メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第428回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2016. 8.19
■報道の危機……その7 失われつつある報道の自由について
国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)が毎年発表している「報道の自由度ランキング」というのがある。
今年、2016年4月20日に発表された「報道の自由度ランキング」についての記事には、
http://www.asahi.com/articles/ASJ4N0SHDJ4MUHBI02M.html より引用
報道の自由度、日本は72位 国際NGO「問題がある」
国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は20日、2016年の「報道の自由度ランキング」を発表した。
日本は、対象の180カ国・地域のうち、前年より順位が11下がって72位だった。
特定秘密保護法の施行から1年余りを経て、「多くのメディアが自主規制し、独立性を欠いている」と指摘した。世界的にも報道の自由は損なわれつつあるという。
「表現の自由」国連報告者、高市総務相との面会かなわず
日本は10年には11位だったが、年々順位を下げ、14年59位、15年は61位だった。
「国境なき記者団」はかねて、取材の方法しだいで記者も処罰されかねない特定秘密法に疑問を呈してきた。
14年12月に同法が施行された後、メディアが自主規制に動くのは、「とりわけ(安倍晋三)首相に対してだ」とした。
「良い状況」「どちらかと言えば良い」「問題がある」「厳しい」「とても深刻」の5段階では、日本は「問題がある」に位置づけられた。
ランキングは、インターネットへのアクセスなども含めた「インフラ」や「メディア環境と自主規制」といった独自の指数に基づいてつくる。
世界全体で、テロの脅威とナショナリズムの台頭、政治の強権化、政治的な影響力もあるような富豪らによるメディアの買収などを背景に、「報道の自由と独立性に対する影響が強まっている」という。
国・地域別の自由度では、最上位にフィンランドなどの北欧諸国が目立ち、北朝鮮、シリア、中国などが最下位グループに並ぶ傾向に変わりはなかった。
とある。
近年になって、日本の報道には自由がなくなりつつあるというのは、『日本は10年には11位だったが、年々順位を下げ、14年59位、15年は61位だった』、そして、今年の2016年には、ついに『日本は、対象の180カ国・地域のうち、前年より順位が11下がって72位だった』とあることからも歴然や。
その理由は、一言で言えば、日本の政治が変わったからやと思う。
2010年時の政権与党は民主党やった。何かと批判の多かった民主党政権やったが、事、報道の自由度という点では今より格段に良かった時代やったと言える。
何せ、その当時の「報道の自由度ランキング」は11位やったんやさかいな。それが今では72位やという。話しにならんほどの低さや。
これは、2012年12月の総選挙で第2次安倍内閣が発足してから急速に変わっている。
『14年59位、15年61位、16年72位』というのは、現在、世界の中で日本の報道に自由がないかということを如実に証明している端的な数字や。
これについては現、安倍内閣及び与党が圧倒的多数の議席を背景に、独裁的とも言える政権運営を行ってきたことが、その理由として大きいと思う。
それは、2014年4月19日発行の当メルマガ『第254回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■自民党憲法改正案の是非 その1 憲法第96条、および第9条の改正について』(注1.巻末参考ページ参照)で話した『自民党の「憲法改正草案」』なるものを元に、安倍内閣が憲法改正の画策をし始めた頃からやった。
その中でも言うたが、2013年12月6日の深夜、自民、公明両与党により参院本会議で『特定秘密保護法』が強行採決され、憲法解釈変更による『集団的自衛権の行使容認閣議決定』など大多数の国民の反対を無視して強引な政策を打ち出すという暴挙を行った。
そして、ついには、それらの批判を和らげるためか、新聞やテレビ局に圧力をかけ報道まで誘導、規制し始めたと思える動きをしている。
それについては、様々な事例がある。
『第357回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんとハカセの時事放談……その3 圧力についての話』(注2.巻末参考ページ参照)で、『<テレ朝>古賀氏降板問題 「圧力」か「暴走」か』という報道記事を紹介した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150406-00000005-mai-soci より引用
<テレ朝>古賀氏降板問題 「圧力」か「暴走」か
