企業には自社に商品を売り込むための営業部がある。多くの場合、その企業の花形部署とされている。
ところが、新聞業界では商品である新聞を売り込むための営業は、業務委託という形で外部に任せる仕組みになっている。
その新聞勧誘専門会社がある。通称、「新聞拡張団」。業界内では「セールス・チーム」と呼ばれているが、一般には「新聞拡張団」の方が名が通っている。
新聞勧誘初期の「新聞拡張団」にはヤクザが絡んでいる組織が数多くあった。新聞各社は、こぞってその手の組織に新聞勧誘を委託していたのである。
それには、当時、敗戦直後で日本全体が疲弊していて、新聞各社もその例に洩れず、新聞を売り込むための営業員を確保する経済力がなかったということが大きかった。
新聞社が、営業員にヤクザを使うという発想は、今やったらとんでもないことやと非難されるが、当時は、それほどでもなかった。
現在の人にはとても信じられんやろうが、当時のヤクザに対する一般の見方は今とは違って、ある意味、好意的ですらあったという。
それには、当時、「三国人」と呼ばれていた悪辣な朝鮮人グループの迫害から一般市民をヤクザが守っていたケースがあったからや。
「三国人」とは、本来は「当事国以外の第三国の国民」一般を指す行政上の用語で、それ自体には大した意味はなかった。
しかし、当時の日本では主に朝鮮人たちが日本の敗戦を機に自らを「戦勝国民」と称し、一般の日本人に対して攻撃的で悪質だったため蔑称として、そう呼ばれるようになったという経緯がある。
属国人として虐げられてきたと感じている朝鮮人たちからすれば、それなりの理由はあったとは思うが、「三国人」と呼ばれていた朝鮮人たちによる無差別な攻撃で命を落とした、あるいは大怪我をしたという善良な一般市民がいたのも事実やった。
もちろん、そういった不良「三国人」は全体のごく僅かやとは思うが、その連中から善良な一般市民を守っていたヤクザもいたわけや。
「強気をくじき、弱気を助ける」という侠客の本領とされる言葉も、この頃盛んに使われていた。そういうヤクザは、この時代のヒーローでもあった。
そのため、新聞社がヤクザを使うという発想も、それほど抵抗なく一般に受け入れられていたのである。
むしろ、「なかなかええ方法やないか」と、評価されていたくらいやった。
その後、爆発的にヤクザ辛みの新聞拡張団組織が全国に作られていったのが、何よりの証拠やと思う。
そうすることで、膨大な数の営業員を使えるようになった。
それが比較的短期間のうちに、新聞の部数が飛躍的な伸びを見せた一因でもあったわけや。
終戦後の昭和20年には、日本の新聞総発行部数は1400万部ほどやった。
それが、拡張団の本格的な勧誘の開始により、昭和27年には2200万部に増え、昭和40年頃には3000万部、昭和50年過ぎ、4000万部、昭和60年前後、5000万部と順調な伸びを見せた。
この背景の裏には、新聞拡張団を中心とした新聞各社の熾烈な競争があった。
スタートがそのためもあり、新聞拡張団の営業は脅しなどによる強引な営業が目立った。
ただ、いくらヤクザでも、脅しによる強引なやり方だけでは、そうそう契約が取れるもんやなかった。
そこで登場したのが拡材やった。
これは、アメとムチを巧みに使い別けるというヤクザ特有の手法を取り入れたものやった。
脅しというムチを使いながら、一方では拡材という甘いアメで誘い、徐々に購読客にそれを浸透させていった。
それが、いつしか新聞の購読契約をすると、その拡材サービスを貰えるのが当たり前という風潮が定着するようになった。
それが実に60年以上もの長きに渡って続けられてきた。
しかし、そのシステムも、ここ10年ほど前から大きな変化が生じるようになった。
それには、インターネットの急速な台頭と共に、若い世代を中心とする新聞離れや、少子高齢化による日本の人口の減少などにより、緩やかではあったが、それまで右肩上がりやった部数が減少に転じたことが大きいと思う。
加えてヤクザ任せの拡張営業も様々な法律が作られ規制されるようになったことで行き詰まりを見せ始めたというのもある。
新聞業界に関係の深い法律では、「消費者契約法」、「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」、「 特定商取引に関する法律」などが次々と作られ、あるいは改正されて勧誘員の足枷となっている。
