メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第436回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日  2016.10.14


■憲法改正の是非……その1 自民党政府与党はなぜ憲法改正に拘るのか?


現、日本国憲法改正問題については過去のメルマガ誌上、『第254回 ゲンさんの新聞業界裏話■自民党憲法改正案の是非 その1 憲法第96条、および第9条の改正について』、

『第255回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■自民党憲法改正案の是非 その2 基本的人権が危ない』、『第264回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■現日本国憲法成立の真実とは』(注1.巻末参考ページ参照)などで詳しく話したことがある。

それらの話をすると、「新聞業界の話と何の関係があるんだ」、「そんな政治問題より、もっと新聞業界のコアな裏話をして欲しい」といったメールを頂くことがある。

そういった方々には、「新聞と政治は切っても切れない関係にあります。なぜなら、政治問題が掲載されない一般新聞などあり得ないからです。

新聞が、それぞれの政治問題にどのように対処し、報道しているのかを探っていくと新聞業界の主張や姿勢が垣間見えてきます。

政治問題など面白くない、そぐわないと思われるかも知れませんが、それも一つの裏話の範疇に入ると思いますので、しばらくお付き合い願えれば必ず分かって頂ける時がくると信じています」と返信させて貰っている。

例えば、憲法改正問題では全国紙のY紙、S紙などでは比較的政府与党側に沿った好意的な記事が掲載され、同じく全国紙のA紙、M紙になると否定的な論調の記事が目立つといったことなどが、そうや。

ちなみに、ブロック紙、地方紙などでは全国紙のA紙、M紙ほど極端ではないが、事、自民党の憲法改正案については批判的な記事の方が多い。

同じ問題、事件、事案であっても新聞社の姿勢、立ち位置によって報道の仕方が違ってくることがある。

新聞により、なぜ、そういった違いが出るのかという点については歴史的な背景や新聞社それぞれの考え方の違いがあるからやが、それが分かれば結構面白い発見があるさかい、新聞業界の裏話をする上でも政治話は欠かせんと考えているわけや。

それには、このメルマガは業界関係だけではなく、広く一般読者の方々を対象にしているというのもある。

その観点から、少しでも一般読者の方々のためになる情報を扱おうと考えれば、政治やその時々の時事問題について話すのは自然な流れやないかと思う。

そう理解して頂ければ有り難い。

今回、以前に話したことがあるにも関わらず『憲法改正の是非』と銘打ってまでシリーズ化しようと考えたのは、『第423回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■改憲勢力が3分の2超になったことで憲法は改正される方向になるのか?』(注2.巻末参考ページ参照)で、


今後、憲法論議が行われることで真剣に憲法について考える人が確実に増加するはずやから、次に憲法改正を争点として選挙が行われたら、自民党にとってはかなり厳しいことになるやろうという気がする。

人は我が身に降りかかる問題については敏感に反応するさかいな。

そして、自民党の「憲法改正草案」は知れば知るほど、国民の基本的人権が制限される内容になっている条文が多いということに国民が気づくはずやから、それについて拒否反応を示すだろうことは容易に想像できる。

原発の再稼働問題や強行採決された安全保障関連法案時以上の大規模な反対運動が湧き起こるのは、ほぼ確実やと思われる。

そうなると、改憲勢力と呼ばれている政党も迂闊に自民党の「憲法改正草案」に乗れなくなる。そんなことをすれば国民全体を敵に回しかねんさかいな。

加えて、国民投票法上、憲法の全面改正が一気にできにくいということがある。

自民党の憲法改正草案は、全面改正になっているため、事実上、そのままの改正案が成立することなど、ほぼ不可能やと言うてもええ。

2007年に制定された国民投票法では、改正項目毎に賛否を問う個別投票方式を採用しなくてはならないということになっている。

つまり、「自主憲法制定」を前提として全面憲法改正を目指している現行の自民党「憲法改正草案」では発議の資格すらないわけや。あまりにも項目が多すぎるさかいな。

もっとも、一度の改正発議で複数の条文を対象にすることは可能やが、それであったとしても個別の条文毎に賛否を問わなければならないとされている。

しかも、一度に国民投票にかけられる改正案は、せいぜい3〜5項目程度までと限定されている。

それが順調に行われたとして、一度の国民投票に持ち込むまで、国会の合同審査会、改正原案の審議と作成、原案の条文起草、原案提出後、憲法審査会で審議が尽くされ、最終的に衆参それぞれの総議員の3分の2以上が改正案に賛成する必要があり、

