メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第392回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2015.12.11


■続ゲンさんの新聞勧誘営業講座 その7 客層別の勧誘法について


前回、『第386回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■続ゲンさんの新聞勧誘営業講座 その6 自分を知ることの重要性について』(注1.巻末参考ページ参照)を話したので、今回は『相手を知ることの重要性について』と題して話したいと思う。

有名な孫子の兵法、『彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず』の一節を持ち出すまでもなく、相手を知って自分を知れば戦いが有利になるということくらいは誰にでも分かる。重要なことやと。

ただ、新聞営業の場合、相手は無数に存在する。本当は勧誘する相手一人一人が、それぞれ固有の人格、性格を有しているさかい、その人、その人に合った勧誘方法を心がける必要があるのやが、ここで、そのすべてを話すのは不可能や。

また、それをしても、あまり意味がない。対象が多すぎて混乱するだけやさかいな。

せやから、ここでは具体的な客層別の勧誘方法を示す。


客層別の勧誘方法について


1.独身若年者層について

独身の若者には大学生、サラリーマン、フリーターなどがいる。サラリーマンの中には、正規社員、契約社員、アルバイトやパート従業員などが含まれる。

フリーターは、たまに仕事をする契約社員、パート従業員といったところかな。

彼らに、ほぼ共通している点は、あまり収入がないことや。

大学生は親からの仕送りやアルバイトで学費や生活費を捻出している者が多く、正規社員である若年者のサラリーマンは経験の浅さもあって総体的に給料が安い。

契約社員は、正規社員をさらに下回る。契約社員、アルバイトやパート従業員などを一般的に非正規雇用と呼んでいるが、現在、この非正規雇用の割合は4割前後あると言われている。少ない数やない。

フリーターの場合も金持ちのドラ息子以外は、概ね収入が少ない。

現在、彼ら若年者層を中心に「無読化」が進んでいるわけやが、その理由の大半は「新聞にかける金がない、勿体ない」からやと思う。

もっとも、表向きは「新聞記事なとネットで見ることができるから金を払ってまで購読する値打ちがない」、「新聞記事には偏向記事や誤報記事が多く信用ならない」と言うてるがな。

こんなことを言うと、反発される方がおられるかも知れんが、実際、バブル全盛期のように国民全体が潤っているような時代には「新聞の購読を止める」という発想自体が少なかったのは確かや。

インターネットの普及に伴って新聞の価値と需要が下落気味なのは否定せんが、それでも情報ツールとしては今尚、トップの地位を占めていると確信しとる。

ネット上において、未だにニュースと言えば大半が新聞記事の引用やさかいな。

ただ、「金がないから新聞を購読できない」と言うのは格好が悪いという思いがあるから、「新聞記事なとネットで見ることができるから金を払ってまで購読する値打ちがない」、「新聞記事には偏向記事や誤報記事が多く信用ならない」と言うてるにすぎんのやないかと思う。

もっとも、現実に『新聞記事には偏向記事や誤報記事』があるのは事実やさかい、それを理由に新聞を購読したくないという人もおられるので、単に金がないことだけが問題やないとは思うがな。

いずれにしても、独身若年者層については、収入が少なく、新聞代にかける金がない、あるいは、その必要性がないという前提に立って勧誘する必要がある。

それについて最も有効なのは昔から行われている「拡材(景品サービス)攻撃」やと思う。

それにより、負担が軽く、得するという考えを植え付けることができれば意外と簡単に契約する若者も多い。言い方は悪いが、目の前の餌に釣られるわけやな。

ただ、現在、幾分緩やかになっているとはいえ、依然として「正常化の流れ」と称して、拡材をあまり使ってはいけない新聞販売店も存在するようなので、「拡材(景品サービス)攻撃」をしたくても、できないケースがある。

そういう場合は、『第84回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その2 拡材について』(注2.巻末参考ページ参照)の中で言うた『金をかけずに済む拡材サービス方法のあれこれ』が参考になるのやないかと思う。

