メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第417回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2016. 6. 3


■報道の危機……その6 書籍『日本会議の研究』への出版停止問題について


ハカセから一冊の本を手渡された。例によって「この本を読んでみて欲しい」と言うだけで、いつものように本の内容に関する詳細は何も知らされなかった。

ハカセが何か言い添えて、ワシの判断が鈍ったり、影響されたりしたら困るということで。

「また、誰かに感想を求められたんか?」

過去に読者や著者の方から書籍の感想を求められ、ワシらが「ええ」と評価したものについては、このメルマガ誌上で紹介してきた。その数、10冊。今回も、その類なのかと思い訊いたわけや。

「いえ、違います。この本に関しては、純粋に私がゲンさんの意見を知りたいと思いましたので」と言う。

「さよか」

ハカセは意味もなく、そんなことを言う男やない。意図があってのことに違いないと思い、その本を預かり一週間かけて読んだ。

その感想を話すためにハカセと会った時、「実は、この書籍は現在、ある団体から出版停止を求められているのです」と言う。

「なるほどな」

この本を読んだ後やったから、ワシには納得できた。そして、ハカセがこの本をワシに読ませたわけも。

出版停止を求めてきた、ある団体とは「日本会議」というものや。

表面上は市民団体、国民運動団体ということになっているが、その実態を知れば知るほど政府側の政治団体に限りなく近い組織だということが、よく分かる。

「日本会議」とは、199年5月30日に「日本を守る会」と「日本を守る国民会議」とが統合して組織されたものやという。

2016年現在、会員は約3万8千名。全国都道府県に本部があり、また241の市町村支部がある。

「日本を守る会」は、円覚寺貫主・朝比奈宗源氏が神道、仏教系の新宗教に呼びかけて政治課題に対して様々な政治運動を行うために、1974年4月に結成された。

「国民会議」は、最高裁判所長官を務めた石田和外氏らの呼びかけによって財界人、学者たちが中心となって、1978年7月に結成された「元号法制化実現国民会議」がもとになっている。

関連団体として、国会議員が組織している日本会議国会議員懇談会、地方議員の組織として日本会議地方議員連盟がある。

「日本会議」の会員メンバーには現、安倍晋三総理大臣、麻生太郎副総理兼外務大臣ら現内閣の大半の大臣、および谷垣禎一自由民主党幹事長といった誰でも知っている自民党与党の重鎮らがずらりと名を連ねている。

一々、ここで名前を挙げるのは、あまりにも多すぎて面倒なので止めておくが。

これを市民団体と位置づけるには、あまりにも無理がありすぎると思う。ワシが政府側の政治団体に限りなく近い組織だいう所以や。

つまり、今回の出版停止要求は直接的ではないにしても政府の意向が大きく働いた結果やということに疑いの余地はないと、ワシらは見ている。

こういうのを「言論弾圧」と言うのやが、それを「日本会議」の連中は分かっていない。

取りあえず、「日本会議」が行った書籍『日本会議の研究』への出版停止要求の文書が送付されたという報道記事があるので、それを紹介しておく。


http://www.sankei.com/life/news/160510/lif1605100024-n1.html より引用

日本会議が出版停止求める 扶桑社刊行の新書


 保守系団体の日本会議が、新書「日本会議の研究」の出版を停止するよう求める文書を、刊行元の扶桑社(東京都)に送っていたことが10日、分かった。関係者によると、日本会議は本の内容が事実に反すると主張している。

 日本会議などによると、文書は4月28日にファクスで送付。差出人は日本会議の椛島有三事務総長で、扶桑社の社長宛てだった。文書の内容について、扶桑社は「コメントできない」、日本会議は「詳細は扶桑社の回答を待ってから明らかにしたい」としている。

 著者で著述家の菅野完さんは「私は文献や聞き取りで調べた事実を書いた」と話している。

 「日本会議の研究」は、特定の宗教団体と日本会議の関係を探る内容で、安倍晋三政権による改憲に向けた動きを批判している。

 インターネット上での連載を基に4月下旬に出版した。発行部数は初版が8千部で、扶桑社は発売前に3千部の増刷を決定。各書店でベストセラーランキングの上位に入っている。


