メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第443回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2016.12. 2


■ある読者との邂逅録 その1 12年前の出会い


私(ハカセ)は、今深い悲しみの淵にいます。

そう言葉にすると、陳腐な感じがして悲しみが半減しそうで怖いのですが、黙したまま独りで抱え込むには、私にとってはあまりにも大きな出来事でしたので、あえて、そう言わせて頂きました。

先日、私のもとにサイト、及びメルマガを開始した直後から懇意にして頂いていたジュン(H.N)氏という方が病気のため亡くなられたという一報が、氏の奧様より届けられました。

ジュン氏とは現在に至るまで12年以上の長きに渡り、延べ千通にも及ぶメールを交換させて頂いた間柄でした。

幸せなことに、私にはそのような方が他にも数名ほどおられますが、亡くなられたというのは初めての経験です。

私の中では、まだ亡くなられたという実感はありません。いつものように「ハカセさん、こんばんは」という軽い調子のメールが来そうで、ここのところ頻繁にメールボックスを開いています。

連絡を頂いてから半月、やはりジュン氏からは一通のメールも届きませんでした。

ジュン氏を悼む上でも、そろそろ現実と向き合わななければいけないと思い、氏との数々の思い出、エピソードについて話そうという気になりました。

このような形でのメルマガは、今回が初めてですが、しばらくの間、お付き合い願えれば幸いです。

それにしても人生は分からないものだと熟(つくづく)思い知らされました。

本来でしたら、私の方が、とっくの昔に死んでいても良いはずなのに、如何にも頑強そうだった、まだ若いジュン氏が先に逝ってしまわれるんですからね。

私が、2004年7月3日、HP『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』を開設したのは、その当時、私自身、長くは生きられないだろうと観念していて、少しでも生きた証を遺したかったからです。

私は、その時から5年前の1999年10月、当時小学2年生だった長男の運動会で父兄リレーに出場し、走り終わった後、いきなり意識を失い倒れ、救急病院に搬送されました。

その際、病院の集中治療室で、心臓停止状態に陥り危篤状態になっていたと後日、担当医師から聞かされました。そのまま死んでいてもおかしくはなかったと。

急性心筋梗塞。心臓の心筋、4分の1ほどが壊死し、心臓の血管が詰まっていたため、急遽、心臓のバイパス手術をすることになり、かろうじて一命を取り止めることができました。

その時、担当医者から完治することはないと聞かされ、先が短いということを自覚しました。実際、当時、このままだと余命1年ほどだと宣告もされましたし。

約1ヶ月ほどで退院しましたが、その後、入退院を繰り返し、何度か心臓の手術をしました。現在は月に一度、定期的に通院しています。この先、一生、薬とも縁が切れないとのことです。

それでも私は、まだ生きています。残りの人生が何年あるのか分かりませんが、1分1秒無駄にしたくないという思いで必死に生き続けてきました。

ただ、病気をしてからは身体的に普通の仕事ができなくなったこともあり、昔の伝を頼って文筆業に専念することにしました。

文筆業と言えば聞こえは良いですが、早い話がゴーストライターでした。身体が元気な時に、そんな話をされても一生に伏したでしょうが、その当時の私には、それしか他に選択肢はありませんでした。

私には、学生時代から小説家になりたいという夢があり、高校卒業後、あえて定職には就かないようにして、数多くの仕事をしました。

それには、小説家になるためには多くの経験と知識が必要だという考えがあったからでした。

加えて、一つの仕事に縛られることで心が折れ、挫折を避けたかったことも理由としてありました。

また、小説家としての勉強、修行をする時間も欲しかったということも大きな要因の一つでした。

そのため、ある一定期間働いて、それと同じくらいの一定期間その蓄えで生活しながら文章修行と執筆活動に打ち込むという生活を数年に渡り送っていました。

具体的には、1年のうち半年程度働いて、残りの半年は文章修行と執筆活動に充てるといった感じです。今で言えば、フリーターみたいなものですね。

ただ、フリーターまがいの生活をしているといっても、現在のような派遣やアルバイト主体のそれではなく、一応、すべて正社員として会社勤めをしていました。

その頃、日本は今と違い高度成長期にあり、働く気さえあれば仕事はいくらでもあった時代でした。今と同じような社会状況でしたら、そんな悠長なことはしていられなかったでしょうけどね。