さらに国民投票をするには2〜6ヶ月間の周知期間を設けなければならないと決められているから、よほど性急に事を運んだとしても数年程度は悠にかかるものと思われる。

それも1回の国民投票で3〜5項目程度やから、100条以上もある自民党の憲法改正草案すべてを改正しようとすれば、早くても10年から20年くらいは必要になる。

それも発議ができる3分の2を有している状態が延々と続いているという条件付きやから、その間に情勢が変わり、選挙に負けてしまうと、その数字を割り込み発議すらできなくなるだけでなく、審議中の議論の打ち切りということもあり廃案になる恐れも十分考えられる。

今回の参議院選挙で、自民党が憲法改正を争点にして戦うのを避けた理由は、まさしく、その1点に尽きると思う。

憲法改正を争点にすると選挙は勝てないと判断して。結果的に、その判断は正しかったと言える。野党が共闘して勝った1人区では例外なく「憲法改正危機」を煽っていたさかいな。

また、改憲そのものを安倍内閣が主導できるかのような印象を与える報道が目立っているが、内閣は憲法改正原案を提出できないと決められていて、実際に安倍内閣が関与できる部分は殆どないと言うてもええ。

以上のような状況から、『改憲勢力3分の2を超えてしまって、自民党の「憲法改正草案」が、このまま成立してしまうのかと考えると夜も眠れません』というのは杞憂に終わる公算の方が大やと思う。

『これを阻止する何か良い方法はないのでしょうか?』というのも、今のままでは自民党の「憲法改正草案」が成立することの方が難しい状況やさかい、それほど心配せんでもええのと違うかな。


と、楽観的に話していたが、そうとばかりは言えんのやないかと考え直し始めたからや。

さすがに自民党も今のままの『2012年の憲法改正草案』では、いくら改憲勢力と呼ばれる他党を含め衆参共に3分の2の議席を確保できたと言っても、成立にこぎつけるのは無理やと考えたようで、ここにきて方向転換を計ろうという動きを見せ始めた。

その記事がある。


http://mainichi.jp/articles/20161008/k00/00m/010/178000c より引用

自民党12年草案一部棚上げ…保守色弱め改憲議論


 自民党は、国会の憲法審査会で憲法改正の議論を促すため、野党の批判が強い2012年の憲法改正草案だけでなく、05年に作った新憲法草案もベースにして改憲項目を絞り込む方針を固めた。

 12年草案のうち保守色の強い条文を事実上、棚上げし、野党が土俵に乗りやすくする狙いとみられる。自民党憲法改正推進本部(保岡興治本部長)は18日に全体会合を開き、党内論議を本格化させる。

 民進党は蓮舫代表のもと、憲法審査会に積極的に参加する姿勢を示す一方、その前提として自民党に12年草案を撤回するよう求めた。

 しかし、安倍晋三首相は9月30日の衆院予算委員会で、撤回しないことを明言した。首相は「特定の党の主張がそのまま通ることはない」と12年草案にこだわらない考えだが、改憲案を示していない民進党を繰り返し批判してきた経緯があり、簡単に撤回できないのも事実だ。

