メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第380回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2015. 9.18


■新聞復活への試み……その5 社会貢献へのシフトについて


ある新聞販売店関係者の方から、


新聞屋の営業法に疑問を感じるようになってからいつも思うのは、無理な勧誘やおかしな営業はもうそろそろやめて、街中を清掃するとかシニアサポートなど、あまり企業がやりたがらないような活動も積極的に進める媒体にシフトを変えていくのもいいんじゃないかということです。

ここ最近自然災害が急激に増えてきているので、何か起きたらすぐに動く、とかいうのがあってもいいと思います。

実利はないけどイメージアップには間違いなく繋がる筈です。

新聞業界全体が迷走状態の時代ではありますが、何かしら必ず突破口はあると思いますので、ゲンさん、ハカセさん共々、サイトに集う方々と共に考えていけたらいいと思いました。


というメールが寄せられてきた。

この方の言われる『無理な勧誘やおかしな営業』というのは、新聞社から強制される『無断での試読紙送付行為』(注1.巻末参考ページ参照)や『マラソンドリルの推進』(注2.巻末参考ページ参照)、『紹介読者運動』(注3.巻末参考ページ参照)などのことやと思う。

部数の減少傾向が止まらない昨今、何とかしたいという新聞社の思いは分からんではないが、そのために顧客や販売店の意向を無視した強引なやり方は頂けんわな。

『無断での試読紙送付行為』とは、新聞社から販売店へ1週間ないし、1ヶ月間、新聞を無料で送りつけろと命令、指示しているものや。

試読紙を1週間入れ続けろというのは業界のルールにあるから構わない。

但し、それには客の許可を得るという大前提があるのやが、無許可でやっているところに問題がある。

以前は、ほぼすべての新聞社が客に断りもなく試読紙を送りつけるような事案があれば苦情扱いにして、それをやっている新聞販売店には、きつく注意指導していたが、今は新聞社が率先してやらせているという。

その事実を当の新聞社に指摘しても、「当方は顧客の承諾を得てから、試読紙を配達するよう指導しています」と、しれっとした回答が返ってくる。

しかも、『突然に○○新聞の配達をして、申し訳ありません。誠に勝手ではありますが、朝刊を無料でおとどけさせていただきます』と始まる文書を同封して長期間配達している事実を突きつけても、「それは、それぞれの新聞販売店の判断でしていることですので当社は関知していません」と言うて逃げている。

新聞社が強制してやらせている事に関しては販売店との間でしか分からんことやから、そう言うとけば世間に対して通用すると考えとるのかも知れんがな。

そうやとしたら甘い。今の時代、不平や不満は必ず外部に知れ渡るし、漏れる。

何事も暗黙裡に行えるというご時世やないのやが、残念ながら新聞社には、その事が分かっていない。

ただ一方で、これに関して一昨日(9月16日)、ある業界関係者の方から、


「許可を得ていない方に一週間無料サンプルをお届けする」という方法も現在取り組んで実践しています。

初日の新聞に「本日から7日間、無料で○○新聞をお届けしますのでぜひお読みください。なお、お留守にされる方やご迷惑な方は下記までご連絡ください」という内容のお知らせを添えて配達します。

ポストに三日分の新聞が溜まった場合も中止します。

無料サンプル終了近くのタイミングで所員が訪問します。重要なのは営業トークではなく、まずは許可なくサンプルをお届けしたお詫びという形でお話しします。

元々、当方は長年押し売り営業をしていない新聞社というイメージが定着している為か、ほとんどクレームはありません。

また、実際にサンプルを読んで良かったということで購読につながったり、見込みのお客様として継続訪問させていただいてる方もたくさんいらっしゃいます。

地元紙ということで特殊な例かもしれませんが、新聞営業のイメージがもっと良くなれば上記のようなこともあることをお知らせしたかったのです。


というメールが、このタイミングで寄せられてきた。

実にタイムリーかつ助かる情報や。

この方が言われている『なお、お留守にされる方やご迷惑な方は下記までご連絡ください』、『ポストに三日分の新聞が溜まった場合も中止します』というのは、それなりに配慮されているのが、よく分かる。