ただ、私は、それぞれの仕事には精一杯、打ち込み働いたつもりです。良い加減な気持ちで仕事をしたことは一度もありません。

一般的には、仕事に対して一生懸命頑張るのは、その道で出世したいとか、成功したいという願望があるからだと思うのですが、そのあたりのところが、私は普通の人とは違っていました。

目的の大半は、その仕事の知識の吸収にありました。それが、執筆活動の役に立つと信じて疑わなかったからです。

ですので、それぞれの仕事をマスターし、覚えるために懸命に働き頑張りました。いち早く専門家としての知識を得ることを目指したわけです。

しかし、その職場の上司や経営者には、それが分からないため、有望な新人が入ったと喜ばれていました。

自然と、経営者や上司から目をかけられようになり、引き立てられることも多くなりました。

勤め先の多くが中小企業だったということもあり、短期間のうちに、多くの職場で重要なポジションに就かせて貰いました。

悪くて主任クラス。最高位は工場長代理まで務めました。それも、当時、まだ30歳にも満たない若造がです。

しかし、私はそれらのポジション、経験を数ヶ月ほどで、すべて惜しげもなく捨てて辞めました。

そして、その次には、一度も経験したことのない新たな仕事を選び、同じ仕事は二度としないようにしました。

その主な職場には、プラスチック製作工場、化粧品製造工場、アクセサリー加工工場、自動車工場、印刷工場、警備会社、精密機械工場、運送会社、看板製作会社、製麺工場、化学工場メンテナンス会社などがありました。

最後の化学工場メンテナンス会社は、結婚を機に小説家になる夢を断念したということもあり、勤続15年と長かったですが、それ以外は、すべて1年以内で辞めていました。

働く目的は、小説家として役立てる知識であって、技術の習得やキャリアではなかったので、私としてはそれで良かったわけです。

もっとも、結局は、結婚してその夢を捨てて挫折したのですが。ただ、私に悔いはありませんでした。

一人の女性を愛し、かけがえのない二人の子供をそれで得ることができたのですから。

また、その仕事でも自慢するようで嫌なのですが、その当時、日本の超一流企業ばかりの工場メンテナンスをする現場監督、スーパーバイザーをしていた数少ない技術者の一人だったこともあり、それなりに高給を貰っていました。

そんな幸せの絶頂期に心臓病になってしまったわけです。

ただ、不思議と死ぬことの怖さはありませんでした。それについては『第115回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■死後の世界、あるやなしや』(注1.巻末参考ページ参照)でも話しましたが、奇妙な体験が、そう思わせていたのだと思います。