その一部を紹介する。


金をかけずに済む拡材サービス方法のあれこれ


1.経験を役立てる。

新聞の勧誘員になる者の多くは、他の仕事からの転職やと思う。高校や大学からの新卒者の就職希望というのも皆無やないかも知れんが、他企業と比べれば極端に少ないはずや。

他の仕事からの転職の場合、その仕事の内容次第でその経験を活かせる場合がある。それを考え、利用する。

ワシは以前、建築の仕事に携わっていて、それを活かせた経験が実際にある。それでこの方法を思いついた。

旧メルマガ『第14回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ゲンさんの拡張実践Part2 経験を役立てろ』(注3.巻末参考ページ参照) の中でそのことに触れている。

この中で、大型台風のあった翌日、ある民家の主人が強風で飛んだガレージの波板を直そうと悪戦苦闘していた現場に遭遇したという話をした。

住宅リフォーム会社を経営していたワシにとって、その波板を直す程度は造作もないから、手伝って直すと喜ばれた。

そのとき、その客が謝礼をしたいということやったが断ると、押し問答の末、以前講読していた新聞をワシの勧誘する新聞に切り替えてくれるということで話が落ち着いた。

このことでワシは経験を新聞勧誘に活かせるのやないかと知った。
 
これの活かし方については、それぞれの前職での経験、習熟度によっても違うが一考の価値はあるはずや。

それが可能ならば、極端な話、通常の拡材などなくても勧誘できると思うさかいな。


2.オリジナリティのある拡材を用意する。

多くの新聞販売店が嫌う拡張合戦に突入するのは、同じ景品・サービスで競争しようとするからやと思う。

その場合、多い少ないでサービスの善し悪しにはっきり差がつくから、どうしても競争がエスカレートしやすい。

オリジナルティがあって、他があまりしないサービス、手に入りにくい希少価値の高いサービスであれば、例えそれが安価なものであっても効果的な場合が多い。

数年前の話になるが、ある販売店からこのネズミ獲り機を持って行けと言われたことがあった。

当初、こんな物は拡材の役に立たんやろう思うて渋々持って行って拡張したわけやが、ワシが行った家で、話し込んでいるうちに、その家がネズミに悩まされとると言い出した。

結果、そのネズミ獲り機でネズミが捕れたら、新聞の契約をしようということになった。翌日、あまり期待もせんとその家に行くと、なんとでかいドブネズミが罠にかかっていたんや。それで、その家とは難なく契約できた。

ワシは試しにとその近辺をネズミ獲り機だけで営業をかけてみた。今度は、ネズミを捕まえた実績があるから強気や。

すると立て続けに10軒ほど契約が取れた。皆、ネズミに悩まされてたわけや。

ワシはその販売店の所長を見直すと同時に、拡材は、必要な時に必要な人間に用意するもんやということを知った。


3.特定の場所でしか入手できないもの

メルマガ『第9回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■営業の雑談に使えるUSJの話』(注4.巻末参考ページ参照)の中で、「すぱいだぁ麺」というカップ麺を紹介したことがある。

これは、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のテーマパーク内にある『アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド』というアトラクション横のショップで売っていたキャラクター商品の一つや。

さすが大阪人の考え出した、こてこてのオヤジギャグ的発想の商品やがこれは受ける。そう直感した。

哀しいかな、ワシには、いつどこで何をしていても営業員としての性(さが)を捨て切れんという因果な性分がある。その因果な性分が、これを拡張の拡材に使うたらどうやと考えさせた。

その「すぱいだぁ麺!!」はスパイダーマンの絵柄入りの細長い箱に3個入って900円。単に食うだけやと高い気もするが、拡材にするのなら手頃な価格や。

カップ麺自体は、どこにでもありそうな醤油味で、そこそこ美味い。しかも、切ったナルトの面の模様がスパイダーマンになっているのが、ふるっていて面白い。

それを帰りがけに20ケースほど買った。後日談やが、僅か3日でそれがなくなった。その分、すべてで成約になった。

今更やが、拡材は何も金をかけるだけが脳やないとつくづく痛感した。いかに客受けのする物を探し出すかやと。

もっとも、そのアトラクションの内容を身振り手振りで面白おかしく話す雑談の技量も多少は必要やと思うがな。

現在は、これに加えて「スヌーピー」のオリジナルカップ麺「すぬーどる」というのも発売されとる。こちらも、オリジナルデザインの紙ケースに4個入りで販売価格は900円(税込)とのことや。