これに加えて、新聞の場合は、「新聞業における特定の不公平な取引方法(特殊指定)の公示」、俗に「新聞特殊指定」と呼ばれるものもある。
そして、何より、新聞各社が、それらの法律を遵守するという名目のもとに勧誘員に対して規制、監視を強めたという事が大きい。
それには、新聞勧誘の評判低下による企業からの新聞紙面への広告掲載依頼の減少傾向に何とか歯止めをかけたいという思いがあるからや。
ただ、勧誘員を締め付けて規制を強化すれば、その分、部数の獲得や維持が難しくなり、部数減がさらに加速する懸念が生じる恐れがある。
新聞各社も長年、勧誘員に頼って部数を増やし続けてきたわけやから、それが分からんはずはない。
それでも断行しようという流れになっている。それに抵抗する新聞拡張団は潰しても構わないという姿勢に転じて。
実際、ある新聞社と新聞拡張団の交わしている「業務委託契約書」には、その契約解除の条項の一つとして「暴力団関係者との関わり合いがあったと認められた場合」というのが掲げられている。
実際、それを理由として廃団に追い込まれた拡張団もある。
これは、当初、ヤクザ組織としてスタートした拡張団が徐々に様変わりして、現在では普通の営業会社が大半を占めるようになったことが大きいと思われる。
それには、数年前から、この業界には昔ほどの旨みがなくなって、そのヤクザ組織が大量に離れていったということもある。
事実、経営を維持するのが、やっとという新聞拡張団が多いさかいな。そういったヤクザ組織が離れれば抵抗も少なくなるから、よけい切りやすくなる。
目に見える動きとしては、多くの拡張団がその営業員を雇う際、昔は経験者や実績のある者を優先して採用していたのが、未経験者主体の募集に変わってきたということが挙げられる。
それには、過激な部数獲得競争、新聞普及率の頭打ち、若者の新聞離れ、人口の減少、長引く不況などの複合的な要因により契約の獲得が難しくなったということもあり、「爆カード」と呼ばれる業界の禁止行為が目に余る状況になったためと考えられる。
「爆カード」については、サイトのQ&Aの『NO.81爆カード廃止の取り組みについて』(注1.巻末参考ページ参照)見て貰えれば分かるが、要するに契約を取るために異常なほど多い景品サービスに走る勧誘員が増加したことによる典型的な現象や。
酷いのになると、「タダになりますから」と言って、購読料金分に匹敵する金銭を客に渡すケースや毎月の支払いを勧誘員自身がすると持ちかけるケースまである。
それに業を煮やした新聞社と販売店が、その手の勧誘員に対して締め付けを強化し、拡張団もそれに追随するようになった。
ベテランほどその手口を使う確率が高いということで、拡張団が経験者をなるべく雇わず未経験者中心に採用するようになったのには、そういうわけがある。
特に、関東方面でそれが顕著になった。
2007年4月からの関東方面でのA紙とY紙による金券廃止の通達などがその最たるものや。
そして、それがこうじて、ついには「正常化の流れ」というものが登場する。
「正常化の流れ」とは、今までやり過ぎていた契約者への拡材(景品、サービス)を抑えることを目的に新聞社が押し進めているものや。
その地域毎でのバラツキは多少あるものの、将来的には拡材そのものをなくそうという動きで一致しているという。
ワシは拡材だけで営業することには異を唱えてきた人間やが、何のサービスもなしにして、どれだけの勧誘員が契約を確保することができるのかを考えた場合、どうしても懐疑的な気持ちになる。
そうしても良いだけの営業力のある勧誘員を養成できるのかと。しかも、それを短期間のうちにやろうとしているという背景もある。
『正常化』と言えば、いかにも聞こえはええが、ワシにはその方向が少し違うのやないかと思えてならん。
新聞各社はもともと、販売店が拡材を多めに渡す勧誘を快く思ってなかったから、それを抑えるために、「正常化の流れ」を推進したいというのは分かる。
しかし、販売各店はそれでは他紙との拡張競争に負けるということで、サービス合戦に力を入れ鎬(しのぎ)を削ってきたという長い歴史がある。
いつもは、その手の新聞社の指令には表面上は別にして、なかなか従おうとしなかった新聞販売店が、むしろ率先して「正常化の流れ」を実行しているケースが多い。
それには、幾つかの理由が考えられる。
一つには、やはり販売各店の経営が苦しくなったというのが大きい。