というものや。

ここで掲載されている「申入書」とは別に『日本会議の研究』に登場する人物から、代理人を通じて出版差し止めを求める法的文書が扶桑社に送られているということやから、応じなければ裁判も辞さないということのようや。

現在、書籍『日本会議の研究』は、4月末に発売され、ゴールデンウィーク直後には日本中の書店から姿を消したと言われるほど売れているという。

それが、今回の出版停止要求で、さらに拍車がかかっていると。

このメルマガ誌上で『報道の危機』や『自民党憲法改正案の是非』、『報道のあり方』といったシリーズなどで自民党与党、および政府の姿勢についていろいろと言及してきた。

当初、それは自民党政府の一部の権力者による横暴のように考えていて、その都度、批判的な論調を展開していたが、この『日本会議の研究』を読むにつれ、もっと根の深い思惑と理由があったと知った。

そして、現在の自民党政府与党の望む政治が、どんなものかということもはっきり見えてきた。

書籍『日本会議の研究』の内容を、ここですべて書けば分かって貰えるとは思うが、残念ながら、それはできない。

物理的に書き写せないという問題もそうやが、著者や出版社の了解を得ていないため著作権に抵触する危惧もあるしな。

詳しくは書籍『日本会議の研究』を買って読んで貰うしかないが、そう言うてしもうたら話は、ここで終わってしまうさかい、アマゾンでの作品の「内容説明」を引用したいと思う。


日本会議の研究 (扶桑社新書) 新書

商品の説明

内容紹介

「右傾化」の淵源はどこなのか?
「日本会議」とは何なのか?

 市民運動が嘲笑の対象にさえなった80年代以降の日本で、めげずに、愚直に、地道に、そして極めて民主的な、市民運動の王道を歩んできた「一群の人々」がいた。

 彼らは地道な運動を通し、「日本会議」をフロント団体として政権に影響を与えるまでに至った。

 そして今、彼らの運動が結実し、日本の民主主義は殺されんとしている。――

 安倍政権を支える「日本会議」の真の姿とは? 中核にはどのような思想があるのか?

 膨大な資料と関係者への取材により明らかになる「日本の保守圧力団体」の真の姿。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

菅野完
 著述家。1974年、奈良県生まれ。一般企業のサラリーマンとして勤務するかたわら執筆活動を開始。退職後の2015年より主に政治分野の記事を雑誌やオンラインメディアに提供する活動を本格させる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


これを読まれて「なるほど」と思って頂ければ良いが、これだけでは正直、何が語られているかが分かりにくいと思う。

そこで、せめて著者、菅野完氏の思いがよく現れている著書の冒頭部分、「はじめに」の一部を抜粋させて頂くことにする。


書籍『日本会議の研究』「はじめに」 より引用


 安倍政権の暴走が止まらない。

 2012年に第二次安倍政権が発足して以降、特定秘密保護法の採択、集団自衛権に関する閣議決定、そしていわゆる「安保法制」の強行採決と、傍若無人な政権運営はとどまるところを知らない。

 閣僚や自民党議員たちの奔放な言動も目立つ。首相の靖国参拝に対し「失望した」とコメントを発表した米国に対し、「むしろ我々が失望だ」と発言した衛藤晟一。

 改憲にあたっては「ナチスのやり方を真似てはどうか」と発言した麻生太郎。

「沖縄の2紙を潰してやりたい」との発言で怪気炎あげた「文化芸術懇談会」に参加した自民党議員たち。

「放送局が政治的な公平を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法第4条違反を理由に、電波法76条をもとづいて電波停止を命じる可能性もある」と発言した高市早苗など、その事例は枚挙にいとまがない。

 反動と呼ぶにはあまりにも幼稚すぎる、こうした無軌道な発言が目立つのは、安倍政権周辺だけにとどまらない。

 全国各地の路上では、「朝鮮人を殺せ」「韓国人出ていけ」と叫ぶデモや集会がいまだに繰り広げられている。

 さらには「ヘイト本」の出版ブームもまた持続中だ。どの書店でも嫌韓や拝外主義を煽る書籍が平積みされ続けている。

 一般書店の月刊誌コーナーで平積みされるのは、『正論』『WiLL』などの保守論壇月刊誌ばかり。

 岩波書店の『世界』はもとより、『中央公論さらには『文藝春秋』までもが、隅に追いやられている。

 これらの事象を見て、人は、「日本は右翼化した」という。

 しかし、果たしてそうか?