その奇妙な体験というのは、俗に言う「近似死体験」と呼ばれるもので死後の世界を垣間見たといったものです。

それについて真偽や是非を話し出すと長くなりますので、興味のある方は、その回のメルマガを見て判断して頂ければと思います。

ここでは単に、その経験があったから、私には死に対する怖さがなかったとだけ理解して頂ければ結構です。

ただ、死ぬことで、妻や子供たちと暮らせなくなるのが、無性に辛いと思いました。

私は、ワガママが服を着て歩いているような男です。その上、短気ですぐにどなり散らします。

その当時、私は妻と結婚して15年が経過していました。その間、妻に優しい言葉の一つかけた覚えがありません。子供たちにとっても厳しいだけの父親だったように思います。

私は、死という現実を目の前にして、それらのことを後悔しました。

妻には、もっと優しく接するべきだったと。子供は大らかに育てることが必要だったと。

私は今まで何をして来たのかということを考えた時、更に愕然としました。私の人生において、人のために何かをしたという覚えがまったくないのです。自己中心的な男でした。

このままではいけない。何かの足跡を残したい。人のために何かしたい。妻や子のためになることをしたい。特に子供たちには父親の生き様を見せておきたい。

私は、真剣にそう考え始めました。

そんな時、ゲンさんと知り合い、少しでも誰かの役に立てるのではないかという思いで、サイトを立ち上げ、このメルマガを始めたのです。

話が少し長くなりましたが、それではジュン氏との関わり合いについて話したいと思います。

最初にジュン氏からメールを頂いたのは、2004年9月24日のことでした。


初めまして。私はジュンと申します。

A紙の朝刊を副業で配達して、もう7年近くになります。

さて、「新聞拡張員ゲンさんの嘆き」、毎回メールマガジンから更新情報をチェックし、サイト内をくまなく読ませていただいています。

サイトを知ったきっかけは、Yahoo!の新着情報です。

毎回、サイトに書いてあることに、うんうんと頷きながら楽しんでおります。特にそちら様の内情を推測するのが、自分一人だけの楽しみです。

「ハカセとゲンさんは同一人物では?」

「こんな内幕を暴露したら、今後、貧乏読者がどんどん増えて、今の販売店のシステムが立ちゆかなくなるのでは?」

「このサイトの目的は、新手の勧誘マーケティングで、家に居ながらにして新聞読者を獲得するのが狙いなのでは?」(あわよくば仲介役の募集も?)

...などなど、いろいろ勝手な想像をさせていただいています。


これに対して、私は、


サイト管理者のハカセです。

いつも、当サイトを訪問して頂き、まことに有り難うございます。

>「ハカセとゲンさんは同一人物では?」

それは違います。ゲンさんは実在します。

>「こんな内幕を暴露したら、今後、貧乏読者がどんどん増えて、今の販売店
> のシステムが立ちゆかなくなるのでは?」

ジュンさんの言われる貧乏読者というのは、サービスを異常に欲しがる乞食読者のことだと思われますが、確かに業界として乞食読者が増えるのは困りますね。

ただ、私どもが業界の『内幕を暴露』することで販売店のシステムが立ち行かなくなるほど、当サイトに影響力があるとは私には思えません。まだまだマイナーなサイトだと思っていますので。

>「このサイトの目的は、新手の勧誘マーケティングで、家に居ながらにして
> 新聞読者を獲得するのが狙いなのでは?」(あわよくば仲介役の募集も?)

確かに、このサイトを開設して3ヶ月弱の期間で、ゲンさん宛てに数件の購読依頼の方がありましたが、それはとても商業ベースに乗るようなものではありません。その数はゲンさんの1日分のカード枚数にすらならないのですから。

別にどうでも良いことかも知れませんが、当サイトは営利サイトではありません。ですから、広告バナーなども一切載せていません。各方面からの依頼はありますが、金儲けのためのサイトにはしたくありませんので。


と返信しました。

この時から、ジュン氏との長い付き合いが始まろうとは、この時は考えもしませんでした。

それでは、これからジュン氏との印象的な、やりとりを幾つか紹介したいと思います。


こんばんはジュンです。

失礼ながら貴サイトには、私もハカセさんが言われる通り、大した影響力はないと思います。現段階では。

でも、いずれ多くの人がリンクを張ってくれたりして検索エンジンでかなり上位のところでヒットするようになれば、少なからず世間に対する影響力は出てくるはずです。

しかし、それでも同じような趣向のサイトがもっと増えないと、本当の意味
で業界がひっくりかえるほどの影響力は得られることはないでしょうけど。

とにかく、ゲンさんの持論だけでも、読み応えがあります。

社会に出たての若い人だけでなく、業界の垣根を超えて、営業やマーケティングを学んでいる人にとっても、教材としてじゅうぶんな価値があると思います。

それほど私は読んでいて感心するところが多かったです。


ハカセです。

ご感想、まことにありがとうございます。

実は、私は今回HPを作成したのが初めてなのです。何も分からず、四苦八苦して手を付け初めてから立ち上げるまで3ヶ月ほど費やしました。

HPを見るのは好きでいろんな所を訪問しました。ジュンさんは以前にもHPを開設しておられたとのことですが、ちょっと、分からないというか、私自身不思議に思っていることがあるのですけど、教えて頂けませんか。

> でも、いずれ多くの人がリンクを張ってくれたりして検索エンジンで
> かなり上位のところでヒットするようになれば、少なからず世間に対する
> 影響力は出てくるはずです。

と、前回、ジュンさんが仰っていたことなのですが、私が知りたいのはこの検索エンジンの件なのです。

実は、このHPを開設して2日めから、急にアクセス数が1日、500、800と日を追う毎にアップして行きました。Q&Aへの相談メールも2日めからありました。

その理由はすぐ分かりました。2日めにGoogleの検索で「拡張員」のキーワードでいきなり第2位に当HPがランクされていたからです。

私はHPを開設すること自体初めてで、特別なことは何もしていません。

ただ、HP作成のソフトに従い、開設時、複数の検索サイトに一度登録しただけです。

アクセス数は10日め頃から落ち着き、1日100程度という日が1ヶ月ほど続いた時、また、劇的なことが起こりました。何と1日、8500以上という信じられないくらいのアクセス数があったのです。