『ほとんどクレームはありません』ということであれば、ワシらがとやかく言うことはない。

無断で試読紙を送りつける行為を推奨するわけやないが、送りつける相手方に配慮しているという点は評価できる。

最低限、この姿勢は見習って欲しいもんやと思う。

『マラソンドリルの推進』というのは、今のところまだ一部の新聞社にしか見られない現象やが、これも新聞販売店の意向を無視した強引なやり方で、法律に触れる可能性もある。

そのことに振り回されているという、ある新聞販売店関係者の方から、


ご無沙汰しております。

以前家庭教育プロデューサーの酒井氏の件でアドバイスをいただいた者です。

そこでその後の様子などをご報告させていただきます。

ハッキリ言って、新聞販売店が酒井さんと手を組むことで善い事はありませんでした。

講演会を開く事で、保護者の気を引く事には効果があったかもしれません。

また開催場所で未読の方から数件購読申し込みがあったと聞きましたが、その後、酒井さんが考案したマラソンドリルを売りに行った時点で終わってしまいました。

酒井さんと手を組んだ本社販売部担当者は、『新聞を薦めに行くとドアは開けてくれないが「ドリルの説明に来ました」と言えばドアは開けてくれる…』などと詐欺まがいのセールストークをやりなさいといまだに鼻息を荒くしております。

販売店主や、セールスマンが教材を売りに行く…その類のチラシを折り込む…小中世帯にパンフをポスティングする…しょせん付け焼刃のトークが通用するはずもありません。

この担当者も、言いなりになる若い店主も、子育てをした経験がないですし、教育について何の知識もないのですから…突っ込まれても返す言葉がない…。

この担当者が何故このドリルに固執して、今でもなお売り続けようとしているのか理解に苦しみます。

実際の話各販売店の扱いドリル部数は県内合わせても100部にも達しておりません。強制的に買わされている販売店もあるようです。

またそれまで古紙回収などで学校関係者といい関係を築いてきたものが一気に崩れ去りました。

その担当者は教育委員会の後援・協賛という事で、チラシやパンフを学校に持っていき、生徒に配ってもらうという愚行を販売店にさせ続けてきました。

先生方にとってみれば「確かに新聞は良いとは思うけど、子供を利用してドリルを新聞社が売り出すとは何事だ!けしからん!」というところでしょうか。

またその担当者は「学校だけの勉強では学力が身に付きません」なんて事を「応酬話法でやれ!」って言うのですから、私が先生なら対応するのも嫌になります。

100部に満たないドリルを販売するために、教育現場という聖域を荒し、多くの教師を敵に回してしまった…という事実に良識ある販売店主が早く気が付かないと今後も益々新聞は減り続けると思います。

それから一般読者の腹の中は「新聞屋も教材を売らなアカンぐらい、新聞が減っとるンやなー」です。

取り急ぎ報告させていただきました。


というメールが寄せられた。

これに対して、


幼児教育に新聞を絡ませるという発想自体は悪くない。新聞を読む習慣をつければ子供の学力が向上するのは、PISA(学習到達度調査)でも実証されとるしな。

しかし、この読者が言うておられることでも分かるように現場から、『酒井さんと手を組んだ本社販売部担当者は、『新聞を薦めに行くとドアは開けてくれないが「ドリルの説明に来ました」と言えばドアは開けてくれる…』などと詐欺まがいのセールストークをやりなさいといまだに鼻息を荒くしております』と手厳しい批判が上がっている。

この読者の方は酒井氏の『マラソンドリル』に問題ありと考えておられるようやが、ワシは少し違うと思う。

問題は、もっと根本的なところにあるという気がする。

ワシは、以前から新聞社には新聞読者を開拓するための営業力はないと言い続けてきた。経験と実績が殆ど何もないと。

まあ、それも無理もない話で、今まで新聞勧誘に関しては新聞拡張団や新聞販売店に丸投げしてきたさかい、それについてのノウハウなど何もなくて当然ではあるがな。

ノウハウらしきものを掲げている新聞社もあるようやが、所詮は営業の素人が頭で考えたものにすぎん。説得力に欠ける。そういうのが多い。

どんなに良い物でも売り方を誤ったら売れん。営業とはそういうもんや。

ワシにも経験があるが、新聞社の言うとおりにして顧客が増えたとか、契約の獲得数が伸びたケースは今まで殆どなかった。皆無に近かい。

顧客は自分自身の営業力で増やすしかない。それが新聞勧誘の鉄則やと思うとる。

本社販売部担当者自身、『新聞を薦めに行くとドアは開けてくれない』と言うとるところを見ると、新聞勧誘が簡単やないことくらいは分かっているようや。

もっとも、新聞社の人間が、そう言うのはどうかとは思うがな。いくら、それが現実やとしてもや。

なぜ新聞勧誘が難しいのか。簡単にドアを開けてくれないのか。

答は至ってシンプル。多くの人に嫌われているからや。

ワシは日頃から、新聞営業の成功率として100軒以上の家を叩いた(訪問)場合、ドアを開けて話を聞いてくれるのが1割ほどで、そのうち成約にまで持って行けるのは、ええとこ1、2軒程度やと言うとる。