 とはいえ、このままでは与野党が議論の入り口で対立する可能性があり、自民党は下村博文幹事長代行が12年草案を「封印する」と述べるなど、野党との妥協点を探っている。

 12年草案は保守色が強く、今国会では、基本的人権を「永久の権利」と規定した97条が草案から削除されたことを野党に追及された。

 一方、05年草案は抑制的で、家族の助け合い義務などは盛り込まれていない。同党関係者は両案の並行協議を「12年草案が絶対的ではないと対外的に示す工夫」と期待する。

 ただ、05年草案も「自衛軍」を憲法に位置付けようとしており、9条改正に反対する民進党が歩み寄る保証はない。


というものや。

『自民党05年憲法改正草案』とは何か。一言で言えば、ソフトランニング(軟着陸)の手法により憲法を改正させる目的で作られたものや。

確かに、いきなり『2012年の自民党憲法改正草案』を突きつけられると嫌悪感を示す人が多いやろうが、『自民党05年憲法改正草案』やと、そうでもないかも知れん。

まずは変えやすいところから変えようという考えから出発したのが『自民党05年憲法改正草案』やったから、当然と言えば当然なのやがな。

しかし、その一見、優しげに見えたものが、7年の月日が経つと、とんでもない代物に変貌しているわけや。

そう考えれば、ソフトな感じの憲法改正案やからと言うて安心することはできんやろうと思う。

実際、随所に霞ヶ関文学を駆使した官僚たちによる「どちらとも取れる」内容が、ひっそりと仕組まれとるケースなど掃いて捨てるほどあるさかいな。

法律の多くが、そうやが、一旦決まってしまうと、「解釈の違い」とかで、当初、多くの人が考えていたものとは、まるで違う法律になってしまっているというケースは、これまでにも腐るほどあるしな。

まあ、その論議は追々するとして、ここでは、そもそもな疑問として、なぜ現自民党政府与党が、これほどまでに憲法改正に拘るのやろうかという点について考察してみたいと思う。

自民党には「日本国憲法は占領下の下、GHQ(連合国軍総司令部)に押し付けられたものだから正当性がない。日本独自の自主憲法をつくるべきだ」という考えが大勢を占めていた。

しかし、GHQは自らが勝手に作った憲法を強制的に押しつけることまでは考えていなかった。

それは、連合国側が一方的に作って強要した憲法だということが日本国民に知れると、将来に渡り、日本国民がその憲法を受け容れ継続する可能性が低いだろうと判断したからだと言われている。

できれば日本人の手による憲法草案が望ましい。GHQは、そう考え広く憲法制定に関するパブリック・コメント(意見公募)を募った。

その結果、民間草案が次々に持ち込まれた。

その中の一つ、在野の憲法学者、鈴木安蔵を中心とした「憲法研究会」の憲法草案にGHQが興味を示した。

「憲法研究会」の憲法草案は、「国民主権主義」、「労働者保護」、「国民投票制度」、「単年度予算」、「会計検査院制度」、「所有権の制限」といったところまで踏み込んでいた。

そのためGHQ内では、「この草案中に示されている諸条項は民主主義的で我々も賛成できる」という意見が大勢を占め、「憲法研究会」の憲法草案を参考にすることで一致した。

当時、憲法学者の鈴木安蔵は、中央では殆ど無名に近い存在やった。

戦前、鈴木は左翼学生運動などで治安維持法違反で検挙され、2年間服役している。

その後、著書の発禁など不遇の時期を経て、憲法史、政治史などの研究を重ね、在野の憲法研究者と呼ばれるようになった。

主な実績には、大日本帝国憲法の成立過程の実証研究がある。そのさきがけとして、その道では知られた存在やったという。

第二次世界大戦後は「憲法研究会」の発足時から参加し、自らの憲法史研究をベースとして会による憲法私案「憲法草案要綱」をまとめる中心的役割を果たしている。

鈴木は、憲法私案「憲法草案要綱」を発表した翌日、新聞記者の取材に対し、起草の参考資料に関して、次のように語っている。

「明治15年に草案された植木枝盛の東洋大日本国国憲按や土佐立志社の日本憲法見込案など、日本最初の民主主義的結社自由党の母体たる人々の書いたものを初めとして、私擬憲法時代といわれる明治初期、真に大弾圧に抗して情熱を傾けて書かれた20余りの草案を参考にした、