放送現場で報道の自由は守られていたのか。コメンテーターの暴走だったのか−−。テレビ朝日の「報道ステーション」で、元経済産業官僚の古賀茂明氏が生放送中に突然、自身の降板をめぐる政権からの圧力を訴え、物議をかもしている。
古賀氏、テレビ朝日、首相官邸それぞれの言い分は真っ向から対立している。
◇古賀氏「官邸から批判」
3月27日の番組に出演した古賀氏は、古舘伊知郎キャスターから中東情勢へのコメントを求められた際に、テレビ朝日の早河洋会長らの意向で降板に至ったと発言し、「菅(義偉)官房長官をはじめ官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきた」と語った。
古賀氏は1月23日の番組では、イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)の日本人人質事件の政権の対応を批判し、「I am not ABE」と述べていた。
古賀氏は4月1日、毎日新聞の取材に約10分間応じた。「圧力」の内容について、菅官房長官が報道機関の記者らを相手に古賀氏らの番組での言動を批判していた、と主張したうえで「官邸の秘書官からテレビ朝日の幹部にメールが来たことがある」と語った。
また、昨年末の衆院選前、自民党が在京テレビ局各社に「公平中立」を求めた文書を配布したことについて「(テレビ朝日は)『圧力を受けていない』と言うけれど、局内にメールで回し周知徹底させていた」と批判した。
古賀氏はテレビ朝日が3月末に番組担当のチーフプロデューサーとコメンテーターの恵村(えむら)順一郎・朝日新聞論説委員を交代させたことにも言及した。
「月に1度の(ペースで出演していた)ぼくの降板はたいしたことがないが、屋台骨を替えた。プロデューサーを狙い撃ちにし、恵村さんを更迭した」と語った。
一連の人事をめぐる古舘キャスターの対応については「前の回(3月6日)の出演前に、菓子折りを持ってきて平謝りだった」と述べた。
生放送中に、持論を展開した行動に批判が出ていることについては「ニュース番組でコメンテーターが何を言うかはある意味、自由だ。
テレビ朝日の立場では『降板』ではないので、あいさつの時間も与えられなかった。だからどこかで言わなければならなかった。
権力の圧力と懐柔が続き、報道各社のトップが政権にすり寄ると、現場は自粛せざるを得なくなる。それが続くと、重大な問題があるのにそれを認識する能力すら失ってしまう。
『あなたたち変わっちゃったじゃないですか』というのが一番言いたかった」と語った。
古賀氏は1日、市民団体のインターネット配信番組に出演し、「安倍政権のやり方は上からマスコミを押さえ込むこと。情報公開を徹底的に進め、報道の自由を回復することが必要だ」と述べた。
報道ステーションでの発言に対する反応についても触れ「多くの方から大丈夫かと聞かれるが、批判は予想より少ない」と語った。
◇テレ朝と政権「事実無根」
テレビ朝日広報部は、古賀氏の言う「圧力」について「ご指摘のような事実はない」と否定した。同社の早河会長も3月31日の記者会見で「圧力めいたものは一切なかった」と話した。
広報部は毎日新聞の取材に対し、恵村氏の交代については「春の編成期に伴う定期的なものだ」と説明した。さらに、プロデューサーを「狙い撃ち」にしたとの主張についても「ご指摘は当たらないと考える」とした。
その一方で、衆院選前の自民党の文書については「報道局の関係者に周知した」と認め、「日ごろから公平・公正な報道に努めており、特定の個人や団体からのご意見に番組内容が左右されることはない」と回答した。
菅官房長官は3月30日の記者会見で古賀氏の発言について「事実無根。事実にまったく反するコメントを公共の電波を使った報道をして、極めて不適切だ。放送法という法律があるので、テレビ局がどのような対応をされるか、しばらく見守っていきたい」と全面的に否定した。
放送法4条は「報道は事実をまげないですること」と規定している。
というのがある。
この時、
このやり取りから見えてくる事実関係に迫ってみようと思う。
まず、『自身の降板をめぐり政権からの圧力』があったとする古賀氏の主張と『そんなことはない。事実無根』とするテレビ局、および政府の言い分についてからや。
古賀氏が、『菅官房長官が報道機関の記者らを相手に古賀氏らの番組での言動を批判していた』と言っているのは、間違いなさそうや。
この記事を書いたのは新聞記者やさかい、その古賀氏の主張が間違っていれば、そもそもこの記事自体が存在しない。事実かどうかは仲間の記者に聞けばすぐ分かることやさかいな。
事実だからこそ記事にしたと考えた方が自然やろうと思う。
古賀氏は政府からの圧力の証拠として『官邸の秘書官からテレビ朝日の幹部にメールが来たことがある』と語っている。
それについては『昨年末の衆院選前、自民党が在京テレビ局各社に「公平中立」を求めた文書を配布した』というのは公言しとるさかい、これも事実や。
それらの事実から導き出される答は、その事自体が政府から『圧力があった』何よりの証拠と言えるということや。