実は、その確率は新聞営業に限らず、すべての訪問販売に、ほぼ共通して言えることなんや。

『ドリルの説明に来ました』というのは、教材の訪問販売ということになるが、これがすこぶる評判が悪い。その評判の悪さは、もしかすると新聞の勧誘以上かも知れん。

時折、教材の訪問販売をしているという人たちからメールが寄せられてくるが、その人の話では、毎日100本以上の電話をかけてアポを取り、土日に現地へ赴き、1日中アポ先に勧誘して1本の契約が取れたら御の字やということや。

一般的な教材の売り込み価格は数十万円ということもあり、営業報償金もそれなりに貰えるから、それでも十分稼ぎにはなると。

教材の訪問販売の評判が悪いという証拠として、経済産業省のホームページに『特定商取引法違反の訪問販売業者に対する業務停止命令及び指示処分について』(注4.巻末参考ページ参照)というのがあるから、それを見れば分かると思う。

それに騙された経験のある人たち、あるいはその悪評をよく知っている人たちは「教材販売」と聞くだけで拒否反応を起こすのが普通や。

売り込む『マラソンドリル』は980円とのことやから、他の教材販売に比べれば安く悪質性も希薄やと思うのやが、それは話を聞いてみな分からんことや。

その話をする前に門前払いされていたんでは、どうしようもないわな。

その本社販売部担当者とやらは、『「ドリルの説明に来ました」と言えばドアは開けてくれる』てなことを言うとるところからすると、それほど評判の悪い教材の訪問販売より、新聞勧誘の方がさらに数段悪いと自ら認めていることになる。

新聞を作っている側の人間がそれでは救いがない。プライドの欠片もないのかと思う。

新聞勧誘を生涯の仕事、生業と考え長年続けてきたワシにとって、これほど残念で情けない話はない。

そもそも、プロの教材販売員ですら売るのに困難な代物を畑違いの『販売店主や、セールス(拡張員)』が売り込もうとしても売れるわけがないわな。

「そのくらいのことが、どうして分からんのや」と言いたい。

どんな世界の営業であっても簡単やない。その道には、その道なりのやり方、ノウハウというものがあるさかいな。

この読者が『しょせん付け焼刃のトークが通用するはずもありません』と言われるとおりや。

それに、『「ドリルの説明に来ました」と言えばドアは開けてくれる』というのが、新聞の購読契約をする目的で、そうするのであれば、2009年12月1日に施行された『特定商取引に関する法律』改正法に抵触する違法行為になる可能性が高い。

『特定商取引に関する法律』の改正法の第3条ノ2第1項「勧誘の意志の確認」で、


販売事業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手側に対し、勧誘を受ける意志があることを確認するよう努めなければならない。


と規定された。

これにより、「新聞の勧誘をさせて頂きますけど、よろしいでしょうか」と確認してからでないと勧誘したらあかんということになったわけや。

『ドリルの説明に来ました』というのは、新聞勧誘とは明らかに違う。

関係のない偽りの言葉で客を呼び出し、最終的に新聞の勧誘をすれば、この法律に触れる。

当たり前やが、新聞販売店は教材販売業者とは違うさかいな。

法律に触れ、顧客から不信感を持たれ、さらには『それまで古紙回収などで学校関係者といい関係を築いてきたものが一気に崩れ去りました』というのでは、どうしようもない。

また『その担当者は教育委員会の後援・協賛という事で、チラシやパンフを学校に持っていき、生徒に配ってもらうという愚行を販売店にさせ続けてきました』については開いた口が塞がらん。

この方が『先生方にとってみれば「確かに新聞は良いとは思うけど、子供を利用してドリルを新聞社が売り出すとは何事だ!けしからん!」というところでしょうか』と危惧されるのも無理はないと思う。