また外国資料としては「1791年のフランス憲法、アメリカ合衆国憲法、ソ連憲法、ワイマール憲法、プロイセン憲法などを参考にした」と。

生半可な知識量ではない。

当時の日本人としては異端と言っても良いくらい民主主義に精通し、国際感覚に長けた人物やったと言える。

この憲法私案「憲法草案要綱」がGHQに認められ、コートニー・ホイットニー准将らによる憲法案の作成に大きな影響力を与えたことから、鈴木氏は、日本国憲法の間接的起草者と言われるようになった。

この事実を知ると、あながち現日本国憲法は、GHQに無理矢理押しつけられたものではなかったという気になる。

日本人の手で作られた初めての民主憲法と言えるものやないかと。もっとも、国民の多くにはその事実はあまり知られていないがな。

ただ、背景にはGHQという当時の絶対的な権力が控えていたということもあり、その影響下で作られた憲法は、やはり押しつけられたものだという見方が自民党内では根強く残っていた。

今尚、「日本国憲法はGHQに押し付けられたものだ」と自民党員たちが声を大にして喧伝しているのは、そのためだと。

自民党にも、そうするには、それなりの理由があった。

1946年当時の松本烝治憲法改正担当国務大臣による憲法草案、俗に言う「松本私案」と呼ばれていたものをGHQに提出したのやが、却下され、廃案になったということがあった。

当初、GHQは連合国の意向に沿う憲法草案であれば認めるつもりやった。

しかし、「松本私案」には、「天皇が統治権を総攬するという大日本帝国憲法の基本原則は変更しないこと」という拘りが強かったこともあり、結局、GHQは日本政府の出した松本私案を拒否し、見限った。

結果、憲法研究会の鈴木案を基にGHQ案を作り、「マッカーサー草案」として日本政府に突きつけたわけや。

もっとも、表向きは公式な日本政府としての日本国憲法の草案ということにはなっとるがな。

ただ、この時、日本政府は「日本国至高の総意」という文言を日本国憲法の草案に忍び込ませた。

実は、この文言を草案に記載した事こそが、当時の日本政府の抵抗であり、GHQ案を将来的に骨抜きする狙いがあったと思われる苦肉の策やった。

日本の官僚たちによる姑息な文言によるごまかしの表現は、すでにこの頃から行われていたことになる。まさに油断も隙もないと言うしかない。

「至高」というのは「この上なく高く、優れていること。また、そのさま。最高」という意味で、それからすると、「日本国至高の総意」というのは「日本国最高の総意」ということになる。

「日本国最高の総意」が「国民主権」とはならないというのは文言の上からも明白で、時を経てGHQの力が及ばなくなれば、「国民主権」はおざなりにされ、政府を「日本国最高の総意」として国民を統治しやすくする狙いがあったものと思われる。

さすがのGHQもそこまで気がつかないだろうとタカを括っていたようやが、その目論見は簡単に見透かされてしまった。

その文言に気がつき、「至高という表現は止めて、主権が国民にあるということを明文化しなさい」と強硬に迫るGHQに、日本政府は、盛んに「至高」と「主権」は同じような意味であると説明して、しぶとく粘り何とか逃れようとしたが、結局、日本国憲法の前文に「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」という文言を入れざるを得なくなった。

当時の自民党政府の完敗である。

何のことはない。自民党自らが草案した憲法が採用されなかったことで面子を潰され、それを根に持っているだけやと思う。

その屈辱から怨念にも似た思いが、日本国憲法はGHQに押しつけられた憲法だという話だけを増長させ、多くの国民に、そう信じ込ませようとした。

それは今尚、自民党内で延々と引き継げられ、安倍首相の「日本人自らの手で憲法を作らなければならない」という発言につながり、『2012年の自民党憲法改正案』という形になって表れたわけや。