これは、当時、原発の再稼働問題や沖縄基地移設問題など政府に対して批判的な論調の放送が多かったため、それを選挙の争点にされては困る政府が、その是正を求めたもので、これは圧力以外の何ものでもないと考える。
暗に、「そんな論調は控えろ」と言うてるに等しいさかいな。
ただ、それを圧力と感じるか、どうかは受け手の問題ということもあり、テレビ局が、『圧力とは思っていなかった』と言えば、圧力ではなかったということになるのかも知れんがな。
しかし、そうコメントしながら、『衆院選前の自民党の文書については「報道局の関係者に周知した」と認め、「日ごろから公平・公正な報道に努めており、特定の個人や団体からのご意見に番組内容が左右されることはない」と回答した』にもかかわらず、『局内にメールで回し周知徹底させていた』というのは、報道機関としては大いに問題があると言わざるを得ない。
そもそも報道機関というのは時の政府の監視役を自負していたはずや。本来なら、政府のそうした申し入れに対しては声を大にして反発せなあかん立場やないかと考える。
少なくとも報道を自重しろと言うに等しい申し入れを、そのまま受け容れるべきやなかった。
それからすれば、『局内にメールで回し周知徹底させていた』というのは報道機関として政府からの圧力に屈した何よりの証拠になるのやないかと考える。
圧力と感じていなければ、そこまでするはずがないさかいな。
と言うた。
『第359回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その1 強まる自民党政府による政治圧力』(注3.巻末参考ページ参照)では、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150418-00010001-doshin-pol より引用
強まる「政治圧力」 自民、テレ朝とNHK聴取 報道萎縮の懸念
「おわびはしたのか」と質問
自民党は17日の党情報通信戦略調査会にテレビ朝日とNHKの幹部を呼び、報道番組の内容について事情を聴取した。
第2次安倍政権以降、政府・自民党が放送法を盾にテレビ局に注文を付ける事例が目立つ。
安倍晋三首相の力の源泉でもある世論の支持に、大きな影響を与える報道に神経をとがらせる政権。
野党や識者は「政治圧力だ」と批判を強めるが、安全保障関連法案の審議や憲法改正議論もにらみ、さらに関与を強める可能性もある。
「(番組で)名前が出た人に、おわびはしたのか」。調査会会長の川崎二郎元厚生労働相は17日の会合で、テレビ朝日の福田俊男専務にこう質問した。
自民党が問題視するテレビ朝日の番組「報道ステーション」は3月27日の放送で、コメンテーターが自身の番組降板に関して菅義偉官房長官らから「バッシングを受けてきた」と発言。
質問は菅氏への謝罪要求にも取れるが、川崎氏は会合後の記者会見で「事実関係を聞いただけ」と否定した。
45分間にわたったこの日の会合で、多重債務者による詐欺を取り上げた番組「クローズアップ現代」でのやらせが指摘されたNHKへの聴取は約10分。大半は政権批判の内容が問題視されたテレビ朝日への質疑に費やされた。
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安倍政権とメディアの動き
「政権党の広報機関に」
こうした自民党の対応に、維新の党の柿沢未途政調会長は記者会見で「呼び出して問い詰める場を設定するのは、非常に不適切だ」と批判した。
与党からも「介入と受け止められないよう、慎重な対応が必要だ」(公明党の井上義久幹事長)との声が出る。
放送法は、公共の電波を使う放送局の社会的影響の大きさを踏まえ、公平・公正な報道を求めている。自民党が「事実と異なる報道は放置できない」と聴取の正当性を主張する根拠にもなっている。
だが、政権与党による特定の番組内容への調査は報道の萎縮につながるとの懸念は根強い。
上智大の田島泰彦教授(メディア法)は「(両局幹部を)呼ぶこと自体が力関係を背景にした圧力」と指摘。
「日常的に行われると自由な放送は非常に制約され、政権党のある種の広報機関になる」と危惧する。
元NHKプロデューサーの永田浩三・武蔵大教授は「自民党の揺さぶりは続く。報道機関は自民党ではなく、国民に味方になってもらうため、自ら襟を正さなければならない」と話した。
という報道記事を紹介した。
これは、『政府与党の傲慢さ、ここに極まれり』と言うしかない酷いものやった。
こんなことを平然と行い、誰からも咎められないと考える神経に驚く。
いつの時代にも言えることやが、そうした奢りがいずれ身を滅ぼすことにつながるのである。まさに『驕る平家は久しからず』を地でいっているようなものや。
自民党が、「公平中立な番組制作に取り組むよう、特段の配慮」を求めているのは、実は特定のテレビ局、新聞社の報道との見方がある。
日頃からテレ朝の『報道ステーション』は政府与党に辛口の論調やったということが大きいようや。
それには政府与党に辛辣な批判をする古賀氏を起用していることが面白くなかったのかも知れんがな。