実際、そう考えている学校関係者、教師は多いはずや。

もっとも、『教育委員会の後援・協賛』ということのようやから、学校関係者や教師たちも表立って異を唱えることはないやろうがな。

ただ、それでありながら『実際の話、各販売店の扱いドリル部数は県内合わせても100部にも達しておりません』というのでは、この話を聞いてから1年が経過していることを思えば、殆ど成果が上がっていないものと考えられる。

そんなものを売れと言われて、その気になどなれるわけがないわな。

さらに、『強制的に買わされている販売店もあるようです』というのが本当なら、「押し紙」ならぬ「押し教材」ということになるが、とんでもない話や。

こんなことをいつまでも続けとると、いくらその地域で最大のシェアを誇っている新聞とはいえ、このままでは信用をなくして、そのうち大勢の読者から、そっぽを向かれる日が来るのやないかと思う。

ただ、その現状をどうにかしたくても本社販売部担当者とやらが、前のめりになっている状態ではヘタなアクションは起こさん方がええやろうな。

そんな人間に意見するとロクなことにならん。いくら換言しても聞く耳など持っていないやろうからよけいや。

こういう輩は、無視することが最良の方法やと思う。ワシなら、そうする。

昔から効果のないやり方については、いくら新聞社の上層部が指示しても現場の者は無視していたもんや。

もっとも、あからさまに「そんなことができるかい」とは言わんがな。

適当に「分かりました。頑張ります」てなことを言うといて上辺だけ従う振りをして実際には何もせん。俗に言う「面従腹背」というやつや。

それが結果として、勧誘員自身を守ることにつながる。嫌なこと、明らかにマイナスになると思えることはバカ正直に従う必要はない。

実際、そう考えとる者はワシらの他にも多いやろうと思う。

それで「笛吹けど踊らず」ということになっとるのやないかな。

今回、そのやり方が上手く行かんかったのは、まさにそこのところに問題があったと考えるしかない。

勧誘は、やる者が効果の上がる方法やと信じてやらな成功はおぼつかんもんや。

いくら上の者が「このやり方は最高や」と考えていても、現場の人間が、そう思えんようなものでは意味がない。

一般的に新しい勧誘方法をやらせようとする場合、それをすれば利益につながるという具体的な根拠と事例が必要や。

それでないと勧誘員自身のやる気が湧かんさかいな。

はっきり言うて、本社販売部担当者がええという勧誘方法なんか、大半の勧誘員は信用してへんと思う。なぜなら、事、勧誘に関しては素人やからや。

本社販売部担当者とやらが、実際にその方法で月に100本の契約でもあげたというのなら、「そら凄い方法やな」ということになって素直に従えるかも知れんが、そんなことはまずあり得んわな。

できもせんことをできると言うのは「机上の空論」にすぎん。

特にワシらのようにプロを自認する人間の場合、そんなアホな素人の指示どおりには動くことなど100%ないと断言する。

もっとも、表向きの処世術として、例えそうであっても「面従腹背」に徹しとくがな。

結論として、今回の件に関して言えば、酒井氏の推奨する『マラソンドリル』に問題があるというより、それを盲信した新聞社、および本社販売部担当者の責任の方が大やと考える。