『2012年の自民党憲法改正案』は、国民の自由や基本的人権、言論の自由といったものを制限し、押さえつけようとしているのは明白で、その内容も当時の松本私案に近い。

現日本国憲法第1条で『天皇は、日本国の象徴』とあるのを、『自民党憲法改正案』の第1条では『天皇は、日本国の元首』としているのが何よりの証拠やと思う。

当時の松本私案も、その点を拘り続けていた。だからこそ、民主憲法を求めるGHQに見限られたわけやがな。

現在の日本国憲法が押しつけられたものやというが、誰にとっての押しつけかという点を考えれば、その意味合いは大きく違うてくる。

現在の日本国憲法は、権限、権力を維持しようとした日本政府にとってはマイナス面の強い押しつけの憲法かも知れんが、日本国民からすれば「自由と人権」が保障され、戦争から解放された素晴らしい贈り物やったと言えるのやないかと思う。

現在の日本は、完全に、その日本国憲法の精神が根付いた国になっているのは間違いない。

その点で言えば、押しつけであろうとなかろうと関係のない事やと言える。大半の国民は、現状の日本国憲法で十分満足しているものと考えるさかいな。

現実に、世界で最も安全な国として周知されてもいるし、国民もそれを実感している。

安倍首相および自民党政府の言う『日本人自らの手で憲法を作らなければならない』というのは、権力側にとって都合のええ憲法に変えたいと言うてるだけのことやと思う。

それを、占領政策下の下で作られた日本国憲法は屈辱的なものやから変えなければいけないという風に世論を誘導しているわけや。

こういうのを論理のすり替えと言う。

残念ながら、その論理のすり替えに力を貸している新聞が存在するのも、また事実なんやけどな。

そして、そのことを信じ始めた若い世代が本気で「現在の日本国憲法を変える必要がある」と声高に叫び始めて、その声や勢力が今や無視できんほど大きくなっている。

以前までの日本、少なくとも戦争体験者が身近に多くいた頃までは、悲惨な戦争の記憶が鮮明に残っていて、またその話を聞かされ育ってきた人が多くいたため、日本国憲法の改正を言い出す者など殆どいなかった。

特に、日本国憲法の象徴でもある「憲法第9条の戦争放棄」は絶対的なものとして、つい最近まで思われていた。冒すことのできない聖域として。

実際、安倍総理を除く過去の内閣総理大臣たちですら「日本国憲法の改正」、「憲法9条の改正」などと言い出す者なんかおらんかったさかいな。

そんなことを言い出せば100%選挙に負けると信じられていた。事実、大負けしたやろうと思う。

しかし、時代は流れ、現在、安倍首相は敵失とも言える民主党の失策のせいで転がり込んできた政権を自らの支持率の高さによるものだと錯覚して、『自民党憲法改正案』なるものを成立させようとしとるわけや。

衆参両院で過半数を得ている今の高支持率なら何でもできると考えて。

それには、過去の戦争を単に歴史上の出来事の一つとしてしか認識していない若い人たちが増えたからやと思う。

その若い人たちは核家族化の進む現在の日本社会で老人と接する機会が極端に少ないため、戦争を実感できないことが大きいのやないかと考える。

彼らの主張の中に、「現在の日本国憲法、特に憲法9条がある限り日本は外国の攻撃から守れない」というのがある。

そう信じている若い人が多いようやが、それは真実ではない。

日本には国を守る自衛権があり、そのための自衛隊がある。その自衛隊の実力は日本国民が考えている以上に高い。世界各国の軍事力総合評価で日本は世界第4位にランク(注3.巻末参考ページ参照)されている。

すでに日本は、現状であっても協力な軍事力を擁する国として諸外国から認知されているわけや。実際、自衛隊は海外へ行けば立派な軍隊として扱われとるさかいな。

これには、第二次安倍政権になって以降、日本の防衛費は従来の減少傾向から4年連続の増加に転じ、今年2016年度で防衛費が5兆円を突破したことなどが大きく影響しているわけやけどな。