これらは、そのUSJのショップでしか売ってない商品やが、入手できれば、その効果は高いと思う。

関東方面なら、ディズニーランドなどのキャラクター商品なんかがええのやないやろうか。

他にも、その気になって探せばいろいろ見つかるはずやと思う。


4.狙いの客の趣味に合いそうなものを用意する。

ワシは、マンションのオーナーとか管理人と懇意になる場合が多い。もちろん意図的にそう仕向けとるわけやけどな。

その際、もっとも効果があったのが書籍やった。

事前に雑談などで好きな書籍を聞き出し、古本屋などで探して拡材代わりにするわけや。

これは値段以上に喜ばれる。上手く行けば100円程度で落とせる可能性すらあるさかいな。

もっとも、そのために金はかからんでも、それを探さなあかんから手間暇はかかるけどな。しかし、その値打ちはある。

これを、一般読者、特に見込み客用に見つけてくるというのも手やないかと思う。

趣味というのも広いから、いろんな角度から探せるのやないかな。もっとも、値段の高いものは極力避けてな。


5.100円ショップや激安ショップを活用する。

現在、デフレ傾向にあるから、探せばいくらでも安い商品が見つけられると思う。

また、基本的に金券以外の商品の場合、その100円ショップや激安ショップというのがあるために、いくらでも金銭的なごまかしは可能やというのがある。

景品表示法に規制されとるのは金額の上限であって商品の販売価格は査定の対象になっていない。

例え市販価格が1万円のものでも、それを千円、二千円で仕入れることができれば、それで通る。

ちなみに、販売店で使用している洗剤などの主力商品は、新聞社と製造する企業との交渉で一般よりも安い価格で仕入れとるケースが多い。

そのためもあって、商品での景品サービスの場合、景品表示法違反になりにくいというのがあるわけや。抜け道は、いろいろあるということやな。


6.いろいろな情報を拡材にする。

新聞が必要ない。無駄なことには金を使いたくない。そんな新聞離れが顕著な人間にも、必要なものは必ずある。その必要なものを拡材にしたらええ。

例えばパチンコ好きな客の場合、その攻略法などの情報が、それに当たる。

その確かな情報データを調べたものを拡材に使うわけや。

この場合、拡張員は胡散臭いと思われとることを逆手に取ることができる。

拡張員がパチンコをしていると言うたら、まず殆どの人間が納得するし、信用する。パチンコに関してはプロ並みの腕を持っとると言うても疑われることはまずない。

ここでは客の胡散臭いというイメージが、その面に関してはプラスに作用しとるわけや。

それで相手が興味を示せば、できるだけ近所のパチンコ屋の情報と確かな攻略法の情報をセットで、拡材として使う。

その人間が、その情報の価値を支払う新聞代以上やと認めたら、驚くほど簡単に購読契約をする。合理的な人間ほど決断は早い。

これは、パチンコだけに限らず、釣りとかゲームなど何でもええ。

これの利点は情報の原価が分かりにくいという点にある。それには金がかかってないと言えば、それで通るさかいな。

つまり、その情報を教えたというだけでは拡材過多の違反には問いにくいということや。

そして、それはその客が値打ちを認めさえすれば、それでええわけやさかいな。

これも応用の広いものやと思う。


と、こんな感じや。

結論として、独身若年者層への具体的なアプローチは、新聞を購読することで如何に得をしたと思わせることができるかがポイントになるということやな。

ガサと呼ばれる低家賃のアパート、マンションに住む比較的定収入と見られる世帯の人たちも、ほぼ、この範疇に入るものと考えて勧誘している勧誘員も多い。

もっと広げて、普通のアパート、マンションに住む人たちについても、それに近いものがあると思われている。


2.一戸建て住宅に住む一般購読者について

アパート、マンションの次に拡張員の訪問が多いのが、この一戸建て住宅や。

単に、一戸建て住宅と言うてもいろいろある。賃貸物件から豪邸と呼ばれる家まで様々や。

本来は住人毎のアプローチが必要になるのやが、勧誘の仕事を長く続けとると、地域毎の特徴というのが見えてくる。

こういう住宅街の典型的なのが、○○が丘、○○台などという団地や。拡張員も含めて、訪問販売員の集中する団地とそうでもない団地がある。