元経済相の官僚として耳の痛いことばかり言い続けているのが気に食わんとということでな。
公平ではないとして自民党が文書で難癖をつけたのは「アベノミクス効果は富裕層や大企業に限定される」といった趣旨の同番組内でのアベノミクス検証放送が、その発端やったと言われている。
自民党は、この放送が「特殊な事例をいたずらに強調」するもので、放送法の定める「放送の公平・公正」の趣旨に反するとして「要請」という形で一種の圧力をかけたわけや。
言うておくが、『アベノミクス効果は富裕層や大企業に限定される』というのは紛れもない事実や。これについては数多くの世論調査の結果でも、そう出ているから間違いないものと思う。
事実を報道して『「放送の公平・公正」の趣旨に反する』と堂々と言える神経を疑うが、それが現在の自民党政府姿勢なわけや。
というか、「放送の公平・公正」の意味すら分かっていないのやないかと思えるから始末に悪い。
放送法第4条(国内放送等の放送番組の編集等)には、
放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
とある。
自民党政府にとっては「政府批判」を「政治的に公平でない」と受け取っているのやと思うが、「四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」とある以上、政府に対する批判的な論調も、その範疇に含まれると解するのが自然や。
「政府批判」が「政治的に公平でない」とは言えない。
むしろ、報道機関は政府のすることを監視する目的を担っていると考えれば、批判報道こそが健全な姿やと言える。
さらに政府は重大な間違いを犯している。
放送法第3条(放送番組編集の自由)では、
第三条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
となっているわけやから、この規定を踏まえれば、政治介入と誤解されるような言動は慎むべきはずやと思うが、政府の考えは、そうではないようや。
何としてでも自分たちに都合の悪い言論を封じ込めようとしているのが透けて見える。
放送局のテレ朝側からすれば規制権限をちらつかされたことで、結局は政府の言いなりなるしかなかったのやろうと思う。
その結果が、担当プロデューサーの左遷であり、コメンテーターである古賀氏の降板という選択になったのやとしたら、ある意味、テレ朝も被害者やと言えるかも知れん。情けない選択ではあるがな。
それでも報道機関の矜持を持って最後まで抵抗して欲しかったとは思う。
少なくとも古賀氏を追い込むような真似をして、古館氏にあんな醜態を晒させるようなことはして欲しくはなかった。
むしろ、他局や他紙新聞で曝露されている「政治圧力」に関しては、あの場で真っ先に報道して貰いたかったと思う。そうテレビ局側がサポートするべきやたと。
ただ政府も、すべての放送局、新聞社に対して圧力をかけているわけやないということも分かっている。
自民党は、報道ステーションなどの個別の番組や報道に対しては厳しく「放送の公平・公正」を要求してきたが、
その一方で、2013年4月の情報番組『スッキリ!!』(日本テレビ系)に約40分間、さらには2014年3月には『笑っていいとも!』(フジテレビ系)に安倍首相が約20分間出演して自らのアピールが行えているテレビ局には殆ど何のお咎めもない。
それから見ても自民党政府の「放送の公平・公正」の主張が、かなり身勝手なものやというのがよく分かる。
『第369回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その2 「沖縄2紙をつぶせ」発言の波紋』(注4.巻末参考ページ参照)では、
http://mainichi.jp/select/news/20150626k0000m010122000c.html より引用
自民党:安保法案で報道批判続出…改憲派の勉強会
安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。
安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した。講師として招いた作家の百田尚樹氏に助言を求める場面も目立った。
◇議員「マスコミこらしめるには広告料収入なくせばいい」
出席者によると、百田氏は集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明した上で、政府の対応について「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。
出席議員からは、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」との声が上がった。
沖縄県の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、百田氏は「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した。