 安保法制の強行採決により、安倍政権の無軌道な政権運営がピークを迎えた2015年夏。SEALDsに代表される強固な反対意見のうねりを、我々は確かに目撃した。

 国会前に集まった数万の人々は、口々に、安保法制反対を叫び、安倍政権の退陣を訴えた。

 沖縄・広島・長崎の慰霊祭に出席する安倍総理に対しては、遺族や列席者から、彼の姿勢を批判するヤジが飛んだ。三大慰霊祭の全てで首相を糾弾するヤジが飛ぶのは前代未聞の出来事だ。

 政界から路上に目を転じると、いまだに繰り返される人権意識のかけらもないヘイトスピーチデモに対抗すべく立ち上がる、いわゆる「カウンター」の人々が全国各地に存在する。

 ヘイト本・嫌韓本が出版されるたび版元や書店に抗議する市民も存在する。「日本は右翼化した」という総括は、こうした人々の存在を無視するものではないのか?

 少しデータを見てみよう。

 本書執筆時点で直近の衆議院総選挙(2014年12月14日施行)では、確かに、自民・公明の連立与党が議席配分としては圧倒的な勝利を収めた。

 しかし、得票率を見ると自公連立政権=49.54%野党・無所属合計=50.46%と、わずかとはいえ、野党の得票数が上回っている。

 ロングスパンで見た世論調査の解析結果はさらに興味深い傾向を示している。

 2003年から2014年までの長期間にわたり、政治家と有権者双方に対して実施された大規模な世論調査を分析した谷口将紀は、

有権者の好む政権争点はここ10年左右にぶれることなくほぼ不変であるにもかかわらず、政治家、とりわけ自由民主党の政治家たちだけが右側に寄り続けているという解析結果にもとづき、

「たとえ過去10年間で日本政治が保守化したとしても、それは政治家の右傾化であって、有権者の政策位置が右に寄ったのではない」と指摘している。(谷口2015)。

 これらの数字や分析を踏まえると、やはり、「日本の社会全体が、右傾化している」とは言い難い。

 社会全体として右傾化していたとは言い難いにもかかわらず、政権担当者周辺と路上の跳ねっ返りどもだけが、急速に急速に右傾化しとている……。これはなんとも不思議だ。

 中略。

 日本会議とは、民間の保守団体であり、同団体のサイトによれば「全国に草の根ネットワークを持つ国民運動団体」だ。

 私が集めたサンプルは、保守論壇人の一部が、これまで「右翼」あるいは「保守」と呼ばれてきた人々と、住む世界も違えば主張内容さえ大幅に違うということを示していた。

 サンプルから読み取れる彼らの主張内容は、「右翼であり保守だ」と自認する私の目から見ても奇異そのものであり、「保守」や「右翼」の基本的素養に欠けるものと思わざるをえないものばかりであった。