後で知ったのですが、この日にYhoo Japan の新着トピックスで当HPが紹介されていました。

私はこのことが不思議でなりませんでした。Yhoo Japan に登録されること自体、相当に難しいと聞いています。

それにも関わらず「拡張員」でのキーワードで登録サイトとして表示されているのは当HPだけです。それも開設して1ヶ月ほどしか経っていないにも関わらず。

有り難いことには違いないのですが、何故こういうことが起きているのか私には分かりません。もし、何かヒントでもあれば教えて頂けませんか。


こんにちはジュンです。

先日、Yahoo!に紹介されたというのが、最も大きなターニングポイントであったと思われます。

Yahoo!に掲載されるには、相当、他を圧倒する特長がなければなりません。

サイトに特殊性(拡張員のことを正面から採り上げているサイトが他にない)
があり、なおかつ、コンテンツが濃い、読みやすいという点が、Yahoo!の担当者にウケたんだと思います。

親しみのある関西弁、親身な態度、格言のような教育的要素、ボリュームが大きいなどなど、ご自分では気づかれないかもしれませんが、それだけ世間から情報価値が高いと認められたということなんです。


といった感じで返事を頂き、それ以降、私は事ある毎にジュン氏に相談するようになっていました。

最近でこそ、様々な読者からの投稿や情報をメルマガで紹介することが多くなっていますが、初期の頃は、このジュンさんを含め、ホンの2、3名の方しか、そういう方はおられませんでした。

そのジュンさんから寄せられた情報をもとに、2004年10月1日発行の当メルマガ『第7回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■資源は大切に?』(注2.巻末参考ページ参照)で、話をしました。

今にして思えば、これが読者からの情報を載せた初めてのメルマガでした。


■資源は大切に?


サイトにこんな投書が来た。

『近所の新聞販売所が、夜な夜な、店の裏手で、ドラム缶で 新聞やチラシを 燃やしています。真っ赤な火柱が上がっているので、「あー、今日もやってる」なんて思いながら素通りしています』

何ちゅうことすんねん。けしからん店やな。大事な資源を何やと思うてんねん。これは、明らかに残紙や残チラシを燃やしとるんやと思う。

一昔前ならこんな ことはなかったはずや。 理由は、古紙の長期暴落により古紙回収業者が減って来とるということが影響しとるんやと思う。

特に地方での古紙回収業者の廃業が目立つ。そして、この投書のあった 地域の販売所も地方や。

古紙回収が全盛の頃は、新聞の残紙もそこそこの値段で回収業者に引き取られていた。その頃は回収業者も販売所の残紙を獲得しようと競争していたもんや。
ワシの知ってる限りでは、京都におった頃が新聞の古紙の値段が一番良かったと記憶してる。 もう10年近く前になるが、古紙の売値が1キログラム15円ほどやった。

ワシの友人にテツという古紙回収の男がおったが、紙問屋の引き取り値がそんなもんやと言うとった。

その頃、ワシの知ってた販売所で出る残紙は1週間で1トン前後もあった。売値で15000円ほどになる。古紙業者や販売所に支払うのは半値が相場やから、7000円から8000円の間や。

チラシもその頃は1キログラム5円になってた。安いがチラシは新聞より重量があるからそこそこにはなった。

それが、ここ3、4年の間に暴落した。最安売値が1キログラム3円やったと言う。1トンでも3000円ほどにしかならん。下手したらカソリン代も出ん。儲からん。

どんな商売でも儲からんと皆辞める。廃業者続出ということなった。 そうなると販売所も深刻や。1ヶ月も放ってたら置き場に困る。量も半端やない。

役所も一般家庭の古紙の回収はするが、業者分は能力がないから出来んと言う。仕方なく販売所は、産廃業者に廃棄を頼む。これが馬鹿にならん。

ゴミ処理として 焼却場に持ち込んでも金はいる。今まで、金を貰うてたのに金を払うのは勿体ないと考える販売所も当然おる。

特に、田舎は昔から、ゴミは燃やして処分するという発想が未だに根強い。そこで今回のように燃やせとということになったんやろうと思う。

しかし、断るまでもないことやけど、無許可、無設備のごみ焼却は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で禁止されとる。