たいていの新聞販売店ではここ数年、年を追う毎に部数減に陥っているのが実状で、今後もその流れが進行しこそすれ、好転する望みは持てそうにない。
加えて、その収入の大きな部分を担っていた折り込みチラシが軒並み激減し、その収入が大きく落ち込んで経営難に陥っている販売店が多いという事情がある。
さらに「正常化の流れ」を推進する根拠として、法律を守るためという大義名分もある。
新聞業界には「景品表示法」で規定されている、俗に「6・8ルール」と呼ばれている法律がある。新聞社が率先して決められたものや。
新聞社の立場からすれば、各販売店に「新聞業における特定の不公平な取引方法」俗に「新聞特殊指定」と呼ばれとるものに違反したくないという思惑がある。
少なくとも新聞社の姿勢は「新聞特殊指定」の厳守にあるとアピールしたいわけや。
これの禁止事項の第2項に、『新聞の個別配達をする販売業者(新聞販売店)が、直接、間接を問わず、地域、相手により異なる定価や定価を割り引いて販売すること』というのがある。
つまり、勝手にサービスする行為は「値引き行為」に当たり、その「新聞特殊指定」違反に抵触する可能性があると考えられるわけや。
その違反の先には新聞の「再販制度」廃止がある。現在の状況で、そうなれば完全に新聞の息の根は止まる。
それを懸念する新聞社にとっては、その行為を放置することはできんとなるわけや。
そもそも、この新聞業界における「景品表示法」の「6・8ルール」というのは、新聞各社の要望、あるいは体裁として生まれた法律という側面、事情がある。
新聞勧誘の場合、客に渡せる景品の上限は業界の自主規制によるもので、その自主規制が、公正取引委員会の認定を受けることで法律になったということがある。
具体的には、景品の上限の最高額を取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲と決められた。俗に「6・8ルール」と言われる所以や。
ただ、どんな経緯で決められたにせよ、法律であることには違いない。
その法律を守ろうというのは正当な主張になる。つまり、「正常化の流れ」こそが、新聞業界の正しいあり方ということやな。
しかし、実際には販売店の指示、希望する拡材を大幅に超えたサービスを勝手に渡す勧誘員が後を絶たんという現実がある。
勧誘員は、その場の契約欲しさにそうするわけやが、販売店はそれではあかん。
当然やが、そんな条件で契約した客は、次回もそれを望む。
「タダにする」とか「利益を無視したサービス」をすることなどできないと考える販売店は、その希望を断るしかない。
それによりトラブルに発展し、揉めた末、客離れという現象が起きることも珍しくない。
そんな客ばかりを、せっせと製造されたら堪らんと考えるのは無理もないわな。
百害あって一利なしと。
そうであるなら、それができん仕組みを作るしかない。
それらの理由が相俟って、「正常化の流れ」とやらを徹底させようということに、つながったのやろうと思う。
要するに、この状況下では経費節減するしか、販売店の生き残る道はないと考えたわけや。
それが全国的な規模のうねりとなって「正常化の流れ」が拡がっていった。
新聞業界に限らず、現在、日本の大半の企業が経費節減にやっきになっている。
生き残るには、それしかないと。それが一番やと。
果たして、本当にそうなのか。
拡材をむやみに抑えれば客を確保することが難しくなる。
まあ、それでも大半の地域では、顧客の延長契約の場合は現状維持か微減の拡材を渡すということで凌(しの)いでいるとのことやがな。
それには、「今までのサービスがないんやったら新聞を止める」という客が、あまりにも多いために仕方のない配慮があるのやと。
経営の苦しい新聞販売各店が、そうする以外に生き残る術がないと考えたというのは、分からんでもないが、はっきり言うて、それは後ろ向きの思考にしかならん。
確かに、行き過ぎたサービスによるマイナス面は大きい。
そんな営業は止めさせ、悪質な勧誘員を閉め出したいという気持ちも分からんではない。
それについてはワシも賛成する。
しかし、そのために規制することしか考えつかんようでは、救いがない。あまりにも芸がなさすぎる。
新聞は売り込まな売れんという絶対的な真実がある。
このままでは辞めていく勧誘員が確実に増える。実際に増えつつある。
それが、どんな事態よりも新聞にとっては最大の危機になると考える。