普通は、そういうことがあるとだけしか分からんやろうが、ワシは元建築屋やったから、その絡繰りがある程度分かる。

地域によれば、訪問販売勧誘に比較的弱い人たちが多く住む団地というのがある。

勧誘に弱い、俗に言う『丸い人間』の住む地域と、元々地元住民が主に建て替えなどで集まってできた排他的な傾向の団地とがある。

当然やが、訪問販売の多い地域は前者や。後者は、かなり厳しいということもあり、勧誘員はあまり寄りつかない。

こういう所を見極めるのは経験が必要やと思うかも知れんが、その判断はそれほど難しくはない。

その団地内を一周したら分かる。『丸い人間』の住む地域は訪問販売の住宅リフォーム業者も多いから、リフォーム工事中とか、工事後という家が多い。

テントで家を囲っとるようなのが多い団地は、たいていがそうや。古い住宅街の割に外壁が綺麗やったり、門扉やガレージ、屋根が新しいというのも、それになる。

ただ、こういった地域はサービス中心の拡材だけの提示では難しいさかい、簡単やない。

他業者の訪問販売員のサービスは新聞営業の比やないさかい、サービス慣れしていて、拡材程度のものやとインパクトが弱いわけや。

そのため、集合住宅での勧誘が好きな勧誘員はあまり寄りつかん傾向にある。

必然的に競争相手は比較的少ない。それが有利になると考えられるか、契約があがりにくい地域と捉えるかで結果が大きく違うてくる。

嵌れば、美味しい。こういう所で重点的に勧誘しとる勧誘員はそのことを良う知っとる。

一概には言えんが、隣近所の連帯性を利用する手法が効果的やと思う。具体的には「ご近所の○○さんに取ってもらいましたので」というトークやな。

こういう所では、集合住宅と比べて近所の連帯意識が高いのが普通やから「ご近所」「お隣さん」「皆さん」という言葉が生きる。

もっとも、その言葉を使うためには、実際にその地域で一軒、どうしても契約を取る必要があるがな。「あの人が契約したのなら、うちも」と。

しかし、それをするのは、ある程度、経験を積んだ者の方がええと思う。初心者では厳しいかも知れん。初心者が挫折するのは、何も知らずこういう地域に迷い込んで叩く場合が多い。

もちろん、勧誘営業に楽な場所というのは少ないが、経験に乏しい初心者がこういう地域に迷い込めば潰れる確率は高い。

多くの勧誘員が、こういう一戸建ての家に寄りつかんというのも新人時代、あかんかったというイメージが強いからやと思う。

勧誘員の多くが、得手不得手を言うのは、最初に契約が上がった場所で決まることが多い。上がった所が得意な地域と思い込む。思い込むとそういう所ばかり行くから更に契約があがるということになる。

せやから、その地域が本当にその勧誘員に向いているのかとなると、定かではない。自分の可能性を狭めて営業していると思われる人間は、ワシの目からも結構多いさかいな。

自分の得意を作るということは悪いことやない。しかし、それだけでは、それ以上にはなれん。

常に、少しずつでもチャレンジする方がええ。そうすることで、自分の意外な可能性が見えてくることもある。

ここから先は、もう一歩、上を目指す人間にだけ話す。誰もが難しいと思う地域は、誰も行きたがらん。ということは、何も即決を目指す必要がないということでもある。

拡張員が最初に教えられることに、この即決というのがある。その日、勧誘した客は、その日に上げろということや。

それも、あながち間違った教えやない。一般的な勧誘員は、多くの販売店で拡張する。その日やなかったら、次はいつ来られるか分からんということがあるさかいな。

次の保証がない。次に来た時は、他の拡張員と契約してたということは、日常茶飯事でざらにある。

客の「次、来た時に契約するから」という言葉を真に受けていたら、えらい目に遭う。そういう客は、他の勧誘員と簡単に契約する。同じ、勧誘する新聞なら尚更や。

客の意識には、特定の勧誘員とだけ契約しようというのは少ない。新聞を取ろうとか、取ってもええなと決めたら、誰でもええ。

例えば、あるA紙の勧誘員の説得で、取ってもええなと思うても、その場は一端、断る客も多い。次にしてくれと言う。その言葉を信じて、次に行くと同じA紙の他の勧誘員と契約したということがままある。