 そうした傾向は70年代から徐々に高まり、90年代中頃を境にピークに達し、その後現在に至るまで、そのピークを維持していることを示した。

 そしてそうした保守論壇人の共通項が、民間保守団体「日本会議」なのだ。

「日本会議周辺の保守論壇人は異質だ」

「日本会議周辺は、これまでの保守や右翼とは、明らかに違う」

 集めたサンプルを虚心坦懐に読み解くと、そう結論づける他なかった。

 しかし、日本会議の存在に行きついたものの、メディアは日本会議のことをまったく報じる気配がない。

 私はといえば、一介のサラリーマンにすぎない。こうした見解を発表する場など与えられるはずもない。やむを得ず、ツイッターなどのSNSで自分なりの論考を発表し続けた。

 そうした論考の一つが、扶桑社が新たに立ち上げたWebメディア「ハーバー・ビジネス・オンライン(HBO)の編集者の目に止まった。

 編集者なりに私の論考を裏取り調査してみても、その解析内容に無理やこじつけはないと感じたという連絡を頂戴した。

 そして、この論考を連載化しないかという提案をいただいた。

 かくて、2015年2月14日、Webメディア連載、「草の根保守の蠢動」はスタートした。

 調査作業に対する編集部によるバックアップのおかげで、連載当初には想定もしていなかった事実を次々と掘りあてることができた。

 そのためか、連載は好評を頂戴し、読者からも望外の反響をいただき、書籍化を希望する声も多数寄せられた。

 そうして生まれたのが本書である。


正直言うて、ワシもハカセも、この書籍の存在はむろんのこと、Webメディア「草の根保守の蠢動」についても、まったく知らんかった。

それを『「日本会議」が行った書籍『日本会議の研究』への出版停止要求』の報道で知った。

ハカセは、万が一、出版停止にでもなったら困ると思い、急いで書店に走ったがなかったため、アマゾンで取り寄せたという。

『日本会議の研究』の内容は、当メルマガ『報道の危機』シリーズでワシらが言うてきたようなことが見事に裏付けられていた。

『「沖縄の2紙を潰してやりたい」との発言で怪気炎あげた「文化芸術懇談会」に参加した自民党議員たち』というのは、

『第369回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その2 「沖縄2紙をつぶせ」発言の波紋』(注1.巻末参考ページ参照)で話した。

この中で、


人は同じような意見の者ばかりが周りにいると、つい調子に乗って本音を漏らしてしまいやすくなるもんやが、これは、その典型的な出来事やと言える。

しかし、言うてる事は、あきれるほど的外れや。お粗末と言うにも度が過ぎとる。

権力で言論を封じ込めようという時代錯誤もあるが、それ以上にこの会合に集まった自民党の若手議員たちは自分たちの無知さかげん、無能さかげんを見事に露呈しとると言うしかない。

その本音の発言には、何の裏付けも信憑性もないのやさかいな。むろん説得力も皆無や。

『マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい』といったようなことを本気で信じているとしたら、これほど無知で馬鹿げた話はない。

企業がマスコミに対して広告料を払うのは、それによる費用対効果で利益が得られると計算するからや。商品の認知度とイメージを高めるためというのもある。

それからすれば企業がマスコミに対して広告を出さないことによるデメリットは、むしろ企業側の方が大きいと言えるくらいや。

企業はマスコミのために広告を出しているのやなく、自分たちの利益につながると判断して、そうしているわけや。

そんな初歩的なことも分からず、いくら文化人や有名人といった連中が経団連に働きかけようと、そのとおりにする企業がおるとは思えんがな。


と言うたが、ワシらは、まさか自民党の議員が、ここまでアホやったとは信じられん思いがしていた。そこまで質が低下したのかと。

誰が聞いても「そら、おかしいやろ」というようなことを平気で言うてたさかいな。

それが、書籍『日本会議の研究』、『はじめに』の中で、著者の菅野完氏が『社会全体として右傾化していたとは言い難いにもかかわらず、政権担当者周辺と路上の跳ねっ返りどもだけが、急速に急速に右傾化しとている』と言っておられたことで、「そういうことやったのか」と納得できた。

自民党の議員すべてがおかしいのやなく、『日本会議』に属した連中が『異質な存在』やったと知ってすべて合点がいった。

『第359回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その1 強まる自民党政府による政治圧力』(注2.巻末参考ページ参照)で、『強まる「政治圧力」 自民、テレ朝とNHK聴取 報道萎縮の懸念』という報道記事を紹介したことがある。

自民党は党情報通信戦略調査会にテレビ朝日とNHKの幹部を呼び、報道番組の内容について事情を聴取したというものや。

ここで自民党の党情報通信戦略調査会の連中が、あからさまな政治圧力をかけていたことが明らかになった。

この時は、


『政府与党の傲慢さ、ここに極まれり』と言うしかない。

こんなことを平然として誰からも咎められないと考える神経に驚く。

おそらくは高い支持率を背景にしてのことやろうとは思うが、いつの時代でも実証されていることやが、そうした奢りがいずれ身を滅ぼすことにつながるのである。

まさに『驕る平家は久しからず』を地でいっているようなものや。

自民党が、「公平中立な番組制作に取り組むよう、特段の配慮」を求めているのは、実は特定のテレビ局、新聞社の報道との見方がある。

日頃からテレ朝の『報道ステーション』は政府与党に辛口の論調やったということが大きいようや。

それには政府与党に辛辣な批判をする古賀氏を起用していることが面白くなかったのかも知れんがな。

元経済相の官僚として耳の痛いことばかり言い続けているのが気に食わんとということでな。

公平ではないとして自民党が文書で難癖をつけたのは「アベノミクス効果は富裕層や大企業に限定される」といった趣旨の同番組内でのアベノミクス検証放送が、その発端やったと言われている。