今後も安倍政権が続く限り増えこそすれ減ることはないやろうと思う。

そんな日本に対して本気で戦争を仕掛けようとする国など、あるはずがないと個人的には考えるがな。実際にも終戦後、現在に至るまで外国からの攻撃は皆無やさかいな。

憲法改正論者の多くは、「それは日米安保条約でアメリカがバックにいるからで、それがなければ中国あたりに攻め込まれる。事実、尖閣諸島では危険な状況にあるから日本も戦争のできる国にするために、憲法を変える必要がある」と力説する。

アメリカは国力が落ちてきているから、いつまでも日本を守り続けるとは限らないと。

果たして、そうか。

確かに、軍事力世界第3位の中国は日本より軍事力は上や。中国が本気になって日本を攻めれば、日本単独では太刀打ちできんかも知れん。

しかし、中国が本気で日本を攻めることなど、絶対にないとまでは言わんが、まずあり得んやろうと思う。

今は、そんな世界情勢やない。世界は経済で繋がっている。日本は経済規模で見れば大国や。

その他のアメリカ、ヨーロッパ諸国、中国などの大国のどれ一つに経済危機が訪れても、その他の大国すべてに深刻な影響が及ぶような時代や。

当然のように日本と中国もお互いの経済に依存している度合いが高い。つまり、中国が日本を攻めるということは自らの経済の崩壊を招く可能性があるということや。

しかも、中国の方から、戦争を放棄している日本に戦争を仕掛けたとなると、世界がどう受け取るかは明白やわな。世界は間違いなく中国を「無法者国家」見なす。

貿易立国として、短期間のうちに財をなし裕福になり、世界の大国にまでなった中国が、世界を敵に回すような分かり切った愚を犯すとは、到底思えんということや。

共倒れ覚悟で戦うつもりがあるのなら別やがな。

改憲派の主張の矛盾は、まだある。

自民党政府の改憲派は「日本国憲法はGHQの押しつけで主体性がない」と言う。

しかし、そう言いながらも、「日米安全保障条約」でアメリカへの軍事的従属性を強める政策を取り続け、占領下の国同様の駐留基地が、未だに日本国内各地に数多く存在している。

これのどこに国家の主体性があると言えるのか。

そもそも日本国憲法が押しつけられてきたと自民党政府が言うこと自体がおかしい。

1951年のサンフランシスコ講和条約で日本の主権は回復している。

つまり、日本国民が本当に変えたいと思えば、憲法96条の改正規定に従って、いつでも憲法を変えることができた。

しかし、そうはしなかった。実際には65年もの間、押しつけられた憲法と言いつつ自民党政府自らが日本国憲法を守ってきたわけや。

その時点で、最早、押しつけられた憲法と言うのは、おかしいと考えるがな。

それなら、なぜ今になって自民党政府が、変えても変えなくても、それほど影響がないであろうと思われる日本国憲法を改正したいのか。

それは、先に挙げたように日本政府として国民を統治しやすくするという事と同時に、安倍首相が「憲法改正を行った首相」として、その名を残したいからやないのかと考える。

そう考えれば、すべての辻褄が合う。もっとも、それは安倍首相個人もやけど、それを取り巻く勢力「日本会議」の思惑も強いのやないかと思うがな。

いずれにしても、この憲法改正論議は、これからの日本の大きな課題やと思うので、シリーズ化して正しい理解を深めたいと考えている。

何でも、そうやが調べていると、いろいろな発見があるしな。

断っておくが、ワシらは憲法を改正すること自体は反対やない。

現行の自民党「憲法改正草案」のような改悪案ではなく国民のために改良される改正案なら、むしろ諸手を上げて賛成したいと思う。



参考ページ

注1.第254回 ゲンさんの新聞業界裏話■自民党憲法改正案の是非 その1 憲法第96条、および第9条の改正について
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-254.html

第255回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■自民党憲法改正案の是非 その2 基本的人権が危ない
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-255.html

第264回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■現日本国憲法成立の真実とは
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-264.html

注2.第423回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■改憲勢力が3分の2超になったことで憲法は改正される方向になるのか?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-423.html

注3.軍事力総合評価トップ20
http://blogos.com/article/173168/


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