客にしたら、同じA紙を購読するんやから、その勧誘員でもええやろという理屈や。勧誘員はそれでは具合悪い。金にも成績にもならんからな。

正直言うて、新聞社がナンボ部数を伸ばそうが、販売店がいくら売り上げようが、団がどれだけ儲けようが、そんなことは勧誘員個人にとっては関係がない。

勧誘員にアシストは評価されん。評価されるのは、あくまで契約を上げた者だけや。まず、個人が優先となる。自分がカードを上げな話にならんと思う。

せやから、明日がある、次がある式の営業はできんとなるわけや。その日その場の即決が総てを左右する。

一般的な地域では、そうやが、これが勧誘員の少なければ、客との「約束どおりにする」という方法でも悪くはない。

もっとも、その見極めができるかどうかが問題やけどな。


3.高齢者への勧誘について

正直言うて、高齢者への勧誘はそれほど難しくはないと思う。それには新聞を購読することに抵抗感のない人が多いからや。

今や新聞購読者の7割程度が高齢者というデータもあるくらいやさかい、その事実からも新聞にとって最大の顧客でもあるわけや。

但し、高齢者の大半は、どこかの新聞を購読しているのが普通やから、勧誘員の仕事である「新聞の変更依頼」についての難しさはあるがな。

ポイントとしては、常日頃から雑談などを交わすようにして、その高齢者と親密な人間関係を築き、信頼されることやと思う。別の言い方をすれば人間関係の構築するということやな。

一般的に高齢者ほど「新聞を読むことが当たり前」という時代を長く生きてきている。新聞が毎日届けられるのが普通であり、読むことが日課になっていた人も多い。勧誘する相手としては申し分ないと言える。

しかし、最近では、高齢者本人より、その子供たちの存在が勧誘員にとってネックになりつつある。

高齢者の置かれた状況にもよるが、「老いては子に従え」という、古(いにしえ)のことわざにもあるように、子供の意見に左右される高齢者が少なくないという現実がある。

それには、経済的な面や精神的な面が大きく影響しているものと思われる。子供から経済的な援助を受けている場合などは、特にそうや。

子供は子供で親を守りたいという気持ちから、勧誘員を寄せつけないために、例え購読契約を結んでも解約させそうとするケースが散見するのやと思う。

特に新聞を購読していない子供ほど、そういう傾向が強い。新聞勧誘員は悪質な人間が多いという先入観から、高齢の親が契約すると「騙されている」と考えるわけや。

若い頃からの生活習慣の延長で新聞を購読している、あるいは高齢者にとって新聞とは、例え読まなくてもそこにあるだけで落ち着く物ということが理解できんのやな。人には「無用の用」も必要やと。

若い人たちにとってのスマホや携帯と同じやと考えれば分かって貰えると思うのやが、それをいくら説いても理解して貰うのは難しいということや。

まして、そんなことを勧誘員が言えば、よけい頑なになり、胡散臭く思われるだけしかならんしな。

そのため、高齢者への勧誘と同時に、その子供さんたちへの説得も欠かせないと考えていた方がええ。

そのための知識として、『第65回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ある新聞販売店の取り組み その1 哀しき孤独死をなくせ』、『第117回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店による高齢者見守りサービスへの取り組みと、その問題点』、

『第301回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞復活への試み……その1 マラソンドリルとシニアサポートについて』、『第380回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞復活への試み……その5 社会貢献へのシフトについて』(注5.巻末参考ページ参照)などがある。

上記の内容を説明すれば、「新聞を購読すると親御さんを守ることにつながりなりますよ」とアピールできる。

その典型的な報道がある。


http://www.sponichi.co.jp/society/news/2014/11/17/kiji/K20141117009299870.html より引用


新聞配達員の機転が独居女性救った…たまった新聞見て通報→救助


 福島県南相馬市にある新聞販売店の女性従業員の機転で、一人暮らしの60代の女性が一命を取り留めていたことが16日、分かった。

 女性従業員は30代で、同市鹿島区の鹿島新聞販売センターに勤務。15日午前4時ごろ、同区内の災害公営住宅の女性宅に新聞を配達した際、4、5日分がポストに入ったままになっていることに気づいた。

 不審に思い、すべての配達を終えた同7時ごろに再び訪問。インターホンや玄関越しに声をかけたが、応答がなかった。換気扇が回りっぱなしで駐車場に車もあったことから、市の担当者に連絡した。