家庭用小型焼却炉の使用も禁止で、まし てやドラム缶で燃やすやなんてもっての外や。 当然、罰則もある。3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は懲役と罰金の両方が科せられる。

軽い刑やない。 例外として、少量の剪定枝や落ち葉、刈った草等は構わないということにはなっとるが、これも住宅地ではトラブルの元となっとるから、実質は出来んと考えとった方がええやろと思う。

この販売所の人間も、それは分かっとるから目立たんようにと夜になって燃やしとんのやろうけど、結局は通行人に見らてバレとる。こんなことを続けとったら、いずれ、捕まるかも知れんな。

そもそも、何でそんなことをこの販売所の人間がせんとあかんのかということやが、それは、押紙による過剰な残紙と残チラシの発生に原因がある。

押紙については新聞社の責任は大きいが、販売所も受け入れ入荷部数と配達実部数とに差をつけ過ぎたらあかん。

そりゃ、多少はしゃあない部分もあるとは思う。 100%間違いなく配達するというのも難しいし、配達中に汚れたり破れることもあるから、ある程度の予備は必要や。それも過剰な予備は問題やがな。

せやけど、折り込みチラシの場合は事情がちょっと違う。業界の常識として、新聞社からの入荷部数を販売所の公売部数として、折り込みチラシ依頼業者からチラシ代金を取るということを公然としとる。

しかし、公売部数と配達実部数の開きは少ない所でも10パーセントはある。つまり、公売部数が1000部やったとしたら、配達実部数は900部ということになる。

100部は初めから不要やということが販売所には分かっとる。それでも、その100部のチラシ代金は取る。不配チラシになるわけや。これは、誰が考えても詐欺になる。慣例やから許されるということはない。

しかも、そのために無駄な不配チラシを出して燃やし、それで二重に法律違反を犯して発覚したら世話ない。

加えて、折り込み依頼業者にそのことがバレたら目も当てられんことになることも考えとかんとあかん。

サイトの新聞勧誘・拡張ショート・ショート 第5話『新聞奨学生マタやんの憂鬱』(注3.巻末参考ページ参照)の中で、ある新聞販売所が、テキヤの折り込み残チラシを古紙業者に頼んで廃棄しようとした現場を押さえられて揉めたことを紹介したが、並のトラブルで済まんかったのは容易に想像がつく。

たいていの人間は、大きなトラブルに見舞われた後、初めて自分のした愚かさに気づくもんなんや。こんなことなら、しょうもないことせんといたら良かったてな。

過ちて改めざる、これを過ちと謂う。という教えがある。

人は誰でも必ず過ちを犯す。しかし、その過ちを反省する者は、その人間にとって教訓となるから、本当の意味での過ちにならん。

本当の過ちとは、悪いと承知していながら続けることや。こういうことをしてる販売所は他にもあるとワシは思う。

悪いことは言わん。今のう ちに止めることや。誰も知らんと思うてるのやろけど、周りの人間は皆、見てるし知ってるで。


といった具合です。

これに関して、当時は公にできない情報がありましたのでサイトには公開せず、ジュンさんとだけ共有した情報がありました。

今は、さすがに、こんなことはないと思いますし、当事者の特定もできないと考えますので遅らばせながら紹介します。


ハカセです。

先日、頂いた情報をゲンさんが調べていて、ある重要な事実を入手しましたのでお知らせします。

最近、関東方面で、右翼による新聞販売店への脅迫が増えているそうです。

ご存じのように押し紙による部数で、折り込みチラシを引き受けます。当然、配達枚数とは違いますから余ります。不配分の折り込みチラシ代を取るのは、詐欺罪に当たると考えられています。

右翼は、これを車で処分する所を写真に撮り、それをネタに新聞販売店を恐喝し、すでに数店もの店が、1軒当たり数百万円から数千万円という信じられないような金額を脅し取られているとのことです。