『新聞は売り込まな売れんという絶対的な真実がある』ということは、裏を返せば、そのための勧誘員がいれば、新聞はまだ救われる可能性が残されるということになるわけや。
その勧誘員の存続、絶対数が、その「正常化の流れ」とやらで激減して危うくなっている。
新聞社が良かれと考えた締め付けが、結果として新聞社自身の首を締めることになっているわけや。
それを理解していたら、どうすれば勧誘員たちが新聞を売りやすくなるのかといったことを考えた方がええと思うのやが、残念ながら新聞社には、今のところ、その考えはなさそうや。
ただ、やはりというか、「正常化の流れ」で限界を感じる新聞販売店も多く、独自に、それぞれで新たな方法を考え始めているようやがな。
あるいはワシらに、どうすればええか相談して来られる業界関係者の方も多い。
その時、新聞販売店経営者なら、ワシは「表面上は新聞社の意向を聞くように装いつつ、勧誘員たちには若干の余裕を持たせた方がええ」とアドバイスしている。
原則は「正常化の流れ」で決められたことを守るという姿勢でいながら、顧客に合わせた対応を臨機応変にすることも必要やと。
勧誘員の場合は、新聞社や新聞販売店の方針が「正常化の流れ」にあり、拡材に制限が加えられているケースで、それに反する行為に走るのは難しい。
極端な例やが、ある地方では、拡材として持たされるのがフェイスタオルを1本だけというケースもあると聞く。
そんな場合は、「拡材なしの勧誘」をするしかない。
それについては『第94回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その4 工夫は拡材に勝る』(注2.巻末参考ページ参照)の中で『工夫することで、拡材以上の効果的なサービスができる方法』というので話している。
工夫することで、拡材以上の効果的なサービスができる方法
1.拡材から離れた営業に転換するという意識を持つ。
顧客に拡材を渡して契約を確保するのは、営業の一手段であって目的ではない。
この業界では、「客には拡材さえ渡しておけばええ」、「サービスさえしてたら客は確保できる」と長く信じられてきて、その拡材中心の営業があまりにも多すぎた。
極端なことを言えば、その方法しか知らんという勧誘員すらおるくらいやさかいな。
もっとも、それを望む人、それで心変わりをする人を取り込むには、あながち間違った方法とは言えんのは確かやけどな。
それで通用する人にはそれでもええ。
しかし、それは客がすでに「新聞を取ろう」、「変更しよう」という気になっている場合に効果のあることであって、そうでもない人にとっては、新聞のサービスの多寡(たか)程度のことで心を動かされることの方が希やと考えてなあかん。
しかも、それは「新聞を読むこと」が当たり前で新聞を講読してないと体裁が悪い、それでしか満足な情報を得られることができんという前提があった時代に効果的な方法やったと思う。
今のようにインターネットが一般にも広く普及し、それを誰もが持つ携帯電話で見ることができるような時代になり、情報を得る手段が手軽で多様化してくると、その「新聞を読むこと」が当たり前という常識はすでになくなりつつある。
何も新聞に頼らずとも、ネットに接続すれば、いくらでも事件や出来事などのニュースを知ることができるわけや。
それも、その情報の多くをタダで入手できるとなれば、よけい有料の新聞を買う意味が薄れる。
そう考える人が、今後も間違いなく増えていく。
つまり、これからの新聞勧誘は拡材のサービスだけで客を確保することは限りなく難しい状勢になったということや。
拡材から離れた営業、勧誘が必要になる。
まずは、それをしっかりと認識せなあかん。それでないと、拡材以上のサービスを考えることなんか無理やさかいな。
2.思い込みをなくす。
人間は思い込むと、どうしてもそのことに囚われやすくなる。
今回の場合で言えば「正常化の流れ」になって勧誘するのが厳しい、ダメやと考えた時点で、本当にそうなるということや。
これは、勧誘全般にも言えることやけど、勧誘員の多くは、自然に「勧誘できる対象」と「勧誘のできん対象」というのを各自、自分の中で決めつけとると思う。
例えば、アパートなどの集合住宅の方が契約が取りやすく、一戸建ての住宅街は難しいという先入観がそれや。
はっきり言うて、それは単なる個人的な思い込みにしかすぎん。