懇話会は木原稔青年局長が代表で、首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一・党総裁特別補佐も参加した。
出席者の発言について、自民党中堅は「自分たちの言動が国民からどのような目で見られるか理解していない。安保法案の審議にマイナスだ」と指摘。
公明党幹部は「気に入らない報道を圧力でつぶそうとするのは情けない」と苦言を呈した。
◇報道・表現の自由への挑戦
琉球新報社の潮平芳和編集局長の話
百田氏が何を論拠にしたのか明確ではないが、「つぶさないといけない」という発言は沖縄2紙のみならず、国内のマスメディア全体の報道・表現の自由に対する重大な挑戦、挑発である。
沖縄の現状を全く理解しておらず、残念である。琉球新報は今後とも不偏不党、言論の自由を重んじ、公正な取材活動と報道に努める。
◇断じて許すことできない
沖縄タイムスの崎浜秀光編集局次長の話
安全保障関連法案は「憲法違反」との指摘が相次ぎ、反対する世論の広がりに対するいら立ちが(百田氏の発言に)出たと言わざるを得ない。
70年前の沖縄戦で、沖縄は本土の「捨て石」にされた。「中国に取られれば目を覚ますはずだ」との発言は、再び沖縄を捨て石にしようとする発想で、断じて許すことができない。
という報道があった。
ここでの発言の数々は今の自民党主流派と言われる連中の本音が如実に表れている。
人は同じような意見の者ばかりが周りにいると、つい調子に乗って本音を漏らしてしまいやすくなるもんやが、これは、その典型的な出来事やと言える。
この会合に集まった自民党の若手議員たちは自分たちの無知さかげん、無能さかげんを見事に露呈しとると言うしかない。
『マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい』といったようなことを本気で信じているとしたら、これほど無知で馬鹿げた話はない。
企業がマスコミに対して広告料を払うのは、それによる費用対効果で利益が得られると計算するからや。商品の認知度とイメージを高めるためというのもある。
それからすれば企業がマスコミに対して広告を出さないことによるデメリットは、むしろ企業側の方が大きいと言えるくらいや。
企業はマスコミのためやなく、自分たちの利益につながると判断しとるからこそ、広告をしているわけや。
そんな初歩的なことも分からず、いくら自民党の国会議員であろうと、文化人や有名人といった連中が経団連に働きかけようと、それに従う企業がいるとは考え辛い。
そんなことをすれば、企業自身が自分で自分の首を絞めることになりかねんさかいな。
今回の狙いであるはずの沖縄2紙の場合、大半が地元の有力企業からの広告依頼で占められていて、長年に渡り強固な信頼関係が出来上がっているさかい、中央の経団連がどんな圧力をかけたとしても揺らぐことはないはずや。
また、沖縄2紙による沖縄県の購読シェアが90パーセントを超えとるというのも大きいと思う。
当たり前やが、多くの企業は購読シェアの高い新聞に広告を出そうとするもんや。
その新聞に広告が載っていること自体が、一つのステータスになると考えるのが普通やから、まともな企業であれば広告を載せないという選択肢はあり得ない。
その沖縄2紙は、現在「普天間基地移設問題」で自民党政府との対決姿勢を鮮明にしている翁長知事を支持しているということもあり、以前にも増して県民から絶大な支持を得ているという。
新聞社の基盤としては、これ以上望めんほど盤石や。どう転んでも外圧で、つぶせるような新聞社やないと思う。
それにも関わらず外圧をかければ、つぶせると考える神経を疑う。
ワシが『会合に集まった自民党の若手議員たちは自分たちの無知さかげん、無能さかげんを見事に露呈しとる』と言う所以や。
なぜ、そんな具にもつかんことを本音として言うのか。
それは、ニコニコ動画やYahoo掲示板などのネット上で右翼寄り書き込みをしている通称、『ネットウヨ』と呼ばれている連中に毒されているからやないかと思う。
彼らの書き込みには昔から「新聞社をつぶせ」とか「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい」といった類のものが多いさかいな。
自民党の若手議員たちは、単に、それらの書き込みを見て何の裏付けや確証もないままに、そう思い込んでいるだけやないのかと思う。
安倍総理が、そういった『ネットウヨ』連中からの人気が高いというだけで、その書き込みを盲信しとるのやろうな。
そう言えば安倍総理の援護射撃になると信じて。ホンマ、アホとしか言いようがないわな。
百田氏の『あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ』というのも似たような発想から来ているものと考える。
何も本質が分かっていない愚論としか言いようがない。解説するのも面倒臭いが、一応しとく。
『どこかの島』とは『尖閣諸島』のことを指しているのやとは思うが、もし百田氏の言うとおりになれば、そんな場所に誰も住んでいない沖縄の人たちより、安倍総理やこの会合に出席している政府与党の自民党議員たちの方が数段困ることになるはずや。