その右翼関係の動きが関西や東海方面にもあるという情報が流れています。その販売所は、それを回避するために燃やしているというのが、真相のようです。

これは、各新聞社も知ってることですが、問題は押し紙が関係していることであり、公に被害届けが出せない状況にあると言います。

被害届けを出せば、新聞社が押し紙の存在を認め、詐欺も容認していたことになるからということらしいのです。

ゲンさんからは、このことは慎重に対処しないと危険だから、当面サイトでは扱わない方が良いと忠告されました。

私の友人に、ある新聞社専属のルポライターがいるのですが、彼にこのことを話すと、ゲンさんと同じような答えが返って来ました。

私もこういったサイトを運営している以上、情報としては載せたいのですが、あきらめるしかありません。

それと、このことは販売所のトップの人はすでに知っている可能性が高いです。特に、そちらのA新聞が一番被害が多いようですから。

今回、ジュンさんにこのことをお知らせしたのは、そちらの店では、残紙や残チラシはどのように処分されているのか気になったのと、教えて頂いた販売店さんがチラシを燃やしているということを知らない素振りをしている方が無難だと思ったからです。

また、何か分かりましたらお知らせします。


これに類似した情報は他にいくらでもあります。

私どものサイトでは他ではないような新聞業界に関する数多くの知られざる情報を掲載していますが、実は、こういった書くに書けない情報の方が圧倒的に多いのです。

先頃、米中央情報局(CIA)が数十年前の秘密文書を大量に公開したというのがありましたが、それほど大袈裟なものではないにしても、今後、時が経って影響がなくなったと判断した情報から、順次公開したいと考えています。

もっとも、当事者、情報提供者のご意向次第では永久にお蔵入りという情報もあるとは思いますが。

ジュンさんが、他の方にない特筆すべき点は、私どものサイトに対する鋭い、ご指摘でした。中でも誤字脱字に関するご指摘が多く、それについは本当に感謝していました。

例えば、


こんばんは、ジュンです。

下記のページ内に、誤字と思われる文字が見つかりましたので、ご連絡します。

▼ゲンさんの勧誘・拡張営業講座 第1章 新聞営業の基本的な考え方 法律・規則編 その4 消費者契約法についての考え方
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage9-12.html

× 確立 → ○ 確率

× 確約 → ○ 解約


といった感じのものです。こういうのを数多く教えて頂きました。もちろん、それらは、その日のうちに訂正しました。

言い訳になるかも知れませんが、物書きはペンで書いているうちは、それほど書き間違えはしません。

しかし、パソコンのワープロソフトを使っていると、ちょっとした打ち間違いや変換ミスが多くなる傾向にあり、また、推敲していても、正しい表記をしているはずだという思い込みが強く、その間違いに気づかないケースが多々あります。私が、そうでした。

それを冷静な第三者の目で指摘して頂けるのは、本当に有り難いことなのです。まるで、専属の校正員さんがついているようなものですからね。

一部の方から、サイトの文章について高評価して頂いていますが、それは私一人の力ではなく、このジュンさんのような方が目を光らせて頂いているからに他なりません。

単純にミスを指摘して頂くという以上に、常に緊張感を持って書くことができますからね。まあ、それでもミスはなくなりませんが。

更にジュン氏は、勉強家で非常に注意深く、こまめな方でもありました。

それと知ったのは、2006年3月のある投稿でした。

そのことについては、『第83回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■『週間ダイヤモンド』誌への掲載で思うこと』(注4.巻末参考ページ参照)の中で話しています。

その部分の抜粋です。ちなみに、そのメルマガでは『読者から』としか書いていませんが、ジュン氏のことでした。


読者から、早速、『週間ダイヤモンド』に掲載された件についてメールを貰った。その方は、偶然に書店で『週間ダイヤモンド』を手にされたらしい。


ハカセさん、ゲンさん、おめでとうございます!

週刊ダイヤモンド P.42 拝見しました。ついに、メジャーなビジネス誌にまで名前が出るようになってしまいましたね!

それにしても、メジャーな紙メディアにサイトのことが露出するというのは、どういう気分なんですか?「だんだん大事になってきて、かえって怖い」といったような心境でしょうか。