 市の担当者が南相馬署員とともに駆けつけ、部屋の中を確認。衰弱しきった状態で倒れている女性を発見し、市内の病院に搬送した。

 女性は動けず、食事も数日間取った形跡がなかったことから、発見が遅れれば危険な状態だったとみられる。同署によると、命に別条はないという。

 災害公営住宅は南相馬市が東日本大震災の被災者向けに整備。約3800平方メートルの敷地に鉄筋コンクリート3階建ての5棟30戸を建設した。

 今年10月1日に入居が開始され、女性は同月末、仮設住宅から転居したばかりで隣人との交流は少なかった。

 女性従業員は「引っ越してきた時、女性は何度も“疲れた”と言い、顔色も良くなかった。早めに気づいてよかった」と話しているという。

 南相馬市は今年3月、震災と東京電力福島第1原発事故で一人暮らしや高齢者だけの世帯が増えたことを受け、孤立死などを防止するため市内の新聞販売店や牛乳販売店などと「安心見守りネットワーク」協定を締結。

 各店は異変を察知したら、市や警察に通報するとしており、毎日新聞やスポニチなどを配達する鹿島新聞販売センターも協定を結んでいた。


上記のような事例は他にも多い。

それらの事例を引用して、「親御さんを本当に守りたいのなら、新聞の購読をお勧めします」と言えば、その気になられる子供さんたちもおられるはずやと思う。


4.就学児童のいる家庭への勧誘について

その家に小中学生、高校生くらいの子供がいるか、どうかは雰囲気で分かると思う。

子供のいる家には、外に遊戯道具や玩具、子供用の自転車が放置されているケースが多いさかいな。また干してある洗濯物からでも、それと推測できる。

子供の学業に熱心な親は結構多い。そういう人たちが狙い目になる。

その場合は、『第110回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その1 新聞を読むことで向上する学力について』、『第179回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その2 新聞を読むことで向上する文章力』、

『第269回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その3 新聞の無読者は人生の敗北者になる?』(注6.巻末参考ページ参照)などが役に立つはずや。

世界的にも優秀と言われていた昔の日本の子供は皆、普通に新聞を読んでいた。

新聞の購読理由で最も多いのが、惰性で読んでいるという人たちやが、その人たちは、何も「さあ、今日から新聞を読むぞ」と新に意気込んで、そうしたわけやない。

毎日届けられる新聞がそこにあったというだけのことや。そこに新聞があれば読む。新聞が少なくなれば、その分、読む機会も減る。

単純に言うてしまえば、それだけのことやが、それが子供の学力の低下として表れとる大きな原因のように思う。

そのデータがある。

文部科学省が、小中学校の最高学年(小学6年生、中学3年生)を対象とした全国学力テストを毎年、4月の第4火曜日に実施しているが、その際、ある興味深いアンケートを一緒に集めているという。

そのアンケートの中に「新聞やテレビなどのニュースに関心がありますか?」という設問がある。

そのアンケートで、「関心がある」と答えた生徒と「関心がない」と答えた生徒では、ほぼすべてのテストの平均点が、15点から20点ほども違うという結果が出ているという。

もちろん、「関心がある」と答えた生徒の方が上や。

その一例として、小学6年生の場合、新聞を読む回数が「ほとんどない」と答えた生徒の「国語B」平均点が37点に対して、「週に数回読む」と答えた生徒の平均点は56点やったという調査結果がある。

そして、これはPISA(学習到達度調査)で得られた結果とも、ほぼ一致するという。世界的に見て、新聞をよく読む子供ほど成績がええという結果になっていると。

さらに、最近の世界的な権威、科学者の研究結果で、ニュースや情報はスマホやPCで見るより新聞紙面で見た方が脳のためには数段ええというデータが発表されている。

この事実を知れば、今までは、新聞の記事はネットでも読めるという理屈で新聞を買う必要がないと考えていた人たちの中には、「頭が良くなるなら」、「成績が伸びるのなら」新聞を購読しようかと考える人が増えるやろうと思う。

もちろん、今までどおり「スマホやネットで十分」と考える人もいとるやろうが、それやと「新聞を読む子供や若者」に頭脳の面で遅れを取る可能性がある。

この事実がどこまで知れ渡るかにもよるが、人は有利な選択をする傾向にあるさかい、子供や若い世代に再び新聞を購読しようという動きが出る可能性は十分考えられる。

新聞を読むことが「かっこ悪い」から「スマホやネットに依存しとるとアホになる」という風に変わるかも知れん。

現在、単に勿体ないという理由から新聞の購読を止めている家庭も、子供の教育上、新聞を読むことが学力の向上に有利やと知れば、親御さんたちも再び新聞を購読しようかと考え直すのやないかと思う。