と返信した。

『紹介読者運動』というのも感心せんやり方や。

紹介読者運動とは、新聞社の決めたノルマの読者を営業区域外の新聞販売店に紹介するよう、各専属販売店に厳命していることを指す。

毎年「紹介読者運動」のノルマをクリアすることに奔走し、四苦八苦している新聞販売店経営者は多い。

ある新聞販売店関係者の方から、


今年もやって来た地獄の紹介運動。

親戚、友人を無くしてしまう。

私は新聞販売店を営む夫の妻です。

旦那方の親戚付き合いは殆どなく紹介運動のプレシャーは私にのしかかるのである。

しかも、昨年から3か月だった期間を6か月にしらっと延ばすなんて本当にこちらは、死にたくなるほどの仕打ちである。


といった内容のメールが寄せられてきた。

これなんかも新聞販売店側の事情を一切無視した新聞社の一存による押しつけ以外の何ものでもないと思う。

それに表だって逆らうことのできん販売店の人が、こうしてワシらに相談というか、嘆きの文章を送ってこられるわけや。

「紹介読者運動」の是非については、いろいろ意見の分かれるところやとは思うが、特に法律に触れるものやなさそうやから、やること自体には問題はないと考える。

問題は、それを強制されるという点やが、それについて逆らえないのであれば嫌でもやるしかない。

『地獄の紹介運動』と嘆き、『親戚、友人を無くしてしまう』のは同じことを繰り返しているからと思う。

そうであるなら、他の方法にチャレンジすればええ。そうすれば違った結果になるかも知れん。

そもそもスキル(技能)というのは経験から得られるもので誰もが最初から持っているものやない。自らやることでしか身につかんものやさかいな。

前置きが長くなったが、ここから本題に入る。

『街中を清掃するとかシニアサポートなど、あまり企業がやりたがらないような活動も積極的に進める媒体にシフトを変えていくのもいいんじゃないか』ということについてやが、『街中を清掃する』はともかく、『シニアサポート』については、実際にやっている新聞販売店は多い。

その最たるものが『高齢者見守りサービス』やと思う。

それについては今から5年前、2010年9月3日発行の『第117回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店による高齢者見守りサービスへの取り組みと、その問題点』(注5.巻末参考ページ参照)の中で『新聞販売店による独居老人の見守り対策サービスの心得』と題して話したことがあるので、それを見て頂ければ分かるはずや。

それがあるためかどうかまでは分からんが、この話をメルマガ誌上でした頃から、同じような試みを始められたという新聞販売店が増えたのは確かや。

その取り組みが功を奏した事例として、去年の2014年11月17日の新聞報道に、


http://www.sponichi.co.jp/society/news/2014/11/17/kiji/K20141117009299870.html より引用

新聞配達員の機転が独居女性救った…たまった新聞見て通報→救助


 福島県南相馬市にある新聞販売店の女性従業員の機転で、一人暮らしの60代の女性が一命を取り留めていたことが16日、分かった。

 女性従業員は30代で、同市鹿島区の鹿島新聞販売センターに勤務。15日午前4時ごろ、同区内の災害公営住宅の女性宅に新聞を配達した際、4、5日分がポストに入ったままになっていることに気づいた。

 不審に思い、すべての配達を終えた同7時ごろに再び訪問。インターホンや玄関越しに声をかけたが、応答がなかった。換気扇が回りっぱなしで駐車場に車もあったことから、市の担当者に連絡した。

 市の担当者が南相馬署員とともに駆けつけ、部屋の中を確認。衰弱しきった状態で倒れている女性を発見し、市内の病院に搬送した。

 女性は動けず、食事も数日間取った形跡がなかったことから、発見が遅れれば危険な状態だったとみられる。同署によると、命に別条はないという。

 災害公営住宅は南相馬市が東日本大震災の被災者向けに整備。約3800平方メートルの敷地に鉄筋コンクリート3階建ての5棟30戸を建設した。

 今年10月1日に入居が開始され、女性は同月末、仮設住宅から転居したばかりで隣人との交流は少なかった。

 女性従業員は「引っ越してきた時、女性は何度も“疲れた”と言い、顔色も良くなかった。早めに気づいてよかった」と話しているという。

 南相馬市は今年3月、震災と東京電力福島第1原発事故で一人暮らしや高齢者だけの世帯が増えたことを受け、孤立死などを防止するため市内の新聞販売店や牛乳販売店などと「安心見守りネットワーク」協定を締結。

 各店は異変を察知したら、市や警察に通報するとしており、毎日新聞やスポニチなどを配達する鹿島新聞販売センターも協定を結んでいた。


というのがある。

まあ、これに関しては、すでに確立されたものがあるさかい、今後も続けられていくとは思うがな。

『街中を清掃する』というのを、やっている新聞販売店もあるようやが、単独でしているというのは、あまり聞かん。

たいていは地域の町内会、ボランティア団体などと協力してやっているということや。

そういうものには積極的に参加した方がええと、ワシも思う。

『ここ最近自然災害が急激に増えてきているので、何か起きたらすぐに動く、とかいうのがあってもいいと思います』というのは、ええ発想や。

『ゲンさん、ハカセさん共々、サイトに集う方々と共に考えていけたらいいと思いました』と言われていることでもあり、及ばずながら、ない知恵を振り絞ってみたいと思う。

つい最近起きた『関東・東北豪雨』による『茨城県常総市の鬼怒川堤防決壊災害』を例にとって考えることにしよう。


新聞販売店ができる堤防決壊災害への対処法


1.新聞販売店には地域の状況を熟知しているという強みを活かして情報を得る。

例えば、どこそこの家には寝たきりの高齢者がいる、あるいは歩行困難な身体障害者の方がおられるといった情報を掴むことくらいは、その気になれば、たいていの新聞販売店ならできると思う。