自民党は、この放送が「特殊な事例をいたずらに強調」するもので、放送法の定める「放送の公平・公正」の趣旨に反するとして「要請」という形で一種の圧力をかけたわけや。

言うておくが、『アベノミクス効果は富裕層や大企業に限定される』というのは紛れもない事実や。これについては数多くの世論調査の結果でも、そう出ているから間違いないものと思う。


と言うたが、その連中の大半が『日本会議』に所属している議員たちやったと分かった。

他にも『日本会議』に関係した人間が中心となって行われたものがある。

『第385回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その9 政府批判を取り締まることの是非について』(注3.巻末参考ページ参照)で話した、『安倍政権批判の文言入り文具、有無を調査 北海道の学校』と題した報道記事を見て、


ワシは、この記事を見てすぐに戦前の「思想狩り」、「言葉狩り」というのを思い浮かべた。

あるいは、現在でも独裁国家にありがちな政府への批判に対する「言論弾圧」、「言論封じ」を。

今の自民党の議員たちは、圧倒的な議席数を背景に日本を牛耳っていると勘違いしていて、その頃の為政者たちの考え方と何ら変らん状態になっているのやないかと思う。

政府を批判する者は許さないという姿勢があからさまやさかいな。

この記事には、『「アベ政治を許さない」との文言が印刷されたクリアファイルが教師の机の上に置かれていると指摘』とあるが、それのどこが調査されなあかんことなのかと思う。

また、その調査の結果、『管理職には、関わった教職員が特定できれば指導するよう求めた』ということやが、何を指導しろと言うのか。

まあ、そんなことは止めろと言いたいのやろうと思うが、自民党道議とやらに言われる筋合いのことやないと思うがな。

はっきり言うが日本は民主主義国家で独裁国家やない。

日本は言論と表現の自由が憲法で保障されていて、誰がどんな主義主張を持とうと不当に責められるいわれはない。

政府を批判する者を取り締まって注意、指導しろというのは時代錯誤の愚挙に等しい行為と言うしかない。

この件は、むしろ堂々と政府を批判できること自体、日本が民主主義国家として健全だと世界に向けて誇りに思うべき出来事やないかと考えるがな。

誇るほどのことやないとしても、問題にするべきことやなかったのは確かやと思う。

政府側の人間にとっては面白くないことなのかも知れんが、例えそうであっても自由を権力で封じ込めようとする行為は頂けん。

どう見ても醜悪な行為にしか映らんさかいな。結果、人心も離れる。

「アベ政治を許さない」というのは、確か安保法案に反対していた多くの国民が国会前のデモで掲げていたプラカードの文言やったと思う。

テレビで報道される度に映っていたから誰でも目にしている有名な文言でもある。

それがコンビニあたりで簡単にコピーできるとあって一般にも広く使われているようや。それを持っていることがブームになっているとも聞く。

教師が、その文言に賛同してかブームに乗っているかは別として、その文言が印刷されたクリアファイルを個人的に持っていることが、なんで責められなあかんのかと思う。


と言うた。

『「放送局が政治的な公平を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法第4条違反を理由に、電波法76条をもとづいて電波停止を命じる可能性もある」と発言した高市早苗』については、

『第402回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その4 電波停止発言の波紋は新聞報道にも関係する?』(注4.巻末参考ページ参照)で、