沖縄を含めた国民が、その事で責めるとしたら沖縄の2紙などではなく、中国を除けば政府与党の不手際さやからな。
間違いなく政府与党の面目が丸つぶれになる。引いては自分たちの立場が危うくなるということや。
その程度のことは考えに入れてから発言した方がええと思うのやが、調子に乗っていると、そんな簡単なロジック(論理)すら気がつかんようになるんやろうな。
また『第385回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その9 政府批判を取り締まることの是非について』(注5.巻末参考ページ参照)の中で、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151017-00000007-asahi-soci より引用
安倍政権批判の文言入り文具、有無を調査 北海道の学校
北海道教育委員会が、安倍政権を批判する文言を記した文房具が学校内にあるかどうかについて、道内の公立学校を対象に調査を始めたことが分かった。
一部の高校にあったことから、「教育の政治的中立性」を保つためとしている。文房具を配った教職員組合側は「学校現場を萎縮させる」などとして反発している。
自民党道議が9月、一部の学校で「アベ政治を許さない」との文言が印刷されたクリアファイルが教師の机の上に置かれていると指摘し、調査を要求。
道教委は今月14日付で、政令指定市の札幌市立以外の小中高校など1681校に調査票を配った。
質問内容は、いつ誰が使ったり配布したりしたか、校内のどこで見たかなど。回答は任意だが、関わった人の名前を記すよう求めている。管理職には、関わった教職員が特定できれば指導するよう求めた。
という記事を引用し、
ワシは、この記事を見てすぐに戦前の「思想狩り」、「言葉狩り」というのを思い浮かべた。
あるいは、現在でも独裁国家にありがちな政府への批判に対する「言論弾圧」、「言論封じ」を。
今の自民党の議員たちは、圧倒的な議席数を背景に日本を牛耳っていると勘違いしていて、その頃の為政者たちの考え方と何ら変らん状態になっているのやないかと思う。
政府を批判する者は許さないという姿勢があからさまやさかいな。
この記事には、『「アベ政治を許さない」との文言が印刷されたクリアファイルが教師の机の上に置かれていると指摘』とあるが、それのどこが調査されなあかんことなのかと思う。
また、その調査の結果、『管理職には、関わった教職員が特定できれば指導するよう求めた』ということやが、何を指導しろと言うのか。
まあ、そんなことは止めろと言いたいのやろうと思うが、自民党道議とやらに言われる筋合いのことやないと思うがな。
はっきり言うが日本は民主主義国家で独裁国家やない。
日本は言論と表現の自由が憲法で保障されていて、誰がどんな主義主張を持とうと不当に責められるいわれはない。
政府を批判する者を取り締まって注意、指導しろというのは時代錯誤の愚挙に等しい行為と言うしかない。
と言うた。
『第402回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その4 電波停止発言の波紋は新聞報道にも関係する?』(注6.巻末参考ページ参照)では、その報道規制の露骨さがより顕著になっているという話をした。
それは、今年、2016年2月8日の衆院予算委員会での高市早苗総務大臣の発言にある。
その当時の報道に、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160208-00000059-asahi-pol より引用
高市総務相、電波停止に言及 公平欠ける放送に「判断」
高市早苗総務相は8日の衆院予算委員会で、放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に、電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性に言及した。
「行政指導しても全く改善されず、公共の電波を使って繰り返される場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と述べた。
民主党の奥野総一郎氏が放送法の規定を引いて「政権に批判的な番組を流しただけで業務停止が起こりうる」などとただしたのに対し、高市氏は「電波法の規定もある」と答弁。
電波停止などを定めた電波法76条を念頭に、「法律は法秩序を守る、違反した場合は罰則規定も用意されていることで実効性を担保すると考えている」と強調した。
そのうえで高市氏は、「私の時に(電波停止を)するとは思わないが、実際に使われるか使われないかは、その時の大臣が判断する」と語った。
放送法4条は放送の自律を守るための倫理規範とされてきたが、高市氏はNHKの過剰演出問題で、行政指導の根拠とした。
この点についても「放送法の規定を順守しない場合は行政指導を行う場合もある」との考えを重ねて示した。