現読の方なら比較的簡単に分かるし、それ以外の人の情報も勧誘時に得ることが可能や。

その時の勧誘トークとして、「当販売店では、地域の方々を近くの○○川堤防決壊災害から、お守りするための取り組みを開始しましたので、ご協力のほどよろしくお願いします」と言うて、『茨城県常総市の鬼怒川堤防決壊災害』のことを持ち出せば、応じて貰える可能性が高い。

そうして聞き出せた情報をリスト化する。


2.防災知識を正しく学んで把握する。

災害に対処するためには、その知識がなかったらあかん。まずは個人個人が勉強することや。

現在は、殆どの自治体が高い防災意識を持って、それなりの対策をしているはずやから、それを正しく把握することから始められたらええ。

それは、それほど難しいことやない。地域の役所の防災課に出向いて調べるか、HPを見れば比較的簡単に分かるようになっているさかいな。

ただ中には、


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150914-00000042-mai-soci より引用

<関東・東北豪雨>決壊後、川方向へ誘導…市外避難考えず


 関東・東北豪雨で茨城県常総市の鬼怒川が決壊した後、浸水被害が広がった川の東部の住民に、市が川に向かって西側へ逃げるよう誘導していたことが分かった。

 市は西側の方が標高が高いと説明する一方、「避難先は当初は市内しか考えなかった」と隣接市も含めた東側は考慮しなかったとしている。

 自治体間連携や複数の誘導案の検討を欠いたことで、住民からは「危険にさらされた」と批判が出ている。

 同市を縦断する鬼怒川の堤防は10日午後0時50分に決壊。市は独自のハザードマップや国土交通省の浸水予測で、西側と比べて標高が3〜15メートル低い東側の被害拡大を予測し、午後1時過ぎから「西側に逃げてください」と住民に対し、防災無線で繰り返し呼びかけた。

 東部住民にとって、西側への避難は、決壊した鬼怒川に向かうことになる。一方、東側なら、決壊のなかった小貝川の橋を越えれば、隣接するつくば市など被害が少なかった安全な地域に避難することができた。

 東部の常総市中妻町に住む会社員男性(50)は同日午後5時ごろ、防災無線を聞いた。鬼怒川に向かうことになるので戸惑ったが、西側へ渡る橋の一部が通行止めになっていたこともあり、東へ向かって避難したという。

 同じ東部住民の別の会社員男性(61)も防災無線を聞き、いったん鬼怒川方向へ向かったが、危険を感じて南東側へ逃げるなど、複数の住民が避難時に混乱したと毎日新聞の取材に対し証言した。

 中妻町の男性は「高齢の母も一緒だった。西へ向かっていたら危なかった」と憤る。

 群馬大の片田敏孝教授(災害社会工学)は「氾濫する川へ向かって避難を呼びかけたのは明らかな誤り。東部住民は、東方向のつくば市へ逃げるべきだった」と指摘。

「自治体ごとに策定される防災計画の弊害が出た。台風やゲリラ豪雨など広域災害が増えており、自治体の枠を超えて対応すべきだ」としている。

 常総市安全安心課の斎藤健司課長は「東側へ誘導するとつくば市になってしまう。常総市だけの範囲で考え高台の多い西側へ誘導してしまった。当時は混乱しており、今後の反省材料にしたい」と話した。