当たり前やけど、どんなに厳しいと言われる地域でも新聞は購読されているわけで、多い少ないの違いはあるにせよ、たいていの地域で購読者がゼロということはない。
ゼロでない以上、可能性があると考えるのが正しい判断やと思う。
人は思い込むと選択肢を狭くする。行動に制限がかかる。思い込みをなくさん限り、それから逃れる術はない。
3.特別なサービスをアピールする。
これは、旧メルマガ『第70回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■くり返される悲劇!!広島小1女児殺害事件の現場では……』(注3.巻末参考ページ参照)で言うた、下校時の小学生を見守ることや、
『第65回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ある新聞販売店の取り組み その1 哀しき孤独死をなくせ』(注3.巻末参考ページ参照)で話した、独り暮らしの高齢者の孤独死を防ぐ取り組みなどがそれになる。
他にも、地域の祭りやイベントなどに貢献するとか、主催するというのでもええ。
あるいは地震などの災害で困っている所へ、新聞代の一部を寄付すると訴え、新聞を購読することでその貢献ができるとアピールするという方法もある。
他にも、その手のことを考えれば、いくらでも思いつくはずや。
キーワードは「社会に貢献」ということやな。
そうすることで、他にない特別なサービスをしている販売店やとアピールできる。
それを営業のトークに使う。もちろんウソはあかんで。
そうすれば、拡材などのサービスが少ないということも理解して貰えやすいから、それによる引け目を感じることなく勧誘できると思う。
4.折り込みチラシを利用したアピールを考える。
販売店が自店のための折り込みチラシと言えば、たいていは「従業員募集」とか「配達員募集」というのが多いが、それだけでそうするのはいかにも勿体ないという気がする。
それなら、そのチラシで販売店の宣伝でもすればええのかというと、そうしても既存の読者にはそれほど効果はないから、それもあまり意味がない。
そうではなく、ここは発想の転換を計って、新聞を売るためという考えは捨て、その販売店にしかない面白いネタ、話題を掲載するわけや。
例えば、エッセイやコラムのような形のものにして載せるという感じやな。
その地域で起こった、ちょっとした出来事、ニュースでもええし、どこかの野球ファンなら昨日の試合結果を書いて、その印象を語るのでもええ。
余談やが、ワシは勧誘しとるとき、たまに、「阪神ファン」やというのを強調することがあるが、そうすると、客の中には「ワシもや」と言うケースがある。
それで一気に、その客との距離が縮まる。
これが若い人になら、サッカーの話題でもいける。Jリーグに関してでもええし、海外の試合についてでもええ。
「昨日、UEFAチャンピオン・リーグでマンチェスター・ユナイテッドのウェイン・ルーニーが2度も見事なシュートを決めてACミランに勝ちましたなぁ」と言えば、それに興味のある若い人から、「おっ、これは話の分かるおっさんやな」と勝手に思うて貰えることがある。
もっとも、そういう話をする場合は、ある程度、それについての知識がなかったらあかんがな。
幸い、ワシにはサッカー好きのハカセの子、コウ君がついていて、その彼から、よくメールでそれについていろいろ教えてくれとるから、大して興味もなかったサーカーの知識が結構豊富になり若い人との会話に役に立っとるがな。
それを単に営業トークとして使うのでもええが、エッセイやコラムのような感じにすると「一風変わった販売店やな」というアピールができるのやないかと思う。
そして、そのネタは、その販売店の新聞を読むことでしか得られないものやと思われたら、それなりに話題にもなり人気も出るのやないかと。
まあ、そうするにはいろいろとクリアせな問題があるとは思うが、一考の余地くらいはあるはずや。
それにそれについての質問なら、ワシやハカセがいつでも受けるさかい、気軽に相談してくれればええ。
5.地域の便利屋を目指す。
ある読者の方から、近所の電気屋さんに、家のリフォーム業者とか弁護士など、その時々で困ったときに、とてもいい人を紹介して貰って助かったという話を寄せられたことがある。
電気製品自体は、大手の電機量販店で買う方が安いのやが、その電気屋さんと親しくしといた方が何かと得やということで、たいていの電気製品はそこで買うのやと言う。