子供のためになるのなら、月4000円弱の新聞代の出費など安いもんやさかいな。特に教育熱心な家庭ほど、そう考えやすいはずや。

新聞の記事の中身については、いろいろと批判的な意見もあるとは思うが、事、文章力、伝達力、読解力に磨きをかけるという意味では、これほど優れた教材は他にないと断言できる。

新聞記事には、どんなに短い文章であっても文章作法の基本である「5W1H」、Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(なぜ)How(どのように)といったことがすべて書き込まれている。

例えば、「○月○日、午前1時頃(When)、大阪北区の路上で(Where)帰宅途中の女性が(Who)頭を鈍器で殴られた事件(What)で、市内に住む50代の無職の男が強盗致傷の疑い(Why)で大阪府警に逮捕されていた(How)」といったニュース記事などが、それになる。

読めば当たり前と言えば当たり前の記事、文章なんやが、一般の人で、その5W1Hに気を配って漏れなく書くことのできる人は少ないやろうと思う。

これに加えて、Whom(誰に) How much(いくらで or どれだけ)の2つを付け加えて、「6W2H}で書かれている場合もある。

普段何気なく紙面を見ているだけで、そういう文章に馴染むさかい、相手に伝える文章を書く上でも役に立つものと思う。

それほど意識せずとも、新聞記事を毎日見ているだけで「5W1H」、あるいは「6W2H}で文章が書けるようになるさかいな。

ハカセが普段言うとることやが、新聞をよく読む人は文章を書くのも上手いというのは、そういうことやないかと思う。

現在、新聞の無読者が多いというても、日本人全体から見れば、まだまだ少数やと思う。せいぜいが若い世代で「スマホやネットで十分」と考えとる人たちや。

その彼らは時代の最先端を走っているつもりかも知れんが、後発のさらに若い人たちが新聞を読むことで頭脳明晰になり、しっかりした文章を書くようになれば、いつの間にか取り残されていたということも十分考えられる。

そういったことを子供の学業に熱心な親に説明して納得して貰えれば、「それなら新聞を購読してみようか」となる無読家庭も現れるのやないかと思う。


5.商店などへの勧誘について

商店と一口に言うてもいろいろある。殆どの商店で新聞は購読しとる所が多い。店によれば数社の新聞を購読しとることも珍しくない。

商売のちょっとしたコツを知っとれば、契約は簡単に取れる可能性が高い。そのコツというのは、ギブ・アンド・テイクや。

相手の店主もこちらを客として値踏みする。典型的なのが、喫茶店なんかの飲食店や。こういう所は、たいていの場合、複数の新聞が置いてある。

多くは常連客である顔見知りの勧誘員からや。頻繁に通うか、大人数で来る勧誘員からやと店主も商売として新聞を取る。

喫茶店に新聞は必要とされとるから、どうせ取るのなら、客からというのが商売人の発想なわけや。

喫茶店というのは、数社の新聞を取っとるのが普通やから、勧誘員側も、他社との競争を意識せんでもええ。店主にええ客やと思わせたら勝ちや。それには、通うのが一番やがな。

これは、喫茶店だけに限らず、うどん屋、ラーメン屋、弁当屋なんかの店にも似たような事が言える。

こういう店は、確率的なことやけど、なるべく小さな店が狙い目やと思う。サボる店を探すにしても、こういうことを心がけとったら、一石二鳥というやつや。

その他の店も、基本的には客として訪れれば購読して貰える可能性はある。

こういう商店関係に向くタイプとしたら、やはり、以前、何かの商売をしてた人間の方が有利やろうな。商売人は商売人を知るということがあるからや。

むろん、その他の人間がトライしたらあかんということでもない。営業の練習を兼ねてということなら、それなりに得ることも多いやろと思う。

商店では、煩雑してる時以外やったら、話くらいは聞く店主は多い。商売人の性やな。他で客に会うこともできんんと悩む人間でも、ここなら、よほどの事がない限り話くらいはできる。成約できるかどうかは別やけどな。