という、とんでもない誤った指示を出す自治体も実際にあるから気をつけなあかんがな。

こういった誤った指示に右往左往するケースを少なくするためには、やはり地域の防災状況をしっかり把握した上で、万が一の時の行動を事前に考えておく必要がある。

それには、そのための勉強が欠かせんということや。


3.地域の連帯を深め、ネットワークを構築する。

当然やが、広範囲な災害に対して新聞販売店1店舗だけで対処するには無理がある。

地域の人たちを助ける前に自分自身も危険な状況に遭遇する可能性が高いさかいな。

特に災害が、深夜から早朝にかけての新聞配達中に起きた場合にそれが言える。

新聞配達員は、何があっても新聞配達を最優先させなあかんという不文律のようなものがある。新聞配達員の業と言うてもええ。

配達の途中で投げ出して逃げるということが、なかなかできんわけや。

そのため、台風や地震、洪水、崖崩れなどに巻き込まれて亡くなられた方が過去にも大勢おられる。

災害は時と場所を選ばない。いつ何時、どこにそれが起きるか予測することが難しい。しかし、災害は必ず起きる。それも突然に。

地域の連帯とネットワークが確かなら、災害が発生した時、正しい避難経路を知ることが比較的容易(たや)すくなり、それにより被災弱者を助けられる場合もあるし、避難を誘導できるケースも増えるはずや。

もちろん自身も安全に逃げることができる。

地域の連帯とネットワークの構築は、隣接する新聞販売店同士でもええし、役所や警察、消防などの災害対策を管轄する部署でも構わない。

今なら顧客間とSNSでつながるという方法もある。いずれにしても、できるだけ広範囲に、より多くの人たちとの間でネットワークを構築することや。

日頃から、それを心がけていれば不可能なことやないと思う。


4.災害が起きた時のための準備をしておく。

「転ばぬ先の杖」という、昔からのことわざがあるが、何事も起きてからでは遅い。慌ててパニックになることも多く、後手後手に回るケースも増えるさかいな。

事前にちゃんとした準備と心構えができていれば、そうならずに済む可能性が高い。

先の『決壊後、川方向へ誘導…市外避難考えず』の記事にもあるように、堤防決壊による水害の場合は、いち早く、水没の危険がある地域から離脱することが肝心だとされている。

ハザードマップというのがある。自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・ 避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図のことや。

たいていの場合、行政の防災ハザードマップに従えば良いとされているが、一般の人は、そこまで見て確認していないケースが多い。その確認をしっかりしておく。

そして、それを盲信するのではなく、実地に検証して信用できるか、どうかも事前に確かめておく必要がある。

他にも準備することは多い。例えば、今回のような水害ならゴムボートや救命胴衣(ライフジャケット)を用意しておくといったようなことやな。


5.役割分担を決めておく。

新聞販売店内で、地域の災害対策をすると決めた場合、従業員間で役割分担を決めておく。

例えば、配達地域内に寝たきりの高齢者や歩行困難な身体障害者の方がおられる場合は、可能な限り救助に向かうといった具合や。

できない場合でもその家族、および行政、警察、消防などに、その状況を素早く通報する役目の人間を予め決めておくといったことなどが必要になる。

人は、ある程度の予測をしていれば事が起きても冷静に対処できるさかいな。


今のところ思いつくのは、こんなところや。

ただ、これらの事は多分にボランティア精神を必要とすることやから、業務として捉えると無理が生じ易い。

できれば従業員自らの自主的な参加が望ましい。それを新聞販売店がバックアップするという形が最も理想的やと思う。

ボランティア精神に、損得勘定を持ち出すのはどうかとは思うが、こういう取り組みを勧誘時にアピールすれば、新聞販売店の価値、信用が増すのは確かやさかい、それにより顧客増を狙える、契約数が伸びると説くのも手や。

この他にも考えれば、いくらでもあるはずや。

今回『サイトに集う方々と共に考えていけたらいいと思いました』ということでもあるし、この件に関して、読者の方々からご意見、ご提案を募りたいので、是非協力して頂きたいと思う。



参考ページ

注1.NO.1302 A新聞の無料配布について
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-1302.html

NO.1304 Y新聞も無料配布をしています
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-1304.html

NO.1320 試読について
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-1320.html

NO.1356 ここ最近試読営業を盛んに行っていることに関して
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage10-1356.html

注2.第301回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞復活への試み……その1 マラソンドリルとシニアサポートについて
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-301.html

第355回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞復活への試み……その2 マラソンドリルは効果がない?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-355.html

注3.第218回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店物語 その9 新聞社指令、紹介読者運動の裏側
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-218.html

第366回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店物語……その17 今年もやって来た地獄の紹介読者運動
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-366.html

注4.特定商取引法違反の訪問販売業者に対する業務停止命令及び指示処分について
http://www.kansai.meti.go.jp/4syokei/tokusyou/20150428arthur_victory.html

注5.第117回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店による高齢者見守りサービスへの取り組みと、その問題点
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-117.html


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