喜んで頂いたのは本当に有り難いと思う。ワシらも、まったく嬉しくないと言うたら嘘になるが、それほど手放しで喜べるほどとは考えていない。

それは、今回の取材は、あくまでも個人情報保護法に関して意見を聞かれたにすぎんと思うてるからや。

HPの数カ所で、それについて言及しとる内容が、たまたま週刊ダイヤモンドの記者さんの目に止まったというだけにすぎんさかいな。

このサイト自体の内容を取り上げてということやない。せやから、これを機に他からも同様の取材が続くとまでは考えとらん。


と、ゲンさんも言っているように、それが私たちの偽らざる気持ちでした。

それにしても偶然とはいえ、書店で『週間ダイヤモンド』誌をチェックし、隅々まで読破されていたというのには驚きました。

この件に関してはジュンさんに限らず誰にも知らせていませんでしたから、よけいにそう感じました。

正直言いまして、『週間ダイヤモンド』誌から取材の依頼があったこと自体、この回のメルマガに載せようか、どうか迷ったくらいでした。

これは誇れることなのかと。誇って良いことなのかと。

しかし、ジュンさんからメールがあったことで、メルマガに載せる決心がついたという経緯があります。

またジュン氏は、様々な問題提起をしてくれました。


ハカセです。おはようございます。

> 最近のメルマガやQ&Aを呼んでいて気づいたのですが、ハカセさんは
> 難読漢字にふりがなをつけておられますね。
>
> これは、読者の方の要望があったのでしょうか?

そうではありません。これに関しては私の個人的な思惑でそうしているだけです。

> 私個人の意見としましては、漢字にふりがなを振るくらいなら、
> いっそ、ひらがな表記のみに留めておいた方がすっきりするような
> (読みやすい)気がします。

縦書きでしたら迷わずそうするのですが、横書きの場合、ひらがなが続くと却って読みにくいということがあります。

前回発行のメルマガ『第107回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その6 お世辞トーク集』(注5.巻末参考ページ参照)の中の文章を例に説明します。

冒頭付近で、『卑屈なほど媚(こ)びた勧誘』という部分がありますが、これを『卑屈なほどこびた勧誘』と、ひらがな表記にすると、却って読みにくいと思うのです。

それなら、『卑屈なほど、こびた勧誘』として、句点を入れれば良いという意見もあろうかと思いますが、それでは前後の文章に句読点が多くなりすぎ、流れが悪くなるということが起きます。

それからさらに下がって、『そこまで酷(ひど)くはなくとも、勧誘成績の悪い者に対しては某(なにがし)かのペナルティを科す販売店もあるという』という文章がありますが、

これなども、『そこまでひどくはなくとも、勧誘成績の悪い者に対してはなにがしかのペナルティを科す販売店もあるという』とした場合、読みにくくなると考えます。

同じく句点を挿入するという方法もありますが、それですと文章が細切れになった印象を与えます。

> もっとも、漢字もひらがなも併記されている方が、読み手に親切である
> ことはわかります。

私は書く際には、「多くの読者にとって読みやすいように」との配慮をしているつもりです。

そのために、横書きの場合、ひらがなの連続をなるべく避けたいと考えています。ひらがな表記にする方が簡単ですが、反面、読みにくいという側面もありますので。

私がサイトやメルマガで意図して使っている語句に「分かる」というのがあります。

これなども縦書きの文章であれば「わかる」と表記しますが、横書きの場合、そうすると、ひらがなの連続になってしまいやすく却って読みにくくなると思っています。

他にも「貰える」「頂く」「上がる」「下がる」というのもよく使いますが、これらについても縦書きにする際には、普段はそれぞれ「もらえる」「いただく」「あがる」「さがる」とひらがな表記にするようにしていますが、横書きの場合は敢えて、漢字表記にしているわけです。

縦書きの場合は、ひらがなが少々連続しても読みやすさという点で、それほど気にする必要はありませんが、横書きの場合は、そうもいきませんので。

例えば、『もちろん、これで分かって貰えれば、それでええわけや』という文章の場合、ひらがな表記だと、『もちろん、これでわかってもらえれば、それでええわけや』となってしまいます。

それはそれで良いのかも知れませんが、私はそれでは気持ちが悪いので、横書きの場合のみ、それらの漢字表記を意図的に使っているわけです。

これが縦書きでしたら、それほど苦にはならず、仰るとおり、ひらがな表記にする方が分かりやすく、すっきりしますので、そうしていますが。

つまり、適度な漢字と()によるふりがな表記(ルビ)は、親切、分かりやすさという面では良いと考えますし、同時に、それ自体で、句読点の役目も与えているつもりなのです。