ワシには、「政府のやることには批判するな」という風にしか聞こえん。「一方的に政府に対する批判的な放送ばかりしていたら、処罰するぞ」と。

それが本音やろうと思う。しかし、それは独裁者の考えることや。

新聞も含めて報道機関には国家権力を監視する役目を担うという大きな使命がある。となれば、政府に対する批判的な報道が増えるのは当然や。

公平に報道しろと考える方がおかしい。政府が批判されることを嫌ったら、その時点で終いや。

批判される事、もしくは批判されると予想されるからこそ、そうならないようにしようと考えるのと違うのかと思う。

要は批判されるようなことをしたり言うたりせな、ええだけの話や。

そうすることが本当の意味で良い政治に結びつくものと信じる。批判の芽を摘むことやない。

もっとも、そのことを分かっていれば今回のような高市早苗総務大臣の発言は生まれなかったやろうがな。

まあ、暗黙裡に恒常的にテレビ局に対して総務省側が、その手の脅しをかけとるとは聞くがな。役所にありがちな権力誇示の一環として。

そのことを伝え聞いた高市早苗総務大臣が、さして深く考えもせず発言したというのが、本当のところやないかという気がする。

ワシが『馬鹿とまでは言わんが、思慮が足らん上に魂胆があまりにも見え透いていると言わざるを得ない』という所以が、そこにある。

電波法第76条に、

『総務大臣は、免許人等がこの法律、放送法 若しくはこれらの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、三箇月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じ、又は期間を定めて運用許容時間、周波数若しくは空中線電力を制限することができる』

とあるさかい、その権限と判断を下す権利が総務大臣である自分にあると言うてるわけや。

一見すると、そうかなと思いがちやが、それは断じて違う。

政府機関に、そんな権限が生じれば『戦時中の「大本営発表」のような政府や軍部による権力側の一方的な報道を阻止する』ことなんかできんようになるし、同じ過ちを繰り返す危惧が大やさかいな。

放送、報道の自由、独立性など、ないに等しくなる。

まあ、現在の自民党政府は報道を牛耳ることで、世論を政府の意のままに誘導したいのやろうがな。その魂胆は見え見えや。

高市早苗総務大臣は『放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合』と言うとるが、その判断を下す権限はない。

当たり前やが、そんな判断を総務大臣が自由に下せるのなら、放送法など、あってないのも同じやさかいな。

そもそも総務省は許認可の是非を判断する役所で、一度認可したものは法律に違反しない限りは取り消すことはできん。

事実、過去において電波を止めたという例は皆無やさかいな。

放送法に関しては、放送法第4条(国内放送等の放送番組の編集等)を守る手段として、放送法第6条(放送番組審議機関)で『放送事業者は、放送番組の適正を図るため、放送番組審議機関を置くものとする』と決められている。

それには『BPO(放送倫理・番組向上機構)』というのがある。

問題が生じれば、そのBPOで審議し、放送事業者に意見や指導するなどして現在でも十分に機能している。

政府が介入する余地や必要はまったくないし、してはならない。

その程度のことも分からず『放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に、電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性』に言及したという。

もっとも、それがおかしなことやと分かっているからこそ『私の時に(電波停止を)するとは思わないが、実際に使われるか使われないかは、その時の大臣が判断する』と言って逃げたのやろうがな。

つまり、高市早苗総務大臣は、本気で『電波停止を命じる』ことなんかできるとは考えておらず、そう言うことで各放送局による政府への批判発言を抑えることが狙いやったと思われる。

せやからこそ、これだけの大騒ぎになっているわけや。その意図が、あまりにも見え透いとるさかいな。


と指摘したことも今なら分かる。

菅野完氏が言われている『日本会議周辺の保守論壇人は異質だ』、『日本会議周辺は、これまでの保守や右翼とは、明らかに違う』ということであれば、こういった愚挙に出るのも無理はないと。

『日本会議』については、他にもまだまだ、いろいろありそうやから、これから調べて、また話したいと思う。

ただ今回、書籍『日本会議の研究』を読んだことで分かったのは、現在、日本は一部の狂信者たちに牛耳られようとしていることや。

それも日本を戦争に導く危険な国にしようとしていると。

それが分かっただけでも大きな収穫やったと思う。



参考ページ

注1.第369回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その2 「沖縄2紙をつぶせ」発言の波紋』
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-369.html

注2.第359回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その1 強まる自民党政府による政治圧力』
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-359.html

注3.第385回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その9 政府批判を取り締まることの是非について
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-385.html

注4.第402回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その4 電波停止発言の波紋は新聞報道にも関係する?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-402.html


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