その電気屋さんとやらが、それを狙ってそうしとるのかどうかは分からんが、客とすれば、そういう人とつながっていたいという思いはよく分かる。
それがヒントになって、『地域の便利屋を目指す』という方法を思いついたわけや。
それは、何もその電気屋さんだけの特権やなく、新聞販売店にもできることやと思う。
というか、地域のそうした個人情報を一番多く持っとるのが新聞販売店なわけやから、その気にさえなれば、相当広範囲な職種で多岐に渡ってそれができるはずや。
困っている人に、地域の良い業者を紹介する。
そうすることで、両方の客を確保できるし、それが件(くだん)の電気屋さんのように顧客の信頼を得てその地域で評判になるというのも十分考えられる。
その評判は評判を呼び、客を呼ぶ。
そんな上手いこといくのかという疑問を持たれる人がおられるかも知れんが、ワシは昔から、そういった営業を心掛けとるから、何か困ったことがあったら「ゲンさんに聞けばいい」と紹介されるケースが結構多いので、そうなる可能性が高いというのは身をもって知っとる。
それを個人だけやなく、販売店レベルにすればと考えたわけや。
これなんかは、拡材を必要としない最たる営業やないかと思う。
6.客の心を掴むプレゼントを考える。
これを実際に実行しとる販売店がある。
その方法とは、契約時にその家族の誕生日を契約書の片隅、あるいは別紙のアンケート用紙に書いて貰うというものや。
そうする目的は、その誕生日に、それほど大したものやなくてもええから「プレゼント」として持っていくということをするためや。
その販売店は契約時には、あまりええ拡材を渡せんので、その代わりに、その日が来たら、なるべくその人に合わせた「プレゼント」を贈るのやという。
その販売店の経営者がそれをしようと思いついたのは、地域の激安ショップの経営者と友達で、そこで売れ残った商品の引取先に困っていたということを知って、それを考えついたのやという。
その商品自体は売れ残りやから二束三文の値段で手に入る。
但し、商品とその品数が常には一定んから、一般の拡材に使うことは難しい。
しかし、個人的にならそれを使うことは可能やと、その経営者はそう考えた。
例えば、旦那の誕生日には洒落たコーヒーカップや灰皿。奥さんには、エプロンとかスリッパ。お子さんにはオモチャ類といった感じやな。
その時々でその商品がころころと変わるということが、却って功を奏したのか、その販売店の評判は瞬(またた)く間に上がったということや。
そういう事というのは、口コミで拡がりやすいさかいな。
そのため、このご時世にあって、かなりの部数を着実に伸ばしているのやという。
というものや。
ただ、ここで示した方法は、あくまでその意欲のある者にとって有効なもので、勧誘員すべてに当て嵌まるかどうかとなると怪しいがな。
特に拡材中心に勧誘してきた者にとっては難しいことやと思う。
それでも、この業界で生き残っていくためには難しいと思われることにチャレンジする気持ちがないとあかんのも、また事実やけどな。
参考ページ
注1.NO.81爆カード廃止の取り組みについて』
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-81.html
注2.第94回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その4 工夫は拡材に勝る
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-94.html
注3.第70回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■くり返される悲劇!!広島小1女児殺害事件の現場では……
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage13-70.html
第65回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ある新聞販売店の取り組み その1 哀しき孤独死をなくせ
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-65.html
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