もっとも、そんな程度の字は知っていると言われる方には邪魔と映るかも知れませんが。

> 情報を伝えることを優先に考えるならば、常用漢字でない文字をあえて
> 使用する必要性も薄いと思いました。

私は、このサイトでは確かに情報を伝えることが重要だと考えてはいますが、それだけが目的でやっているつもりはありません。

その思いの中には、私たちのような者の考え方を世に問いたい、知って貰いたいということがあります。

それに対して読者の方々がどう反応されるのかを知りたいということがあります。そこに私たち自身の新たな発見があるように思います。

情報は一方的な発信だけではなく、それに対して受け取る側からの何らかの反応があることで、より深いものになると考えています。

実際、このサイトを始めて、そう実感できることが多いですからね。今回のジュンさんのようなご指摘が、その良い例です。

物の見方は一つではないと理屈では分かっているつもりですが、読者の方々から寄せられるご意見でそれを再確認できますし、独善的にならずに済むと思うのです。

それと、難解そうな語句に、わざわざふりがな(ルビ)を付けてまで漢字にしているのは、大変おこがましいとは百も承知の上で言わせて貰えれば、読者の方々に、その読み方を知って頂くことで少しでも勉強になればという思いもあるからなのです。

これは、ちょっと以前からの漢検ブームや漢字の難解な読み方などを中心としたクイズ形式のテレビ番組の増加ということもあり、当メルマガを読んで貰っているうちに漢字の読み方が自然に分かって頂ければとの思いで、そうしているのです。

もっとも、これは私の息子たちの提案でしたが。

特に、上の息子は社会人になってから、職場で文章を書かされることも多くなり、漢字の読み書きの重要性を今更ながらに痛感したと言います。

また、息子の友人たちには大学生も多く、彼らの語学力、識字力の低さに憂いたということもあります。

サイトの読者の方々にも、そうした大学生からのメールが届けられる頻度も多いわけですが、正直言って、彼らの漢字力、文章力には目を覆いたくなるほど酷いものが多くあります。

それも名の通った一流大学の学生さんというケースもあるのです。

そうしたものについては最低限度、読める文章に直して掲載するようにはしていますが。

とはいえ、当サイトは文章の読み書きが得意な人や好きな人ばかりが訪れているわけではありません。むしろ、それらが苦手だという人の方が多いくらいです。

ここだけの話、大変失礼な言い方になるかも知れませんが、拡張員さんや新聞販売店の方の中には、小中学生程度の識字能力、文章力しかないという方がおられます。

そういった方々は他のサイトやブログは殆ど読まれないということですが、なぜか、このサイトやメルマガは熱心に読まれているようです。

それだけ面白い、勉強したいということなのだと思っています。だったら、少しでもその役に立ちたいと考えました。思い上がりにすぎるかも知れませんが。

そういった考えから、難しい漢字を使う際には、ふりがなを、難解な言葉に関しては簡単な解説をつけるようにしているわけです。

ジュンさんのような高度な語学力、文章理解力を有している方の方が圧倒的に少ないですから。

私は、サイトに掲載する際、一応、20歳の息子と中学3年生の下の息子に読ませています。それで読みにくい字にはルビを振っているわけです。

もっとも、最近では彼らですら、「お父さん、そんな程度の字にルビなんか振らなくても」とは言われますが。

> 今後のサイト運営のご参考になればと思い、お伝えするものです。

ですので、これに関しては、意図してそうしているということで、ご理解頂けたらと思います。

ただ、何度も申し上げますように、そのようなご指摘は大変有り難いと思っていますので、今後とも、お気づきの点がありましたら何なりとお願い致します。


といった私の思惑なども、ジュン氏のように問題提起をしてくださる方がいればこそ話せたわけです。

ジュン氏について話し出すと、いつまでも尽きませんので、今回は、このへんにさせて頂きます。

折を見て、また別の機会に話させて貰いたいと考えています。ジュン氏を忘れないために。

ジュンさん、本当に長い間、ありがとうございました。心よりご冥福をお祈り致します。

今回のメルマガが、天国におられるジュン氏に届くか、どうかは私には分かりませんが、氏のことですから必ず見守ってくれているものと信じています。



参考ページ

注1.第115回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■死後の世界、あるやなしや
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage13-115.html

注2.第7回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■資源は大切に?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage13-7.html

注3.新聞勧誘・拡張ショート・ショート 第5話『新聞奨学生マタやんの憂鬱
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage8-5.html

注4.第83回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■『週間ダイヤモンド』誌への掲載で思うこと
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage13-83.html

注5.第107回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その6 お世辞トーク集
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-107.html


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