もう一度、言うが商売人相手には、キブ・アンド・テイクが有効やということを忘れんことや。それに徹すれば、何が必要でどうすればええか自然と分かるはずやと思う。


6.会社関係への勧誘について

会社関係も一口では説明できん。零細企業から大企業まで様々やさかいな。たいていの会社は新聞を購読している。当然、勧誘のターゲットになる。

しかし、総体的に会社関係へは、飛び込み営業は難しい。まったくあかんと言うことやないけど、やはりコネのようなものがあった方がええと思う。

ないとしても、狙う会社の仕事内容は熟知してた方が有利や。自分が以前勤めていた業種か、良う知っとる業界と言うだけでもプラスになる。

ワシの場合で言えば、建築関係の会社に以前、勤めとった分、その関連の業種やと営業はしやすい。業界に精通しとるから話も比較的簡単に出来るし、対応もそれほど難しくはない。

会社により、新聞購読を決める人間、決定権者はそれぞれ違う。その決定権者が誰であるかということを、いち早く見抜かなあかん。

もっとも、これは会社関係に限らず一般家庭にでも言えることやけどな。旦那の発言力の強い所と奥さん次第というのがあるのが普通やから、その決定権者からなるべく契約を貰うようにせんとキャンセルと言われることもあるからな。

会社関係の場合やと、普通、事務員の女性とそういう話をしてもあかんと思うのは、誰でも同じことやが、中にはそうとも言えん場合もある。

零細企業に多いが、社長の奥さんなんかが事務員として働いとるような場合や。こんな時、事務員やからと無視してたら、相手を怒らせることになるから、まずあかんわな。

その訪問先の会社の空気を読む必要がある。それには、ある程度、経験もいるし、その業種も少しは知っとかんと難しいということや。

せやから、初心者のうちは、なるべく、自分の良う知ってる職種の会社を訪問する方が無難やと思う。

会社関係も商店と同じで、訪問は比較的簡単にできる。話もそれほど嫌がらず聞く所のほうが多い。  

少なくとも、インターフォンで断られることはないから、話ができんと悩むのなら、飛び込んで営業してみるのも手や。

会社訪問のもう一つの利点は、新聞勧誘だけやなしに、チラシの勧誘からでも切り込めるということや。

販売店との打ち合わせが必要やけど、チラシ代を拡材代わりに使うか、チラシを受ける代わりに新聞をサービスするかやが、それは、相手次第によって違う。

会社関係と一括りにしたが、特殊な所も結構多い。官公庁、学校、銀行、病院、コンビニ、ホテル、旅館、管理人のおる会社の社員寮等々、数え上げたらキリがないくらいある。

これらは、どれを取っても、一部だけということはない。成約できれば成果は大きい。但し、その業種や地域により、いろいろやから、コネがないと厳しい。方法もケース・バイ・ケースになる。

そのコネは、やはり、経験を踏むしかないやろと思う。そして、そういう所を確保できたら、大切にすることやな。管理して守るということも立派な営業やと心得てな。


こんなところやな。

これに加えて、相手の性格とか性質といったものでアプローチの方法が違うてくるのやが、それは折りを見て別に話すつもりにしとる。

何でもそうやが一度に、いろいろ詰め込みすぎても、なかなか頭には入らんさかいな。何事も一歩ずつ会得していくのが基本やと思う。



参考ページ

注1.第386回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■続ゲンさんの新聞勧誘営業講座 その6 自分を知ることの重要性について
http://melma.com/backnumber_174785_6280026/

注2. 第84回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その2 拡材について
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-84.html

注3. 第14回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ゲンさんの拡張実践Part2 経験を役立てろ
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage13-14.html

注4.第9回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■営業の雑談に使えるUSJの話
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-9.html

注5.第65回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ある新聞販売店の取り組み その1 哀しき孤独死をなくせ
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-65.html

第117回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店による高齢者見守りサービスへの取り組みと、その問題点
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-117.html

第301回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞復活への試み……その1 マラソンドリルとシニアサポートについて
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-301.html

第380回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞復活への試み……その5 社会貢献へのシフトについて
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-380.html

注6.第110回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その1 新聞を読むことで向上する学力について
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-110.html

第179回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その2 新聞を読むことで向上する文章力
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-179.html

第269回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その3 新聞の無読者は人生の敗北者になる?
http://siratuka.sakura.ne.jp/newpage19-269.html


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