「政治的な公平性を欠く」の事例については、「国論を二分する政治課題で一方の政治的見解を取り上げず、ことさらに他の見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当時間にわたり繰り返す番組を放送した場合」などと列挙。
「不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められるといった極端な場合には、政治的に公平であるということを確保しているとは認められない」とした。
というのがある。
これについて、
ワシには、「政府のやることには批判するな」という風にしか聞こえん。「一方的に政府に対する批判的な放送ばかりしていたら、処罰するぞ」と。
それが本音やろうと思う。しかし、それは独裁者の考えることや。
新聞も含めて報道機関には国家権力を監視する役目を担うという大きな使命がある。となれば、政府に対する批判的な報道が増えるのは当然や。
公平に報道しろと考える方がおかしい。政府が批判されることを嫌ったら、その時点で終いや。
批判される事、もしくは批判されると予想されるからこそ、そうならないようにしようと考えるのと違うのかと思う。
要は批判されるようなことをしたり言うたりせな、ええだけの話や。
そうすることが本当の意味で良い政治に結びつくものと信じる。批判の芽を摘むことやない。
もっとも、そのことを分かっていれば今回のような高市早苗総務大臣の発言は生まれなかったやろうがな。
まあ、暗黙裡に恒常的にテレビ局に対して総務省側が、その手の脅しをかけとるとは聞くがな。役所にありがちな権力誇示の一環として。
そのことを伝え聞いた高市早苗総務大臣が、さして深く考えもせず発言したというのが、本当のところやないかという気がする。
と指摘した。
どれ一つ取っても、この日本で行われている事とは考え辛いものばかりやが、これが紛れもない日本の現実なのである。
その現実により、僅か5、6年の間に「報道の自由度ランキング」が11位から72位に転落しているのも間違いないのない事実や。
本来なら、これは由々しき一大事やが、多くの国民には、まだその深刻さが伝わっていない。
それぞれの事案においては報道機関も一応の批判はしている。しかし、「報道の自由度ランキング」の現状を報道している新聞、テレビ局は殆どない。
それがなければ事の深刻さは伝わらない。それについては蓋をしてしまっている。
どうして、いつから日本の新聞やテレビメディアは、そんな状態になったのか?
表面的には、現自民党を中心とする与党が圧倒的多数の議席を確保した2013年以降ということになっているが、その根はもっと深いところにあった。
その根が分かり、それを改善しない限り、日本に真の報道の自由はない。
次回は、その事について話したいと思う。
参考ページ
注1.第254回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■自民党憲法改正案の是非 その1 憲法第96条、および第9条の改正について』
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-254.html
注2.第357回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんとハカセの時事放談……その3 圧力についての話』
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-357.html
注3.第359回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その1 強まる自民党政府による政治圧力』
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-359.html
注4.第369回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その2 「沖縄2紙をつぶせ」発言の波紋』
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-369.html
注5.第385回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その9 政府批判を取り締まることの是非について』
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-385.html
注6.第402回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その4 電波停止発言の波紋は新聞報道にも関係する?』
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-402.html
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